- 失敗の第一位は初回にFUEを選択してしまう「順番ミス」にあり
- 植毛を1度で終わらせようとするとなぜ必ず大失敗するのか
- クリニックの本当の選び方を知らないと植毛はまず失敗する
- 植毛量に限界がある為「どこに集中的に植えるか」が失敗しないポイント
- 最大の失敗は植毛したのに全然生えてこないこと【10人に1人】
自毛植毛手術は、それなりにお金もかかるし、満足に生え揃うまでに1年以上は必要なので「絶対失敗したくない」と思うのは自然なことです。
でも植毛は、広告やステマに騙されないよう情報をしっかりと精査できる確かな目を持っておかないと、結構な確率で失敗します。
失敗しないために大切なことを先に書いておくと、
- 植毛は複数回に分ける勇気を持つこと
- 2回目までの植毛はFUT(ドナーストリップ法)を選択すること
- ロボット植毛は絶対に避けること
- 移植本数に限界があるのでどこに集中的に植えるか決めておくこと
この4つのことを心に留めて植毛するかどうか、どこのクリニックで植毛すべきかを決めていただきたいのです。
この記事の執筆者

藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
失敗の第一位は初回にFUEを選択してしまうことにあり

多くの人が植毛で失敗する理由に「初回にFUEを選択してしまうから」と藤田先生は常々言ってます。理由を教えてもらえますか?

大手植毛クリニックが採用しているFUEという植毛法は、傷跡を縮小できない術式なので、FUEで植毛してしまうと後頭部が虫食い状態になり結果として少量の移植しかできなくなるからです。

解説いたします
植毛にはFUEとFUTという2つの術式があります。
植毛はアメリカから輸入されてきた外科手術です。日本に最初に入ってきたものは、最新のメスを使って後頭部を切開するFUT(日本ではドナーストリップ法とも呼ばれています)と呼ばれる術式です。
FUT(ドナーストリップ法)
FUTは、後頭部に線状の傷跡が残ってしまうので、丸坊主にはできなくなるというマイナス点はあるものの、古い術式であるFUEと呼ばれる植毛に比べると、傷跡の総面積は1/10程度に抑えられる画期的なやり方です。
しかし国内の大手植毛クリニックはガラパゴス化しており、一世代前の術式であるメスの代わりにパンチグラフトと呼ばれる医療器具で毛根を採取するFUE(エフユーイー)を採用しています。このやり方だと後頭部が虫食い状態になり、多くの移植を行えず大失敗してしまうのです。
【FUE】
下記イラストが最新の術式であるFUTと一世代前の術式であるFUEの傷跡のイメージ図です。

FUE法で大量の植毛を実施した患者の後頭部の実際の画像もお見せします。

FUEにも利点はあり、メスを使うFUTは側頭部やうなじ付近のネイプヘア(うぶげ)を採取できないのに、FUEは可能。
つまりFUEが絶対にダメだと言っているわけではなく、私があなたに伝えたいのは「植毛の順番」の重要性です。
まず縫い合わせることで傷跡の総面積を大幅に縮小できる最新の術式であるFUT(ドナーストリップ法)で、移植できるだけしてください。もうこれ以上FUTでは毛根を採取できなくなった後に初めて、FUEで残りの貴重な資源(毛根)を使いましょう。
このことは、植毛に詳しい医者なら誰でも分かっていることなのに、残念ながら商売に手を染めお金に心を奪われてしまった医者は、手っ取り早くお金が儲かるFUEしかやらなくなっています。その結果日本の植毛のほとんどがFUEで実施されてしまっているのです。
※FUEはFUTより利幅が大きい手術法
植毛を1度で終わらせようとするとなぜ必ず大失敗するのか

なるほど、植毛には「順番」があるのですね。もう一つ教えてください。先生はよく「植毛は複数回に分けるべき」とも言っていますが、なぜ植毛は一回ではなく複数回に分けたほうがいいのでしょうか?

複数回に分けて手術しないと多くの植毛が行えないからです。

解説いたします
(前述したことを繰り返しますが)大手植毛クリニックが採用しているFUE植毛は大量の植毛に向いていない術式なので、AGAがかなり進行して大量の植毛が必要な場合にはFUTを選択する事が必須条件です。
ただし、FUTにも弱点があります。FUTはトータルでは多くの植毛を行える術式ではあるものの、「1度の植毛手術」では最大でも2,000グラフト(髪の毛換算で約4,000本)までしか移植ができません。
FUTは後頭部中央付近の頭皮をメスで切開して、三日月型に剥ぎ取ります。剥ぎ取った後に頭皮を縫い合わせる関係上、剥ぎ取れる面積に限界があるのです。

頭が大きく、かつ後頭部の髪の密度が濃い人で約2,000グラフト、頭が小さく密度も薄い人だと1度の植毛で1,600グラフトしか採取できないケースもあります。
生涯で後頭部から移植できる髪の毛のグラフト数は約5,000グラフト(髪の毛換算で約1万本)であるのに対し、FUT(ドナーストリップ法)で1度に採取できる限界本数は1,500から2,000グラフト。このことから植毛は複数回に分けて行う「必然性がある」ことが分かります。
患者の欲望に忍び寄るワナ
ここに植毛で多くの人が失敗するワナが潜んでいます。「1度の植毛で薄毛の悩みから解放されたい」という欲望です。
おそらくあなたは、この記事を見た後に「書いてあることは本当なのかな?」と思い、自分にとって都合の良いことを書いてある記事を探しにいくでしょう。
人間は、論理的な生き物ではなく感情的な生き物です。論理で意思決定するのではなく、まず最初に感情でほぼ意思決定をし、その後に自分の決断が合っているかどうかを「後付け」で理由を探します。
大量の植毛はFUTで行って欲しいことをこの記事で説明してきましたが、おそらくですあなたは信じないと思います。そしてyahooやgoogleで「植毛 大量」などのキーワードでスマホで検索し、大量植毛に関する記事を読み漁り、その中で、
「僕は○○クリニックでFUEでメガセッション(1度で大量の植毛を行うこと)を行い、大満足でした。」
という記事と出会うことになるでしょう。
※そのサイトは99%アフィリエイトサイトです

そして、そのアフィリエイトサイトの記事をあなたは信じ、その記事内にある「○○クリニック公式サイトはこちら」などのボタン(アフィリエイトリンク)をクリックし、クリックした先の○○クリニックの公式サイトの広告文を読んで
「やっぱFUEでも大量の植毛できるんじゃん」
と(あなたにとって都合の良い)ウソの情報を信じ込み、FUEで大量の植毛を行い下記の画像のようになっていまい、大後悔するのです。
【FUEで1度に大量の植毛を実施した患者の後頭部の惨劇】
「FUEでの大量植毛は問題がある」ということだけはどうか心の片隅に留めておいてください。
クリニックの本当の選び方を知らないと植毛はまず失敗する

植毛クリニックは、大手のクリニック数社で市場シェア9割以上を占めています。大手で植毛するとどんな問題があるのでしょうか?

大手は1社を除きどこも大量の植毛には不向きなFUEを採用しているので、FUTで取り切った後に大手で植毛するならいいのですが、最初に大手を選ぶと失敗の道を進んでしまうことに。

解説いたします
日本国内の植毛の市場シェアは、一世代前の術式であるFUEを専門にしているクリニック数社で市場シェアの9割を抑えていて、最新の術式であるFUTを採用しているクリニックのシェアは1割を切っています。
植毛を考え始めてyahooやgoogleなどで調べ始めると、FUEの情報ばかり出てくるでしょう。
FUEにとって、最新の術式であるFUTは商売敵(しょうばいがたき)なので、FUTに関してネガティブなことばかりを発信しています。googleやyahooで調べれば調べるほど「FUEが正義でFUTは悪」という誤った情報が刷り込まれていくのです。
植毛クリニックを選ぶ際は、せめてFUTとFUE両方を行っているクリニックに足を運び、そこの先生にFUTとFUEの長所短所を聞いてから最終決断してほしいのです。
FUEはFUTの1.5倍以上の価格設定になっているのもかかわらず手術に必要な看護師の数が少なくて済むので、倫理観のないクリニックならFUE(だけ)を勧めてくるはずです。ただし実際にFUTとFUE両方をやっているクリニックにカウンセリングに行くと、儲けが薄いFUTを薦めてくれると思います。
なぜなら本物の植毛医は、真実をきちんと分かっているからです。
なお、FUTとFUE両方の術式を行うことができるクリニックは、国内では湘南美容クリニックとヨコ美クリニックの2つだけ。
植毛をしようと考えているならこの2つのどちらかにカウンセリングに行き、直接先生に「FUTとFUEどちらがいいか」と聞いてみてください。
植毛量に限界がある為「どこに集中的に植えるか」が失敗しないポイント

植毛には5,000グラフトという限界量があると先ほど解説されていました。この5,000グラフトはどこに植毛するのがベストでしょうか?

M字(ひたいの生え際)とO字(頭頂部)の両方ともAGAが進行している場合、本数が足りなくなるのでM字を優先しましょう。

解説いたします
自毛植毛は、後頭部の元気な髪の毛を薄くなったM字やO字部分に「引っ越し」させる手術です。
後頭部から髪の毛を多くとり過ぎてしまうと、本人が気づかないだけで第三者から見ると後頭部がスカスカになっているのが分かります。最大でも5,000グラフト(髪の毛換算で約1万本)が引っ越しの限界量です。

AGA(男性型脱毛症)が進行していくと、少ない人でも10,000グラフト脱毛し、多い人だと25,000グラフト以上脱毛するケースもあるので、植毛で全てを解決することは不可能です。
そうなると全体的に植えるべきか、それとも部分的に植えるべきかは大変重要なテーマであり、あなたがもしM字とO字両方とも薄くなっているのであれば、迷わずM字を優先してください。
理由は2つあります。
1つは、O字はAGA治療薬(育毛剤やフィナステリドなどの飲み薬)の効果が出やすい箇所であるのに対して、M字は何をやってもほとんど効果が出ないことと、もう1つは、O字はスーパーミリオンヘアなどのヘアパウダーで隠すことが容易だし、部分ウィッグでバレることなく隠すことも可能だからです。

ウィッグ(かつら)がバレてしまうケースのほとんどがM字部分の不自然さです。ウィッグで生え際の産毛(うぶげ)などを精巧にデザインすることはかなり難しく、もし隠せたとしてもペタっと貼り付けるタイプのヘアコンタクト系のウィッグでないとバレるリスクが高まります。
ヘアコンタトは高額なので、経費で落とせる芸能人や、あるいは会社経営者などの大金持ちでないと経済的に大変です。
それに対して植毛は、ヘアコンタトに比べればずいぶんと安く、しかも「自毛」なので、人前に出ても安心感が全然違います。貴重な資源(後頭部の元気な毛根)はM字部分に集中して投資すべきです。
【ヘアコンタクト】
AGAでは頭頂部(O字)のみが薄くなるパターンもありますが、多くの場合M字部分もかなりの確率で後退していくことに。
頭頂部が薄くなり焦って頭頂部に植毛したものの、AGAがM字部分にも進行して薄くなってしまった場合、移植に必要な貴重な資源が足りなくなります。
頭頂部だけが薄くなった場合は、しばらくはヘアパウダーなどでごまかしつつ、M字の後退がないと確信が持てた時にのみO字に植毛してください。
植毛で失敗しないためには「どこに集中して植えるか」は大変重要なテーマなので、焦ってO字に植毛しないようくれぐれも留意してください。
最大の失敗は植毛したのに全然生えてこないこと【10人に1人】

植毛した髪の毛が生えてこない「完全失敗」はケースとしてどれくらいあるのでしょうか?[

約5%です。これは医師の腕には関係がありません。名医と言われる植毛医であろうが新米植毛医であろうが、植毛の成功率は約95%で、残り5%の人は生着せず植毛が失敗します。

解説いたします
怖いデータを出して申し訳ないのですが、当ブログのモットーは「情報は包み隠さずオープンにする」ことなので、植毛の失敗率(約5%)についても言及しておきます。
この5%という植毛の失敗率は、自動車事故や飛行機事故みたいなものだと思うしかなく、どうしようもありません。
移植失敗は、ドナー不整合によるものです。移植毛は元々自分のドナー(細胞)なので、普通は生着するはずですが、理由不明で生着しないケースが約5%程度あります。

ただし失敗率5%は、実は驚異的に(良い意味で)すごい数値であることも覚えておいてほしいのです。
AGA治療薬として最も有名なミノキシジルは、外用薬として使用した場合の発毛率はせいぜい5%程度で、95%の人は発毛しないまま終わります。
通称ミノタブと呼ばれ、最強の発毛薬と言われるミノキシジルの飲み薬でさえ成功率は25%程度で、7-8割の人がミノキシジルを飲んでも発毛しません。

それに対し、植毛は9割の人が成功します。植えれば相当の確率(約90%)で生えてきます。
5%の植毛失敗率をリスクと見るのか、それとも植毛成功率のほうに着目して「95%って超高確率!」と考えるかはあなた次第です。
ただし、植毛せずに薄毛のストレスを抱えたまま過ごすと、うつ病のリスクを抱えてしまうことも覚えておいてください。
AGAの悩みからうつ病を併発していまう人は、かなりの数いるといわれています。植毛の失敗リスクにばかり目を奪われ近視眼的になるのではなく、総合的メリットデメリットを考えて植毛するかどうかを判断してください。

おすすめ植毛クリニックは?比較するとどこが良い?に冷徹回答 。植毛量によって選ぶべき術式やランキングは大きく変わる
自毛植毛クリニックのランキング記事です。「大手だから〇〇クリニックが1位」ではなく、医学的根拠や植毛費用から見たコストパフォーマンス、看護師の質、AGAの進行状態までをも総合的に熟慮した上で各医院を徹底比較しています。
以上