
女性の薄毛は、男性の薄毛と比較して社会的な認知度が低いことから、悩みを抱えながらも適切な対処法を見つけられない方が多くいます。女性の薄毛は男性とは異なる特徴を持ち、その種類も多岐にわたります。
この記事では、女性特有の薄毛の種類とその原因、特徴について詳しく解説します。薄毛の悩みを抱える女性の方々が自分の症状を正しく理解し、適切な対処法を見つける手助けとなれば幸いです。

女性の薄毛に関する基本情報
- 女性の薄毛は30代後半から増加し始め、40〜50代でピークを迎えることが多い
- 日本人女性の3人に1人が何らかの薄毛の悩みを抱えているとされる
- 薄毛症状に気づいてから対策を始めるまで平均1.8年かかるという調査結果がある
- 早期発見・早期対策が薄毛進行防止の鍵となる
- 女性の薄毛は完全に脱毛することは少なく、適切な対策で改善できることが多い
薄毛の悩みを抱える女性の割合 | 年代 | 主な特徴 |
---|---|---|
約20% | 30代 | 産後脱毛や分け目の薄さを自覚し始める |
約35% | 40代 | びまん性脱毛症が増加、頭頂部の薄さに気づく |
約50% | 50代 | 更年期の影響で女性型脱毛症(FPHL)が増加 |
約60% | 60代以上 | 複合的な原因による薄毛が進行 |
女性の薄毛の基本的な特徴
女性の薄毛は男性の薄毛とは異なる特徴を持っています。

男性の場合、前頭部(生え際)から後退していくM字型や、頭頂部から薄くなるO字型の薄毛パターンが顕著に表れることが多いのに対し、女性の場合は全体的に髪のボリュームが減少していく「びまん性」の薄毛が特徴的です。
また、女性の薄毛は男性ホルモンの影響だけでなく、女性ホルモンの減少や栄養状態、ストレス、生活習慣など、多岐にわたる要因が複雑に絡み合って発症します。
このため、薄毛の種類も多様で、それぞれ適切な対処法が異なります。

男性と女性の薄毛パターンの主な違い
- 男性:特定部位(生え際・頭頂部)から進行する明確なパターンがある
- 女性:頭部全体が徐々に薄くなる「びまん性」が多い
- 男性:完全に脱毛する部位ができることが多い
- 女性:完全に脱毛することは稀で、全体的な密度が低下する
- 男性:進行が比較的早い傾向がある
- 女性:ゆっくりと進行することが多い
要因 | 男性型薄毛への影響 | 女性型薄毛への影響 |
---|---|---|
男性ホルモン | 主要因(DHT) | 一部関与 |
女性ホルモン | ほぼ関係なし | 減少が大きく影響 |
遺伝的要因 | 強い関連性 | 中程度の関連性 |
ストレス | 一部関与 | 大きく影響 |
栄養状態 | 一部関与 | 大きく影響 |
加齢 | 加速因子 | 主要因の一つ |
1. びまん性脱毛症

びまん性脱毛症は、女性の薄毛の中で最も多いタイプです。名前の通り、頭部全体がまんべんなく薄くなることが特徴で、特定の部分だけが極端に薄くなる男性型の薄毛とは異なります。
30代後半から40代以降の女性に多く見られ、加齢とともに女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減少することが主な原因とされています。
エストロゲンは髪の毛の成長を促進し、健康な状態を維持する働きがあるため、その減少は髪の毛の成長サイクルに影響を与えます。
びまん性脱毛症の初期症状としては、まず分け目から薄くなり始めることが多く、鏡で見たときに「分け目の地肌が以前より目立つようになった」と感じることがあります。
また、全体的に髪のボリュームが減少し、セットしても髪型が決まりにくくなったり、以前は束になってまとめられていた髪が少なくなったりすることで気づく方も多いです。
びまん性脱毛症の主な症状と進行過程
- 初期:分け目の地肌が目立ち始める
- 中期:髪全体のボリュームが減少、セットが決まりにくくなる
- 進行期:頭皮全体が透けて見える
- 末期:髪が細く短い毛に変わり、密度が大幅に減少
- 特徴:急激な抜け毛よりも、髪質の変化(細毛化)が中心

びまん性脱毛症の特徴 | 発症時期・頻度 | 主な原因 | 回復の可能性 |
---|---|---|---|
分け目から薄くなる | 30代後半〜50代に多い | 女性ホルモン減少 | 早期対策で高い |
全体的なボリューム減少 | 女性薄毛の約60% | ストレス | 原因除去で中程度 |
髪の細毛化 | 更年期に増加 | 栄養不足 | 食生活改善で中程度 |
ゆっくりとした進行 | 自覚しにくい | 遺伝的要因 | 限定的 |
完全脱毛はまれ | 徐々に気づく | 生活習慣 | 改善で高い |
2. 女性型脱毛症(FPHL: Female Pattern Hair Loss)
女性型脱毛症(FPHL)は、女性に特有の薄毛パターンを示す脱毛症で、医学的には「女性型男性型脱毛症」とも呼ばれます。

びまん性脱毛症と混同されることもありますが、FPHLはより特定のパターンで進行する点が特徴です。
FPHLの最大の特徴は、頭頂部を中心に薄くなることです。男性型脱毛症(AGA)では生え際から後退していくことが多いのに対し、FPHLでは生え際はほとんど後退せず、頭頂部から薄くなっていきます。
このため、髪型によっては薄毛が目立ちにくく、気づくのが遅れることもあります。
FPHLの進行度は、ルードヴィヒ分類というシステムで評価されます。Ⅰ型は前頭部の中央から軽度の薄毛が始まる段階、Ⅱ型は頭頂部全体に薄毛が広がる段階、Ⅲ型は頭頂部全体が著しく薄くなる段階を指します。
FPHLは完全に脱毛することは少なく、どんなに進行しても一定の髪は残るのが特徴です。

女性型脱毛症(FPHL)のルードヴィヒ分類
- Ⅰ型:前頭部中央から軽度の薄毛が始まる(分け目が広がる程度)
- Ⅱ型:頭頂部全体に薄毛が広がり、明らかな密度低下が見られる
- Ⅲ型:頭頂部全体が著しく薄くなり、広範囲で頭皮が透けて見える
- 基本的に生え際は保たれる(男性型脱毛症との大きな違い)
- 完全脱毛には至らず、薄い髪が残る
ルードヴィヒ分類 | 薄毛の状態 | 目安となる年齢 | 推奨される対策 |
---|---|---|---|
Ⅰ型 | 分け目が広がり、前頭部中央が薄くなる | 40代〜 | 頭皮ケア、栄養補給 |
Ⅱ型 | 頭頂部全体に薄毛が広がる | 50代〜 | 医療的治療の検討 |
Ⅲ型 | 頭頂部全体が著しく薄くなる | 60代〜 | 積極的医療介入 |
3. FAGA(女性男性型脱毛症/Female Androgenetic Alopecia)

FAGA(女性男性型脱毛症)は、女性型脱毛症(FPHL)と混同されやすい薄毛の一種です。
実際、一部の専門家は両者を同義で使用することもありますが、より厳密には、FAGAは男性型脱毛症(AGA)に似た症状を女性が発症するタイプを指します。
FAGAの特徴は、男性のAGAほど顕著ではないものの、前頭部や頭頂部が薄くなる傾向があることです。ただし、男性のように極端な脱毛にはならず、完全にハゲ上がることはほとんどありません。
また、男性のAGAでは生え際がM字型に後退することが特徴的ですが、FAGAではそこまで明確なM字型にはならないことが多いです。
FAGAの主な原因は、男性ホルモン(アンドロゲン)の影響です。
男性ホルモンの一種であるテストステロンが5α-リダクターゼという酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変換されると、毛包に作用して毛髪の成長サイクルを短縮させ、細い毛しか生えなくなります。

FAGAの特徴と男性型脱毛症(AGA)との比較
- 前頭部や頭頂部が薄くなる傾向がある(男性AGAと類似)
- 男性ほど極端な脱毛にはならず、完全ハゲにはならない
- 生え際の後退は男性ほど顕著ではない
- 閉経後に進行が加速することが多い
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など男性ホルモン過剰な疾患で発症リスク上昇
比較項目 | 男性型脱毛症(AGA) | 女性男性型脱毛症(FAGA) |
---|---|---|
主な薄毛部位 | M字型の生え際、頭頂部(O型) | 頭頂部中心、前頭部(生え際は軽度) |
進行速度 | 比較的早い | ゆっくり進行 |
完全脱毛 | あり | まれ |
ホルモン影響 | 男性ホルモン(DHT)が主因 | 男性ホルモンと女性ホルモン減少の複合的影響 |
発症年齢 | 20代から | 40〜50代が多い(閉経前後) |
4. 円形脱毛症

円形脱毛症は、突然、頭部の一部に円形または楕円形の脱毛斑が生じる脱毛症です。この症状は、薄毛とは異なり、完全に髪の毛がなくなった部分(脱毛斑)として現れるのが特徴です。
円形脱毛症の特徴は、その発症の仕方にあります。ある日突然、コインのような大きさの円形または楕円形の脱毛斑が現れ、その部分の髪の毛が完全に抜け落ちた状態になります。
脱毛斑のサイズや数は様々で、小さな脱毛斑が複数現れることもあれば、大きな脱毛斑が1つだけできることもあります。
また、円形脱毛症は頭皮だけでなく、眉毛やまつげ、ひげなどの体毛にも生じることがあります。
重症化すると全頭脱毛症(全ての頭髪が抜ける)や汎発性脱毛症(全身の毛が抜ける)に進行することもありますが、これは比較的稀なケースです。
円形脱毛症の主な特徴と種類
- 単発型:1〜2個の脱毛斑ができる最も一般的なタイプ
- 多発型:複数の脱毛斑が発生するタイプ
- 蛇行型:脱毛斑が帯状に広がるタイプ
- 全頭型:頭部全体の毛髪が抜けるタイプ
- 汎発型:全身の毛が抜けるタイプ

円形脱毛症のタイプ | 特徴 | 回復率 | 治療法 |
---|---|---|---|
単発型 | 1〜2個の脱毛斑 | 約80% | ステロイド外用薬・局所注射 |
多発型 | 複数の脱毛斑 | 約60% | ステロイド外用薬・内服薬 |
蛇行型 | 帯状に広がる脱毛斑 | 約40% | 免疫療法・PUVA療法 |
全頭型 | 頭部全体の脱毛 | 約30% | 免疫抑制剤・JAK阻害薬 |
汎発型 | 全身の脱毛 | 約20% | 免疫抑制剤・JAK阻害薬 |
5. 分娩後脱毛症(産後脱毛症)
分娩後脱毛症、または産後脱毛症は、出産後約3〜6ヶ月頃に発症する一時的な脱毛症です。

多くの出産経験者が経験する現象で、通常は一過性であり、特別な治療をしなくても1年程度で自然に回復することが多いという特徴があります。
分娩後脱毛症の主な特徴は、突然大量の抜け毛を経験することです。シャンプーやブラッシングの際に、通常より多くの髪が抜け落ちることに気づくことが多く、中には一度に束になって抜けることもあります。
特に前頭部や頭頂部、側頭部など、頭皮全体から均等に抜け落ちるのが特徴で、特定の部位だけが薄くなるわけではありません。
この症状は非常に不安を感じさせるものですが、分娩後脱毛症の場合、完全に禿げ上がることはなく、ある程度薄くなった後で回復に向かうのが一般的です。
また、髪の毛の質が一時的に変わることもあり、妊娠前はストレートだった髪がウェーブがかかるようになったり、その逆のパターンもあります。

分娩後脱毛症の発症メカニズムと特徴
- 妊娠中:エストロゲン増加により毛髪の成長期が延長され、通常より抜け毛が減少
- 出産直後:エストロゲン急減により多くの毛髪が一斉に休止期へ移行
- 産後3〜6ヶ月:休止期に入った毛髪が一斉に抜け落ちる
- 産後6〜12ヶ月:新しい毛髪が生え始め、徐々に回復
- 特徴:自然回復するのが一般的(特別な治療は通常不要)
産後の時期 | 髪の状態 | 心理的影響 | 推奨されるケア |
---|---|---|---|
妊娠中 | 抜け毛減少・髪が豊かに | 満足感 | 低刺激シャンプー |
出産〜2ヶ月 | 大きな変化なし | 変化に気づかない | バランスの良い食事 |
産後3〜6ヶ月 | 大量脱毛期 | 強い不安・ショック | 過度なヘアケア避ける |
産後6〜12ヶ月 | 新しい髪の成長期 | 安堵感 | 頭皮マッサージ |
産後1年以降 | ほぼ回復 | 自信回復 | 通常のヘアケア再開 |
6. 粃糠(ひこう)性脱毛症

粃糠性脱毛症は、頭皮に大量のフケが生じることを特徴とする脱毛症です。「粃糠」とは「米ぬか」のことで、この脱毛症ではフケが米ぬかのように細かく大量に発生することから、この名前が付けられました。
粃糠性脱毛症の最も顕著な特徴は、乾燥したフケが大量に発生することです。このフケは頭皮に付着しやすく、髪の毛を洗っても完全に取り除くことが難しいことがあります。
また、頭皮のかゆみを伴うことが多く、無意識に頭を掻いてしまうことで炎症が悪化したり、頭皮や髪が傷ついたりすることがあります。
粃糠性脱毛症では、フケが毛穴を塞ぐことで頭皮環境が悪化し、髪の毛の成長が妨げられます。その結果、髪の毛が細くなったり、成長が遅くなったりして、徐々に薄毛が進行していきます。
特に頭頂部や前頭部など、頭皮の状態が悪化しやすい部位から脱毛が始まることが多いです。
粃糠性脱毛症の特徴と対策
- 乾燥した細かいフケが大量に発生する
- 頭皮の炎症やかゆみを伴うことが多い
- フケが毛穴を塞ぎ、髪の成長を阻害
- 過度のシャンプーや不適切な頭皮ケアで悪化
- 頭皮の乾燥が主原因のため、保湿ケアが重要

症状 | 原因 | 対策 | 推奨製品タイプ |
---|---|---|---|
乾燥フケ | 頭皮の乾燥 | 保湿ケア | 保湿成分配合シャンプー |
かゆみ | 頭皮の炎症 | 抗炎症ケア | 抗炎症成分配合ローション |
頭皮の赤み | 過度の掻き傷 | 低刺激ケア | 低刺激・弱酸性シャンプー |
毛穴詰まり | フケの蓄積 | 毛穴クレンジング | 角質ケア製品 |
髪の細毛化 | 毛根の栄養不足 | 栄養補給 | 頭皮用美容液・サプリメント |
7. 脂漏(しろう)性脱毛症
脂漏性脱毛症は、過剰な皮脂の分泌によって引き起こされる脱毛症です。

皮脂腺から分泌される油分(皮脂)が通常よりも多く分泌されることで、頭皮環境が悪化し、最終的に髪の毛の成長に影響を与える症状です。
脂漏性脱毛症の最も顕著な特徴は、頭皮がベタつき、油っぽい感じがすることです。髪を洗った直後でも頭皮が油っぽくなりやすく、1日経たないうちに髪全体がぺたんとなってしまうこともあります。
また、過剰な皮脂は黄色がかった大きめのフケとなることがあり、このフケは粘り気があるため、頭皮に付着しやすい特徴があります。
さらに、脂漏性脱毛症では頭皮のかゆみや赤みなどの炎症症状を伴うことが多く、無意識に頭を掻いてしまうことで頭皮が傷つき、症状が悪化する悪循環に陥ることがあります。
脂漏性脱毛症の症状と原因

- 頭皮の過度なベタつき・脂っぽさ
- 黄色みがかった粘着性のあるフケ
- 頭皮の赤みやかゆみ(炎症症状)
- 洗髪後すぐに髪がペタッとなる
- マラセチア菌の過剰増殖による炎症
要因 | 皮脂分泌への影響 | 対策方法 | 注意点 |
---|---|---|---|
ホルモンバランス | 男性ホルモン増加で皮脂増加 | ホルモンバランス改善 | 自己判断での治療は避ける |
ストレス | コルチゾール分泌で皮脂増加 | ストレス管理・リラクゼーション | 継続的な対策が必要 |
食生活 | 脂質・糖質過多で皮脂増加 | バランス食・オメガ3摂取 | 極端な食事制限は逆効果 |
洗髪習慣 | 過剰・不足どちらも悪化要因 | 適切な頻度と方法の洗髪 | 頭皮環境に合わせた調整 |
睡眠不足 | ホルモン乱れで皮脂分泌異常 | 質の良い睡眠の確保 | 就寝前の習慣見直し |
8. 牽引性脱毛症

牽引性脱毛症は、髪の毛を継続的に引っ張ることで発生する脱毛症です。この症状は特定の髪型やヘアスタイリングの習慣によって引き起こされ、女性に多く見られます。
牽引性脱毛症の最も特徴的な点は、髪を引っ張る力が加わる部分に沿って脱毛が生じることです。例えば、いつも同じ位置でポニーテールやお団子ヘアを結んでいる場合、その結び目の周囲から脱毛が始まります。
また、三つ編みやコーンロウ(編み込み)のように髪を強く引っ張るヘアスタイルを頻繁に行う場合は、髪の生え際や側頭部から脱毛が進行することが多いです。
初期段階では、髪を引っ張られる部分の頭皮に赤みやかゆみ、痛みなどの炎症症状が現れることがあります。その後、徐々に髪の毛が細くなり、最終的には完全に抜け落ちて薄毛や禿げの部分が生じます。
特に、前頭部の生え際(ヘアライン)が後退したり、側頭部が薄くなったりするのが特徴的です。
牽引性脱毛症を引き起こしやすいヘアスタイル

- きつく結んだポニーテール
- 高い位置のお団子ヘア
- タイトな三つ編み
- コーンロウやボックスブレイズなどの編み込み
- 長期間装着するエクステンション
- 重いウィッグやヘアピース
- きつく固定するヘアクリップやヘアピン
牽引性脱毛症の進行段階 | 症状 | 回復可能性 | 推奨される対策 |
---|---|---|---|
初期 | 頭皮の赤み・痛み | 非常に高い | ヘアスタイル変更 |
中期 | 部分的な薄毛 | 高い | 頭皮ケア追加 |
進行期 | 明確な脱毛部位 | 中程度 | 医療的ケア検討 |
慢性期 | 毛包の瘢痕化 | 低い | 専門医による治療 |
末期 | 永久脱毛 | 極めて低い | 植毛などの検討 |
9. 休止期脱毛症

休止期脱毛症は、髪の毛の成長サイクルにおける「休止期」の毛髪が通常よりも多く抜け落ちる状態を指します。この症状は、急性休止期脱毛症と慢性休止期脱毛症の2つに分類されます。
急性休止期脱毛症の特徴は、突然、大量の抜け毛が生じることです。通常、1日の抜け毛の本数は50〜100本程度とされていますが、急性休止期脱毛症では数百本以上の髪が一度に抜け落ちることもあります。
この症状はショッキングで不安を感じさせるものですが、多くの場合は一時的なものであり、原因が解消されれば自然に回復する傾向があります。
一方、慢性休止期脱毛症は、長期間にわたり徐々に抜け毛が増加する状態です。
急性のものほど顕著な抜け毛はありませんが、長期間にわたって髪の毛の量が減少していくため、徐々に髪のボリュームが減り、薄毛が目立つようになります。

休止期脱毛症の主な原因と特徴
- 強いストレスや精神的ショック(発症は通常ストレス後2〜3ヶ月)
- 高熱を伴う重篤な病気(インフルエンザ、肺炎など)
- 手術や大きな怪我などの身体的ストレス
- 薬剤(抗がん剤、降圧剤、抗凝固剤など)
- 極端なダイエットや栄養不足(特に鉄分、亜鉛、タンパク質)
要因 | 脱毛のタイミング | 回復期間 | 予防・対策 |
---|---|---|---|
精神的ストレス | ストレス後2〜3ヶ月 | 3〜6ヶ月 | ストレス管理法習得 |
高熱・重病 | 発熱後1〜2ヶ月 | 4〜6ヶ月 | 休養・栄養補給 |
出産 | 出産後3〜4ヶ月 | 6〜12ヶ月 | バランス食・休息 |
急激なダイエット | ダイエット開始2〜3ヶ月後 | 食生活改善後3〜6ヶ月 | 緩やかな減量計画 |
薬剤 | 服用開始2週間〜3ヶ月後 | 薬剤中止後3〜12ヶ月 | 医師と相談 |
10. 薬剤性脱毛症
薬剤性脱毛症は、薬の服用が原因で発生する脱毛症です。

この脱毛症は、特定の薬物の副作用として発症し、薬の種類や個人の体質によって症状の現れ方や重症度が異なります。
薬剤性脱毛症の特徴は、薬の服用開始から数週間から数ヶ月後に症状が現れることです。多くの場合、全体的に髪の毛が薄くなる「びまん性」のパターンを示し、特定の部位だけが極端に薄くなることは少ないです。
また、通常の抜け毛よりも多くの髪の毛が抜け落ちることで気づくことが多く、シャンプーやブラッシング時に大量の抜け毛を経験することがあります。
薬剤性脱毛症の最も特徴的な点は、原因となる薬剤の服用を中止することで、多くの場合は回復することです。ただし、回復までの期間は個人差があり、数ヶ月から1年以上かかることもあります。
また、一部の薬剤(特に長期間の抗がん剤治療など)による脱毛症では、完全に元の状態に戻らないこともあります。

薬剤性脱毛症を引き起こす主な薬剤
- 抗がん剤(特に細胞分裂を阻害するタイプ)
- 抗凝固剤(ヘパリン、ワルファリンなど)
- 降圧剤(β遮断薬、ACE阻害剤など)
- 向精神薬(抗うつ薬、抗精神病薬など)
- ホルモン剤(避妊薬、女性ホルモン剤など)
- レチノイド系薬剤(ビタミンA誘導体)
薬剤の種類 | 脱毛メカニズム | 発症時期 | 回復期間 | 注意点 |
---|---|---|---|---|
抗がん剤 | 細胞分裂阻害 | 投与後2〜3週間 | 治療終了後2〜6ヶ月 | 完全脱毛も起こりうる |
抗凝固剤 | 毛乳頭への栄養供給低下 | 服用後2〜4ヶ月 | 中止後3〜6ヶ月 | 徐々に進行 |
降圧剤 | 血流低下・ホルモン影響 | 服用後3〜6ヶ月 | 中止後4〜8ヶ月 | 自己判断で中止しない |
向精神薬 | 神経伝達物質への影響 | 服用後1〜3ヶ月 | 中止後2〜6ヶ月 | 代替薬検討可能 |
ホルモン剤 | ホルモンバランス変化 | 服用後2〜5ヶ月 | 中止後3〜9ヶ月 | 個人差が大きい |
まとめ
女性の薄毛は、男性の薄毛とは異なる特徴を持ち、その種類も多岐にわたります。
びまん性脱毛症、女性型脱毛症(FPHL)、FAGA(女性男性型脱毛症)、円形脱毛症、分娩後脱毛症、粃糠性脱毛症、脂漏性脱毛症、牽引性脱毛症、休止期脱毛症、薬剤性脱毛症など、様々なタイプがあります。
それぞれの薄毛タイプによって原因や症状、進行パターンが異なるため、自分の薄毛がどのタイプに当てはまるのかを理解することが、適切な対処法を見つける第一歩となります。
また、薄毛は単なる美容上の問題だけでなく、健康状態を反映していることもあるため、気になる症状がある場合は早めに専門家に相談することをお勧めします。

女性の薄毛対策の基本ポイント
- 早期発見・早期対策が最も重要
- 自己判断せず、専門医の診断を受ける
- 原因に合わせた適切な対策を選ぶ
- 日常の頭皮ケアを丁寧に行う
- バランスの良い食事と質の良い睡眠を確保
- ストレス管理も重要な対策の一つ
適切な診断と治療、そして日常のケアによって、多くの場合、薄毛の進行を遅らせたり、改善したりすることが可能です。
薄毛の悩みを抱える女性が自分に合った対処法を見つけ、健やかな髪と心を取り戻せるよう、正しい知識と適切なケアが広まることを願っています。
薄毛タイプ | 最も適した対策 | 医療的対応 | セルフケア |
---|---|---|---|
びまん性脱毛症 | 女性ホルモンバランス調整 | 内服薬・外用薬 | 頭皮マッサージ・栄養バランス |
女性型脱毛症(FPHL) | 5α還元酵素阻害 | ミノキシジル・FAGA治療薬 | 頭皮環境改善・抗酸化食品 |
円形脱毛症 | 免疫調整 | ステロイド治療・免疫療法 | ストレス管理・規則正しい生活 |
分娩後脱毛症 | 経過観察が基本 | 必要時ビタミン処方 | 栄養バランス・休息 |
粃糠性/脂漏性脱毛症 | 頭皮環境改善 | 抗真菌薬・頭皮ケア指導 | 適切な洗髪・専用シャンプー |
牽引性脱毛症 | 原因となる習慣の改善 | 頭皮の炎症治療 | ヘアスタイル変更・低刺激ケア |
女性の薄毛の概要について理解された方は、それぞれの薄毛の症状について詳しく勉強していきましょう。