メスを使う最新FUT植毛の術中&術後の痛みはどれくらいか被験者にインタビューしたが「大した痛みではない」と即答された

植毛手術後の痛みに耐える男性
この記事に書いてある事
  • 手術時の痛みは麻酔を打つ時だけで後は無痛
  • 手術後数時間もしないうちに麻酔が切れるので痛み止めを飲んでやりすごす
  • 抜糸をする10日後くらいまでは「特性枕」が必要。自作可
  • 縫合した後頭部の「つっぱり感」は2か月くらい続くが痛みは一切無い
  • 経験者曰く「FUTで痛かった記憶は一切ない」。人体の不思議に迫る

自毛植毛手術には、メスを使わない古い術式であるFUE法と、メスを使って後頭部の頭皮を薄く切開して毛根ごと剥ぎ取るFUT法(植毛では最新の術式)の2つの術式があります。

今回の記事の主役であるメスを使うFUT法は、痛みや術後の傷跡などのリスクについて、古い術式であるFUEを採用している植毛クリニックからネガティブに叩かれることが多々あります。でも実際にFUTとFUEの両方で手術を受けた事がある患者さんにしか真実は分からないはずです。

FUT(ドナーストリップ法)
FUT法の概要イラスト

そこでこの記事では、植毛をすでに2回し、FUT法とFUE法の両方の経験がある当院の毛髪診断士さんに、実際どれくらいの痛みなのか赤裸々に語っていただこうと思います。

この記事の執筆者

内科総合クリニック人形町 院長 藤田 英理(総合内科専門医)

藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長

東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。

所属:日本内科学会日本動脈硬化学会日本頭痛学会

医師略歴・プロフィールはこちら

目次

手術時の痛みは麻酔を打つ時だけで後は無痛

院長 藤田

よろしくお願いいたします。まず、FUT法での手術中の痛みについて教えてください。

AGA治療歴25年

手術方法にかかわらず、自毛植毛では後頭部から元気な毛髪を採取する前に麻酔を打つので、手術中は無痛です。ただし、後頭部に十数か所麻酔を打つので、麻酔針が後頭部に刺さる時はそこそこ痛いです。

毛髪診断士

解説いたします

私は植毛を2度受けていて、1度はFUT、もう一度はFUTとFUEのハイブリッド植毛でした。なので、FUTもFUEもどれくらいの痛さなのか良く分かっています。

両者の痛みの違いは術後に現れる(後述します)だけで、手術中の痛みはどちらも全く一緒で、麻酔注射の痛みだけです。

麻酔注射

しいてどちら(FUTかFUEか)が手術中に痛いかというと、ほぼ差はないですが少しだけFUEのほうが痛み的なものを感じるかも知れません。

FUEは通称「パンチ」と呼ばれる医療器具で後頭部に小さな穴を開けながら直接毛根を採取するので、本当にほんの少しだけ痛み(※)らしきものを感じます。
※「痛い」というものではなく「何かやってるな」と感じる程度です

FUE植毛 パンチ

メスを使うFUTのほうは、麻酔をしている状態なので、メスで後頭部をカットしますが痛みは一切感じないし、メスで切っているのが今だったのか今さっきだったのかは全然分かりません。つまり無痛と思ってもらって結構です。

麻酔注射の痛みは、FUEもFUTもどっちも同じです。麻酔を打つ本数も大差はなく、虫歯治療の時に歯医者で打つ麻酔注射よりは痛くはないです。なので、MAXに痛い場合でも「歯医者よりは痛くない」と認識しておけば大丈夫。

ただし、側頭部への麻酔はそこそこ痛いです。

メスを使わないFUE法は、FUT法と違って側頭部からも毛髪を採取できるのが大きなメリットですが、いわゆる「鉢(はち)」と呼ばれる側頭部への麻酔注射は結構痛いので、側頭部からFUE法で髪の毛を採取する際はそこだけは覚悟しておいてください。

側頭部の麻酔が痛いゾーン

手術後半日もしないうちに麻酔が切れるので痛み止めを飲んでやりすごす

院長 藤田

なるほど、歯の治療時の麻酔注射よりは痛くないというのは朗報ですね。続いてお聞きします。FUTでの手術後の痛みはどうですか?

AGA治療歴25年

手術が終わって5時間もしないうちに麻酔が切れるので、痛みはかなり出ます。ここはFUTの弱点ですね。ただし、痛み止めを飲めば耐えられないような痛みではないです。

毛髪診断士

解説いたします

頭皮をメスで切開して、その後に縫い合わせるので、麻酔が切れると当然痛みがあります。

「どれくらい痛いの?」

と言う質問が当然出ると思います。「痛み止めを飲むので実際どれくらい痛いのかよく分からない」というのが正直な感想というか答えです。

麻酔が切れてボルタレンやロキソニンなどの痛み止めの飲み薬を一切飲まないのであれば、間違いなくかなり痛いと思います。

痛み止めのロキソニン

ただ、麻酔が切れてきたと感じ始めた時に、速攻で痛み止めを飲んでしまうので、「痛み止めを飲んだ状態でどれくらい痛いのか」しか答えられないです。

眠れないほどの痛みではないので怖がる必要はありません

手術を受け後は、植毛クリニック側がホテルを用意してくれ、そこに無料で宿泊(帰ってもいいのですが術後検診が翌日に必ずあるので泊まったほうがいいです)、痛み止めを飲みさえすればちゃんと眠れます。

痛み止めは、副作用として強烈な眠気を誘発するので、私の場合はそのまま寝てしまいました。

ただし、痛み止めは最大でも6時間程度しか効果が持続しないので、効果が切れる1時間前くらい、つまりロキソニンなどを飲んで5時間くらい経過したら徐々に痛みが出始め、その痛みで目が覚めてしまいます。

医者は立場上「痛み止めは1日3回まで。8時間の間隔を開けてください。」と一応説明してきますが、どんなに優れた痛み止め薬でも8時間も効果は持続してくれません。

「私はかなりの痛がりなので痛み止めを多めに処方してください。」

と頼めば、阿吽(あうん)の呼吸で痛み止めを多めに処方してくれます。医者も痛み止めが8時間も継続しない事を知っているので。

術後4日目に入る前くらいに痛み止めは不要になりました

私は術後3日間ちょっとは下記のようなペースで痛み止めを飲み、4日目に入る前に痛みが引いたので服用をやめました。

  1. 術後3時間経過時に1錠
  2. 手術後1日半経過時までは5時間置きに1錠
  3. 1日半後2日目半くらいまでは6時間置き
  4. 3日目半くらいまでは8時間置き
  5. 術後3日半くらい経過以降は痛みが引いたので服用停止

抜糸をする10日後くらいまでは「特性枕」が必要。自作可

院長 藤田

手術後はどうやって寝ていたんですか?そのまま仰向け(上向き)に寝ると後頭部が枕に当たり痛そうな気がするのですが。

AGA治療歴25年

10日くらいは、バスタオルをクルクル巻いて特性の枕を自作して寝ていました。あとは、普通に横向きに寝たりとかですね。正直熟睡は出来なかったです。

毛髪診断士

解説いたします

実物を見せたほうが早いと思うので再現してみます。

自製のバスタオル枕
自製のバスタオル枕

バスタオルを縦に半分に折って重ねてから、あとはクルクル巻くだけです。15秒もあれば完成します。この自家製バスタオルを後頭部の先の方の下に敷いて寝ます。そうすることで後頭部中央付近の傷に枕が当たらずにすみます。

私は手術後1週間ちょっとくらいまでは、この自家製枕で寝たり、あるいはソファで横向きになって寝てたりしていましたが、元々横向きや伏せて寝る人であれば患部が枕に当たることはないので普段どおりに寝れば大丈夫です。

なお、植毛クリニックの方針にもよりますが、頭皮に溶け込むタイプの糸を使わないクリニックだと術後10日くらいで抜糸する必要があります。

その頃(術後10日)になっていれば柔らかい枕であれば普通に仰向けに寝ても痛みが出るようなことはなくなっているので、10日経過して抜糸した後は普段の生活に戻れます。

縫合した後頭部の「つっぱり感」は2か月くらい続くが痛みは一切無い

院長 藤田

メスを使うFUT植毛は、切開した頭皮を縫い合わせるので「つっぱり感」が出ると言われていますが、実際どうでしたか?

AGA治療歴25年

つっぱり感は出ますね。2-3か月くらいは続くと思います。ただ、それも慣れてくるのでつっぱっている事は1か月もしないうちに忘れてしまいますね。

毛髪診断士

解説いたします

FUT法の場合、頭皮を1.2cm幅くらい切開し、その後縫い合わせます。

頭皮がなじむまでは無理矢理引っ張り合うので「つっぱり感」は出てしまいます。

ただ、これもすぐに慣れますね。FUT植毛のライバルであるFUE系の植毛クリニックの公式サイトを見ると「つっぱり感が出ます」と強調して書いていますが、体験者なら分かると思いますが、大したことはないです。

もう一つ付け加えると、メスを使わないFUEも術後に痛みがしばらく残ります。

鋭利な針のような医療用器具で頭皮に1,000箇所ぐらいの穴を開けるので、痛みは当然残ります。FUEもFUTも経験ありの私からすれば、「どっちもどっち」です。

  • チクチクした痛みが残るのがFUE
  • つっぱり感が2-3か月残るのがFUT

こんな感じです。

しいてFUTとFUEどっちが痛いかと聞かれたら、「少しだけFUTのほうが痛い気はするけど」が正直な感想。メスを使うFUTでも痛み止めさえ飲めば翌日も普通に生活できるので「大した痛みでは無い」と思っていただいて大丈夫です。

安心 ハートマーク 四つ葉のクローバー

外科手術経験者だけが知っている「術後48時間の地獄」は植毛にはない

私はかつて、鼻、肺、肩の手術など、全身麻酔をした外科手術を計5回経験しています。

経験者なら知っていると思いますが、外科手術後の48時間は生き地獄です。めちゃくちゃ痛いです。経口薬(飲み薬)での痛み止めではとても痛みを和らげることができないので、痛み止め(モルヒネ)の注射を打ったりします。

痛み止めの注射 モルヒネ
モルヒネ

夜が長く、いつになっても朝が来ません。痛みのあまり、皆が寝静まっている病棟でも、痛みに耐えられず低いうめき声をあげることもしばしばあり、1分が1時間くらいに感じられます。

それに比べれば、FUT法(自毛植毛)の痛みは、外科手術の地獄の48時間に比べれば屁みたいなものです。

別の例を出すと、痛みとしては、親知らずを抜歯したときの方が全然痛いと思いますよ。私も親知らず3本抜いて、今でもよく覚えています。術後に麻酔が切れたら両顎がパンパンに腫れあがって、尋常じゃないくらい痛かったです。

大きめの外科手術 >>> 親知らず抜歯 >> FUT ≧ FUE

「痛さの順」は上記の感じでしょうかね。参考までに。

経験者曰く「FUTで痛かった記憶は一切ない」。←人体の不思議に迫る

院長 藤田

赤裸々にありがとうございました。総括すると「多少痛みはあるけれど、それほど大袈裟に考えるほどではない」と言ったところでしょうか。

AGA治療歴25年

そのとおりですね。それと、植毛してから3年も経っておらず、そこそこ痛かったはずなのに、どれくらい痛かったか今では完全に忘れてしまっています。なので次受ける植毛もメスを使うFUTでいくつもりです。

毛髪診断士

解説いたします

大きな外科手術の時の「術後の地獄の48時間」は良く覚えているし、親知らずを抜いた後の痛みも良く覚えています。それなにメスを使って後頭部を切開するFUT植毛での痛みは、正直ほとんど忘れてしまいました。

術後3日ほどはある程度痛かった記憶は今も少しだけ残っています。でも、トラウマになるような痛みではなかったためなのか、今となっては

「うーん、痛かった記憶は少しあるんだけど、そんな大騒ぎするようなものじゃなかったよなあ。」

と言うのが正直な気持ち。

メスを使わないFUE法に比べればメスを使うFUT法のほうが痛みがやや強いことは確かですが、かと言って「FUTは痛いよ!」と言うほどのものでは決してありません。

人体って不思議なもので、快楽はずっと覚えていても、トラウマになるような痛みでない限りは、過去の痛みはわりとすぐに忘れてしまいます。

忘れた 不思議

植毛は薄毛対策の切り札の一つなので、あなたもきっと検討することになるでしょう。そして、その検討段階において「FUTは痛いからFUEのほうがおすすめ」みたいな記事を見かけると思います。

しかし、両方を体験した私からすれば、多少FUTのほうが痛いのは事実とはいえ、大した差はないですので怖がることはありません。

そんな意味のほとんど無い部分で両者の術式を比較するのではなく、傷跡の総面積だったり、ドナーロスだったり、もっと他に目を配って真剣に考える要素があるので、植毛を検討する際は「痛み」についてではなく、他の要素で冷静に判断してください。

以上

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