加齢が進んでホルモンが減少すると、女性の体にはさまざまな変化が現れます。なかでも、薄毛の問題は深刻です。 女性ホルモンと髪にはどんな関係があるのか、また、薄毛を改善するにはどのような対策があるのでしょうか?
男性とはメカニズムが違う「女性の薄毛」について考えてみました。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
女性が薄毛・抜け毛になる原因
女性が薄毛や抜け毛になるのは次の4つが主な要因といわれています。ここでは、それぞれが女性の髪にどのような影響を与えているのかについて、簡単に説明します。
- ホルモンバランスの乱れ 加齢などが原因で、女性ホルモンのバランスが徐々に乱れ、髪そのものが痩せたり、髪の色が薄くなったりする場合があります。
- 喫煙やアルコール たばこに含まれるニコチンには、血管を収縮させる働きがあります。頭皮の毛細血管の血流悪化は、髪に悪影響を与えかねません。また、アルコールを多量に摂取すると、その分解に栄養素が使われてしまい、薄毛・抜け毛が進む可能性があります。
- 頭皮のトラブル 日焼けや乾燥、肌質に合わないヘアケア製品の使用することで、頭皮に何らかの負荷がかかる可能性があります。この状態が長引けば、抜け毛・薄毛につながりかねません。
- 遺伝 遺伝的な要因により、一般的な年齢よりも早くヘアサイクルに異常をきたす場合もあります。こうしたケースでは、毛髪が十分に成長しきらず、退行してしまうのです。
これらの中でも特に多いのが、女性ホルモンが原因の薄毛・抜け毛です。次の項目で、薄毛を引き起こす2つの女性ホルモンについて詳しく説明します。
女性の薄毛とホルモンの関係
「女性ホルモン」と一口にいいますが、実は2種類あり、薄毛の原因となるのは「エストロゲン」です。では、二つの女性ホルモンの違いについて見ていきましょう。
- エストロゲン
「卵胞ホルモン」ともいわれるエストロゲン。女らしい体をつくり、髪や肌、自律神経などにもかかわるホルモンです。40代で激減し50歳前後で閉経を迎えますが、ホルモンバランスの乱れにより薄毛やのぼせなど、さまざまな症状が出る場合があります。
- プロゲステロン
「黄体ホルモン」と言われるのがこのプロゲステロンです。こちらは妊娠に関わるホルモンで、受精卵を迎えるため子宮内膜を厚くしたり、基礎体温を上下させるはたらきがあります。生理前に胸が張ったりするのは、プロゲステロンの影響だと言われています。
ホルモンの減少で女性が薄毛・抜け毛で悩むメカニズム
女性ホルモン、特にエストロゲン(卵胞ホルモン)は、思春期から20、30代にかけて分泌が盛んなホルモンです。エストロゲンのおかげで女性らしい身体ができあがってくるのですが、エストロゲンは髪の成長にも密接な関係があります。
エストロゲンは、年齢を重ねるにつれ減少していきます。エストロゲンの減少につれて、髪の毛の成長期間が持続しにくくなり、髪のハリやコシがなくなってしまいます。
髪のボリュームがダウンしたり、髪が傷んで抜けやすくなったりするのは、このためです。 ただ、女性が「はげてしまう」というのは、ほとんどありません。女性の多くは、髪のボリューム低下や分け目部分が薄毛化することが多いです。
女性ホルモンが減少する原因
女性ホルモンが年齢とともに減少するのは自然の摂理です。しかし、以下のような理由で働きが止まってしまうことがあります。
- 加齢
20代後半から30代前半でピークを迎え、その後はゆるやかに減少します。なかには若いうちに分泌が止まる人もいます。
- ストレス
強いストレスがかかると、ホルモン分泌が乱れて月経不順になったり、自律神経にも悪影響を及ぼしたりします。
- 生活習慣
喫煙、睡眠不足、栄養失調はホルモンの乱れに直結します。場合によっては、ダイエットで月経が来なくなることもあります。
- 妊娠・出産・産後
妊娠や出産などにより、ホルモンバランスが崩れてしまい、薄毛や抜け毛に悩んでいる人は少なくありません。しかし、その大半は1年程度で自然に落ち着いています。
女性ホルモンの減少による薄毛の対策
加齢世代の薄毛対策は、早めのスタートが肝心です。まずは女性ホルモンに悪影響を与えるような生活習慣を見直しましょう。 近年は研究が進み、効果を実感できる育毛剤やサプリメントも多数登場しています。
生活習慣の改善
女性ホルモンは卵巣や子宮だけでなく、女性の体全体をコントロールするもの。睡眠や栄養が足りないと、ホルモン分泌が止まったり、バランスが乱れて薄毛の原因となったりします。まずは健康になることをめざしましょう。 また、冷えに注意することも婦人科系の不調には重要な改善ポイントです。
育毛剤の使用
話題の成分を配合した、女性の薄毛専用育毛剤をご紹介します。購入の際には、以下のポイントをチェックしてみてください。
- 女性の薄毛に働きかける成分を配合
女性ホルモン様成分など、女性の薄毛原因にポイントを絞った成分が入っているもの。
- 地肌に刺激がない処方
刺激物質で血行を促すタイプは、肌荒れにつながることがありますので避けましょう。
- 頭皮環境を改善する成分を配合
地肌環境を整えると、育毛剤の有効成分が浸透しやすくなります
薬用スカルプエッセンス(Hairmore)
女性ホルモンの減少にはたらきかける、話題の新成分「エストラジオール」を配合。 ヘアサイクルを若々しく活発に整えることで、芯から強く抜けにくい、ハリ・コシのある髪に育てます。
サポート成分として炎症を抑えて頭皮環境を向上させる「塩酸ピリドキシン」と、髪を構成する必須アミノ酸を増産する「L-レチオニン」を配合しています。
商品名 | 薬用スカルプエッセンス |
メーカー名 | Hairmore |
価格 | 3,850円(税込) |
内容量 | 200mL |
成分 | エストラジオール・塩酸ピリドキシン |
薬用アデノシングレイシイ(資生堂)
人間が細胞内に持っている、生体内薬用成分「アデノシン」は髪の成長を促進する効果があります。このアデノシンの力で、髪を太く、豊かに成長させる女性専用育毛剤です。 発毛促進因子を産生して発毛を促進。体内にある成分なので、毛乳頭まですみやかに作用がいきわたり、毛根に酸素を供給することで、栄養をしっかり頭皮に届けます。
商品名 | 薬用アデノシングレイシイ |
メーカー名 | 資生堂 |
価格 | 5,590円(税込)※参考価格 |
内容量 | 150mL |
成分 | アデノシン・パナックスジンセンエキス |
リクイール 育毛セラム(カネボウ)
「頭皮は顔の肌につながっている」というコンセプトで、カネボウが長年の肌化学を結集して開発した女性専用育毛剤です。 球体のノズルを直接頭皮に押し当て、指でマッサージします。有効成分「t-フラバノン」が、毛母細胞の増殖を促し、髪の成長サイクルを改善します。産前産後の脱毛にもおすすめです。ジンジャーハーブのいい香りで楽しくケアできます。
商品名 | リクイール 育毛セラム |
メーカー名 | カネボウ |
価格 | 4,400円(税込)※参考価格 |
内容量 | 150mL |
成分 | t-フラバノン・アボカドエッセンス・ビワ葉エキス |
頭皮用シャンプーの使用
頭皮環境が悪化すると、女性ホルモン減少による薄毛・抜け毛の影響も大きくなってしまいます。この対策として大切なことの一つが、頭皮を健やかに保つこと。頭皮環境を整えるためにも、洗浄力が強すぎず、適度に保湿効果があるシャンプーを選ぶようにしましょう。ここでは、頭皮用シャンプーとしておすすめのものをいくつか紹介します。
ALLNA ORGANIC シャンプー(ALLNA ORGANIC)
ヒアルロン酸やコラーゲン、セラミドといった美容成分がぜいたくに配合されたノンシリコンシャンプー。地肌をしっかり保湿してくれるので、頭皮を健やかな環境を保ってくれます。天然由来の素材のも使用しているため、香りもさわやか。国内で一つ一つ丁寧に管理されているので、安心して使えるのもうれしいポイントです。
商品名 | ALLNA ORGANIC シャンプー |
メーカー名 | ALLNA ORGANIC |
価格 | 2,037円(税込)※参考価格 |
内容量 | 500ml |
成分 | ヒアルロン酸、コラーゲン、セラミドなど |
kurokamiスカルプ(haru)
kurokamiスカルプの特徴の一つが、リンス不要だということ。これ1本で、髪に必要な栄養が行き届き、ハリやコシ、ツヤがよみがえります。もこもこの泡でたっぷり保湿してくれるうえに、汚れもしっかり洗い落としてくれるので、フケやかゆみ、ニオイが気になるという人にもおすすめです。
商品名 | kurokamiスカルプ |
メーカー名 | haru |
価格 | 3,236円(税込)※参考価格 |
内容量 | 400ml |
成分 | セロリ種子エキス、乳酸桿菌/マテチャ葉発酵液、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、オオムギ発酵エキスなど |
スカルプDボーテ ナチュラスターシャンプー(ANGFA)
カラーやパーマ、紫外線などでさまざまなダメージを受けてしまった髪を、やさしくいたわりながら洗い上げるオーガニックシャンプー。キューティクルをしっかり保護してくれるうえに、洗うときのきしみも抑えてくれるので、指通りもなめらかです。
濃密もっちり泡で毛穴の汚れをすっきり落としてくれるので、乾燥やフケ、かゆみなどの悩みを抱える頭皮をケアする効果も期待できます。サルフェートやシリコン、パラベン、鉱物油、合成着色料などは含まれていません。
商品名 | スカルプDボーテ ナチュラスターシャンプー |
メーカー名 | ANGFA |
価格 | 1,986円(税込)※参考価格 |
内容量 | 350ml |
成分 | フルボ酸、サピンヅストリホリアツス果実エキス、ローズマリー葉エキス、チャ葉エキス、カミツレ花エキス、ツボクサエキス、アロエベラ葉エキスなど |
女性の薄毛に特化したサプリメントの摂取
外からの対策に加えて、インナーケアをプラスすれば万全です。近年評価の高い成分を以下にリストアップしてみました。薄毛に特化したサプリメントもご紹介しますので、ぜひ毎日の習慣にしてください。
- ヨーロッパで人気の「ミレット」
欧州で「髪を美しくする」植物と言われるミレットエキス
- 話題の「プラセンタエキス」
婦人科で更年期障害の治療にも使われる実力派の成分。
- 定番の「イソフラボン」
女性ホルモンの働きをサポートするといわれています。
ミレットUP(DHC)
「ミレット」とは穀物のキビの一種で、ヨーロッパでは民間療法で「飲む育毛剤」と言われています。 ミレットには髪の成分中もっとも多いアミノ酸「シスチン」を豊富に含み、さらにビタミンやミネラルも豊富です。 髪と地肌を育てる「ビタミンE」や「ビタミンB群」「パントテン酸」「セレン」をプラスし、栄養を強化しました。
商品名 | ミレットUP |
メーカー名 | DHC |
価格 | 1,398円(税込)※参考価格 |
内容量 | 90カプセル |
成分 | ミレットエキス・ビタミンE・ビタミンB群・セレン |
プラセンタつぶ(フラコラ)
「プラセンタエキス」は体の活性力を高め、肌や髪を元気にするほか、女性ホルモンのバランスを正常化するはたらきがあります。 そのプラセンタを1日3粒(11300㎎配合)を目安に飲んでいきます。さまざまな原因で低下しているホルモンの分泌を整え、弾力とハリのある髪を取り戻します。 さらに、ビタミン、ヒハツ抽出物などサポート成分も豊富に配合しました。
商品名 | プラセンタつぶ |
メーカー名 | フラコラ |
価格 | 2,700円(税込)※参考価格 |
内容量 | 90粒 |
成分 | プラセンタエキス・ビタミンE |
HGリライズ錠(ビュートラス)
「日本医療毛髪再生研究会」にて検証されたサプリメントです。 「大豆イソフラボン」がインスリン様成長因子を増加させ、さらに「カプサイシン」で活性化させることにより休止期の乳毛頭を刺激し、脱毛の進行を防ぎます。 毛髪再生「HARG(ハーグ)治療」の医療機関による臨床テストで、男女共に効果的であることが証明されています。
商品名 | HGリライズ錠 |
メーカー名 | ビュートラス |
価格 | 4,104円(税込)※参考価格 |
内容量 | 60粒 |
成分 | 大豆イソフラボン・カプサイシン・イチョウ葉エキス |
漢方の摂取
漢方の薄毛対策では、体質により処方される薬が異なります。まずは漢方薬局で自分がどの体質に当たるのかを相談してみてください。
- 血虚(けっきょ)…髪が細くて薄い→婦宝当帰膠、十全大補湯、参茸補血丸
- 腎虚(じんきょ)…年齢より老けて見られる→何首烏末、東西オイスター
- 湿熱(しつねつ)…頭皮がベタつく→瀉火利湿顆粒、黄連解毒湯
病院の専門治療
女性の薄毛治療を行う病院も増えてきました。皮膚科、婦人科、美容外科などで診療を行っていますが、基本的に自由診療となるため保険がききません。
診療科目や病院の方針によって治療方法はさまざまで、医薬品(パントガール、ミノキシジルなど)、ホルモン補充療法、ヘアフィラー、塗り薬などを用いて発毛を促します。 金額的にはやや高価にはなりますが、医師の診察の元で行われるため、健康面での安全が確保されているメリットが。
ウィッグの使用
ここ10年ほどで女性用かつら(ウィッグ)の世界は大きく変化しました。以前はヘアスタイルを変えるためのフルウィッグが主流でしたが、今は薄毛を手軽にカバーする部分用が大きなシェアを占めています。 材質も人毛から高機能な人工毛へと移行し、自宅でかんたんに手入れができ、汗で蒸れない仕様になりました。
人気は頭の形にフィットするセミオーダーです。値段は以前と比べるとぐっとお安くなり、なかには支払い方法に月額制を用意しているメーカーもあります。
薄毛・抜け毛予防におすすめの今すぐできる頭皮ケアマッサージ
頭皮を健康な状態に保つ方法の一つが、頭皮マッサージです。薄毛予防、薄毛対策としてもおすすめですが、もう一つ見逃せないのがそのリラックス効果です。頭皮をやさしくマッサージすると、頭皮の血流改善につながるだけでなく、ストレスも軽減します。
- 小指をこめかみに、人差し指・中指・薬指を左右の耳の延長線に置いて、指の腹をつかって頭皮を揉み上げます。これを、2回から3回繰り返しましょう。
- 両耳から頭頂部へとつながる線、顔の中心から頭頂部へと向かう線が交差する位置にあるのが「百会」のツボです。ここを、親指以外の指の腹をつかって刺激しましょう。
- 最後に、頭頂部から首の後ろに向かってゆっくりマッサージします。これを2回から3回繰り返してください。
まとめ
以前は「薄毛対策」というと、男性が対象でしたが女性の薄毛に関する研究が進み、悩める人々にとって明るい光が見えてきました。 育毛成分も効能が明確になり、市販の商品も買いやすくなっています。
まずは生活習慣を見直すことからスタートし、育毛剤やサプリメントなど上手に活用して、豊かな髪を育ててください。