時代と共にニーズが高まりつつある「脱毛」。中でも一度施術が完了すれば、二度と毛が生えてこないと言われている「永久脱毛」は、身だしなみの基本のひとつとしてすっかり定着しつつあります。
ただ、近年は消費者センターへの脱毛に関するトラブル報告が数多くあり、脱毛を受ける際には自ら十分な情報収集を行うよう推奨されていることも事実です 1)。
そこで、ここでは日本皮膚科学会認定・皮膚科専門医の藤井あさ美医師監修のもと、「永久脱毛」に関する正しい知識を掲載しました。
永久脱毛の定義や仕組み、使用する機器や費用、必要な照射回数など、永久脱毛に関する情報を分かりやすく解説していますので、永久脱毛をしたいと考えている方の参考になれば幸いです。
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永久脱毛の定義
永久脱毛と聞くと「永久に毛が生えてこなくなる」と想像される方も多いのですが、厳密に言うと、それは正しくもあり、間違っているとも言えます。
実は、日本には正確な「永久脱毛」に関する定義が存在しません。
日本で「永久脱毛」の定義を語る際には、米国電気脱毛協会が発表している永久脱毛の定義、米国FDA(日本でいう厚生労働省)が発表している永久脱毛の定義、1998年にハーバード大学教授のロックス・アンダーソン博士が発表した永久脱毛の定義が用いられます 2), 3)。
米国電気脱毛協会による永久脱毛の定義
最終脱毛から1か月後の毛の再生率が20%の状態であればよい。
米国FDAによる永久脱毛の定義
3回の脱毛施術によって6ヶ月後、3/2(67%)以上減毛していること。
※米国FDAでは永久脱毛の定義に当てはまる施術としてニードル脱毛を具体的に挙げています
ロックス・アンダーソン博士による医学的知見からの永久脱毛の定義
通常の毛周期を越えて毛の本数が著明に減少した状態を維持していることを「Permanent hair reduction(永久減毛)」とする。
また、皮膚科医委員長兼東京医科大学皮膚科教授であり、医療レーザー脱毛の第一人者である乃木田俊辰氏は、アンダーソン博士が定義している「永久減毛」と「永久脱毛」は、ほぼ同義であるとしており、日本の皮膚科学業界でも同様の認識となっています。
つまり、日本でいう「永久脱毛」の定義は、「毛の量が著明に減り、再生しない状態が長期にわたって続くこと」ということになります。
毛が1本も無いツルツルの状態が一生続くことを永久脱毛と思っていた方も多いかもしれませんが、本来の永久脱毛は「目立つ毛を確実に減らし、それが長期間続くこと」ことを目的としているのです。
永久脱毛の仕組み
毛が生えるためには、毛乳頭・毛母細胞・バルジ領域という器官の働きが必要です。医療脱毛では、この3つの器官を破壊し、毛を再生できなくすることによって永久脱毛を可能にしています 2), 3)。
他の脱毛方法との仕組みの違い
永久脱毛と、その他の脱毛の違いは、「毛が再生するか否か」です。
永久脱毛を行うことは、毛が長期間再生しないことを基本としていますが、永久脱毛以外の脱毛(サロン脱毛、カミソリ脱毛、毛抜き、脱毛クリーム、ワックス脱毛など)は一時的に毛が無くなっても、しばらくすればまた毛が生えてくるようになります4)。
カミソリ脱毛や除毛クリームは、皮膚表面の毛を除去することしかできず、3つの器官に働きかけることはできません。
毛抜きやワックス脱毛は、根本から毛を抜くことはできるものの、毛本体を除去できるだけで毛乳頭や毛母細胞、バルジ領域までは取り除くことができません。
そのため、しばらくすればまた同じ部分に毛が再生するようになります。
サロン脱毛では、フラッシュを当てることで3つの器官を攻撃することはできるのですが、破壊することはできません。
器官を攻撃して弱らせることで除毛/抑毛/減毛の効果は期待することができます。
永久脱毛はどこで受けられる?
永久脱毛を可能にするためには、毛乳頭・毛母細胞・バルジ領域を破壊することが条件になると触れましたが、これは医療行為にあたり、医療機関で医師や看護師の資格をもつ人だけが行うことを許されています 5)。
サロン脱毛を永久脱毛と認識されている方もいらっしゃいますが、永久脱毛施術は医療行為とされているため、脱毛サロンや自宅では受けることができません。
永久脱毛は医療脱毛でしか行うことができないため、永久脱毛を行いたいというのであれば、皮膚科や美容クリニック等、有資格者が在籍する医療機関で施術を受けていただくということになります。
永久脱毛に使用される主な機械
現在、永久脱毛に使用される機械は、
- 医療レーザー機器
- 針脱毛器
の2つがあります。
以前まで永久脱毛と言えば針脱毛機器を用いた、いわゆる「ニードル脱毛」が一般的でしたが、現在では、より手軽で効率的な医療レーザー機器が広く用いられています。
医療レーザー機器
医療レーザー機器は、黒い色素(メラニン色素)に反応する波長のレーザーを利用した脱毛機器です。毛が生えている部分にレーザーを照射することで熱を発生させ、その熱で毛乳頭・毛母細胞・バルジ領域を破壊し永久脱毛を可能にします 2)。
基本的には、この3つの器官を一度に破壊できるショット式(熱破壊式)の機器が昔から使用されてきましたが、最近では一度に強いパワーで組織を破壊するのではなく、弱い熱を徐々に与え脱毛する方式の蓄熱式の脱毛機器も登場しています。
医療レーザー機器はメラニン色素を媒体として脱毛を行うため、メラニン色素が少ない毛(成長期に達していない毛や産毛など)には脱毛効果が十分に得られない可能性があります。
また、メラニン色素が多い肌質の方はレーザーが皮膚そのものに過反応し、やけどの可能性がある、痛みを感じやすい等のデメリットもあります。
とはいえ、広い範囲を短時間で安全に脱毛できることから、現在最も主流なのが医療レーザー機器を使用した脱毛施術です。
2019年ごろよりかかる費用も下がってきているため、「永久脱毛をしたい」と考えたときはこの方法で減毛を目指すのが一般的です。
医療レーザー機器には種類が多数あり、クリニックによって扱う機械が異なります。肌の色みや毛の濃さ(メラニン色素の多さ)/施術したい部位/痛みへの耐性によって機種を選ばれると良いでしょう。
医療レーザー脱毛の機械を詳しく見る
針脱毛器(ニードル脱毛)
針脱毛器での脱毛施術はニードル脱毛と呼ばれ、レーザー脱毛が普及する以前に広く用いられていました。機器には細い金属針が搭載されており、その針を毛穴に差し込み電流を流すことで毛乳頭・毛母細胞・バルジ領域破壊し、脱毛を可能にします。
医療レーザーとは違い、媒体としてメラニン色素を必要としないため、毛の生えていない毛穴やメラニン色素が少ない薄く細い毛であっても脱毛が可能です。また、メラニン色素が多い黒い肌の方であっても使用できます。
1つ1つの毛穴に確実にアプローチする方法のため、レーザー脱毛よりも高い脱毛効果が期待できますが、痛みが強い、施術に時間がかかってしまう、施術者によって技術の差が大きいなどのデメリットもあり、現在では医療レーザー機器の方が主流となりました。
現在では、医療レーザー脱毛の仕上げとして、少ない範囲や産毛など脱毛しきれなかった部位のみにニードル脱毛を取り入れる、といった方法が一般的です。
ニードル脱毛について詳しく見る
何回で終わる?永久脱毛に必要な期間・回数
脱毛が何回で終わるのかは個人差があり、また、医療レーザー脱毛と針脱毛を比べても施術時間に違いがあります。それぞれの必要回数や期間については次の通りです。
医療レーザー脱毛の期間・回数
私たちの毛は伸び続けるものではなく、成長期/退行期/休止期を繰り返すことで伸びたり、抜け落ちたりしています(この周期を「毛周期(もうしゅうき)」と言います)。
毛にはそれぞれの毛周期が存在し、現在目に見えている毛は成長期にあたる一部の毛だけ。医療レーザー脱毛は成長期の毛にしか効果がありません。
それぞれの毛が成長期を迎えるタイミング(脇の場合だと平均3~4ヵ月周期)で施術を行う必要があり、その目安が5~7回と言われています。
必要な回数を詳しく見る
針脱毛(ニードル脱毛)の期間・回数
ニードル脱毛は1度の施術で高い脱毛効果が得られるとともに、白髪や産毛にも効果が期待できるとされています。
ただし、毛周期にしたがって施術を行う方が高い脱毛効果を見込めることから、ニードル脱毛も医療レーザー脱毛と同じく複数回の施術が基本です。
ニードル脱毛を行うクリニックでは、80~90%の脱毛効果を得られる目安として5~6回が推奨されています。
針脱毛は1本1本の毛穴に針を刺し電流を流して脱毛していく方法のため、個人の毛穴の数や施術者の技術力によって必要な回数や期間が大きく異なります。
永久脱毛の値段
永久脱毛の値段はクリニックによって異なり、幅がありますが、だいたいの相場は下記となります。
ここでは、永久脱毛を行っているクリニック(医療レーザー脱毛・針脱毛)を値段順にそれぞれ3つずつ紹介します。
値段が安い医療レーザー脱毛クリニックPR
医院名 | TCB東京中央美容外科 | 湘南美容クリニック | フレイアクリニック |
ワキ脱毛 料金 | 1万4000円(5回) 1万9000円(8回) | 2500円(5回) 最安値 | 1万2100円(5回) 1万8700円(8回) |
VIO脱毛 料金 | 3万8000円(3回) 4万8000円(5回) 最安値 | 5万4000円(6回) | 9万3500円(5回) |
全身脱毛 料金 | 6万9800円(3回) 9万8000円(5回) 最安値 | 17万4240円(4回) 24万4200円(6回) | 17万3800円(5回) |
詳細 |
ニードル脱毛クリニック
値段順ベスト3
※ニードル脱毛は施術料金とは別に、針代/麻酔代/血液検査代などがかかります。相場としては、針代4,000円~5,000円、麻酔代2,000円、血液検査代4,000円~5,000円程度。今回は技術料のみを比較しています。
1位 | 2位 | 3位 | |
---|---|---|---|
医院名 | 赤坂クリニック | 大船T’s形成クリニック | 美容皮膚科川口クリニック |
技術料 | 1分300円 | 1分385円 | 5分3,300円 |
詳細 |
ニードル脱毛は1回/1時間程度の施術が一般的のため、1回の治療で1万8000~4万円程度を目安にしてください。
永久脱毛のデメリット
永久脱毛はデメリットもいくつか挙げられます。
事前の知識や情報を得ないまま施術にあたってしまうと、トラブルに発展してしまう可能性あるため、デメリットについても必ず確認しておくようにしてください。
痛みが伴う
永久脱毛は毛の元となる組織を熱によって破壊するため、施術時には熱による痛みが生じます。
感じ方には個人差がありますが、痛みが苦手な方は麻酔を利用することで痛みを軽減することができます。
毛を生やしたくても出来なくなる
永久脱毛をするということは、毛を再生するための組織を破壊することになるため、毛を生やしたくても生やすことが難しくなります。
特にVIO脱毛においては完了後に後悔をしないため、事前のカウンセリングだけでなく、施術時には毎回自分の希望(脱毛したい範囲や形)を施術者にしっかりと伝えるようにしましょう。
関連記事:VIOのデザイン・形はどれがいい?
まとまった費用が必要
クリニックによっては医療ローンや月払いシステム、コース割引を導入しているところもありますが、永久脱毛が完了するまでには数万円~数十万円のまとまった料金がかかります。
エステサロンで行われる脱毛が「100円スタート!」などと宣伝されていることも多いため、安く始められるイメージがある方もよくいるのですが、エステの脱毛とクリニックの脱毛は別物。
クリニックで行われる永久脱毛は、100円でスタートできるようなところはまずありません。
永久脱毛とエステ脱毛の違いを詳しく見る
メリット・デメリットを詳しく見る
永久脱毛でよくある質問
最後に、永久脱毛に関するよくある質問に回答しました。
永久脱毛は痛いですか。
永久脱毛は毛を作り出す器官を破壊するため、多少の痛みが伴う施術です。医療レーザー施術の痛みの目安としては、輪ゴムを弾いた程度と言われています。
医療レーザーはニードル脱毛に比べると痛みは弱いとされていますが、痛みが苦手な方は蓄熱式脱毛機を利用したり、麻酔を使用したりすることで痛みを軽減することができますので、ご安心ください。
何歳からできますか。
脱毛できる年齢に特に決まりはありません。クリニックによって年齢不問であったり、年齢制限を設けていたりとさまざまです。
ただ、10代前半以下の場合ですと、毛が十分に成長しきっていないためレーザーが反応しにくい、ホルモンバランスが不安定で毛周期の予測がしづらいといったことも想定されます。
満足度の高い効果を得るために、10代後半(14歳~16歳あたり)以降を推奨されているところが多いです。
市販のクリームで永久脱毛はできますか。
市販の脱毛クリームは、髪の毛のタンパク質を溶かし、皮膚表面の毛だけを一時的に除去するためのものです。毛を作り出す器官にダメージを与えることはできないため、市販のクリームで永久脱毛を行うことはできません。
家庭用の脱毛器で永久脱毛は可能ですか。
家庭用の脱毛器は医療用の脱毛器とは違い、光の波長が低く設定されています。
そのため、毛乳頭、毛母細胞、バルジを破壊するには至らず、永久脱毛することはできません。器官を弱らせて一時的な除毛、減毛、抑毛効果を期待することはできるでしょう。
家庭用脱毛器を詳しく見る
永久脱毛後、また毛が生えてくることはありますか。
米国FDA(日本で言う厚生労働相)では、ニードル脱毛のみを永久脱毛と認めるという旨の発表をしています。ニードル脱毛施術を完了すれば、毛が生えてくることはほぼありません。
対して医療レーザー脱毛は、永久脱毛後でも希にですが、毛が生えてくることがあります。(毛乳頭などが上手く破壊されなかった場合、産毛などメラニン色素が少ないためレーザーが反応しなかった場合など)
しかし、医療レーザーが普及して10年以上、永久脱毛を完了後に濃い毛が多量に再生したという症例はほぼ見られないというのが現状です。
8~10回以上照射しても、どうしても残ってしまう産毛や金髪が気になるという場合には、ニードル脱毛を施すことで最終仕上げをすることができます。
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参考文献
- なくならない脱毛施術による危害(発表情報)_国民生活センター http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20170511_1.html
- 第118回日本皮膚科総会⑨教育講演資料 http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-200113.pdf
- レーザー脱毛の皮膚トラブル安全に施術を受けるポイント(新宿南口皮膚科 乃木田俊辰院長)|医療ニュース トピックス|時事メディカル|時事通信の医療ニュースサイト https://medical.jiji.com/topics/1806
- 日本医学脱毛学会 https://www.igaku-datumou-gakkai.com/5-1
- 医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて 厚生労働省 http://datumou.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20130405182728-E2C9638847CB12CACC1DF315DBA5C94855380F2ADFDE16AF7279AF3E934BB6C1.pdf