こんばんは。総合内科専門医の藤田です。
青汁はビタミン・ミネラル・食物繊維など多くの栄養素を含んでいるため、これから健康維持・増進のためのサポート食品として取り入れたいと考えている方も多いでしょう。
しかし、青汁を飲むにあたってはメリットだけではなくデメリットも存在しますので、両者をよく理解してから摂取しないと十分な効果が得られなかったり、かえって逆効果になってしまうことがあります。
そこでこのページでは、青汁のメリットとデメリットを詳しく解説します。両者ついて理解できれば、自分に合ったベストな青汁を選ぶことができ、より健康効果が期待できることでしょう。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
青汁のメリット
青汁のメリットについて以下に紹介しています。
多くの栄養素が含まれ、野菜不足のサポートになる
野菜には主に ビタミン、ミネラル、食物繊維(不溶性食物繊維・水溶性食物繊維)などが含まれていますが、青汁も同様にこれらの栄養素が含まれています。
しかし、同じような種類の栄養素が含まれているとはいえ、青汁だけで「1日に目標とされる野菜の摂取量 350g(緑黄色野菜120g/その他の野菜230g)※1」に含まれる栄養素「量」と同じ量は摂れません。
青汁にも1日の摂取目安量というものがあり、例えば代表的な粉末タイプの青汁の場合、1日1~3杯程度(3g~12g)が目安となりますが、その目安に含まれる栄養素「量」というのは、1日の野菜摂取目安である350g分に含まれる栄養素「量」と比較すると遥かに及びません。
ただし、1日の野菜摂取”不足分”のサポートと考えた場合、青汁というのは非常に有効です。
厚生労働省HPにある「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要※2」によると、平均野菜摂取量は1日約 280g とありますので、あと 70g の野菜を足せば1日の目標野菜摂取量に届くことになります。
そこで、以下のような比較をしてみました。
70gの生野菜と1日分の青汁に含まれる栄養素量の比較
青汁は野菜の代替にはなりませんが、サポート食品としては大変優秀な健康食品だと言えますね。
栄養素 | ミニトマト 70g | きゅうり 70g | レタス 70g | 粉末青汁 2袋6g/1日分 |
---|---|---|---|---|
ビタミンA | 56㎍ | 19.48㎍ | 14㎍ | 36㎍ |
ビタミンE | 0.63mg | 0.20mg | 0.21mg | 0.264mg |
ビタミンK | 0.49㎍ | 23.65㎍ | 20.3㎍ | 66㎍ |
ビタミンB1 | 0.07mg | 0.021mg | 0.035mg | 0.011mg |
ビタミンB2 | 0.07mg | 0.021mg | 0.021mg | 0.033mg |
ビタミンB6 | 0.07mg | 0.035mg | 0.035mg | 0.021mg |
葉酸 | 24.5㎍ | 17.39㎍ | 51.1㎍ | 6㎍ |
ビタミンC | 22.4mg | 9.74mg | 3.5mg | 0.78mg |
ナトリウム | 0.28mg | 0.69mg | 1.4mg | 34.667mg |
カリウム | 203mg | 139.16mg | 140mg | 102mg |
カルシウム | 8.4mg | 18.09mg | 13.3mg | 38.4mg |
マグネシウム | 9.1mg | 14.7mg | 5.6mg | 6.6mg |
鉄 | 0.28mg | 10.43mg | 0.21mg | 0.33mg |
食物繊維 | 0.98g | 0.76g | 0.77g | 2.832g |
この表にある生野菜については、『あと70gどうやって摂取しようかな?』と思った時に比較的手を出しやすいものを選んでみました。また、粉末青汁の列にある緑マーカーは、70gの生野菜たちよりも含有量が多いものに引いています。
どうでしょうか?もちろん例外もありますが、青汁は生野菜たちに引けを取らない量の栄養が含まれていることが分かります。
手軽に摂取できる
例えば上で例に挙げたミニトマト、きゅうり、レタスをはじめとした「生野菜70g」という量は、いざ『食べよう!』と思っても冷蔵庫になかったり、実際に食べるとけっこうな量だったり、以外と手間と労力がかかることに気が付くと思います。
その点青汁であれば、粉末タイプのものであればコップに粉末を入れて水に溶かして飲むだけなので本当に手軽です。冷凍タイプだとしてもボールにお水を溜めて数分で解凍できるので、やはり便利です。
便利で手軽ということは継続するにあたってとても重要です。また、アレンジにも向いていて、牛乳やヨーグルトに混ぜておいしく頂くことも出来ます。
また、毎日の料理にも活用できます。普段の料理に青汁粉末を混ぜるだけで”より栄養価の高いおかず”を食卓に並べることが出来ます。
こちらの記事で紹介しているレシピは、管理栄養士の方に提案してもらったもので、しっかり栄養バランスが考えられています。ぜひ参考にしてみて下さいね。
1日たった数十円から始められる
青汁は金銭的なハードルが低く、取り組みやすいのが魅力です。
たくさん青汁商品はありますが、平均して1杯あたり約30円~130円程の価格です。ジュースやコーヒー1杯よりも安い価格で毎日の栄養サポートを行えるのでコスパが高いですね。
商品によっては定期購入や初回割引、おためし価格、複数割なども行っています。
牛乳や豆乳などと混ぜることで栄養素がアップする
青汁に含まれる栄養素の中には、他の栄養素と組み合わせることで栄養をより効果的に吸収する、あるいは相乗効果をもたらすものもあります。
例えば、ビタミンDを豊富に含む豆乳を青汁と組み合わせることで、カルシウムの吸収率がアップします※3
また、もっともカルシウム吸収率が高いとされる牛乳と組み合わせて摂取するという方法もあります。
牛乳はカルシウムの他にも、三大栄養素(たんぱく質・脂質・糖質)やカルシウム、ビタミンA、ビタミンB2を豊富に含むため、幅広く栄養素を摂取するのにも役立ちます。※4
青汁のデメリット
青汁はおおよその人にとってメリットがある食品ですが、一部の方は注意が必要です。
毎日続けないとあまり意味がない
青汁は薬とは違い、あくまでも健康食品ですから、飲んですぐに効果が期待できるものではありません。毎日飲み続けることで少しずつ効果が実感できるようになるでしょう。
青汁に含まれる栄養素は野菜とほぼ同じですから、継続して飲むことで期待される効果は、1日に必要な野菜の不足量を補うことで期待できる効果と近いものがあります。
毎日青汁を続けるためには、自分の飲みやすい味や形状の青汁を選んだり、食事の前後など決まった時間に取り入れルーティン化するなどの試みが有効です。水に溶かしてすぐに飲める粉末タイプの青汁が手軽でおすすめです。
過剰摂取に注意
青汁は商品によって配合されている栄養の種類や量のバランスに違いがあり、一般的な青汁の平均値よりも多くの栄養素が含まれている商品もあります。
青汁1杯を摂取した程度では栄養の過剰摂取になることは考えにくいですが、1日の摂取目安を超えて大量に飲んだり、他の食物で該当する栄養素を多量に摂取してしまう可能性には注意が必要です。
特に気を付けたいのが、腎臓に疾患のある方、ワルファリンを服薬している方、C型肝炎の方など、特定の栄養素の摂取を制限するべき方は過剰摂取に繋がる可能性があるため、使用前に医師に相談するなどしてください。※5※6※7
味が苦手なケースも
ひと昔前に比べると青汁は本当に飲みやすくなりましが、今でも商品によっては『原材料本来の風味を味わえる。』といったコンセプトで販売しているものもあり、独特の苦味や青臭さが美味しくない…といったことになる可能性もあります。
一般的に粉末タイプやドリンクタイプは、スッキリとしていて飲みやすい傾向にありますが、冷凍タイプの青汁は独特の青臭さとしっかりとしたのど越しがあり苦手な方が多いと思います。
ジュースや牛乳と混ぜると青汁独特の味や風味が緩和されます。苦味が苦手だという方は、甘味のあるりんごジュースやオレンジジュースで割ると良いでしょう。豆乳やはちみつに混ぜても、青菜独特のクセが緩和され飲みやすくなります。
また、青汁商品の中にはフルーツ青汁というものがあり、りんごやぶどう、いちこ、レモンなどの味が強いので青汁という感じはほとんどないと思うので、こういった商品を検討してみて下さい。
溶けにくいことがある
粉末青汁の場合は、水に溶けにくくダマになってしまうといったことがよくあります。そういった場合には、ぬるま湯で溶かす、シェイカーを使用することでいくらか溶けやすくなるでしょう。
しかし、熱湯で溶かしてしまうと、熱によって栄養成分の働きが失われてしまうことがあるため、人肌程度のぬるま湯にとどめてください。
青汁が向いている人、向いていない人
栄養バランスの摂れた食事を摂った上で、足りない栄養素をサポートする形で青汁を取り入れたいと考えている方にとって、青汁は最適な栄養食品です。
しかし『青汁を飲めば野菜は食べなくても良い。』と考えている方には青汁は向いていません。
また、青汁のパッケージの注意書きにあるように、医師に特定の栄養素の摂取の制限をされている方、薬(特にワーファリン)を服用中の方は青汁は向いていないと言えます。
ワーファリンは血液を固まらせるビタミンKの働きを抑え血液を固まりにくくする薬です。なので、ワーファリン服用中にビタミンKを含む青汁を摂取し過剰摂取になってしまうと、ワーファリンの効果が弱められてしまいます。
その他、青汁は毎日飲んでこそ効果が期待できるものなので、そういったルーティンが苦手な人には難しいでしょう。
まとめ
青汁は野菜と同様にビタミン・ミネラル・食物繊維をはじめとして多くの栄養素を含み、手ごろなお値段で日々の生活に取り入れやすい商品がたくさんあります。
しかし、青汁にはメリットとデメリットがあり、青汁商品によって異なる特性を持つ場合もあります。満足度の高い使用感を得たいのであれば、青汁の特性や、自身が利用する商品の情報(栄養成分表示や注意書き)をチェックし、適切に理解した上で飲むことをおすすめします。
推奨量を守る、安全でその効果について国に許可を得ている特定保健用食品(トクホ)を選ぶ、相乗効果を持つ食品と組み合わせて飲む、といったことなどができれば、健康的な生活の頼もしい味方になってくれることでしょう。
参考文献(References)
- 1 日本人の食事摂取基準(2020年版)|厚生労働省
- 2 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要|厚生労働省
- 3 足立香代子 著『決定版 栄養学の基本がまるごとわかる辞典』(2015)|株式会社西東社
- 4 日本食品標準成分表2020年版(八訂)|文部科学省
- 5 C型肝炎と鉄代謝|J-STAGE
- 6 健康食品の青汁を摂取し,高カリウム血症にて搬送された1例|J-STAGE
- 7 青汁製品中のビタミンKの分析|J-STAGE