
こんばんは。総合内科専門医の藤田です。
青汁にはコレステロール値を下げる効果をうたっている商品がありますが、果たしてどれくらい効果があるのでしょうか。また、他の青汁とは何が違うのでしょうか。
この記事では、コレステロールについて知っておくべき知識をまとめ、青汁でコレステロール値が下がる仕組みについて解説します。
そして、コレステロール値を下げる目的で青汁を飲みたい人が購入すべき商品の見分け方も詳しく紹介していますので、是非参考にしてみて下さい。
この記事の執筆者

藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
コレステロールとは
コレステロールというのは人間の体内に存在している脂肪分のひとつで、そのうち約80%は私たちの身体の中で常に合成され、残り20%は日常的な食事から摂取しています。※1
コレステロールと聞くと”体に良くない”というイメージを持たれているかもしれませんが、コレステロール自体は、
- 細胞膜
- 女性ホルモン
- 副腎皮質ホルモン
- 胆汁酸
などを作る材料となりますし、ビタミン類を代謝する役割を持っているので、人間の身体にとっては欠かすことのできない大切な成分です。
体内のコレステロール量というのは、人間の身体に備わるホメオスタシス※によって一定に保たれるものなのですが、問題なのは、何らかの原因によって血液中のコレステロール量が増えた場合です。
そうなると、動脈硬化(血管が硬くなり血液が送り出される圧力でダメージを受けやすくなる状態)が起こり、さまざまな病気を引き起こしてしまうのです。
生体が変化を拒み一定の状態を維持しようとする働きのこと。恒常性とも呼ばれます。身体の中に細菌などがない状態を保つったり、塩分濃度や血糖値を一定に保ったり水分量を一定に保つのもホメオスタシスの一例です。
まずは自身の身体の状態を知る事が大切です。
血中脂質の基準値(善玉コレステロール・悪玉コレステロール・中性脂肪)
聞いた事があるかと思いますが、血液中の脂質を測る値としてコレステロールには善玉コレステロールと悪玉コレステロール、そして中性脂肪というものがあります。
皆さんが行ったことがある健康診断・血液検査の検査結果(血中脂質の項)などがあれば、体内に存在しているコレステロールの様子が分かります。
以下、検査結果の表の見方と併せて、この3者について解説します。

血中脂質における項目の解説と基準・保険指導・受診推奨それぞれの値
日本人間ドック学会の公式サイトや、厚生労働省の標準的な健診・保健指導プログラムなどを見ると、血中脂質における各検査項目の数値を元に、基準範囲※2の他にも保険指導値や受診推奨値※3が設けられています。
項目 | 基準範囲 | 保健指導値 | 受診推奨値 |
---|---|---|---|
総コレステロール(TC) | 130〜219 | – | – |
LDL-コレステロール | 60~119 | 120以上 | 140以上 |
HDL-コレステロール | 40〜99 | 40未満 | 34以下 |
中性脂肪(TG) | 30~149 | 150以上 | 300以上 |
総コレステロール(TC)
基準範囲 | 保健指導値 | 受診推奨値 |
---|---|---|
130〜219 | – | – |
血液中に含まれるコレステロールの総量です。男性では50代、女性は60代がピークと言われています。
LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)
基準範囲 | 保健指導値 | 受診推奨値 |
---|---|---|
60~119 | 120以上 | 140以上 |
肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ役割があります。この値が高いと血管(動脈)壁に沈着し動脈硬化になる危険性が高まります。
HDL-コレステロール(善玉コレステロール)
基準範囲 | 保健指導値 | 受診推奨値 |
---|---|---|
40〜99 | 40未満 | 34以下 |
小腸などで作られ、血管(動脈)にたまった悪玉コレステロールを引き抜き肝臓に回収する働きをします。HDL-コレステロールが少ないと、血管(動脈)壁へのコレステロール沈着が増え動脈硬化になる危険性が高まります。喫煙や運動不足の方は値が低くなる傾向があります。
中性脂肪(TG…トリグリセリド)
基準範囲 | 保健指導値 | 受診推奨値 |
---|---|---|
30~149 | 150以上 | 300以上 |
エネルギー源として糖質が貯蔵用に変化した脂肪のことです。蓄えが多すぎると肥満や脂肪肝になります。糖分の摂り過ぎや運動不足で増え、悪玉コレステロールを増やし動脈硬化を進行させてしまいます。
上記から分かるように、コレステロールや中性脂肪の値というは相互に関係していますので、悪玉コレステロールだけが危険なのではなく、総合的にチェックする必要がります。

動脈硬化は脳梗塞、虚血性心疾患、腎不全、肝硬変、糖尿病など、命に関わる危険な病気に進行する可能性がありますので、バランスのとれた食生活や運動の習慣化が非常に大切です。
LH比
これは、LDL-コレステロール値をHDL-コレステロール値で割って算出した比率のことです。
昨今、この値の重要性が言われるようになり、検査機関によっては血液検査の結果にLH比というものを記載するようになりました。
LH比(LDL÷HDL) | 管内の状態 |
---|---|
1.5以下 | きれいで健康 |
1.5~2.0 | 正常 |
2.0以上 | コレステロールが蓄積 |
2.5以上 | 血栓がある可能性がある |
LH比については、これに基づく脂質異常症や高コレステロール血症の治療ガイドラインがあるわけではありません。しかし、学術論文や学会報告などの結果から、以上のような指標として捉えると良いでしょう。
コレステロール値を下げる効果が期待できる青汁

青汁商品の中には『コレステロールを下げる。』『悪玉コレステロールを抑える。』と謳っているものがありますが、ネットの情報を見ると『全く効果がない。』『根拠がない。』という声も見ることが出来ます。
結論としては、特定保健食品(トクホ)、そして機能性表示食品に区分される青汁において”コレステロールを下げる”と明記している青汁の場合、そのほとんどで科学的根拠や試験結果などの情報が開示されていますから、コレステロール値を下げる効果は期待できるでしょう。
特定保健用食品(トクホ)
いわゆるトクホ(特定保健用食品)ですが、その商品がうたっているその機能や有効性については、国(消費者庁)が審査をし許可した商品となっています。
生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品で、消費者庁長官の許可を得て特定の保健の用途に適する旨を表示できる食品です。
(中略)通常、特定保健用食品は有効性・安全性を消費者庁が個別に審査します。有効性の証明として、査読※A付きの研究雑誌に掲載されることが条件となっています。また定められた試験機関によって関与成分の含有量の分析試験も行われます。こうした審査を経て認可された食品は特定保健用食品として【図1】のマーク※Bと、特定の保健機能について表示することができます。※A…論文掲載前の研究者仲間や同分野の専門家による評価や検証のこと。
引用:特保(特定保健用食品)とは? | e-ヘルスネット(厚生労働省)

トクホの青汁商品でコレステロールの有効性をうたった文言例
実際に対象となる青汁商品の販売ページなどをチェックして、どのように有効性について明記(表現)しているのか確認してみました。
- LDL(悪玉)コレステロールが気になる方へ
- コレステロール値が高めの方へ
- コレステロールを下げる
- コレステロールの吸収を抑えるキトサン配合
- LDL(悪玉)コレステロールを低下させる

それぞれ多少なりとも言い方は異なりますが、実際に確認した限りでは、前後の文脈を踏まえても”コレステロール値が下がる”と解釈できる表現方法でした。
エビデンス(試験結果など)の確認
特保(トクホ)に関しては査読(論文掲載前の研究者仲間や同分野の専門家による評価や検証のこと。)付きの研究雑誌への掲載が条件とあり、消費者に向けての開示義務はないのですが、各社積極的に試験結果などのエビデンスは公開されています。

例えばトクホの青汁「緑でサラナ」のページを見てみると、このような試験結果が公表されています。
機能性表示食品
機能性表示食品とは、事業者の責任において科学的根拠を基に商品パッケージにその機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品のことです。
機能性表示食品と特定保健用食品(トクホ)の違い
保険機能食品 | 国の査 | 科学的根拠の公開義務 | 対象成分 |
---|---|---|---|
機能性表示食品 | なし 事業者の責任で消費者庁に届け出が必要 | あり | 身体の中で成分がどう働いているか仕組みが明らかになっている成分 |
特定保健用食品(トクホ) | あり 消費者庁長官が許可 | なし | ビタミン13種 ミネラル6種 脂肪酸1種 |
国の許可が必要ないという所から、信頼性の面で消費者の安心感はトクホに劣るものの、機能性表示食品の青汁商品の中にも、上の基準を満たしコレステロールを下げる効果があることが示されている青汁商品があります。
例としてDHCから発売されている「キトサンと葉酸がとれるよくばり明日葉青汁」の公式サイトと見てみると、以下のような記載が見られます。

キトサンの効果について
コレステロール値を下げるとうたっている青汁のほとんどにキトサン配合という文字がありますが、キトサンとは、カニやエビの殻に含まれている主成分であるキチンを加工することで作られる不溶性食物繊維のことです。
このキトサンには、コレステロール値を正常にしてくれるという効果があると言われています。胃酸によって溶けたキトサンが、コレステ一ルを主成分とし胆汁酸と小腸で結合して、それを体外に排出するのです。
つまり、青汁でコレステロール値が下がるといのは、特定保健用食品または機能性表示食品であり、キトサンを主とした、コレステロール値を下げるという有効性がうたえる成分が配合されている青汁に限る、という事です。
どれ位効果があるのか?
ただし、キトサン配合などのいわゆる”コレステロール値を下げる”とうたっている青汁商品について、その効果や有効性における過剰な期待はしない方が良いでしょう。

科学的根拠(試験結果)などが公開されてはいますが、試験のやり方や前提条件などがあいまいな部分が多々ありますので、青汁はあくまで補助的な役割程度に捉えておくようにしましょう。
実際、先ほど紹介したサンスター「緑でサラナ」の試験結果を見てもらうと分かりますが、12週経過後の比較で見ると、青汁を飲んだ場合との血清LDL-Cの値の差は、約4~5mg程度にとどまっています。
以上、特定保健用食品(トクホ)と機能性表示食品にはコレステロール値を下げる効果が期待できる商品があることが分かりましたが、青汁でコレステロール値を下げたい方にとって選ぶべき商品は、
特定保健用食品(トクホ)でかつエビデンスを積極的に開示し、有効性が明記されている青汁商品
が、最も信頼性が高くおすすめできます。
悪玉コレステロールを下げる食べ物・飲み物

悪玉コレステロールを下げたい方が青汁だけに頼ってはいけません。特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品の青汁を飲むのはあくまでコレステロールを下げるためのサポートであって、抜本的な改善としては運動、そして食生活の見直しが大切です。
そこで、以下に悪玉コレステロールを下げる食べ物や飲み物を幾つか紹介しておきます。
野菜・海藻
野菜や海藻には食物繊維が含まれていて、コレステロールを吸着して排泄を促すはたらきがあります。また、食物繊維はお腹の中で膨張して満腹感を生み出します。食べ過ぎによってコレステロールを過剰摂取するリスクが減るのもメリットです。
大豆製品
大豆に含まれているタンパク質には、LDL(悪玉)コレステロールの吸収を抑える働きがあります。納豆や豆腐、豆乳などは、手軽に食生活に取り入れることが出来るかと思います。
オリーブオイル・亜麻仁油・エゴマ油
オリーブオイルや亜麻仁油、エゴマ油などの不飽和脂肪酸を多く含む油は、LDL(悪玉)コレステロールを下げるとされています。油はハイカロリーなので料理などで使用している”飽和脂肪酸”が多いサラダ油やと置き換える方法がおすすめです。
青魚
鯖(サバ)や鮪(マグロ)、鰯(イワシ)や秋刀魚(サンマ)などにはDHAやEPAが多く含まれています。これらも不飽和脂肪酸で、LDL(悪玉)コレステロールを下げるのに良いとされています。お肉中心の場合、青魚に置き換える事がコレステロール対策になります。
飲むタイミングはいつがベストか?
特定保健用食品や機能性表示食品など、いわゆる保健機能食品に属する食品の場合、各社、目安量や飲み方についてはしっかりと記載があるのがほとんどです。販売ページを参照すると、どのタイミングで飲むと良いのかが分かります。
各社のコレステロールを下げる青汁を飲むタイミングについての案内
コレスケア キトサン青汁(大正製薬)
特に時間を選ばずお召し上がりいただけますが、毎食後など、時間を決めていただくと飲み忘れを防げるため、より効果が出やすいと考えられます。
引用:コレスケア よくあるご質問 │ Livita-Life | 大正製薬
明日のあなたにあしたば生活(フレシャス)
キトサンは、胃腸の中で他の食物と一緒になることで効果を発揮するので、食事と一緒もしくは食後などがおすすめ。寝る前に飲むのも○。
引用:コレステロールケアにキトサン配合の青汁!|フレシャスレーベル
緑のサラナ(サンスター)
お薬ではなく食品ですので、飲む時間に決まりなどはございませんが、習慣にしていただくため、朝食時やおふろ上りなど、時間を決めてお飲みいただくことをおすすめしております。
引用:【公式】サンスター 緑でサラナ980円モニター募集 | サンスター公式通販
各社のよくある質問ページで確認すると、食事と一緒のタイミングをすすめていることが分かります。

青汁は継続して飲み続けてこそ効果が期待できるものなので、やはり食事と同時に飲むようにすれば忘れにくいのでおすすめです。
まずは自身のコレステロール値などを把握して、栄養バランスの取れた食事や運動を習慣化させることが重要です。その上でこのページで紹介した青汁商品の力を借りるようにするのがベストなコレステロール対策だと思います。
参考文献(References)
※1 コレステロールについて 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 https://www.nibiohn.go.jp/eiken/kenkounippon21/download_files/other/topics_03.pdf
※2 検査表の見方 – 日本人間ドック学会 https://www.ningen-dock.jp/public/method
※3 標準的な健診・保健指導プログラム – 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/tokuteiout/pdf/03.pdf