
こんばんは。内科総合クリニック人形町 院長の藤田です。
むだ毛の自己処理は時間と手間がかかるため、レーザーを用いた永久脱毛(医療脱毛)を検討されている方も多いことと思います。
永久脱毛を行えば、ムダ毛を気にすることなく日々の生活が送れる大きなメリットがあるものの、料金が高い、痛みを伴うなどのデメリットも存在します。
この記事では、医療レーザーを用いた永久脱毛のメリットとデメリット、サロン脱毛と医療脱毛のメリットとデメリットについて解説しています。
また、「ワキガになる」「汗が増える」といった脱毛にまつわるさまざまな噂の真偽についても、科学的根拠に基づきわかりやすく回答しました。
※「脱毛」は本来自宅で行うカミソリやクリーム等を用いた一時脱毛のことも含まれますが、今回の記事では「脱毛」=サロンや医療機関で行う脱毛のことを指しています。
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脱毛するメリット、自己処理とのちがい
医療レーザーを用いた永久脱毛にはどのようなメリットがあるのか、永久脱毛と自己処理脱毛とを比較しながら解説していきます。
自己処理で肌を傷つけることがなくなる
ムダ毛の自己処理(主に自宅でカミソリ・クリーム・毛抜き等を使用して行うもの)は、現在生えている(目に見えている)毛を一時的に処理するため「一時脱毛」とも呼ばれています。

自宅でのムダ毛処理は多くの方が行っている方法かと思いますが、皮膚や毛穴に物理的なダメージを与えてしまうため、下記のようなリスクが懸念されます。
ムダ毛の自己処理 肌への負担リスク
- 毛穴への刺激により毛が太くなる
- 皮膚に炎症が起こる
- 色素沈着が生じる

脱毛すると自己処理の頻度が少なくなり、肌や毛穴への刺激を抑えられます。
毛穴が目立ちにくくなる
カミソリや除毛クリームを用いたムダ毛の自己処理は、皮膚の表面に顔を出している毛幹部分を取り除くだけなので、処理後も皮膚に埋まっている毛の黒さが目立つ場合があります。
特に毛が太い方の場合、自己処理後も毛穴の黒っぽさが目立ちやすくなります 1)。
また、毛抜きでの自己処理は毛を毛根から引っこ抜く方法ですので、毛穴に炎症が起こってしまい、毛穴が赤く目立ってしまうことがあります。毛抜きによる炎症が繰り返されると、毛穴への色素沈着が懸念されます 2)。


永久脱毛はムダ毛を根本からなくすため、脱毛後も黒っぽさは残りません。毛抜きのように繰り返し毛穴を傷つけることもないため、毛穴の色素沈着も防げます。
肌がキレイに見えるようになる
医療レーザーを用いた永久脱毛では、毛穴から毛が無くなることで肌がきれいに見えるようになるメリットもあります。
また、自己処理による毛穴や皮膚への継続的な負担がなくなると、炎症や色素沈着防止に繋がります。

脱毛に利用されるレーザーは、脱毛効果以外にも、毛穴を引き締めたり、皮脂の分泌を抑制したり、お肌のきめを細かくしたりといった美肌効果が期待され、さまざまな美容施術に利用されています 3)。
脱毛後はムダ毛処理にお金をかけなくて済む
ムダ毛の自己処理を続けていく場合、脱毛用品や皮膚のケア用品などに毎回お金がかかり、一生涯それを続けていくとなると消して安くはない金額となります。
対して永久脱毛は、通い終わったあとのムダ毛の自己処理の頻度が大きく減り、レーザーを照射した回数が多い場合はお手入れがほとんど必要なくなります。

脱毛すると、将来的にムダ毛の自己処理にかかる費用がぐっと少なくなります。
顔脱毛はお化粧のノリがよくなる
顔に産毛が生えていると、ファンデーションが上手く肌に密着せず化粧崩れの原因となります。
顔の産毛除去はシェーバーやカミソリを使えば自分でも行えますが、顔は皮膚が薄く敏感な部分。肌荒れや炎症に十分注意する必要があり、頻繁なケアは避けるべきです。
うぶ毛の完全な脱毛には通院回数が多くなる(8回以上)傾向があり、時間はかかりますが、脱毛後は顔の皮膚にダメージを与えずに過ごせます。

脱毛により産毛が薄くなる・無くなると、お化粧のノリを良くするだけでなく顔色のトーンアップも期待できます。
顔脱毛を詳しくみる

脱毛のデメリット
メリットづくしのように思える脱毛ですが、デメリットも存在します。以下に脱毛のデメリットと、必要な対策をまとめました。
脱毛照射には多少なりとも痛みが伴う
医療レーザー脱毛は、毛に含まれるメラニン色素(黒い色素)に吸収される特殊な光を照射し、毛を作り出す細胞ごと破壊する仕組みです。
このとき熱が伴うため、毛穴の周辺には熱による痛みが生じます 2)。
脱毛時の痛みはレーザーの威力が大きいほど、対象となるメラニン色素が濃いほど、また、皮膚が薄い部位ほど痛みを強く感じやすくなり、非常に苦痛に感じる方もいます。

痛みがとても苦手な方は、麻酔を使用して脱毛が受けられます。また、制毛・抑毛が目的のエステサロン脱毛を選択する選択肢もあります。
脱毛の痛みについて詳しくみる

一度では完了しないため、一定期間通う必要がある
医療レーザー脱毛は、一度しただけでムダ毛が生えてこなくなるわけではありません。
一度の通院ではなぜ終わらないのでしょうか。それは、1本1本のムダ毛にはそれぞれに毛周期と呼ばれる生え変わりのサイクルがあり、医療レーザーが反応するのは「成長期」にあたる毛のみだからです。
私たちの皮膚に毛穴は無数存在しますが、目に見えている毛は全体の10%~20%にしか過ぎません。
ほとんどの毛は埋まっているか、毛穴が活動せず眠っている状態です。眠っている毛穴は時期が来るとまた毛の成長がはじまります 4)。
レーザー脱毛は、毛のメラニン色素に反応させる施術のため、毛の生えていない毛穴にレーザーを照射しても意味がありません。
つまり、それぞれの毛穴に毛が完全に生えるタイミングに合わせて複数回脱毛を行わなければいけないということになります。

毛周期は体調や体質による個人差や部位により異なりますが、ムダ毛の処理をラクにするためには最低でも3回、一般的には5回程度の通院が必要です。
医療脱毛の回数を詳しくみる

全身脱毛は完了までにまとまった費用がかかる
ワキ脱毛だけなら数千円~1万円程度でできるのですが、全身の脱毛を行うとなると15~20万円程度かかり、VIO脱毛や顔脱毛を追加するとなるとさらに費用が必要です。
ただ、クリニックによってはクレジットカードの分割払いや医療ローンが利用できる場合もあり、その場合は月数千円で進められるため金銭的な負担を軽くできます。
医療ローンはクレジットカードよりも金利が低く、パートやアルバイトをされている主婦や学生の方であれば会社員でなくても申し込みが可能となっています。
ただし、12回以上の分割にすると脱毛に通い終えたあとも支払いが続くため、負担に感じるケースも。
医療脱毛は以前より安くなってきているとはいえ決して安くはない金額なので、支払い続けられるかどうか、あとで後悔しないようしっかりと検討してからスタートしましょう。
毛をまた生やしたくても出来なくなる
医療レーザーによる脱毛は毛根に存在する毛を作り出す細胞ごと破壊するため、照射したあと、基本的に元の発毛状態には戻りません。
中には、後になって「やっぱり少し毛を残しておけばよかった(特にVIO脱毛・ヒゲ脱毛)」と後悔する方もいます。
対策としては、一度に完全脱毛してしまうのではなく段階を踏んで部分的に脱毛をする方法や、通院回数を5回未満にとどめ、全体的に毛を細く薄くするのを目標とする方法もあります 1)。

脱毛に通う前に、どのような仕上がり状態を目指したいか(VIOやヒゲの場合は仕上がりの形)をよく検討してから契約するようにしましょう。
医療脱毛とサロン脱毛、それぞれのメリット・デメリット
脱毛には、医療レーザーを使用する「医療脱毛」と、それよりも弱いパワーで光を照射する「サロン脱毛(美容脱毛)」があり、特徴・目標とする仕上がりが大きく異なります。
それぞれにメリットとデメリットがあるので、違いを理解し自分に合った方を選択しましょう。
医療脱毛のメリット・デメリット
医療脱毛では、毛を作り出す細胞ごと破壊できるほどの強いレーザー照射を行うため、国家資格を有する医師・看護師が在籍する医療機関でしか行えません 5)。
赤みや腫れ、かゆみや毛嚢炎など、照射による肌トラブルがあった際は治療や処置がすぐできる点は大きなメリットです。
また、医療脱毛は照射して効果があった毛は数週間でポロポロと抜け落ち、脱毛効果が実感しやすい方法です。医療脱毛では毛の再生率も低くなります。
デメリットとしては、照射パワーが強いため痛みを感じやすい点、サロン脱毛に比べると1回の費用が高い点があげられます。
ただし医療脱毛は通院回数が少ないため、1回の費用が高くても、総額としてはサロン脱毛よりも安くなるケースが多いです。

永久脱毛を目指せるのは医療脱毛だけ。まとまった費用が用意できて、なるべく早く効果を実感したい方、通い続けたくない方は医療脱毛が向いています。
サロン脱毛(美容脱毛)のメリット・デメリット
サロン脱毛の大きなメリットは、安い金額でスタートできる点です。
数百円程度のキャンペーン料金で利用できるサロンもありますし、1回あたりの金額は医療脱毛よりも安く設定されています。
また、医療レーザーと比べると扱う脱毛機のパワーは弱い(医療機関ではないため発毛組織の破壊はできない)ので、比較的痛みを感じにくい点もメリットです。
そのほか、照射中や後にローション塗布があったり、使用するジェルに美肌成分が入っていたりと、美肌ケアをしながら脱毛がすすめられるサロン脱毛ならではの特徴もあります。
一方、やはり医療脱毛よりもどうしても効果が低いのがデメリットです。効果実感までには時間がかかり、発毛細胞を破壊するわけではないため、毛の再生率も高くなります。

安くスタートしたい方や痛みがとても苦手な方、通い続けるのに抵抗がなく、美肌ケアに魅力を感じる方はエステサロン脱毛の選択もありです。

脱毛にまつわるこの噂、ホント?
脱毛に関する口コミを調べてみると、「ワキガになる」「ホルモンバランスが崩れる」など、さまざまな噂が飛び交っていますが、実際のところはどうなのでしょうか。
脱毛に関するさまざまな噂について、下記に回答しました。
脱毛するとホルモンバランスが崩れる?
これは、体毛がホルモンの影響で生えてきたり、濃くなったりすることから起因している説だと考えられます。

ストレスや体調不良、疾患により身体のホルモンバランスが崩れることで多毛症や円形脱毛症になる例は多々報告されていますが、脱毛をしたからといってホルモンバランスが崩れることはありません 6)。
ワキ脱毛するとワキガになる?
脱毛するとワキガになった、ワキガがひどくなったという噂もたびたび見受けられます。
ワキガとは、アポクリン汗腺から出た分泌液と皮膚表面の菌が合わさることで放たれる物質臭のため、本来であれば毛穴や毛の有無とは関係がありません。
ですので、毛穴から毛が無くなった(脱毛した)からといってワキガが悪化することは理論上考えにくいでしょう 7)。
むしろ、脱毛をして通気性が良くなることで、ワキガがいくらか軽減されるということは実際にあり、研究でも報告されています 8) 9)。

海外では脱毛後に全身脱毛後に全身性臭汗症になった報告例がありましたが、脱毛が直接的な原因になっているとは現段階では言い切れず、極めて珍しい副作用だと報告されています 10)。
脱毛すると汗が増える?
一部では脱毛行為が汗腺やエクリン汗腺を刺激し活性化させているのではないかと言われているようですが、決め手になるエビデンスが存在しないというのが実際のところです 11)。
考えられる理由としては、脱毛後に脇に意識がいく精神的多汗や、毛がなくなったため「汗が皮膚に流れている」と感じやすくなり、汗が増えたような感覚になっているケースがあります。
これは「脱毛後多汗症」とも呼ばれますが、脱毛後多汗症は一時的なもので、しばらくすると落ち着いていくものと考えられています。
脱毛が原因で生理不順になる?
体毛は体内のホルモンと密接な関係があり、生理不順も女性ホルモンとの関係が深いため、このような誤解が生じているのかもしれません。
脱毛時期にストレスを感じることが重なった時や、体調不調が重なった時に生理不順になってしまうことも考えられます。
脱毛で逆に毛が濃くなることはある?
硬毛化は、毛を作りだす細胞を中途半端に刺激してしまったことにより、かえって細胞を活発化させてしまうことが原因だと考えられています。
レーザーが反応しやすいメラニン色素の濃い(毛の濃い)部位ではほぼ起こらず、背中や顔など、比較的毛が細く薄い(メラニンが薄い)部位で起こりやすくなります。

硬毛化はが起こる確率は数%で、もし硬毛化してしまったとしても、再度レーザーを照射する、またはニードル(電気)脱毛を行うことで改善できます。
レーザーや光の照射による副作用は報告されている?
医療脱毛の副作用
- やけど
- 炎症・赤み
- 毛嚢炎
- 硬毛化
副作用に関しては、通常は脱毛契約前に医師から説明があった上で契約へすすむことになっていて、事前の無料カウンセリング時で必ず副作用に関する確認があります。
火傷や炎症以外の副作用として報告されているのは、ごく稀ではありますが脱毛施術後の多汗症、臭汗症、白内障です。
しかし、これらの副作用は、現段階では症例が少なすぎるため「可能性がある」という域を超えていないというのが現状です。脱毛施術が直接的な要因になっているのかどうかは、まだ研究/検討の予知があるとされています 12)。
参考文献
- 皮膚病治療情報・皮膚科教科書 あたらしい皮膚科学 第3版 https://shimizuderm.com/textbook03/pdf/1-08.pdf
- 日本医学脱毛学会 https://www.igaku-datumou-gakkai.com/5-1
- 山田 裕道(国際親善総合病院 皮膚科)(2010), 皮膚科におけるレーザー応用の最新事情 https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/39/2/39_96/_pdf/-char/ja
- 毛髪のしくみ | 全国理容生活衛生同業組合連合会 http://www.riyo.or.jp/%E6%AF%9B%E9%AB%AA%E3%81%AE%E3%81%97%E3%81%8F%E3%81%BF/
- 医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて 厚生労働省 http://datumou.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20130405182728-E2C9638847CB12CACC1DF315DBA5C94855380F2ADFDE16AF7279AF3E934BB6C1.pdf
- 名和田 新(1992), 日本内科学会雑誌 81:501~505 成人多毛症 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/81/4/81_4_501/_pdf/-char/ja
- 篠崎純子ら(2014), J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn. 報文 48(4) 296-305 新たな腋臭菌と腋臭を抑制する素材の発見 https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj/48/4/48_296/_pdf/-char/ja
- Anthony Lanzalaco et al.(2015), A comparative clinical study of different hair removal procedures and their impact on axillary odor reduction in men. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26663394/
- Zeynab Fazel et al.(2020), Using the Hair Removal Laser in the Axillary Region and its Effect on Normal Microbial Flora. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32802284/
- Josiane Helou et al.(2015), A case of generalized bromhidrosis following whole-body depilatory laser. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25803676/
- 『次世代わきが多汗症治療』共立美容外科 医師グループ著 紹介ページ https://www.kyoritsu-biyo.com/shinryou/wakiga/book_column06.php
- J Hélou et al.(2009), [Novel adverse effects of laser-assisted axillary hair removal] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19560609/