女性の脱毛症には様々な種類があり、それぞれ異なる症状や原因を持っています。
本記事では、主な10種類の脱毛症について、その症状や自己診断の方法、医療機関での検査方法に焦点を当てて詳しく解説します。
薄毛や脱毛にお悩みの方が、自分の症状に合った適切な対応ができるよう、参考にしていただければ幸いです。

1. びまん性脱毛症
びまん性脱毛症は、頭部全体の髪の毛が均等に薄くなっていく症状で、女性に多く見られる脱毛症です。
男性型脱毛症とは異なり、特定の部位だけが極端に薄くなるのではなく、全体的に髪の密度が低下していくのが特徴です。

頭髪全体のボリュームが徐々に減少し、前頭部から頭頂部にかけて髪の密度が低下します。これにより分け目が次第に広がり、地肌が透けて見えるようになります。
また、髪の毛自体が細くなり、コシやハリが失われるため、スタイリングがしづらくなることも多いです。日常生活では、シャンプーやブラッシング時に抜け毛の量が増加することに気づくことが多いでしょう。
びまん性脱毛症の特徴

項目 | 詳細 |
---|---|
好発部位 | 頭部全体(特に頭頂部と前頭部) |
主な症状 | ・頭髪全体のボリューム減少 ・分け目の拡大 ・髪の毛の細化 ・シャンプー時の抜け毛増加 |
進行速度 | 緩やかに進行(数ヶ月〜数年) |
セルフチェック | ・過去の写真との比較 ・分け目の幅測定 ・毛髪牽引試験(Hair Pull Test) |
医療検査 | ・問診と視診 ・血液検査(甲状腺機能、鉄分、ホルモン値など) ・ダーモスコピー検査 |
- 男性型脱毛症と異なり部分的ではなく全体的な薄毛が特徴
- ストレスや栄養不足、ホルモンバランスの乱れが主な原因
- 早期発見と原因特定が治療成功の鍵となる
- 女性ホルモンの減少する30代後半から50代に発症しやすい
自宅でできるびまん性脱毛症のチェック方法としては、過去の写真と現在の髪のボリュームを比較することが効果的です。

明るい場所で鏡を見て分け目の幅を確認し、以前より広がっている場合は注意が必要でしょう。
また、シャンプー時の抜け毛を数日間数えてみることも有効です。一般的に1日100本以上の抜け毛がある場合は、専門医への相談を検討すべきでしょう。
医療機関では、問診で脱毛の進行状況やパターン、家族歴、服用中の薬剤や既往症、ストレスの有無や生活習慣の変化などを詳しく聞き取ります。
頭皮の視診と触診では、炎症やフケの有無、髪の毛の太さや質感を確認します。さらに詳細な診断のためにダーモスコピー検査や血液検査も行われます。
びまん性脱毛症は他の疾患に起因する脱毛症と症状が似ていることがあるため、これらの検査によって他の病気による脱毛症との鑑別診断を行うことが重要です。
2. 女性型脱毛症(FPHL)
女性型脱毛症(Female Pattern Hair Loss: FPHL)は、主に頭頂部を中心に髪が薄くなる脱毛症です。男性型脱毛症(AGA)と異なり、生え際があまり後退せず、前頭部から頭頂部にかけての薄毛が特徴的です。
このタイプの脱毛症では、頭頂部の分け目が徐々に広がり、髪の毛が次第に細く柔らかくなります。

全体的なボリュームの減少も感じられますが、特に分け目や頭頂部での変化が顕著です。
FPHLの進行は通常緩やかで、数年かけて徐々に髪が薄くなっていきます。特に更年期前後に症状が加速することも多く見られます。
女性型脱毛症(FPHL)の進行と特徴

- 初期は頭頂部の分け目が広がるところから始まる
- 女性ホルモン(エストロゲン)の減少と男性ホルモンの相対的増加が原因
- 閉経後や更年期に症状が悪化することが多い
- 遺伝的要素も強く、母親や祖母に同様の症状があった場合は注意が必要
女性型脱毛症の評価と診断
特性 | 初期段階 | 中期段階 | 進行期 |
---|---|---|---|
分け目の状態 | やや広がりを見せる | 明らかに広がる | 著しく広がり地肌が目立つ |
頭頂部の状態 | ほぼ正常 | ボリューム減少が始まる | 明らかな薄毛化 |
髪の質感 | やや細くなる | 明らかに細く柔らかい | 非常に細く脆弱 |
Ludwig分類 | I型 | II型 | III型 |
適した検査 | ダーモスコピー | ダーモスコピー・血液検査 | 総合的な検査 |
FPHLのセルフチェック方法としては、頭頂部の分け目が以前より幅広くなっていないか確認することが重要です。

明るい照明の下で鏡を使い、頭頂部の地肌の露出度をチェックしましょう。
また、髪の毛の質感も重要な指標であり、以前より細くなっていないか確認します。定期的に頭頂部の写真を撮って経過を観察することも、変化を客観的に把握するのに役立ちます。
医療機関での診断は、まず問診と視診から始まります。脱毛の経過、家族歴、月経周期、更年期症状などを確認し、頭皮と毛髪の状態を目視で確認します。

より詳細な診断のためにダーモスコピー検査が行われ、毛髪の太さのばらつき(毛髪径の多様性)や一つの毛包から生える毛髪数の減少などを確認します。
FPHLの診断では、血液検査も重要な役割を果たします。女性ホルモンや甲状腺機能、鉄欠乏性貧血の有無など、脱毛に関連する可能性のある要因を調べます。
診断時にはLudwig分類やSavin分類などを用いて重症度を評価することが一般的で、これにより適切な治療計画を立てることができます。
3. FAGA(女性男性型脱毛症)
FAGA(Female Androgenetic Alopecia)は、男性型脱毛症が女性に現れた状態で、ホルモンの影響を受けて発症します。
FAGAでは頭頂部を中心に広い範囲で均等に毛の密度が低下し、全体的な髪のボリューム低下が見られます。
FAGAの特徴として、分け目の幅が広がることと短くて細い髪の毛が増加することが挙げられます。

男性型脱毛症との違いは、髪の生え際があまり後退しないことで、これは女性と男性のホルモンバランスの違いによるものです。更年期前後に症状が進行することが多く、特に50代以降の女性に多く見られます。
FAGA(女性男性型脱毛症)の診断と対策のポイント

- 男性ホルモン受容体の感受性が高まることで発症
- 進行は緩やかだが長期間にわたって継続する
- エストロゲンが減少する40代後半から発症率が上昇
- 早期治療開始が発毛・育毛効果を高める重要な要素となる
FAGA(女性男性型脱毛症)の症状と診断
評価項目 | 内容 |
---|---|
脱毛パターン | 頭頂部中心のびまん性脱毛、分け目の拡大 |
ホルモン影響 | エストロゲン減少、男性ホルモン相対的増加 |
診断基準 | ・毛髪の細小化 ・分け目拡大 ・頭頂部薄毛 ・ダーモスコピーでの毛髪径不同 |
鑑別疾患 | ・休止期脱毛症 ・栄養不足による脱毛症 ・内分泌疾患による脱毛 |
重症度分類 | 軽度(I型)、中等度(II型)、重度(III型) |
FAGAを自己チェックする方法としては、明るい照明の下で頭頂部の写真を撮影し、地肌の見え方を確認することが効果的です。

分け目の幅が広がっていないか確認し、髪の毛全体がコシやハリを失っていないかも確認しましょう。抜け毛の観察も重要で、特に細い髪の抜け毛が増えていないかに注意が必要です。
医療機関でのFAGAの診断では、家族歴や脱毛の進行パターン、ホルモンバランスの変化などを確認する問診から始まります。その後、頭皮と頭髪の状態を詳細に観察するための視診が行われます。
ダーモスコピー検査では、頭皮の状態や毛髪の太さを詳細に観察し、毛包の状態や毛髪の太さのばらつきを確認します。
血液検査は特に重要で、男性ホルモンや女性ホルモンのレベル、SHBG(性ホルモン結合グロブリン)の測定、甲状腺機能検査などが行われます。また、鉄分や亜鉛などの栄養素レベルも確認されます。
FAGAの診断では、他の脱毛症との鑑別が重要であり、特に休止期脱毛症や栄養不足による脱毛症などとの区別が必要です。
4. 円形脱毛症
円形脱毛症は、突然特定の部位に円形または楕円形の脱毛斑が現れる自己免疫疾患です。この疾患では、免疫系が毛包を異物と認識して攻撃し、結果として脱毛が起こると考えられています。
典型的な症状として、突然コイン大(1〜数cm)の円形または楕円形の脱毛斑が出現します。脱毛斑は通常1〜数か所ですが、複数発生することもあります。

一般的に脱毛部分の頭皮は正常で、炎症や発赤、鱗屑などを伴わないことが多いのが特徴です。また、脱毛斑の境界は明瞭で、健康な髪との境目がはっきりしています。
円形脱毛症の進行度と予後の目安

- 限局型:1~2か所の小さな脱毛斑で自然回復しやすい
- 多発型:複数の脱毛斑が現れ、治療が必要になることが多い
- 全頭型:頭髪全体が脱落し、回復に時間がかかる
- 汎発型:全身の毛髪が脱落する最も重症のタイプ
- 若年発症・アトピー体質・爪の変形を伴う場合は難治性になりやすい
円形脱毛症の特徴と検査法
項目 | 特徴・内容 |
---|---|
臨床形態 | ・単発型(1か所の脱毛斑) ・多発型(複数の脱毛斑) ・蛇行型(帯状に連なる) ・全頭型(頭部全体の脱毛) ・汎発型(全身の脱毛) |
特徴的所見 | ・感嘆符毛(根元が細く先が太い毛) ・黒点(毛穴内の毛幹残存) ・黄点(脂腺開口部) |
関連症状 | ・爪の点状陥凹 ・爪甲縦溝 |
主な検査法 | ・ダーモスコピー ・プルテスト ・血液検査(自己抗体、甲状腺機能など) |
予後因子 | ・初発年齢(若年ほど重症化傾向) ・アトピー素因 ・罹患期間(長期ほど難治性) |
円形脱毛症をセルフチェックする方法としては、手鏡と固定鏡を使用して頭部全体をくまなく観察し、円形または楕円形の明確な境界を持つ脱毛斑がないか確認することが基本です。

また、プルテスト(牽引試験)として脱毛斑の周囲の髪を20〜30本程度、軽く指で引っ張ってみましょう。健康な髪よりも簡単に抜ける場合、円形脱毛症の活動期の可能性があります。
抜けた毛の根元部分を観察することも重要です。円形脱毛症では毛根部分が細くなっていることが多く、感嘆符毛(根元が細く先が太い毛)が見られることもあります。
加えて、爪に小さなくぼみ(点状陥凹)や白い小さな斑点がないか確認することも有用です。円形脱毛症では爪にこのような変化が見られることがあります。
医療機関では、視診と触診による脱毛斑の数、大きさ、分布の確認から始まり、頭皮の状態(炎症の有無など)を詳しく調べます。ダーモスコピー検査では、黄色い点(黄色ドット)、黒い点(黒ドット)、感嘆符毛などの特徴的所見を確認します。
また、プルテスト(牽引試験)を行い、活動期の円形脱毛症では容易に毛髪が抜けるかどうかを確認します。
血液検査では、自己免疫疾患関連の検査や甲状腺機能検査が行われ、必要に応じて病理組織検査も実施されることがあります。
円形脱毛症の診断は主に臨床症状と視診によって行われますが、非典型的な症例では他の脱毛症との鑑別のためにこれらの詳細な検査が必要になることもあります。
5. 分娩後脱毛症(産後脱毛症)
分娩後脱毛症(産後脱毛症)は、出産後に一時的に起こる脱毛症です。妊娠中は女性ホルモンの影響で髪の毛が抜けにくい状態が続きますが、出産後にホルモンバランスが急変することで発生します。
この脱毛症の特徴は、出産後2〜4ヶ月頃から抜け毛が急激に増加することです。

シャンプー時やブラッシング時に多量の髪が抜け、枕に髪の毛が大量に残ることも珍しくありません。
主に頭頂部や前頭部の髪が薄くなりやすく、全体的なボリュームが減少します。これにより分け目が広がり、地肌が目立つようになることがあります。
産後脱毛症の経過と自然回復のプロセス

- 妊娠中:エストロゲン高値により髪の成長期が延長、抜け毛が減少
- 出産後2~4ヶ月:通常の抜け毛サイクルに戻ることで一時的に抜け毛が増加
- 出産後6~12ヶ月:ほとんどの場合、ホルモンバランスの安定と共に回復
- 授乳終了後:完全な回復が見込まれる
- 回復しない場合は他の脱毛症(FPHLなど)の可能性を検討
分娩後脱毛症の特徴と経過
時期 | 状態と特徴 |
---|---|
出産前 | エストロゲン増加による毛髪成長期延長、抜け毛減少 |
出産後2〜4ヶ月 | 抜け毛増加開始、シャンプー時の大量脱毛 |
出産後4〜6ヶ月 | 脱毛のピーク期、分け目拡大、ボリューム減少が顕著 |
出産後6〜12ヶ月 | 徐々に回復開始、新しい発毛が見られる |
出産後12〜24ヶ月 | ほとんどの場合で元の状態に回復 |
産後脱毛症のセルフチェック方法としては、まず抜け毛の量をチェックすることが基本です。

シャンプー時の抜け毛の量を確認し、手に絡まる量が明らかに増えているかどうかを見ます。また、ブラシに残る髪の量や枕や洋服に付着する抜け毛の量も注意深く観察してください。
明るい場所で鏡を見て分け目の幅を確認し、産前と比較して分け目が広がっているかどうかを確認することも重要です。
さらに、産前の写真と比較して髪のボリュームの変化を確認したり、ポニーテールを作ったときのゴムの巻き数の変化(ゴムを多く巻くようになった場合は注意)を観察するのも良い方法です。
医療機関での産後脱毛症の検査は、まず出産時期や授乳状況、抜け毛の開始時期と経過、産前・産後の体調変化、産後の精神的ストレスや睡眠状況などの詳細な問診から始まります。
その後、頭皮と髪の状態を確認する視診と触診が行われ、脱毛のパターンと程度が評価されます。
プルテスト(牽引試験)では、頭部の数カ所で20〜30本の髪を軽く引っ張り、抜け毛の量を確認します。産後脱毛症では多くの髪が休止期にあるため、通常より多くの髪が抜けることが多いです。
必要に応じて血液検査も実施され、甲状腺機能や鉄欠乏性貧血、ホルモンバランスなどが調べられます。
産後脱毛症は基本的に一過性であり、多くの場合は出産後6ヶ月〜1年程度で徐々に回復していきますが、回復までの期間には個人差があります。
産後脱毛症の診断では、特に産後甲状腺炎による脱毛と区別することが重要です。
6. 粃糠性脱毛症
粃糠性脱毛症(ひこう性脱毛症)は、頭皮の過度な乾燥と大量の乾性フケを特徴とする脱毛症です。主に頭皮のターンオーバー(角質の生まれ変わり)の異常によって発生し、フケが毛穴を塞ぐことで脱毛が進行します。
この脱毛症では、頭皮全体に細かい白色または灰白色の乾燥したフケが大量に出ることが特徴的です。

頭皮は乾燥し、赤みやかゆみを伴うことも多く、そのため頭皮を掻いてしまうことで二次的な炎症や感染を引き起こすリスクもあります。
脱毛のパターンはびまん性で、頭部全体の髪が徐々に薄くなり、髪の毛自体も細く弱々しくなります。
粃糠性脱毛症の日常ケアと予防のポイント

- 乾燥を防ぐため保湿成分配合のシャンプーを選ぶ
- 熱いお湯での洗髪や過度なブラッシングを避ける
- 頭皮の清潔を保ちながらも過剰な洗浄は控える
- 頭皮マッサージで血行を促進することが効果的
- ビタミンB群や亜鉛を含む栄養バランスの良い食事を心がける
粃糠性脱毛症の特徴と鑑別点
比較項目 | 粃糠性脱毛症 | 脂漏性脱毛症 | 一般的な乾燥 |
---|---|---|---|
フケの特徴 | 乾燥して細かい白色のフケ | 黄色みを帯びた脂っぽいフケ | 少量の白いフケ |
頭皮の状態 | 極度の乾燥、赤み、かゆみ | べたつき、脂っぽさ | 軽度の乾燥 |
脱毛パターン | びまん性、頭部全体 | びまん性、頭部全体 | 明確な脱毛なし |
随伴症状 | 強いかゆみ、掻破痕 | 脂性の湿疹、ニキビ様発疹 | 軽度のかゆみ |
診断上のポイント | フケが頭皮に固着 | 過剰な皮脂分泌 | 季節性の乾燥 |
粃糠性脱毛症のセルフチェック方法として、まず頭皮のフケが乾燥して細かいか確認することが基本です。

黒い服を着た際にフケが目立つかどうかも観察しましょう。また、フケが頭皮に固着しているかどうかも重要な特徴です。
頭皮の乾燥度をチェックし、頭皮が乾燥してカサカサしているか、赤みやかゆみがあるかを確認します。かゆみの程度と頻度も注意深く観察し、かゆみで夜間の睡眠が妨げられることがあるかを確認してください。
加えて、シャンプー時やブラッシング時の抜け毛の量を確認し、抜け毛の根元にフケが付着しているかどうかも観察するとよいでしょう。
医療機関での粃糠性脱毛症の検査は、まず頭皮のフケの量と性状(乾燥しているか脂っぽいか)を確認する視診と触診から始まります。頭皮の乾燥度、炎症、発赤の有無も詳しく調べられ、頭髪の状態と脱毛の程度が評価されます。
ダーモスコピー検査では、特殊な拡大鏡を用いて頭皮の詳細観察が行われ、フケの性状や毛穴の状態、毛髪の太さなどが観察されます。
必要に応じて真菌検査も実施され、頭皮の鱗屑(フケ)のKOH直接鏡検でマラセチア菌などの真菌の過剰増殖の有無が確認されます。
粃糠性脱毛症の診断では、脂漏性脱毛症など類似した症状を呈する疾患との鑑別が重要です。治療においては、頭皮の乾燥を改善し、適切な保湿と角質ケアを行うことが基本となります。
7. 脂漏性脱毛症
脂漏性脱毛症は、頭皮の過剰な皮脂分泌と脂漏性皮膚炎に起因する脱毛症です。
マラセチア菌と呼ばれる常在菌が過剰な皮脂を分解する際に生じる物質が頭皮に炎症を引き起こし、これが毛包に影響を与えて脱毛を促進すると考えられています。
この脱毛症の主な特徴は、頭皮がべたつき、脂っぽい感じがすることです。黄色みがかった脂っぽいフケが出ることが多く、頭皮に赤みやかゆみ、炎症が生じます。

また、頭皮に湿疹やニキビのような吹き出物ができることもあります。脱毛は頭部全体に均等に進行し、髪の毛もベタついて扱いにくくなることが特徴です。
脂漏性脱毛症の原因と治療対策の要点
- 過剰な皮脂分泌とマラセチア菌の増殖が主な原因
- 頭皮の炎症を抑制する抗炎症成分配合のシャンプーが効果的
- 抗真菌作用を持つケトコナゾールなどの薬用シャンプーが推奨される
- 生活習慣では脂質の過剰摂取を控え、ストレス管理を行う
- 重症例では医師の処方による外用ステロイド剤や抗真菌薬が必要

脂漏性脱毛症の診断と検査
検査項目 | 方法と観察点 | 診断的意義 |
---|---|---|
視診・触診 | 頭皮のべたつき、炎症、フケの性状確認 | 基本的な臨床診断 |
ダーモスコピー | 毛穴の皮脂状態、炎症程度、毛髪状態の観察 | 詳細な頭皮状態評価 |
マラセチア菌検査 | 頭皮のスワブや鱗屑の培養・顕微鏡観察 | 原因菌の確認 |
皮脂量測定 | 専用機器での頭皮皮脂分泌量測定 | 皮脂過剰分泌の客観的評価 |
pH測定 | 頭皮の酸性度測定 | 頭皮環境の評価 |
血液検査 | ホルモンバランス、栄養状態、全身疾患の確認 | 脱毛の背景要因評価 |
脂漏性脱毛症のセルフチェック方法として、まず頭皮のべたつきをチェックします。

洗髪後、どのくらいの時間で頭皮がべたつき始めるか観察し、通常より早い場合は注意が必要です。また、指で頭皮をこすった時に脂っぽさを感じるかどうかも確認しましょう。
フケの性状も重要な手がかりとなります。フケが黄色みがかっているか、脂っぽく粉状ではなくまとまりやすいかを確認します。頭皮の炎症やかゆみ、吹き出物や湿疹の有無も注意深く観察しましょう。
さらに、顔や体の他の部位、特に皮脂の多い部位(鼻翼周囲、眉間、耳の後ろなど)に同様の症状がないかも確認することが大切です。
医療機関での脂漏性脱毛症の検査は、まず頭皮の皮脂量とべたつきの程度を確認する視診と触診から始まります。フケの性状(脂性か乾性か)も詳しく観察され、頭皮の炎症、発赤、湿疹の有無が確認されます。
ダーモスコピー検査では、特殊な拡大鏡を用いて頭皮の詳細観察が行われ、毛穴の皮脂の状態、炎症の程度、毛髪の状態などが観察されます。
さらに、マラセチア菌検査や皮脂量測定、頭皮のpH測定なども実施され、詳細な頭皮環境の評価が行われます。
脂漏性脱毛症の治療では、過剰な皮脂分泌を抑制し、頭皮の炎症を軽減することが基本となります。適切な洗髪方法や抗真菌成分を含むシャンプーの使用、生活習慣の改善などが総合的に取り組まれます。
8. 牽引性脱毛症
牽引性脱毛症は、髪を強く引っ張るヘアスタイルや習慣が原因で起こる脱毛症です。長期間にわたって髪に過度な張力がかかることで、毛包にダメージが蓄積し、最終的に脱毛に至ります。
この脱毛症の特徴は、髪を引っ張る力が加わりやすい部位(生え際、こめかみ、分け目など)が部分的に薄くなることです。

髪の生え際が徐々に後退し、頭皮に軽い痛みやひりひり感を感じることもあります。初期段階では産毛のような細い毛が生えますが、同じようなヘアスタイルを繰り返すと完全に脱毛してしまうこともあります。
牽引性脱毛症のリスク因子とヘアスタイルの注意点
- ポニーテール、お団子ヘア、三つ編みなどのきつく結ぶヘアスタイルが主な原因
- エクステンションやヘアピース装着による長期的な負担も要因となる
- ダメージ初期は休息で回復するが、長期間続くと永久脱毛のリスクがある
- 予防には髪型を定期的に変える、緩めに結ぶ、夜間は髪を解放するなどが有効
- 子供の髪型にも注意が必要(特にきつい三つ編みやお団子ヘア)

牽引性脱毛症の原因と特徴
ヘアスタイル・習慣 | 影響を受けやすい部位 | 症状の特徴 |
---|---|---|
ポニーテール・お団子ヘア | 前頭部生え際、側頭部 | 生え際の後退、産毛化 |
きつい三つ編み | 側頭部、後頭部 | 編み目に沿った脱毛 |
コーンロウ・タイトな編み込み | 頭皮全体、特に側頭部 | 編み目パターンの脱毛 |
エクステンション | 装着部位周辺 | 部分的な脱毛、炎症 |
常に同じ分け目 | 分け目部分 | 分け目の拡大 |
ヘアピン・ヘアクリップ | 留め具を付ける部位 | 局所的な脱毛 |
牽引性脱毛症のセルフチェック方法として、まず自分のヘアスタイルの傾向を振り返ることが重要です。

日常的にきつく髪を結んだり、引っ張ったりするスタイルを頻繁にしているかを確認しましょう。
次に、鏡で生え際や分け目の状態を確認し、髪を引っ張られやすい部位に限局した脱毛があるかをチェックします。
左右非対称な脱毛パターンがないかも確認しましょう。片側に偏ったヘアスタイル(いつも同じ側に分け目を作るなど)の場合、その側に脱毛が目立つことがあります。
また、脱毛部位の頭皮に赤みや炎症がないか、頭皮に痛みやひりひり感がないかも確認してください。
抜けた髪の毛の根元を観察することも重要です。毛球部(毛根の先についている白い部分)の形が変形しているかを確認しましょう。健康な毛髪の根元はボウル状ですが、牽引性脱毛症ではヒゲ根のように変形していることがあります。
医療機関での牽引性脱毛症の検査は、まず普段のヘアスタイルやヘアケアの習慣について詳しく聞き取る問診から始まります。脱毛の経過と気づいた時期、頭皮の症状(痛み、かゆみなど)の有無などが確認されます。
視診と触診では、脱毛部位の分布パターンが確認され、頭皮の赤み、炎症、丘疹の有無もチェックされます。ダーモスコピー検査では、特殊な拡大鏡を用いて頭皮の詳細観察が行われ、毛穴の状態、毛髪の太さ、毛根の形状などが観察されます。
牽引性脱毛症の治療の基本は、原因となるヘアスタイルや習慣を改め、頭皮に負担をかけないようにすることです。早期に対処すれば回復の見込みは高いですが、長期間続けると永久的な脱毛につながる可能性もあるため、早めの対応が重要です。
9. 休止期脱毛症
休止期脱毛症は、通常のヘアサイクルが乱れ、多くの毛髪が一斉に休止期に入ることで起こる脱毛症です。
通常、髪の毛の約85〜90%は成長期にあり、10〜15%程度が休止期にありますが、何らかのきっかけでこのバランスが崩れると休止期脱毛症が発生します。
この脱毛症では、突然または徐々に抜け毛が増加し、頭部全体から均等に脱毛するのが特徴です。

シャンプー時やブラッシング時に多量の髪が抜け、抜けた髪の毛の根元には白い小さな球状の毛根がついていることが多く見られます。これにより髪のボリュームが全体的に減少し、分け目が広がって地肌が目立つようになります。
休止期脱毛症の診断と回復のタイムライン
- 急性型:3~6ヶ月で自然回復することが多い
- 慢性型:6ヶ月以上継続し、原因特定と対策が必要
- 脱毛から回復までは通常3~12ヶ月のプロセス
- 原因となるストレス要因の除去が最も重要な治療
- 抜け毛の根元が白い球状(休止期毛根)である点が診断の鍵

休止期脱毛症の原因と回復過程
原因カテゴリー | 具体的要因 | 回復の目安 |
---|---|---|
身体的ストレス | ・高熱・重度の感染症 ・手術や大きな怪我 ・急激な体重減少 ・分娩 | 原因消失後3〜6ヶ月 |
精神的ストレス | ・強い精神的ショック ・継続的な強いストレス ・睡眠障害 | ストレス軽減後3〜6ヶ月 |
栄養・ホルモン | ・極端なダイエット ・鉄分・亜鉛不足 ・甲状腺機能異常 ・ホルモン剤の変更 | 栄養改善後2〜4ヶ月、 ホルモン安定後4〜8ヶ月 |
薬剤 | ・特定の薬剤の開始/中止 ・複数薬剤の相互作用 | 薬剤調整後2〜6ヶ月 |
慢性疾患 | ・自己免疫疾患 ・慢性感染症 ・代謝性疾患 | 疾患コントロール後 6ヶ月〜1年 |
休止期脱毛症のセルフチェック方法として、まずシャンプー時やブラッシング時の抜け毛の量を確認します。
通常より明らかに多い場合(1日100本以上)は注意が必要です。また、枕や衣服に付着する抜け毛の量も確認しましょう。
抜けた髪の毛の根元に白い球状の毛根(休止期毛の特徴)がついているかを確認することも重要です。健康な成長期の毛髪の根元はゼラチン状で透明感があるのに対し、休止期毛の根元は白く乾いた状態になっています。
セルフプルテストとして、頭部の数カ所(前頭部、側頭部、後頭部)で約20〜30本の髪を指で軽く引っ張ってみましょう。
5〜6本以上簡単に抜ける場合は休止期脱毛症の可能性があります。また、過去の写真と比較して髪のボリュームの変化を確認することも有効です。
医療機関での休止期脱毛症の検査は、まず抜け毛の開始時期と経過、最近の身体的・精神的ストレス要因、服用中の薬剤や既往症、食事内容や生活習慣の変化などを詳しく聞き取る問診から始まります。
毛髪牽引試験(プルテスト)では、頭部の数カ所から約50本の髪を軽く引っ張り、抜ける数を確認します。休止期脱毛症では通常より多くの毛髪(5〜10本以上)が抜けることが多いです。
トリコグラム検査では、抜き取った毛髪の根元を顕微鏡で観察し、成長期毛と休止期毛の比率を確認します。休止期脱毛症では休止期毛の割合が20%以上に増加していることが特徴です。
その他にも、甲状腺機能検査や鉄欠乏検査、ホルモン検査、栄養状態の確認など、様々な血液検査が行われることもあります。休止期脱毛症の診断では、他の脱毛症(特に女性型脱毛症やびまん性脱毛症)との鑑別が重要です。
10. 薬剤性脱毛症
薬剤性脱毛症は、ある種の薬剤の副作用として発症する脱毛症です。様々な薬剤が脱毛を引き起こす可能性があり、抗がん剤、抗凝固剤、抗うつ剤、降圧剤、抗甲状腺薬など多岐にわたります。
この脱毛症の特徴は、薬剤服用開始から数週間〜数ヶ月後に抜け毛が増加することです。

頭部全体から均等に脱毛することが多く、急性の場合は短期間で大量の脱毛が起こります。
特に抗がん剤治療時には全身の毛髪が急速に抜け落ちることもあります。一方、慢性の場合は徐々に頭髪が薄くなっていきます。
薬剤性脱毛症を引き起こす主な薬剤群と特徴
- 抗がん剤:細胞分裂を阻害するため成長期毛髪に強く影響、急速かつ広範囲の脱毛
- 抗凝固薬:ワルファリンやヘパリンが原因となることがあり、徐々に進行
- 向精神薬:リチウム、バルプロ酸などが長期服用で影響、緩やかな脱毛
- 降圧剤:β遮断薬やACE阻害剤で報告あり、一部の患者に限定的に発生
- ホルモン剤:ホルモンバランスの変化を通じて間接的に影響
薬剤性脱毛症を引き起こす主な薬剤
薬剤分類 | 具体的薬剤例 | 脱毛の特徴 |
---|---|---|
抗がん剤 | ・シクロホスファミド ・ドキソルビシン ・パクリタキセル | 急性かつ広範囲の脱毛、 全身性脱毛も |
向精神薬 | ・リチウム ・バルプロ酸 ・選択的セロトニン再取り込み阻害剤 | 慢性のびまん性脱毛、 徐々に進行 |
心血管系薬剤 | ・ベータ遮断薬 ・ACE阻害剤 ・抗凝固薬(ヘパリン、ワルファリン) | 服用開始数ヶ月後に出現、 中止で回復 |
内分泌系薬剤 | ・甲状腺薬 ・経口避妊薬 ・男性ホルモン製剤 | ホルモンバランス変化による 脱毛パターン |
レチノイド | ・イソトレチノイン ・アシトレチン | 休止期脱毛様の びまん性脱毛 |
その他 | ・非ステロイド性抗炎症薬 ・抗痛風薬 ・高脂血症治療薬 | 薬剤により様々、 個人差が大きい |
薬剤性脱毛症のセルフチェック方法として、まず現在服用中および最近(6ヶ月以内)服用した薬剤をすべてリストアップすることが基本です。処方薬だけでなく市販薬やサプリメントも含めて確認しましょう。
抜け毛と薬剤の時間的関連性を確認することも重要です。抜け毛の増加が薬剤の服用開始から数週間〜数ヶ月後に始まったか、特定の薬剤の用量変更や新規服用開始とタイミングが一致するかを確認します。
抜け毛のパターンも確認し、頭部全体から均等に脱毛しているか(局所的な脱毛は他の原因の可能性)、脱毛が突然始まったか徐々に進行したかをチェックしましょう。
シャンプー時やブラッシング時の抜け毛の量を確認し、通常より明らかに多い場合は注意が必要です。また、頭髪以外の眉毛、まつ毛、体毛にも脱毛が見られるかを確認することも大切です。全身性の脱毛は特に重要な薬剤性脱毛症のサインです。
医療機関での薬剤性脱毛症の検査は、まず現在服用中および過去に服用した薬剤の種類、用量、期間を詳しく確認する詳細な薬歴の聴取から始まります。脱毛との時間的関連性も評価されます。
視診と触診では、脱毛のパターンと程度が確認され、頭皮の状態(炎症や発赤の有無など)も調べられます。毛髪牽引試験(プルテスト)では、頭部の数カ所から約50本の髪を軽く引っ張り、抜ける数が確認されます。
薬剤性脱毛症では通常より多くの毛髪が抜けることが多いです。
トリコグラム検査では、抜き取った毛髪の根元を顕微鏡で観察し、成長期毛と休止期毛の比率を確認します。必要に応じて薬剤の血中濃度測定や肝機能・腎機能検査、甲状腺機能検査なども実施されることがあります。
薬剤性脱毛症の診断は主に薬歴と臨床症状に基づいて行われますが、確定診断のために原因と疑われる薬剤の減量や中止による脱毛の改善を確認することが最も重要です。
ただし、薬剤の中止は必ず医師の指示の下で行う必要があります。
まとめ
脱毛症は女性の多くが一生のうちに経験する、珍しくない症状です。
本記事では、
- びまん性脱毛症
- 女性型脱毛症(FPHL)
- FAGA、円形脱毛症
- 分娩後脱毛症
- 粃糠性脱毛症
- 脂漏性脱毛症
- 牽引性脱毛症
- 休止期脱毛症
- 薬剤性脱毛症
の10種類について、それぞれの特徴的な症状、自宅でできるセルフチェックの方法、医療機関での検査方法を詳しく解説しました。
脱毛症の種類によって症状や進行パターン、回復の見込みは大きく異なります。

自己判断せずに専門医に相談し、正確な診断を受けることが重要です。早期発見・早期治療が、多くの脱毛症において回復の鍵となります。
また、どのような脱毛症でも精神的なストレスにつながることがあります。適切な診断と治療計画を立てることで、不安を軽減し、自分に合った対処法を見つけることができます。
薄毛や抜け毛でお悩みの方は、ぜひ最寄りの医療機関にご相談ください。
各薄毛の特徴や症状について理解できたら、次は薄毛の原因について詳しく勉強していきましょう。