こんにちは。総合内科専門医の藤田です。
手軽な健康飲料として人気の「青汁」。ドラッグストアやインターネット通販などで、数多くの商品が販売されています。
下記は青汁商品でよく謳われている広告表示で、目にしたことのある方も多いと思います。
- 野菜不足の解消
- おなかスッキリ
- ダイエットのサポート
- 美容のために
- コレステロールや血圧を下げる
これらの記述は、果たして本当なのでしょうか?このカテゴリでは、青汁がもつ健康効果や機能・はたらき、飲みすぎるとどうなる?など、青汁の効果についてまとめています。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
青汁に含まれる栄養素とそれぞれの効果
青汁に使用されている原材料には、「大麦若葉」「ケール」「明日葉(あしたば)」「桑の葉」の4種類があります。
この中では、飲みやすい大麦若葉を使用した青汁が現在のメジャー商品となっています。
それぞれの原材料には豊富に栄養が含まれていて、どれもが素晴らしい『原材料』です。
大麦若葉 | 食物繊維、ビタミンC、ビタミンEが豊富。身体に必要な栄養素のバランスが良く含まれていて、鉄分や過剰な活性酵素を取り除くはたらきをする、SOD酵素が豊富です。 大麦若葉の効果についてはこちら |
ケール | 独特の苦味がありますが、ビタミン(ビタミンA、ビタミンC、ビタミンB6、葉酸等)、主要ミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン)が豊富に含まれています。 また、良質な睡眠を助けるはたらきがあると言われるメラトニンを含みます。 |
明日葉 | 明日葉特有の成分カルコン、クマリンを含みます。食物繊維、ビタミンE、βカロテン(体内でビタミンAに変わる)、ビタミンKが豊富です。 |
桑の葉 | 食物繊維、カロテン、カルシウム、カリウムが豊富に含まれ、糖の吸収を阻害し、食後の血糖値上昇を抑制することが報告されているDNJ(1-デオキシノジリマイシン)成分が含まれています。 |
上記のとおり、多くの栄養素を含む、素晴らしい原材料たちです。ここで頭に、??青汁ではなくて原材料が素晴らしい?とハテナが浮かんだ方は、大変良いカンをしていらっしゃいます。
青汁は、これらの素晴らしい『原材料』にさまざまな野菜・果物、栄養分などを加え、多くは粉末として販売されています(中には原材料100%のものもあります)。
この粉末加工を行う際、原材料やその他の野菜・果物などに本来含まれている栄養素は、相当な量が失われてしまうことは、なかなか知られていないことだと思います。
このことから、「青汁は効果がない」といった見方も多くありますので、 “青汁は効果なし” の声が事実なのかどうか、下記にまとめています。
たいせつなのは、実際の栄養成分表示を確認すること
たいせつなのは、実際の含有量。「その青汁にはどんな栄養成分が実際に含まれているのか」です。
青汁商品を買うとき、「栄養をギュッと凝縮」「1日分の野菜」「野菜350g分」のように商品説明が書かれていることが多いと思いますが、注目すべきはそういったキャッチーなフレーズではありません。
たとえば上記のパッケージには、”野菜350g以上の栄養素”とあります。
厚生労働省による健康作り運動「健康日本21」で目標とする、1日の野菜摂取量目標は350g以上(成人の場合)。つい、この青汁だけで、1日分の野菜の栄養素がバランス良く摂取できると思ってしまいますが…?
よく読むと、具体的にこの青汁商品の “野菜350g以上の栄養素” とは、ほうれん草1,737g分相当の「ビタミンB6」とピーマン899g分相当の「葉酸」のことだと分かります。
この商品の場合、ビタミンB6と葉酸は1日の摂取目標量に近い数値(むしろビタミンB6は多すぎる)のため、この二つの栄養素に限れば十分ですが、他の栄養素はどうでしょうか。
細かく成分表示を見ていくと、1日の必要量には足りず、野菜不足の補充にはならないことがわかります。
食物繊維の量を見ると「0.91g」となっています。食物繊維の1日あたり目標摂取量は30~49歳男性で21g、女性は18g(厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より-身体活動レベル「ふつう」の場合)ですから、とても補充は期待できず、必要量は含まれていないことが分かりますね。
そのほか、ビタミンやミネラル(ナトリウム、マグネシウム、カルシウム)も成分表示に記載されていますが、同じく1日に必要な量には足りていません。
他の青汁商品の成分表示にも注目してみましょう。下記は、栄養補助食品(健康食品)として販売される青汁商品A~Eについて、1袋あたりの成分表示から「食物繊維」のグラム数を抜き取ったものです。
いずれも人気の青汁食品です | 1袋あたりの成分表示(食物繊維) |
---|---|
商品A | 1.3g |
商品B | 0.01g |
商品C | 1.6g |
商品D | 1.08g |
商品E | 1.6g |
(厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より-身体活動レベル「ふつう」の場合)
どの製品もランキングでは人気商品のようですが、食物繊維の中央値は1.3gとなりました。冒頭の商品でも、他商品でも同様に、野菜不足を完全に補充すること、および原材料そのものを摂取したときのような影響は、とても期待できません。
専門家から「青汁は効果なし」と言われるのは、こういった理由が潜んでいるからである、ということですね。
青汁で野菜不足を補えるかどうかは、下記の記事で解説しました。
一方、すべての青汁にこうしたはたらきが期待できないわけではありません。
青汁商品の中には、国が審査し保健用途表示を許可している「トクホ」商品や、機能性に関する科学的根拠が消費者庁長官に届出られた「機能性表示食品」、特定の栄養成分の補給のために利用される「栄養機能食品」があります。
これらをまとめて「保健機能食品」と言い、他の健康食品とは区別されています。保健機能食品としての表示がない青汁はすべて「健康食品(栄養補助食品)」となり、効果効能を謳うことはできません。
保健機能食品の青汁商品は、どのような効果が期待できるか
保健機能食品は「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」「機能性表示食品」の3つがあります。
※保健機能食品として販売される青汁商品では、「青汁」そのものが効くわけではなく、加えられた成分がもつはたらきとなります。
特定保健用食品(トクホ) | 安全性・健康の維持増進に役立つ効果について、国が審査します。 個別許可型で、トクホとして許可された商品には許可マークが表示されています。 「お腹の調子を整える」「コレステロールが高めの方に適する」などの表示がされたトクホの青汁商品があります。 ■トクホ表示許可商品の青汁商品一覧 |
栄養機能食品 | 特定の栄養成分の補給のために利用される食品です。 一日あたりの摂取目安量に含まれる当該栄養成分量が、定められた上/下限値の範囲内にある必要がありますが、個別の許可申請は必要ありません。 ■栄養機能食品として販売される青汁商品一覧 |
機能性表示食品 | 国の定めるルールに基づき、事業者が安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要事項が、消費者庁長官に届出られた商品です。 お腹の調子を整える「難消化性デキストリン」が含まれるもの、肥満気味な方の、体重やお腹の脂肪(内臓脂肪と皮下脂肪)やウエスト周囲径を減らすのを助ける機能があることが報告されている「葛の花イソフラボン」が含まれる青汁商品などがあります。 トクホとは異なり、国の審査は行われていません。事業者が自らの責任において、科学的根拠を基に適正な表示を行います。 ■「機能性表示食品」届出がされた青汁商品一覧 |
【注意点】保健機能食品は病気の診断、治療、予防を目的としたものではありません。
青汁の多くは健康食品であり、あくまで栄養補給・健康の維持ができるものです。青汁を飲むことで、今より身体機能がよくなることはありません。
食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。全ての食品において、摂り過ぎは禁物です。商品に記載されている1日の摂取量を必ず守ります。また、青汁を飲んではいけない人もいます。下記にあてはまる方は、必ず主治医に相談すること。
- 抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を服用している方
- 腎機能障害の方、人工透析をしている方
- 肝機能障害の方
- C型肝炎の方
- 野菜の摂取制限を受けている方
通院や服薬を行っている方は、必ず医師や薬剤師、管理栄養士などに相談してから使用しましょう。また、一番は生活習慣を見直すことだということは忘れずにいてくださいね。
青汁だけ飲めば良いということではないため、注意しましょう
表示機能を確認しながら、便秘気味の方はトクホの「お腹の調子を整える」表示のもの、または難消化性デキストリンやイソマルトデキストリンが含まれる機能性表示食品を選んだり、肌荒れが気になる方はビタミンCの栄養機能食品として販売される青汁商品を選んだり、といった使い方ができます。
ただし、青汁は「これだけ飲んでいれば大丈夫」ということではなく、あくまで栄養を補助するものであり、バランスの良い食生活を送る上で、足りない分を補うために使用するという意識は忘れないようにしましょう。
バランスの良い食生活を心がけることを第一として、青汁を生活に取り入れる目的に合わせて表示を確認し、上手に選んでいきましょう。
飲み過ぎるとどうなる?青汁の副作用
青汁商品には、商品ごとに設定されている適正量があります。商品パッケージには「1日に1杯(袋)」~「1日に3杯(袋)」といった表示がされているので、必ず表記量を守ります。
1日の摂取量を守り、正しく使用することがたいせつです。
青汁の飲み過ぎで起こり得ること
青汁は、正しく選んで、正しく飲むことで野菜不足を補ったり、あるいは健康保持を助けることできる食品です。あくまでも食品で、医薬品ではありませんので、青汁そのものにいわゆる副作用はありません。
ただし、どんな食品にも言えることですが、飲みすぎは健康に不具合を生じさせます。つまり、健康に良いとさせる青汁であっても、飲みすぎ、過ぎたるは及ばざるが如しという訳です。健康状態、体質を考慮しながら、それぞれに合った、適切な量を飲用・摂取しましょう。
青汁に含まれる栄養素 | 過剰摂取すると・・ |
---|---|
食物繊維 | ・胃腸の不快感、腹痛、嘔吐など ・下痢、お腹が緩くなる、あるいは便秘の悪化 ・他の栄養素の吸収を妨げる |
ビタミンE | ・骨量を減らし、骨粗鬆症のリスクを高める (ビタミンEは骨を減らす? 竹田 秀(腎臓・内分泌・代謝内科)) ・出血性脳卒中の発症率を高める (厚生労働省eJIM | ビタミンE) |
食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。全ての食品において、摂り過ぎは禁物です。下記にあてはまる方は、必ず主治医に相談すること。
- 抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を服用している方
- 腎機能障害の方、人工透析をしている方
- 肝機能障害の方
- C型肝炎の方
- 野菜の摂取制限を受けている方
食物繊維の過剰摂取による下痢
不溶性食物繊維は、文字通り水に溶けず、水で体積が増加して便量を増やす作用があります。
これが、排便促進につながるのですが、人によっては、かえって排便が困難になったり、便秘が悪化したように感じる場合が生じます。
食物繊維には、不溶性と水溶性の2種類があり、両者を含む青汁を選ぶと安心です。
また、青汁で便秘が悪化した方は、水溶性食物繊維の中でも、難消化性食物繊維や難消化性オリゴ糖を多く含む青汁製品を選ぶと良いでしょう。
また、青汁商品には商品ごとに設定されている適正量がありますので、これを必ず守るようにしてください。
特に、飲みすぎた場合は、食物繊維の過剰摂取による不具合として、下痢が考えられます。この場合、胃腸の不快感、嘔吐などを伴うことがあります。さらに、食物繊維の過剰摂取は腸内での他の栄養成分の消化吸収を妨げる懸念があります。
カリウムの過剰摂取による高カリウム血症
高カリウム血症を生じさせると、電解質代謝異常につながり、また、肝障害を起こすなど健康被害が報告されています。
また、抗血栓薬を服用している方、腎機能障害の方、人工透析をしている方、肝機能障害の方、C型肝炎の方、野菜の摂取制限を受けている方、その他の疾患で通院中や治療中、治療薬を服用中の方は、薬剤の作用に支障をきたす場合があります。
必ず主治医の先生と相談の上、情報を共有しながらの飲用・摂取が重要です。
そのほか、ビタミンEの摂取が過剰になると、脳出血、骨代謝異常の報告がありますので、指定された量を超えて摂取することは避け、記載されている量を守って摂取しましょう。
好転反応に関して
好転反応だから良い傾向、などという説明を耳にすることがありますが、良い作用の前に腹痛をはじめとする不具合が生じることは考えにくく、医学上、好転反応という概念はありません。
青汁を飲んだあとに普段とは違う症状や腹痛が生じた場合は、いったん中止し、主治医の先生あるいは外来を受診しましょう。
青汁摂取で考えられる肝障害
「青汁は肝臓に悪い」という声がネット上で広がっており、肝障害の事例や青汁を避けるべき方について、下記の記事で解説しました。
まとめ
効果について
- 青汁の原材料には多くの栄養素が含まれる
- 粉末にする際、含まれる栄養素は失われるため、実際の栄養成分表示の確認が大切
- 機能性表示が認められた保健機能食品として販売される青汁がある
- 青汁はあくまで栄養を補助するもの
- 足りない栄養素のサポートとして利用する
副作用について
- 青汁は食品で、医薬品ではなく、青汁そのものにいわゆる副作用はない。
- どんな食品にも言えるが、飲みすぎは健康に不具合を生じさせる。
- 必ずパッケージに記載された目安量を守る。
- 治療中、治療薬服用中は、必ず主治医と相談し情報を共有する。
- 不具合が生じた際は、直ちに飲用・摂取を一旦中止する。
成分表示(含有量)が詳細に書かれている商品を選ぶようにする
健康食品の有効性や安全性は、何がどれだけ入っているかが分からないと判断しようがありません。
ところが青汁商品は、成分表示を詳細にしていないものがいくつも確認できます。そういった何がどれだけ含まれているか、はっきりと分からない商品は避けるべきです。
また、製造者・販売者・輸入者といった表示は、食品衛生法で決められていますので、問い合わせ先が表示されているかどうかも合わせて確認するようにしましょう。
病気にかかっている方、服薬している方は自己判断で使用しないこと
健康食品と薬を併用することの安全性については、ほとんど解明されていません。
健康食品は、症状を治したり、予防したりするものではありません。薬とは明確に区別されていますから、持病のある方や服薬されている方は必ず医師や薬剤師に相談してから使用するようにします。
健康食品と薬を同時に摂取することの安全性はほとんど解明されておらず、薬効の減弱または増強、副作用が起こる可能性が考えられます。
青汁商品に含まれる成分と医薬品の相互作用が想定される主な事例
成分 | 医薬品成分 | 影響 |
---|---|---|
ビタミンB6 | フェニトイン(抗てんかん薬) | 薬効の減弱 |
葉酸 | 葉酸代謝拮抗薬(抗がん剤) | 薬効の減弱 |
葉酸 | フルオロウラシル、カペシタビンなど(抗がん剤) | 薬効の増強 |
ビタミンK | ワルファリン(抗凝固剤) | 薬効の減弱 |
ビタミンC | アセタゾラミド(抗てんかん薬) | 腎・尿路結石のおそれ |
ナイアシン | HMG-COA還元酵素阻害薬 (高コレステロール血栓治療薬) | 副作用の増強 (急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症) |
ビタミンD | ジギタリス製剤(心不全治療薬) | 薬効の増強 |
カルシウム | 活性型ビタミンD3製剤(骨粗鬆症薬) | 腸管からのカルシウム吸収を促進 |
カルシウム | ジギタリス製剤(心不全治療薬) | 薬効の増強 |
カルシウム | ビスホスホネート系製剤(骨粗鬆症薬) テトラサイクリン系抗菌剤(抗生物質) ニューキノロン系抗菌薬など(抗生物質) | 薬効の減弱 |
マグネシウム | テトラサイクリン系抗菌剤(抗生物質) ニューキノロン系抗菌薬など(抗生物質) ビスホスホネート系製剤など(骨粗鬆症薬) | 薬効の減弱 |
鉄 | タンニン酸アルブミン(下痢止め) ビスホスホネート系製剤(骨粗鬆症薬) メチルドパ(降圧薬) テトラサイクリン系抗菌剤(抗生物質) ニューキノロン系抗菌薬など(抗生物質) | 薬効の減弱 |
※相互作用は摂取量が多い場合(濃縮物等)に起こる可能性がある。
「この表の健康食品に添加されている成分と医薬品成分の相互作用は主な事例であり、これら以外にも相互作用の可能性は考えられますので、よく医師、薬剤師などに相談をしてください。」
また、病気にかかっていない、または薬を飲んでいない方の場合であっても、何でもかんでも摂り入れて良いというわけではありません。
まず一番に見直すべきは、食生活や適度な運動といった生活習慣です。その上で決められた量を守り、目的に合わせて上手に健康食品を使用するようにしましょう。