- 術後5日くらいは会社を休んだほうが色々無難
- 痛み止めを服用すれば翌日から普通に生活でき仕事もできるが車の運転はダメ
- FUE法は基本的に刈り上げるので出社には部分ウィッグが必要
- FUEで刈り上げない方法もあるが手術費が倍くらい高くなる
- メスを使うFUT法は刈り上げないのでウィッグ不要
自毛植毛手術を受けるにあたって、一番気になるのは「周囲にバレないか?」だと思います。
女性の立場からすれば、例えウィッグだとしても正々堂々とカミングアウトしてくれたほうがかえってその男性をかわいらしく思えるのですが、男性の立場からするとなかなかそこまで踏み切れませんよね。
そこで今回の記事では、自毛植毛した場合の「職場リスク」について、植毛経験者で、当院の毛髪診断士に色々と聞いてみたいと思います。
この記事の執筆者

藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
術後5日くらいは会社を休んだほうが色々無難

毛髪診断士さんよろしくお願いいたします。最初の質問ですが、植毛後何日目から出社可能でしょうか?

植毛したことを隠し通したいなら、5日は休んだほうがいいですね。なぜなら、移植先に血の塊が出来て目立ってしまうので、「何かやったな」とバレしまうからです。

解説いたします
植毛には以下の2種類の術式があります。
- メスを使って後頭部の頭皮をカットして剥ぎ取るFUT(ドナーストリップ法とも言います)
- メスを使わず専用器具で毛根を採取するFUE
国内の大手植毛クリニックが採用しているFUE植毛後は多少出血しても、1日半くらいで止まるので包帯が不要になり、手術の翌々日には包帯が外せます。ところが「よし、会社に行ける!」と思いきや、実はそうではありません。
目立つのはむしろ移植先であるM字部分や頭頂部です。

上記画像のように血がにじんだり、かさぶたになっていたりするので違和感ありありで、移植した毛根が生着するまでの丸3日間は「ふりかけ(ヘアパウダー)」も使用禁止です。できれば5日くらいは会社を休んだほうがいいと思います。
また、メスを使うFUT植毛は、後頭部をパックリ切るので、きちんと糸で縫い合わせても3-4日は出血が続き包帯を外せません。包帯をしたまま出社すると、
「いやあ、酔って転んで後頭部を切っちゃってさあ」
などと猿芝居をしないといけないので、演技力に自信のある方以外は術後5日くらいは仕事はせずに、包帯が外れるまでは家にいたほうが無難でしょう。

つまり、FUE・FUT、いずれの術式でもバレたくないのであれば5日くらいは会社を休んでください。バレても問題ないのなら、痛み止めさえ飲んでいれば翌日からでも出社は可能です。
痛み止めを服用すれば翌日から普通に生活でき仕事もできるが車の運転はダメ

痛みについてもう少し詳しく教えてください。特にメスを使うFUT法は後頭部を切開するので痛みで仕事が手につかない、ということはあるのでしょうか?

術後3-4日までは痛み止めを飲んでいるはずなので車の運転は控えるべきですが、事務職などであれば激務以外ならそれほど問題なく働けます。

解説いたします
術後の痛みがやや強いのがメスを使うFUTの方で、術後3-4日は痛み止めを飲まないとさすがに仕事に集中できません。それでも痛み止めを飲んでさえいれば、親知らずを抜いた後よりは痛みは少ないので仕事は大丈夫です。
ただ、どうしても後頭部のズキズキした軽い鈍痛(どんつう)が気になると思うので、重要で冷静な判断を伴う頭を使った仕事は、あまりやらないほうがいいかも知れません。
それと痛み止めの副作用で眠気が出てしまい、そもそも仕事に集中しにくい状態なので、「簡単な事務作業であればOKだけど、判断を伴う重要な仕事はやらないほうがいい」というのが植毛経験者の私からのアドバイスです。

説明ありがとうございました。痛み以外で何か気にすべき点はありますか?

私は大丈夫でしたが、人によっては出血の影響(内出血した血が顔に流れ込んでくる)で顔がむくむケースもあるようです。
FUE法は基本的に刈り上げるので出社には部分ウィッグが必要

メスを使わないFUE法は、基本的に後頭部をバリカンで刈り上げます。それはどうやって隠すのですか?

いわゆる「部分ウィッグ」を植毛したクリニックで5万円くらいで購入して、1か月くらいその部分ウィッグで刈り上げた箇所を隠す人が多いと思います。

解説いたします
メスを使うFUTは後頭部から元気な毛根を頭皮ごと剥ぎ取る前に、その部分をバリカンで刈り上げますが、剥ぎ取った部分を縫い合わせるので、後頭部の髪の毛の長さが2-3cmもあれば何もしなくても傷口は隠れます。
一方、メスを使わないFUE植毛は、後頭部のできるだけ広い範囲から均等に毛根を採取する関係上、後頭部の広範囲をバリカンで刈り上げます。

FUE法だと、刈り上げた箇所は縫い合わせたりしないので、植毛したことがバレないよう、刈り上げた箇所は髪の毛が伸びるまでウィッグで隠すしかありません。
ウィッグはクリニックで用意してくれ、有料。料金はクリニックによって異なり、約5万円といったところでしょう。

FUEで刈り上げない方法もあるが手術費が倍くらい高くなる

なるほど、人気のFUE法は手術の後に部分ウィッグで隠す必要があるのですね。ちなみにですが、刈り上げないで後頭部から毛根を採取する方法はないのでしょうか?

あります。どこの植毛クリニックでも刈り上げない方法でのFUE法を用意しています。でも技術的にとても難しいので少量の植毛しかできないし、料金が3-4倍に跳ね上がるので、大金持ちか芸能人くらいしか「刈り上げない植毛」はやりません。

解説いたします
植毛は、1グラフト(1株ともいう)につき、安い所で1,000円、大手だと1,200円くらいの単価になり、基本料金含めると少量の植毛でも100万円を軽く超えます。
大手植毛クリニックが採用しているFUE法は、シャーペンの先のように穴が開いた通称「パンチ」と呼ばれる医療器具で後頭部から髪の毛を採取し、穴の部分に髪の毛を通す必要があるので、原則的に髪の毛を刈り込んで短くしておく必要があります。
【パンチで毛髪を採取するシーン】
「虎刈り」をする危ないクリニックに要注意
後頭部を刈り上げないで毛根を採取する方法は必要に難易度が高いです。
誰にでもできるわけではなく、熟練植毛医の「匠の技」なので、料金が3倍から4倍くらいに跳ね上がります。200万円でできる植毛が600万円や800万円。
ここで注意して欲しい点が。刈り上げる難易度の低い植毛法と、刈り上げない難易度の高い植毛法との料金差異が2倍程度に収まっている植毛クリニックが存在します。
なぜこのようなおかしな料金設定が可能になるかというと、線状に刈り上げて、その線状に借り上げた部分から毛髪を採取するのです。
これ、はっきりいってインチキだし、キズ跡が分散されて目立たないのが売りのFUE法なのに、この方法(虎刈り)を行うと線状の傷跡が残ってしまい、絶対にやってはいけません。
こちら(下)の画像は、メスを使うFUT法とメスを使わないFUE法の比較画像です。
この画像自体色々ツッコミどころ満載なのですが、今は余計なツッコミはせず、刈り上げないFUE法がどうなるかのイメージをつかんでいただくためにあえてこの画像を採用しました。

熟練植毛医が刈り上げずに植毛を行うと、右の画像のように特段傷跡らしきものは残らないはずですが、低料金設定の刈り上げない植毛法を行うと、左のFUT法の傷跡のようなものが後頭部に残ってしまいます。
低料金での「インチキ刈り上げないFUE」は、線状に細くバリカンで髪の毛を短くしてから、その部分からのみ毛根を採取するので、部分的にハゲた状態に仕上がってしまうのです。これは本当に注意してください。

ここは藤田先生に聞いてみましょう。藤田先生、刈り上げないFUEを正しい方法で行える熟練植毛医は全国で何人くらいいるのですか?

2人だと思います。Y先生とI先生ですね。お二人とも東京で開業されています。このお二人以外で刈り上げないFUE植毛はやってはいけません。
メスを使うFUT法は刈り上げないのでウィッグ不要

ウィッグにどうしても抵抗がある。でも、低料金で抑えたい場合はどうすればいいのでしょうか?

メスを使うFUT法を選べばいいと思います。FUTは線状の傷跡は残りますが後頭部の髪の毛の長さが2-3cmあれば隠れてしまうし、最新の術式でありながら料金もFUEより安いのでおすすめですよ。

解説いたします
大手植毛クリニックの巧みな広告宣伝によって誤った認識が広まっていますが、メスを使わないFUE法は、一世代前の植毛法。
FUE法の弱点(ドナーロス率の高さなど)を補うために開発された植毛法が、メスを使うFUTなので、FUTのほうが世界的に見れば最新式の術式です。

FUTは看護師の腕前が重要になり、看護師を育てきれない植毛クリニックは古い術式であるFUEしか採用できず、最新式のFUTを行っている植毛クリニックは全国的に見ても3院しかありません。
調べてみると分かりますが、FUTは最新式にもかかわらず、古い術式のFUEより1-2割ほど安いです。
※安いというよりこれが植毛の適正価格であり大手植毛クリニックが高すぎます
線状の傷跡は残るし、術後の痛みもFUEよりは多少強くても、ドナーロス率が圧倒的に低く、傷跡の総面積は実はFUEの1/3以下という大きな長所があります。大手の巧みな広告に踊らされることなく、冷静に植毛法を検討してみてください。
当ブログ内の他の記事で詳しく書いていますが、植毛の基本は、
- 生涯3-4回に分けて行う
- 最低でも初回と2回目はメスを使うFUTで行いFUEは最後の植毛時のみ
これが失敗しない植毛計画です。
まとめ

最後少し脱線してしまったので、私のほうで簡単にまとめさせてください。
植毛にはFUEとFUTの2種類あり、いずれの場合も、移植先であるM字部分や頭頂部の手術の痕跡(こんせき)が隠し切れないので、植毛したことを隠し通したいのであれば術後5日程度は会社は休んだほう無難のようです。
また「痛み」については、痛みが多少強いメスを使うFUT法であっても、痛み止めを飲みさえすれば手術翌日からでも仕事は可能。
ただし、痛み止めの副作用で眠気がどうしても出てしまうので、車の運転はNGで、冷静な判断が必要な重要な仕事はできれば回避したほうがいい、というのが当ブログでの結論です。
以上