- ミノキシジルは血流を良くすると共に悪くもする厄介な薬
- 主な副作用は胸痛・動悸息切れ・不整脈・呼吸不全・目の腫れ・狭心症
- 外用薬として使用するなら濃度15%でも頭皮のかぶれ程度
- 飲み合わせてはいけないのはイブプロフェンなどの頭痛薬
- 未成年者にはミノキシジルは使用しないほうがベター。でも、、、
ミノキシジルは、「発毛剤」として知られる大正製薬リアップのように、外用薬として使用するのが正規の使い方ですが、飲み薬として服用しないと大きな発毛効果は見込めないので、タブレット剤としてAGA専門クリニックで「こっそり」処方されています。
しかし、ミノキシジルは副作用が非常に強い「半劇薬」です。
それにもかかわらず、不勉強な医師や根拠のない無責任な記事を書くアフィリエイターのせいで、「死にますよ?」と警告せざるを得ないような10mgという超高濃度のミノキシジルが患者の手に渡っている現実を見ると、怖くて仕方がありません。
そこで当記事では、ミノキシジルの副作用の中身を医学的に具体化して説明することで、副作用を避けうまくセルフコントロールできるよう解説していきます。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
ミノキシジルは血流を良くすると共に悪くもする厄介な薬
藤田先生、発毛成分ミノキシジルの作用秩序を教えてください。
ミノキシジルは主に細動脈平滑筋に作用し血流を良くする薬です。その結果起こる多毛症(発毛)はミノキシジルの主作用ではなく「副作用」。
解説いたします
血液は、心臓の左心室から送り出されて大動脈に入り、頭皮などの毛細血管に流れていきます。
「細動脈」は、大動脈と毛細血管の中間にある血管で、大動脈から流れてくる血液の勢いを適度にせき止める役割が。そのため、細動脈は普段は適度に収縮していて「抵抗血管」との別名も持っています。
ミノキシジルは細動脈を動かす細動脈平滑筋に作用して、収縮している細動脈を弛緩(しかん)させ、せき止めていた血流が「せき止まらなくなり」大動脈の勢いのまま細動脈に流れていくのです。
栄養分は血液を介して全身に供給されるので、ミノキシジルの摂取により血流が良くなると栄養分が全身に分配され、全身の毛にも栄養が普段以上に届きやすくなり、その結果全身の毛が元気に太くなります。
これを「多毛症」と呼びますが、多毛症の「多毛」には髪の毛も含まれているので、ミノキシジルを服用すると髪の毛も太くなり薄毛が解消するというわけです。
ミノキシジルは発毛成分と呼ばれていますが、「発毛」と言っても何もないところから毛が生えてくるわけではありません。AGA(男性型脱毛症)になり脱毛すると、その後同じ毛穴から髪の毛は必ず生え変わってきます。
生え変わった後が問題で、まず産毛(うぶげ)になって生えてきますが産毛から次の段階に成長しないのがAGAの病態。その産毛をミノキシジルで太く成長させるのが、ミノキシジルの効能(正確には副作用)です。
冠動脈にも作用してしまうので心臓に酸素が届きにくくなってしまう
ミノキシジルの副作用の問題点はここから先の話になります。ミノキシジルは細動脈だけでなく、冠動脈と呼ばれる心臓に血液を送る血管にも作用してしまう人が。
冠動脈は太い血管なので細い血管である細動脈と違い「収縮」により血液に勢いを出します。ホースの先を絞ると水が勢い良く飛んでいくのをイメージするとわかりやすいでしょう。
ミノキシジルは冠動脈「も」弛緩させてしまうので、ミノキシジルを服用すると心臓への血流量が落ちてしまい心臓への酸素供給と栄養補給が落ち心臓が徐々に徐々に弱っていき、酸素供給量が足りないと肺へも負担がかかります。
動悸・息切れなどのミノキシジル服用による副作用が循環器系組織に集中するのは、この為(ミノキシジルが冠動脈に作用する)です。
主な副作用は胸痛・動悸息切れ・不整脈・呼吸不全・目の腫れ・狭心症
藤田先生、ミノキシジルの副作用を教えてください。
眼の腫れ、胸痛、動悸息切れ、不整脈、呼吸不全、狭心症あたりです。
解説いたします
まず、目の腫(は)れから説明します。
目の腫れ(皮膚の膨張)は、目の細胞と細胞の間の体液が膨らんだ状態をさしますが、それがなぜミノキシジルによって引き起こされるのかまでは解明されていません。
しかし、ミノキシジル服用者の多くに現れる代表的な副作用の一つであることは間違いなく、目がかすんでくることもあります。
ミノキシジルの副作用は胸痛ばかりが注目されがちですが、一番多いのは実は目の腫れなのです。
動悸・息切れ
「動悸(どうき」とは、平常より心臓の動きが早い状態のことです。
ミノキシジルの作用により冠動脈が弛緩し、心臓への酸素供給量が落ちると、心臓のパワーが落ちてしまいます。
「パワーがない」とはどういう状態かというと、筋力の弱い人が重い物を持ち上げようとする状態だと思えばイメージしやすいでしょうか。筋力が弱い人が重い物を持ち上げるとすぐに息が上がってしまいますよね。
心臓は血液を全身に流すためのポンプの役割を果たしているので、パワーが落ちても血液を全身に供給するために働かなくてはなりませんが、パワーがないのですぐに心臓がバテてしまい酸素を欲するようになります。
しかし、ミノキシジルの作用により冠動脈が弛緩していて酸素がままならないので、心臓は「息が上がったまま」になり鼓動が通常より早まるのです。これがミノキシジルの副作用でおきる心臓の動悸。
動悸は胸の痛みを伴うので、ミノキシジルを飲むと胸の痛みが出るのはこのためです。
また心臓に酸素が常に不足しているので、心臓に酸素を供給しようと肺ががんばる必要があり、このことにより「息切れ」という症状が副作用として出てしまいます。
不整脈
心臓が不規則な動きをするのが不整脈。速すぎたり(頻脈)、遅すぎたり(徐脈)と心拍のリズムが一定ではなくなります。
不整脈の主な原因は冠動脈疾患です。ミノキシジルは先に述べたように冠動脈を弛緩させ続けます。通常血管は収縮と弛緩を繰り返すことで血液を流しているのに、恒常的に血管を弛緩させると血管に機能不全(冠動脈疾患)が起こってしまうのです。
不整脈は命にかかわるので、十分に注意してください。
狭心症
ミノキシジルの副作用により冠動脈疾患が起きると、ひどい場合は「狭心症」になります。ミノキシジルの服用を続けると胸の痛みが出てくる人が多く、これは狭心症の一歩手前の症状です。十分に気をつけてください。
狭心症がさらに悪化すると心筋梗塞になりますが、ミノキシジルの服用で心筋梗塞になる人はまずいません。
心筋梗塞というのは心臓へ血液供給が途絶えることを意味していますが、ミノキシジルがいくら副作用がきついといっても冠動脈を機能不全にしてしまい心臓への血液供給をゼロにしてしまうことはありえないので、ミノキシジル「だけ」が原因で心筋梗塞が起こるとは考えにくいです。
外用薬として使用するなら濃度15%でも頭皮のかぶれ程度しかほぼ起きない
ミノキシジルタブレットは本当に怖い薬なんですね。ところで、育毛剤としてミノキシジルを頭皮に塗った場合の副作用にはどんなものがあるのでしょうか?
極々まれに動悸息切れが起きても、それは本当にレアケースで、ミノキシジルを外用薬として使った場合、頭皮のかぶれ程度しか実際には起きないでしょう。
解説いたします
ミノタブ(ミノキシジルタブレット)での副作用解説では、少し煽(あお)り気味に書きましたが、外用薬(育毛剤)での副作用解説は「リアルガチ」に行きます。
大正製薬リアップの説明書などに、循環器系の副作用に関する記述があります。実際はミノキシジルを外用薬(育毛剤)として使用した場合にそこまでの副作用が出たというケースは、少なくとも私は聞いたことがありません。
「ない」とは言いませんが、医学的に考えて、頭皮から浸透させたミノキシジルが冠動脈に作用するとは考えにくいので、育毛剤としてミノキシジルを使用した場合に循環器系障害(不整脈・狭心症・心筋梗塞)にまで発展することは、ほぼほぼありえないでしょう。
頭皮には毛細血管しか流れていないし、血液の流れからして、毛細血管の先は静脈ですから、静脈を通しすぎて冠動脈にまでミノキシジルが達すると考えるのは不自然です。
育毛剤としてミノキシジルを使用する場合の副作用は、ほぼ「頭皮のかぶれ」だけに限定してよいと思います。
市販のミノキシジル発毛剤(リアップやメディカルミノキ5など)は、ミノキシジル濃度は液量に対して5%で、この濃度なら頭皮のかぶれすらほとんど起きません。
副作用が起きないというと安心するかもしれませんが、副作用が出ないということは作用も出ない、つまり発毛(という作用)も期待できないということです。
AGA専門クリニックに行くと、6%以上のミノキシジル外用薬を処方してくれるので、ご自身の頭皮のかぶれに状態をセルフコントロールしつつ、濃いミノキシジルに挑戦してみてください。
15%の超高濃度ミノキシジル発毛剤を置いているクリニックもあり、これだけ高濃度でも、ミノタブ(経口薬)に比べれば副作用はゼロに等しいので、過度に副作用を心配する必要はないと思います。
飲み合わせてはいけないのはイブプロフェンなどの頭痛薬
ミノキシジルと一緒に飲むと副作用が出てしまうような併用禁忌(飲み合わせ禁止)の薬はあるのでしょうか?
イブプロフェンなどの頭痛薬は併用してはだめです。
解説いたします
ミノキシジルは元々はロニテンという名前の血圧降下剤で、ロニテン(ファイザー製薬)の英文での説明書に「ロニテンとイブプロフェンを併用すると重篤な結果を引き起こす」と書いてあります。
ミノキシジルなどの血圧降下剤は薬学では抗凝血薬や抗血小板剤薬に該当します。要するに血液をサラサラにする薬です。
イブプロフェンなどの痛み止め系の薬は交感神経に作用して交感神経を抑制して血管を弛緩させるので、ミノキシジルと併用すると血流が良くなりすぎて脳内の毛細血管が破裂する脳内出血(脳溢血)を引き起こしてしまう危険性があるなどと言われています。
ただたぶんこれは見当違いで、ミノキシジルとイブプロフェンなどの痛み止め系の薬は、どちらも血圧を下げる効能があるので、過度に血圧が下がりすぎてしまうとめまいやふらつきなどのリスクが上昇するということでしょう。
血管が緩みっぱなしになり、逆に血流が悪くなり全身の細胞に酸素や栄養分が行き届かなくなる、だから「併用禁忌」なのだと思います。こちらの説明の方が医学的に論理性がありますよね。
明確な臨床データを見たことはありませんが、スマトリプタンなどの血管を収縮させる作用がある薬も併用禁忌と言われてるので、「血圧に作用する系の薬とミノキシジルは飲み合わせ禁止」と覚えておけば良いでしょう。
勃起不全(ED)の治療薬として知られるバイアグラにも血管拡張作用があるのでミノキシジルとの飲み合わせは控えてください。
未成年者にはミノキシジルは使用しないほうがベター。でも、、、
お子さんが薄毛になった場合ですが、ミノタブは飲んではいけないことは直感的に分かりますが、育毛剤として使用するのもだめなのでしょうか?
何ゆえにダメなのか実は論拠が不明なのですが、ミノキシジル育毛剤を販売している各メーカーでは未成年者は使用禁止と記載していますね。
解説いたします
飲み薬であるミノキシジルタブレット(通称ミノタブ)は、すでに説明したように、血圧降下剤です。
高血圧というのは、代表的な生活習慣病。大人が暴飲暴食や不規則な生活を繰り返すことでなってしまう病気なので、普通の未成年者で、低血圧の子はいても高血圧というお子さんは少数だと思います。
高血圧でもないのにミノキシジルを服用してしまうと、適正に保たれている血圧が下がってしまい、恒常的にめまいやふらつきが。
例えば、校長先生の話を聞いているときに倒れてしまうようなことがあります。
ただ倒れるだけなら大きな問題にならなくても、倒れた際に頭を打ってしまう危険性が否めないので、ミノタブは未成年者には飲ませないほうがいいと私も思います。
外用薬もメーカー側では未成年者には使用禁止にしています
大正製薬リアップの説明書(下記画像)にこんなことが書いてあります。
日本国内では未成年者で臨床試験をしていないので作用・反作用(副作用)のデータがありません。「使用した場合どうなるか分からないので使用しないでください」という意味です。
※欧米での臨床データを探しても、未成年者での臨床試験の結果は見つかりませんでした。
仮にもミノキシジル外用薬は第一類医薬品に該当するので、根拠のないことを言うのは躊躇(ちゅうちょ)しますが、育毛剤として使用する分には大きな問題が出るとは思えません。
頭皮からミノキシジルを浸透させた場合、作用するのはせいぜい細動脈どまりで、心臓に酸素を供給する冠動脈にまで作用が及ぶとは思えず、未成年者だからといって重篤な副作用が出ることは考えにくいです。
とはいえ「使ってもいいですよ」とは言えないですけどね。
「それでも飲みたい」という方は循環器内科に定期的に通ってください
ミノキシジルの副作用に関する解説記事なので、怖い話が多かったですよね。それでも薄毛の悩みは深いと思うし、副作用を気にしすぎてミノキシジルを避けて通ると、薄毛が解消しないのは明白です。
薄毛の悩みでうつ病を併発する人も少なくないので、当ブログで言いたいことは「ミノキシジルは危険なので、できれば使用を避けてください」ということを言いたいわけではなく、
「地雷が埋まっている場所はここですよ」
と危険地帯を示すことで戦場を上手に渡り歩いてほしい、と願いつつ執筆した記事になります。
心電図検査を定期的に受ければミノタブの服用はOKです
あなたが住んでいる町の名前プラス「循環器内科」としてgoogleやyahooなどで検索してみてください。
「鹿児島市 循環器内科」「松江市 循環器内科」「帯広市 循環器内科」という感じで検索窓に入れて検索すると、お近くの循環器内科がどこにあるか分かると思います。
外用薬としてミノキシジルを使用するのであれば循環器内科に行く必要はありませんが、もし個人輸入代行などでミノタブを入手して服用しているなら、少しでも体調に異変を感じた時点で循環器内科に行ってミノキシジルを服用していることを伝え、心電図検査を受けてください。
心臓は電気信号で動いていて、ミノキシジルの副作用が出ていれば心電図検査で、心電図検査を受ける前に必ず聴診器と血圧も測るので、肺機能を含めて現在の循環器全般の健康状態も分かります。
循環器内科での検査で問題がなければ、ミノキシジルの服用を続けても大丈夫でしょう。副作用という地雷の存在には気をつけつつも、上手に地雷を避けてミノキシジルを服用して薄毛を解消させる行動を続けるのは「あり」だと思います。
そしていざ、ミノキシジルを服用する場合にも安心できるクリニックを利用したいですよね。以下のリンクで紹介しているクリニックは安心感が高いおすすめできるクリニックになりますので、参考にしてみて下さい。ミノキシジルを通販や個人輸入代行で買うならベスト3はここ。AGAクリニックのミノタブ仕入れ闇ルートもついでに暴露
ミノキシジルタブレットを入手できる遠隔診療専門のAGAクリニックの中からコスパの良さそうなクリニックを厳選紹介。自己責任を負える人向きにAGAクリニック側が【裏利用】している個人輸入代行店も一つご案内しておきます。
以上
参考文献
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