ご自身では直接見えにくい後頭部は、薄毛が進行していても気づきにくく、ある日突然その変化にショックを受ける方が少なくありません。
この記事では、後頭部の薄毛にお悩みの女性に向けて、気になる部分を自然にカバーする髪型選びのポイントから、毎日の生活で見直せる根本的な改善方法まで、専門的な視点から詳しく解説します。
なぜ女性の後頭部は薄くなりやすいのか
女性の薄毛は男性のように生え際が後退したり、頭頂部だけが薄くなったりするケースは比較的少なく、全体的に髪のボリュームが失われる「びまん性脱毛症」が主流です。
特に後頭部は、自分では見えにくいため発見が遅れがちですが、いくつかの要因が重なると薄毛が進行しやすい部位でもあります。
ホルモンバランスの変化と頭皮環境
女性の髪の健康は、女性ホルモンである「エストロゲン」と深く関わっています。エストロゲンは髪の成長を促進し、ハリやコシを保つ働きを担います。
しかし、加齢やストレス、出産や不規則な生活などによってホルモンバランスが乱れ、エストロゲンが減少すると髪の成長期が短くなり、一本一本の髪が細く弱々しくなってしまいます。
この変化が、後頭部を含む頭部全体の薄毛につながるのです。
血行不良が招く栄養不足
髪の毛は、毛根にある毛母細胞が毛細血管から運ばれてくる栄養素と酸素を受け取って成長します。
しかし、デスクワークによる長時間の同じ姿勢や、首・肩のこり、冷え性などは、頭部への血行不良を引き起こします。
特に後頭部は心臓から遠い位置にあるため、血流が滞りやすい傾向にあります。
血行不良に陥った頭皮では毛母細胞に十分な栄養が届かず、健康な髪を育てるのが困難になります。
後頭部の薄毛につながる主な原因
| 原因 | 特徴 | 考えられる対策 |
|---|---|---|
| ホルモンバランスの乱れ | 髪のハリ・コシ低下、全体的なボリュームダウン | 生活習慣の見直し、専門医への相談 |
| 頭皮の血行不良 | 頭皮が硬い、髪が細くなる、抜け毛の増加 | 頭皮マッサージ、適度な運動、入浴 |
| 不適切なヘアケア | 頭皮の乾燥やかゆみ、フケ、切れ毛 | シャンプーの見直し、正しい洗髪方法の実践 |
間違ったヘアケア習慣
良かれと思って行っているヘアケアが、実は頭皮に負担をかけ、薄毛を助長している可能性があります。
例えば、洗浄力の強すぎるシャンプーは頭皮の必要な皮脂まで奪い、乾燥やバリア機能の低下を招きます。また、すすぎ残しは毛穴を詰まらせ、炎症の原因となります。
逆に、髪のダメージを気にするあまり頭皮をしっかり洗えていない場合も、皮脂や汚れが酸化し、頭皮環境を悪化させる一因です。
びまん性脱毛症との関連性
後頭部を含む頭部全体の髪が均等に薄くなる症状は、「びまん性脱毛症」の典型的な特徴です。
これは特定の部位だけでなく、広範囲にわたって髪の密度が低下する状態で、多くの成人女性の薄毛の悩みはこれに該当します。
原因は一つではなく、これまで述べてきたホルモンバランスの乱れや血行不良、栄養不足やストレスなどが複雑に絡み合って発症すると考えられています。
後頭部の薄毛を自然にカバーする髪型選び
薄毛が気になり始めると、髪型でどうにか隠したいと思うのは自然なことです。髪型を工夫するだけで、見た目の印象は大きく変わります。
ここでは、後頭部のボリュームダウンを効果的にカバーし、若々しい印象を与える髪型選びのポイントを紹介します。
トップにボリュームを出すレイヤースタイル
髪の表面に段差をつけるレイヤーカットは、自然な動きと立体感を生み出し、ボリュームアップ効果が期待できます。
後頭部から頭頂部にかけて高めの位置からレイヤーを入れると、髪が持ち上がりやすくなり、ペタッとしがちな後頭部にふんわりとした丸みを持たせられます。
美容師に相談する際は、「後頭部のボリュームが気になる」と具体的に伝えると良いです。
ふんわり感を演出するパーマの活用
パーマは、髪の根元を立ち上げたり毛先にカールをつけたりできるため、全体のボリューム感をコントロールするのに有効な手段です。
特に後頭部が気になる場合は、トップや後頭部を中心に部分的にパーマをかける「ポイントパーマ」がおすすめです。
髪全体に強いカールをかけるのではなく、あくまで自然なボリュームと動きを出すのを目的とします。この方法により、スタイリングも楽になります。
後頭部カバーにおすすめのヘアスタイル
| ヘアスタイル | メリット | オーダーのポイント |
|---|---|---|
| レイヤーボブ | 後頭部に自然な丸みとボリュームが出る | 後頭部のウエイト位置を高めに設定してもらう |
| マッシュショート | トップの長さでボリュームを出しやすい | 全体のシルエットが丸くなるようにカットを依頼 |
| ゆるふわパーマ | スタイリングが簡単で、華やかな印象になる | 根元の立ち上がりを意識したパーマを相談する |
視線をずらすショートボブやミディアムヘア
髪が長いとその重みで根元が引っ張られ、トップや後頭部のボリュームが出にくくなります。
思い切ってショートボブやミディアム程度の長さにカットすると、髪全体の重さが軽減され、根元が立ち上がりやすくなります。
また、ひし形のシルエットを意識したスタイルは、サイドにボリュームを持たせることで、気になる後頭部から視線をそらす効果も期待できます。
逆効果?後頭部の薄毛で避けたい髪型
薄毛を隠そうとするあまり、かえって頭皮に負担をかけたり、薄毛を目立たせてしまったりする髪型もあります。
ここでは、後頭部の薄毛に悩む方が避けるべきヘアスタイルとその理由について解説します。
頭皮を引っ張るポニーテールやきついまとめ髪
髪を強く引っ張り続けるヘアスタイルは、「牽引性(けんいんせい)脱毛症」の原因となります。
ポニーテールやお団子ヘアなど毎日同じ位置で髪をきつく結んでいると、毛根に常に負担がかかり、その部分の血行が悪化します。
この状態が続くと毛根が弱って髪が抜けやすくなり、薄毛が進行してしまいます。特に後頭部で結ぶ機会が多い方は注意が必要です。
避けるべき髪型とその理由
| 避けるべき髪型 | 頭皮への影響 | 推奨される代替案 |
|---|---|---|
| きついポニーテール | 毛根への継続的な負担(牽引性脱毛症リスク) | ゆるめに結ぶ、シュシュなどを使う |
| 分け目が固定された髪型 | 特定部位への紫外線の集中、頭皮の硬化 | 定期的に分け目を変える、ジグザグに分ける |
| 重いロングストレート | 髪の重みで根元が潰れ、ボリュームが出にくい | レイヤーを入れる、ミディアム程度の長さに |
分け目が固定されるヘアスタイル
いつも同じ場所で髪を分けていると、その分け目の部分の頭皮が露出しやすくなります。
そのため紫外線や乾燥などの外部からの刺激を直接受けやすくなり、頭皮環境の悪化につながります。
また、分け目の部分の髪は常に同じ方向に倒れているため、根元が立ち上がりにくくなり、地肌がより目立つ原因にもなります。
重さでボリュームが失われるロングのストレートヘア
ロングヘア、特にレイヤーの入っていないストレートスタイルは、髪自体の重さで下に引っ張られる力が強く働きます。
そのため、根元が立ち上がりにくく、トップや後頭部がペタッとした印象になりがちです。
髪の密度が低下している場合、この髪型は地肌の透け感をより強調してしまう可能性があります。
毎日の習慣から見直す根本的な改善方法
髪型でカバーするのも大切ですが、それと同時に薄毛の進行を食い止め、健康な髪を育てるための根本的なケアに取り組むことが重要です。
高価な育毛剤を使う前に、まずは毎日の生活習慣を見直してみましょう。
髪の成長を支える栄養バランスの取れた食事
髪の主成分は「ケラチン」というタンパク質ですので、まずは良質なタンパク質の十分な摂取が基本です。
それに加えて、タンパク質の合成を助ける亜鉛や、頭皮の血行を促進するビタミンE、頭皮環境を整えるビタミンB群などをバランス良く食事に取り入れると、健やかな髪を育む土台となります。
健やかな髪を育む栄養素と食材の例
| 栄養素 | 髪への働き | 多く含まれる食材 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の主成分であるケラチンを構成する | 肉、魚、卵、大豆製品 |
| 亜鉛 | タンパク質の合成を助け、細胞分裂を促す | 牡蠣、レバー、牛肉、ナッツ類 |
| ビタミンB群 | 頭皮の新陳代謝を促し、皮脂の分泌を調整する | 豚肉、うなぎ、玄米、緑黄色野菜 |
頭皮の血行を促進するマッサージ
硬くなった頭皮をマッサージでほぐして血行を促進する工夫は、毛根に栄養を届ける上で非常に効果的です。
シャンプーの際や、リラックスタイムなどに、指の腹を使って優しく頭皮全体を動かすようにマッサージしましょう。
強い力でゴシゴシこすると、かえって頭皮を傷つけてしまうため、あくまで「気持ち良い」と感じる程度の力加減で行うのがポイントです。
- 爪を立てず、指の腹を使う
- 頭皮をこするのではなく、頭蓋骨から動かすイメージで
- 下から上へ、血流を心臓に戻すように行う
- 1回5分程度を目安に、毎日続けることが大切
質の良い睡眠と成長ホルモンの関係
髪の成長や頭皮の修復は、主に睡眠中に行われます。入眠後すぐに訪れる深い眠りの間に多く分泌される「成長ホルモン」は毛母細胞の分裂を活発にし、髪の成長を促す重要な役割を担っています。
睡眠不足が続いたり、眠りが浅かったりすると成長ホルモンの分泌が減少し、髪の健やかな成長が妨げられます。
毎日6〜8時間程度の質の良い睡眠を確保するよう心がけましょう。
正しいシャンプーと頭皮ケアの方法
毎日のシャンプーは、頭皮を清潔に保ち、健康な髪が育つ環境を整えるための基本です。
しかし、洗い方によっては頭皮にダメージを与えてしまう場合もあります。正しいシャンプー方法を身につけ、頭皮環境を健やかに保ちましょう。
頭皮環境を整える正しいシャンプーの手順
| 手順 | 目的 | ポイント |
|---|---|---|
| ブラッシング | 髪の絡まりをほどき、汚れを浮かせる | 毛先から優しくとかす |
| 予洗い | お湯だけで大半の汚れを洗い流す | 38℃程度のぬるま湯で1〜2分しっかり |
| シャンプー | 頭皮の皮脂や汚れを落とす | よく泡立て、指の腹で頭皮をマッサージするように洗う |
髪型で隠すだけではない専門的なアプローチ
セルフケアを続けても改善が見られない場合や、より積極的に改善を目指したい場合は、専門クリニックへの相談を検討しましょう。
女性の薄毛治療には、医学的根拠に基づいた様々な方法があります。
女性の薄毛治療で使われる内服薬と外用薬
クリニックでの治療の基本となるのが、内服薬と外用薬です。
内服薬では、髪の成長に欠かせないアミノ酸やビタミン、ミネラルを配合したサプリメントや、頭皮の血流を改善する薬などが処方されます。
外用薬としては、日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨されている発毛成分「ミノキシジル」を配合した塗り薬が中心となります。
これらを組み合わせると、体の内側と外側の両方から発毛をサポートします。
頭皮に直接働きかける注入治療
より積極的な治療を求める方には、注入治療という選択肢もあります。
これは、髪の成長を促す「成長因子(グロースファクター)」などを、極細の針を使って頭皮に直接注入する治療法です。
毛根周辺に有効成分をダイレクトに届けられるため、内服薬や外用薬だけでは効果を実感しにくい方にも変化が期待できます。
女性の薄毛に対する主な専門的治療法
| 治療法 | 概要 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 内服薬 | 髪の成長に必要な栄養素を補給し、血行を促進する薬を服用 | 抜け毛の抑制、発毛促進 |
| 外用薬 | 発毛効果が認められた成分(ミノキシジルなど)を頭皮に塗布 | 毛母細胞の活性化、発毛促進 |
| 注入治療 | 髪の成長因子などを頭皮に直接注入し、発毛を促す | より積極的な発毛効果 |
専門クリニックでのカウンセリングの価値
専門クリニックを受診する最大のメリットは、医師による正確な診断を受けられることです。
マイクロスコープで頭皮の状態を詳細に確認し、問診を通じて生活習慣やホルモンバランスの状態などを総合的に判断した上で、一人ひとりの症状や原因に合った治療法を提案してくれます。
インターネットの情報だけで自己判断するのではなく、専門家のカウンセリングを受けることが、改善への確実な一歩となります。
改善に向けて知っておきたい大切なこと
ここでは、治療期間や費用、そして信頼できるクリニックの選び方について解説します。
治療効果を実感するまでの期間
薄毛治療は、始めてすぐに効果が現れるものではありません。髪には「ヘアサイクル(毛周期)」があり、新しい髪が成長し、目に見える長さになるまでには時間がかかります。
一般的に、治療を開始してから抜け毛の減少や産毛の発生といった初期の変化を感じるまでに約3ヶ月、見た目の変化として効果を実感できるようになるまでには、少なくとも6ヶ月程度の期間が必要です。
焦らず、根気強く治療を続けていきましょう。
費用と治療計画の立て方
女性の薄毛治療は、多くの場合、健康保険が適用されない自由診療となります。そのため、費用はクリニックや治療内容によって大きく異なります。
カウンセリングの際には、月々にかかる費用の目安や、治療全体の総額について、事前に明確な説明を受けるようにしましょう。
無理なく続けられる範囲で自分に合った治療計画を立てることが、治療を成功させるための鍵となります。
信頼できるクリニック選びの基準
安心して治療を任せられるクリニックを選ぶことは、何よりも大切です。
カウンセリングが丁寧で、悩みや不安を親身に聞いてくれるか、治療のメリットだけでなくデメリットやリスクについてもきちんと説明してくれるか、料金体系が明確であるかなどを基準に判断しましょう。
信頼できるクリニック選びのチェックポイント
| チェック項目 | 確認するポイント | なぜ重要か |
|---|---|---|
| カウンセリングの丁寧さ | 医師が直接悩みを聞き、質問に丁寧に答えてくれるか | 患者との信頼関係を築く姿勢の表れ |
| 治療法の説明 | メリットだけでなく、リスクや副作用の説明も十分か | インフォームド・コンセント(十分な説明と同意)の徹底 |
| 料金体系の明確さ | 提示された以外の追加費用が発生しないか確認できるか | 金銭的な不安なく治療に専念するため |
よくある質問
さいごに、女性の後頭部の薄毛に関して、多くの方が抱く疑問にお答えします。
- 髪型を変えるだけで本当に印象は変わりますか?
-
大きく変わります。髪型は人の印象を左右する重要な要素です。
後頭部に丸みとボリュームを持たせるカットや、ふんわりとした動きを出すパーマなどを取り入れると薄毛の印象を効果的にカバーし、全体的に若々しく華やかな雰囲気に見せられす。
まずは信頼できる美容師に相談してみると良いでしょう。
- 市販の育毛剤では効果がありませんか?
-
市販の育毛剤の中には、血行促進や頭皮環境の改善を目的とした有効成分が含まれているものもあり、一定の効果が期待できる場合もあります。
しかし、その効果は医薬品に比べて穏やかであるものが一般的です。
数ヶ月使用しても変化を感じられない場合は、薄毛の原因がセルフケアだけでは対応できない状態にある可能性が考えられます。その際は、専門クリニックの受診を検討しましょう。
- 治療を始めたら、どのくらいで効果が出ますか?
-
前述の通り、ヘアサイクルがあるため、効果を実感するにはある程度の時間が必要です。
個人差はありますが、治療開始から3ヶ月〜6ヶ月で抜け毛の減少や髪質の変化を感じ始め、半年から1年ほどで見た目の改善を実感される方が多いです。治療は継続が何よりも大切です。
- 遺伝的な要因も関係しますか?
-
薄毛に遺伝的な要因が関与することはありますが、女性の薄毛の場合は男性ほど遺伝の影響が強いわけではなく、後天的な要因が大きく影響すると考えられています。
ホルモンバランスの乱れや生活習慣、ストレスなど、改善できる要因がたくさんあります。
遺伝だからと諦めずに、まずはご自身の生活を見直し、専門家のアドバイスを求めることが改善への道を開きます。
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