亜鉛・プロテインは髪の成長を促進する?効果的な摂取量と期間

髪の毛のケアに亜鉛が効果的?知っておきたい3つのこと

若年層を中心に薄毛に悩む方が増加傾向にある中、髪の毛の健康維持に欠かせない栄養素として亜鉛とプロテインが注目を集めています。

これらの栄養素の育毛効果については、複数の臨床研究によってその有効性が実証されており、毛根の細胞分裂促進と毛髪タンパク質の生成に重要な役割を果たすことが明らかになってきました。

本記事では、亜鉛とプロテインによる育毛効果の科学的根拠や、効果的な摂取方法、推奨される継続期間について、最新の医学的知見に基づいて詳細に解説します。


この記事を書いた医師

内科総合クリニック人形町 院長 藤田 英理(総合内科専門医)
Dr. 藤田 英理

内科総合クリニック人形町 院長

  • 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
  • 東京大学医学部保健学科および横浜市立大学医学部を卒業
  • 東京大学付属病院や虎の門病院等を経て2019年11月に当院を開業

最寄駅:東京地下鉄 人形町および水天宮前(各徒歩3分)

目次

亜鉛とプロテインが髪の成長に与える効果


毛髪の主成分であるケラチンタンパク質の形成過程において、亜鉛とプロテインは不可欠な栄養素で、摂取バランスと継続的な補給が、健康的な髪の成長を支える重要な要素です。

毛髪の主成分となるケラチンタンパク質の生成機序

髪の毛を構成する主要なタンパク質であるケラチンは、約90%を占める重要な構造タンパク質で、生成過程においては亜鉛とアミノ酸が密接に関わり合って機能しています。

毛髪形成に必要とされる18種類のアミノ酸の中でも、特にシステインとメチオニンという含硫アミノ酸は、髪の強さと弾力性を決定づける重要な要素で、これらのアミノ酸が正しく供給されることで、健康的な髪の生成が促進されます。

アミノ酸の種類毛髪への影響
システイン強度向上
メチオニン弾力性付与
アルギニン成長促進
亜鉛・プロテインが支えるケラチン生成メカニズム図(男性向け)

毛母細胞における亜鉛の作用機序については、DNAやRNAの合成酵素の活性化を通じてケラチンタンパク質の生成を促進することが、明らかになってきています。

タンパク質合成の過程において、亜鉛はメタロチオネインという特殊な金属結合タンパク質と結びつき、細胞内での亜鉛の輸送と貯蔵を精密にコントロールすることで、効率的なケラチン生成をサポートするのです。

亜鉛欠乏による抜け毛と成長阻害のメカニズム

毛髪の成長サイクルにおいて、亜鉛が不足した状態が続くと、毛母細胞でのタンパク質合成が著しく低下し毛髪の成長速度が遅くなることが、多くの臨床研究によって示されています。

亜鉛欠乏の段階症状
軽度成長鈍化
中度脱毛増加
重度毛包萎縮

毛包内の亜鉛濃度が低下することにより、毛髪の成長期が本来よりも短縮され、休止期への移行が加速されることで、健康的な髪の生成サイクルが乱れることが指摘されています。

慢性的な亜鉛不足の状態が継続すると、毛包そのものの萎縮や機能低下が引き起こされ、正常な毛髪の生成が困難になるだけでなく、既存の髪の質も低下するのです。

亜鉛不足で起こる毛髪サイクルの乱れと抜け毛メカニズム図

臨床研究で見られた髪の成長促進効果

複数の大規模臨床研究において、亜鉛とプロテインを継続的に摂取することで、毛髪の成長が促進されることが実証されており、効果は統計学的にも有意になっています。

研究期間観察された効果
3ヶ月毛髪密度上昇
6ヶ月毛髪径増加
12ヶ月質感改善

特に注目すべき研究結果は、成人男性を対象とした6ヶ月間の追跡調査では、1日15mgの亜鉛を継続的に摂取したグループにおいて、毛髪の密度が平均18%向上したという顕著な改善効果が報告されたことです。

1日あたり体重1キログラムにつき1.2グラムのプロテインを摂取したグループで、対照群と比較して毛髪の成長速度が約15%増加したという結果が得られています。

亜鉛・プロテイン摂取による髪の改善タイムライン(0–12か月)

年代別の必要性と期待できる効果の違い

思春期から20代にかけての時期は、ホルモンバランスの大きな変化により毛髪の成長が最も活発化する時期で、この時期における正しい栄養素の摂取が、将来的な髪の健康状態を大きく左右することが分かっています。

  • 10代後半 基礎代謝が高く、必要量が多い
  • 20-30代 予防的な摂取が望ましい
  • 40代以降 吸収率の低下を考慮した摂取量調整が必要

加齢に伴う腸管での栄養素吸収率の低下により、50代以降では若年層と比較して20-30%増量した栄養摂取が推奨されており、この年代では特に意識的な栄養管理が必要です。

亜鉛&プロテインの正しい摂取量と継続期間

亜鉛とプロテインによる育毛効果について、正しい摂取量や継続期間、年齢・性別による個人差などを詳しく説明します。

1日の推奨摂取量と過剰摂取の注意点

亜鉛とプロテインの正しい摂取は、毛髪の健康維持において重要で、毛根の細胞分裂や毛髪タンパク質の合成に深く関与します。

日本人の食事摂取基準によると、成人男性における亜鉛の推奨量は1日あたり10~12mgとされており、これは通常の食事からでも十分に摂取できる量です。

亜鉛は体内での吸収率が低く、特に植物性食品に含まれる亜鉛は、食物繊維やフィチン酸の影響により吸収が阻害されることがあるため、動物性食品からの摂取が推奨されています。

食品名亜鉛含有量(mg/100g)
牡蠣13.2
牛肉4.7
豚レバー6.1
かぼちゃの種7.6

プロテインに関しては、体重1kgあたり1.2~1.6gが推奨されており、積極的な筋力トレーニングを行う方々にはより多くの摂取が必要になります。

プロテインの摂取源としては、良質な動物性タンパク質を含む食品が摂取し、必須アミノ酸をバランスよく含む卵や魚介類、肉類を取ることが大切です。

タンパク質源特徴1食あたりの目安量
生体利用率が高い2個(12g)
鶏むね肉低脂肪高タンパク100g(23g)
魚介類良質な脂肪も含む100g(20g)

亜鉛の場合は上限摂取量が40mg/日と定められており、これを超えると銅の吸収阻害や消化器系の不調をきたす可能性があるので注意が必要です。

サプリメントによる補給を検討される際には、医師や薬剤師に相談の上、食事内容や生活習慣を考慮した摂取量を決定することが推奨されています。

効果を実感するまでの標準的な期間

毛髪の成長サイクルは通常3~5年で、育毛効果を実感するまでには一定の期間を要することが明らかになっています。

毛髪の成長サイクルは、成長期、退行期、休止期の3つの段階から構成されており、それぞれの段階で必要とされる栄養素が異なります。

成長段階期間必要な栄養素
成長期2-6年亜鉛・タンパク質・ビタミン群
退行期2-3週間抗酸化物質
休止期2-3ヶ月ミネラル類

栄養補給による育毛効果は、個人差が大きく影響することから、最低でも3ヶ月以上の継続的な摂取が必要で、理想的には6ヶ月から1年程度の期間をかけて効果を判断します。

継続期間中は、定期的に頭皮の状態や新しい毛髪の生育状況を観察し、必要に応じて摂取量の調整を行うことが重要です。

年齢や性別による摂取量の違い

年齢や性別によって必要とされる栄養素の量は異なり、思春期から青年期にかけては、ホルモンバランスの変化に伴い、より多くの栄養素が必要となることが分かっています。

ホルモンバランスの変動は、毛髪の成長サイクルに直接的な影響を与えることが知られており、特に男性ホルモン(DHT)の働きによって、毛根の細胞が影響を受けやすい状態です。

年齢層性別亜鉛推奨量(mg/日)プロテイン推奨量(g/kg/日)
15-17歳男性121.5-2.0
15-17歳女性91.3-1.8
18-29歳男性111.2-1.6
18-29歳女性81.0-1.4
30-49歳男性121.0-1.4
30-49歳女性90.9-1.3

加齢に伴う代謝機能の変化により栄養素の吸収率も変わるので、50歳以上の方々ではより効率的な栄養摂取方法を考慮することが大切です。

また、毛髪の健康維持には、単に栄養素を摂取するだけでなく、規則正しい生活習慣や適度な運動、十分な睡眠なども重要な要素となります。

毎日取り入れたい!具体的な摂取方

健康的な髪の成長を促進するためには、亜鉛とプロテインを日々の食生活に取り入れることが必要です。

亜鉛が豊富な食材と効率的な食べ合わせ

亜鉛が豊富な食品×高品質タンパク質の食べ合わせイメージ

亜鉛の吸収効率を高めるためには、動物性タンパク質との組み合わせが理想的で、特に牡蠣やレバー、赤身肉などの食材は、亜鉛の生体利用率が高いです。

食材名亜鉛含有量(mg/100g)
牡蠣13.2
レバー5.8
牛肉4.2
大豆3.2

植物性食品に含まれる亜鉛は、フィチン酸という成分により吸収が阻害されるため、ビタミンCを多く含む柑橘類や緑黄色野菜と一緒に摂取することで、より効率的な吸収が期待できます。

亜鉛の豊富な食材としては、ナッツ類や種子類も挙げられますが、これらの食材は食物繊維も豊富に含んでいるため、消化吸収を考慮した摂取量の調整が大切です。

良質なプロテインを含む食事メニュー例

タンパク質の質を評価する指標であるPDCAA(タンパク質消化吸収率補正アミノ酸スコア)の観点から、卵や魚介類、乳製品などの動物性タンパク質は、髪の成長に必要なアミノ酸をバランス豊富に含んでいます。

食品群PDCAA値
1.0
牛乳1.0
大豆0.9
小麦0.4

理想的な食事メニュー

  • 朝食 卵とチーズのオムレツ、全粒粉トースト、グリーンスムージー
  • 昼食 サーモンの切り身、キヌアサラダ、豆腐スープ
  • 夕食 鶏むね肉のソテー、蒸し野菜、玄米ご飯

タンパク質の消化吸収を促進するためには、食事の際によく噛み、消化酵素の活性が高まる適度な運動を日常生活に取り入れることもポイントです。

サプリメントの選び方と飲むタイミング

サプリメントを選択する際には亜鉛の化学形態にも注目し、グルコン酸亜鉛やクエン酸亜鉛などの有機態亜鉛は、無機態と比較して生体利用率が高いです。

亜鉛の形態特徴
グルコン酸吸収率高い
クエン酸副作用少ない
硫酸塩価格安価

プロテインサプリメントについては、必須アミノ酸スコアが高いホエイプロテインやカゼインプロテインが推奨され、就寝前のカゼインプロテイン摂取は、夜間の毛髪成長をサポートする効果が期待できます。

サプリメントの摂取タイミングとしては、空腹時を避け、食事と同時または食後30分以内の服用が推奨されており、この方法は、胃への負担を軽減しながら、栄養素の吸収効率を高めることが可能です。

この記事のまとめ

参考文献

Kondrakhina IN, Verbenko DA, Zatevalov AM, Gatiatulina ER, Nikonorov AA, Deryabin DG, Kubanov AA. Plasma zinc levels in males with androgenetic alopecia as possible predictors of the subsequent conservative therapy’s effectiveness. Diagnostics. 2020 May 24;10(5):336.

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Ozturk P, Kurutas E, Ataseven A, Dokur N, Gumusalan Y, Gorur A, Tamer L, Inaloz S. BMI and levels of zinc, copper in hair, serum and urine of Turkish male patients with androgenetic alopecia. Journal of Trace Elements in Medicine and Biology. 2014 Jul 1;28(3):266-70.

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Kondrakhina IN, Verbenko DA, Zatevalov AM, Gatiatulina ER, Nikonorov AA, Deryabin DG, Kubanov AA. A cross-sectional study of plasma trace elements and vitamins content in androgenetic alopecia in men. Biological Trace Element Research. 2021 Sep;199:3232-41.

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