「髪が細くなってハリやコシがなくなってきた」「うねりやパサつきが気になる」「分け目が以前より目立つようになった」など、年齢を重ねるにつれて髪の悩みが増えがちです。
実はその多くが、お肌と同じように「頭皮のエイジング(老化)」に起因することをご存知でしょうか。
この記事では、女性の薄毛治療を専門とする医師の視点から、頭皮のエイジングがなぜ起こるのか、そして健やかで若々しい髪を維持するための具体的な対策方法について詳しく解説していきます。
なぜ女性の髪は年齢とともに変化するのか?頭皮エイジングのサイン
年齢とともに肌にシワやたるみが見られるように、頭皮も老化します。頭皮は髪を生み出す大切な土台であり、その健康状態は髪質に直接反映されます。
多くの女性が「髪質の変化」として認識する現象は、実は頭皮からのSOSサインかもしれません。
髪質の変化(うねり・パサつき)
若い頃はストレートだったのに、年齢とともに髪がうねるようになった、という方もいるでしょう。これは、頭皮の老化によって毛穴が歪むのが一因です。
頭皮のコラーゲンやエラスチンが減少し、弾力が失われると、毛穴が楕円形に歪んでしまいます。その歪んだ毛穴から生えてくる髪は断面が均一でなくなり、うねりを生じやすくなるのです。
また、頭皮の皮脂分泌量が減少したり、水分保持能力が低下したりするため髪全体が乾燥し、パサつきやツヤの低下につながります。
頭皮エイジングによる髪質の変化
| 変化の種類 | 主な原因 | 髪への影響 |
|---|---|---|
| うねり・くせ毛 | 頭皮の弾力低下による毛穴の歪み | 髪がまとまりにくくなる、スタイリングが持続しない |
| パサつき・乾燥 | 皮脂分泌の減少、頭皮の水分保持能力の低下 | ツヤがなくなり、手触りが悪くなる、静電気が起きやすい |
| ハリ・コシの低下 | 毛髪内部のタンパク質密度の低下、血行不良 | 髪が細く弱々しくなり、ボリュームが出にくい |
白髪の増加
白髪は、毛髪の色素を作り出す「メラノサイト(色素細胞)」の働きが低下したり、消失したりして発生します。加齢はこのメラノサイトの機能低下の最も大きな要因です。
しかしそれだけではなく、頭皮の血行不良や栄養不足、酸化ストレスなどもメラノサイトの働きを妨げ、白髪の増加を加速させるときがあります。
つまり、白髪もまた、頭皮環境の悪化を示す重要なサインの一つと言えます。
ボリュームダウンと分け目の目立ち
髪全体のボリュームが減ったように感じる、分け目がくっきりと目立つようになった、というのも代表的なエイジングサインです。これには二つの要因が考えられます。
一つは、髪一本一本が細くなる「菲薄化(ひはくか)」です。もう一つは毛髪の密度、つまり頭皮の単位面積あたりの本数が減少するためです。
どちらも、毛髪を作り出す「毛母細胞」の活動が加齢や血行不良によって衰えるのが根本的な原因です。
特に分け目やつむじは地肌が透けて見えやすいため、変化に気づきやすい部分です。
頭皮の乾燥やかゆみ
頭皮の乾燥もエイジングのサインです。年齢とともに皮膚のターンオーバー周期が乱れがちになり、バリア機能が低下します。
これにより頭皮の水分が蒸発しやすくなり、乾燥を招きます。乾燥した頭皮は外部からの刺激に敏感になり、かゆみやフケの原因となる場合があります。
シャンプーを変えていないのにフケやかゆみが出るようになったら、頭皮の保湿能力が落ちている可能性を考えましょう。
頭皮と毛髪の老化を引き起こす内的・外的要因
頭皮のエイジングは、単に年齢を重ねることだけで進むわけではありません。
私たちの体内で起こる変化(内的要因)と、日常生活で受ける外部からの影響(外的要因)が複雑に絡み合って進行します。
加齢による女性ホルモンの減少
女性ホルモンの一つである「エストロゲン」は髪の成長を促進し、そのハリやツヤを保つ重要な役割を担っています。
エストロゲンは、毛髪の成長期を長く維持する働きがあるため、豊かで健康的な髪の維持に貢献します。
しかし、このエストロゲンの分泌は30代後半から徐々に減少しはじめ、特に更年期を迎える50歳前後で急激に低下します。
このホルモンバランスの変化が髪の成長サイクルを短縮させ、一本一本の髪が十分に育つ前に抜け落ちてしまう「薄毛」や、髪質の低下の大きな原因となります。
血行不良と栄養不足
髪は毛根部分にある毛母細胞が、毛細血管から運ばれてくる酸素や栄養素を受け取って成長します。
しかし、運動不足や冷え、ストレスなどによって頭皮の血行が悪くなると、毛母細胞に十分な栄養が届かなくなります。
栄養不足に陥った毛母細胞は健康な髪を十分に作り出せなくなり、結果として細く弱い髪しか生えてこなくなったり、成長が途中で止まってしまったりします。
食生活の乱れによる栄養不足も、同様に髪の老化を早める要因です。
紫外線のダメージ
顔の肌と同じように頭皮も紫外線のダメージを直接受けます。
紫外線は頭皮の弾力を保つコラーゲンやエラスチンを破壊し、乾燥やたるみを引き起こします。これは毛穴の歪みにつながり、うねり毛の原因となります。
さらに、紫外線は活性酸素を発生させ、頭皮や毛母細胞を酸化させます。この「酸化ストレス」は細胞の働きを直接的に低下させ、白髪や抜け毛を促進する深刻な要因です。
見過ごされがちですが、頭皮の紫外線対策は髪のエイジングケアにおいて非常に重要です。顔には日焼け止めを塗るのに、頭皮は無防備という方が少なくありません。
ストレスや生活習慣の乱れ
過度な精神的ストレスは自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させて頭皮の血行不良を引き起こします。
また、睡眠不足や不規則な食事、喫煙といった生活習慣の乱れもホルモンバランスの乱れや血行不良、栄養不足に直結し、頭皮環境を悪化させます。
健やかな髪は、健やかな身体と心があってこそ育まれるものです。髪のエイジングサインを感じたら、それは生活全体を見直す良い機会かもしれません。
頭皮老化の主な要因
| 要因の分類 | 具体的な要因 | 頭皮・毛髪への影響 |
|---|---|---|
| 内的要因 | 女性ホルモンの減少、血行不良、遺伝 | 髪の成長サイクルの乱れ、栄養不足、毛母細胞の働きの低下 |
| 外的要因 | 紫外線、誤ったヘアケア、ストレス、生活習慣 | 頭皮の酸化・糖化、毛穴の詰まり、血行促進の妨げ |
自宅で始める頭皮エイジングケアの基本
専門的な治療も有効ですが、まずは日々のセルフケアの見直しが、頭皮エイジングの進行を食い止めて健やかな髪を育むための第一歩です。
高価な製品を使うことだけがケアではありません。毎日のシャンプーやマッサージといった基本的な習慣を正しく行うと、未来の髪への投資となります。
正しいシャンプーの選び方と洗い方
頭皮ケアの基本は、毎日行うシャンプーです。しかし、洗い方や製品選びを間違えると、かえって頭皮にダメージを与えてしまうケースもあります。
洗浄力が強すぎるシャンプーは頭皮に必要な皮脂まで奪い去り、乾燥やバリア機能の低下を招きます。
年齢とともに乾燥しがちになる頭皮には、アミノ酸系などのマイルドな洗浄成分で、保湿成分が配合されたシャンプーを選ぶのがおすすめです。
| 成分系統 | 特徴 | おすすめの頭皮タイプ |
|---|---|---|
| アミノ酸系 | 洗浄力がマイルドで、保湿性が高い。頭皮への刺激が少ない。 | 乾燥肌、敏感肌、エイジングが気になる頭皮 |
| 高級アルコール系 | 洗浄力が高く、泡立ちが良い。さっぱりとした洗い上がり。 | 脂性肌、スタイリング剤を多用する方 |
| 石けん系 | 洗浄力が高く、さっぱりするが、髪がきしみやすい。 | 健康な頭皮で、強いさっぱり感を求める方 |
エイジングケアを意識した髪の洗い方
洗い方も重要です。まず、シャンプー前にお湯で髪と頭皮を十分に予洗いし、汚れを浮かび上がらせます。
シャンプーは直接頭皮につけず、手のひらでよく泡立ててから、指の腹を使って頭皮を優しくマッサージするように洗いましょう。
爪を立ててゴシゴシ洗うのは、頭皮を傷つける原因になるので絶対に避けてください。
すすぎ残しはかゆみやフケの原因になるため、時間をかけて丁寧に洗い流すことが大切です。特に髪の生え際や襟足は、すすぎ残しが多い部分なので意識しましょう。
頭皮マッサージで血行促進
硬くなった頭皮をマッサージでほぐして血行を促進する習慣は、毛母細胞に栄養を届けるために非常に効果的です。
シャンプー中や、お風呂上がりの血行が良くなっている時に行うのがおすすめです。
指の腹を使い、頭皮全体を優しく動かすようにマッサージします。「痛いけれど気持ちいい」と感じるくらいの力加減が目安です。
側頭部から頭頂部へ、襟足から頭頂部へと、下から上に向かって引き上げるように行うとリフトアップ効果も期待できます。
頭皮用美容液・育毛剤の活用法
シャンプーやマッサージに加え、頭皮用の美容液や女性向けの育毛剤を日々のケアに取り入れるのも良い方法です。
頭皮用美容液は、主に頭皮の保湿や環境を整えるのを目的としています。一方、育毛剤は、血行促進成分や毛母細胞の活性化をサポートする有効成分が含まれており、抜け毛の予防や発毛促進の効果が期待できます。
製品を使用する際は、お風呂上がりなどの清潔な頭皮に用法用量を守って塗布し、その後に軽くマッサージをすると成分の浸透を助けます。
食生活から見直す髪のアンチエイジング
私たちが毎日口にする食べ物は、私たちの体を作る源です。それは髪も例外ではありません。
バランスの取れた食事が、髪のエイジングケアの土台を支えます。
髪の成長を支えるタンパク質
髪の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。そのため良質なタンパク質が不足すると、髪が細くなったり、弱くなったりする直接的な原因となります。
肉や魚、卵や大豆製品、乳製品など、タンパク質を豊富に含む食品を毎日の食事にバランス良く取り入れましょう。
大豆製品に含まれるイソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをすることが知られており、ホルモンバランスが乱れがちな女性の髪の健康維持をサポートします。
髪に良い栄養素と多く含む食品
| 栄養素 | 主な働き | 多く含む食品 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の主成分であるケラチンを構成する | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
| 亜鉛 | タンパク質の合成を助け、毛髪の成長を促す | 牡蠣、レバー、牛肉、チーズ |
| ビタミンB群 | 頭皮の新陳代謝を促し、皮脂のバランスを整える | 豚肉、レバー、うなぎ、マグロ、納豆 |
ビタミンとミネラルの役割
タンパク質を効率よく髪の毛に変えるためには、ビタミンやミネラルの助けが必要です。
特に「亜鉛」は、アミノ酸をケラチンタンパク質に再合成する際に重要な役割を果たします。亜鉛が不足すると、髪の成長が滞る可能性があります。
また、「ビタミンB群」は頭皮の新陳代謝を活発にし、健康な状態に保つ働きがあります。ビタミンCはコラーゲンの生成を助け、ビタミンEは強い抗酸化作用と血行促進作用で頭皮の老化を防ぎます。
これらの栄養素は互いに協力し合って働くため、特定のサプリメントに頼るのではなく、様々な食材から総合的に摂取するように心がけましょう。
抗酸化作用のある食品を積極的に
体内で発生する活性酸素は細胞を傷つけ、老化を促進します。これは頭皮や毛母細胞も同様です。
この活性酸素の働きを抑える「抗酸化作用」を持つ栄養素を積極的に摂ると、髪のアンチエイジングに直結します。
- ビタミンA(β-カロテン)
- ビタミンC
- ビタミンE
- ポリフェノール
これらの抗酸化ビタミンや、緑黄色野菜、果物、ナッツ類、緑茶などに含まれるポリフェノールは、体の内側から頭皮の老化を防ぐ助けとなります。
カラフルな野菜や果物を食卓に取り入れるのを意識すると、自然と抗酸化物質を摂取できます。
「髪の曲がり角」は一度じゃない?ライフステージで変わる頭皮ケアの重点
多くの女性が漠然と「年齢による髪の変化」を感じていますが、実はその変化の波は一度だけではありません。
女性の体は、ライフステージごとに特有のホルモンバランスの変動を経験します。その変動に合わせ、頭皮ケアの重点も変えていく工夫が、生涯を通じて美しい髪を保つための秘訣です。
30代後半〜40代|出産後とホルモンバランスの変化
この年代は、出産を経験する女性にとって大きな転換期です。妊娠中は豊富だった女性ホルモンが産後一気に減少するため、「産後脱毛」を経験する方は少なくありません。
これは一時的なものが多いですが、育児による睡眠不足やストレス、栄養の偏りが回復を妨げ、そのまま慢性的な薄毛や髪質の低下につながるケースもあります。
この時期は、まず心と体を休めるのが最優先です。シャンプー時に行う簡単な頭皮マッサージで血行を促し、リラックスする時間を作りましょう。
また、和食中心のバランスの取れた食事で、髪に必要な栄養をしっかり補給すると良いです。無理のない範囲で、自分をいたわるケアを意識しましょう。
50代|更年期と向き合う頭皮ケア
更年期は、女性ホルモン「エストロゲン」が劇的に減少する時期であり、髪のエイジングが最も顕著に現れやすい年代です。
髪のうねり、白髪の増加、全体のボリュームダウンといった悩みが深刻化しやすくなります。
この年代のケアで最も重要なのは「保湿」と「血行促進」の徹底です。頭皮の乾燥が進みやすいため、保湿成分が豊富なシャンプーや頭皮用美容液を積極的に使いましょう。
また、血行を促し、毛母細胞に働きかける有効成分が配合された女性用育毛剤の使用を開始するのにも適したタイミングです。
この時期のケアが、60代以降の髪の状態を大きく左右します。
60代以降|全身の健康と連動する毛髪ケア
60代以降は、髪の状態が全身の健康状態をより一層反映するようになります。
高血圧や糖尿病といった生活習慣病は、血流の悪化を通じて頭皮環境に直接影響を与えます。日々の健康管理そのものが、最も効果的なヘアケアとなるのです。
ヘアケア製品は洗浄力や刺激が強すぎない、頭皮への優しさを最優先に考えたものを選びましょう。
パーマやカラーリングも、頭皮への負担が少ない方法を担当の美容師と相談することが重要です。
無理なスタイリングは避け、頭皮と髪を保護するような優しいケアを心がけましょう。
ライフステージ別・頭皮ケアのポイント
| 年代(目安) | 主な身体の変化 | 重点を置くべき頭皮ケア |
|---|---|---|
| 30代後半~40代 | 出産、育児ストレス、エストロゲンの緩やかな減少 | 血行促進ケア、ストレス緩和、栄養バランスの確保 |
| 50代 | 更年期によるエストロゲンの急激な減少 | 保湿ケアの徹底、育毛剤の導入、頭皮の抗酸化対策 |
| 60代以降 | 全身の健康状態が頭皮に反映されやすい | 総合的な健康管理、低刺激なヘアケア、頭皮の保護 |
美しい髪を育む生活習慣のヒント
頭皮や髪のエイジングケアは、特別な製品を使うことだけではありません。日々の何気ない生活習慣が、健やかな髪を育む土壌を作ります。
食事や直接的なヘアケアに加えて、睡眠や運動といった生活の質を高める心がけが、巡り巡って髪の美しさにつながるのです。
質の良い睡眠の重要性
髪の成長に欠かせない「成長ホルモン」は、私たちが眠っている間、特に夜10時から深夜2時の間に最も活発に分泌されると言われています。
この時間帯に深い睡眠をとると日中に受けた頭皮や毛髪のダメージが修復され、毛母細胞の分裂が促されます。
睡眠不足が続くと成長ホルモンの分泌が減少し、自律神経も乱れて血行不良を招くため、髪の成長に悪影響を及ぼします。
毎日決まった時間に就寝・起床し、質の良い睡眠を確保するよう心がけましょう。
質の良い睡眠のためのポイント
- 就寝前のスマートフォンやPCの使用を控える
- ぬるめのお風呂にゆっくり浸かってリラックスする
- カフェインやアルコールの摂取は就寝の3〜4時間前までにする
- 自分に合った寝具(枕やマットレス)を選ぶ
適度な運動がもたらす効果
定期的な運動は、全身の血行を促進する上で非常に効果的です。もちろん、頭皮の血流改善にもつながり、毛根に栄養を届けやすくします。
ウォーキングやジョギング、ヨガなどの有酸素運動はストレス解消にも役立ち、自律神経のバランスを整える効果も期待できます。
激しい運動である必要はありません。エスカレーターを階段に変えるなど、日常生活の中に少しでも体を動かす習慣を取り入れるところから始めてみましょう。
この小さな積み重ねが、健康な頭皮環境を維持する助けとなります。
喫煙と飲酒が髪に与える影響
喫煙は髪の健康にとって百害あって一利なしと言えます。タバコに含まれるニコチンは、血管を強力に収縮させる作用があります。
この作用により、頭皮の毛細血管が収縮し、深刻な血行不良を引き起こします。また、喫煙は体内のビタミンCを大量に消費するため、コラーゲンの生成を妨げ、頭皮の老化を加速させます。
一方、適度な飲酒はリラックス効果や血行促進効果が期待できる場合もありますが、過度な飲酒は肝臓に負担をかけ、髪の栄養となるタンパク質の合成を妨げます。
また、アルコールの分解には多くのビタミンやミネラルが使われるため、髪に届くはずの栄養が不足しがちになります。
健やかな髪を望むなら、禁煙し、飲酒はほどほどにするのが賢明です。
頭皮ケア製品の成分知識|何が髪に良いのか
ドラッグストアやデパートには、数多くの頭皮ケア製品が並んでいます。
しかし、どの製品が自分の悩みに合っているのか、成分表示を見てもよくわからない、という方も多いのではないでしょうか。
ここでは、女性の頭皮エイジングケアにおいて注目したい代表的な成分とその働きについて解説します。
保湿成分の種類と効果
年齢とともに乾燥しやすくなる頭皮には、保湿が何よりも重要です。肌の水分を保ち、バリア機能を高める成分に注目しましょう。
「セラミド」は、もともと私たちの皮膚の角質層に存在する成分で、細胞間の水分を繋ぎ止める働きがあります。これが不足すると乾燥しやすくなるため、積極的に補いたい成分です。
「ヒアルロン酸」や「コラーゲン」も高い保水力で知られ、頭皮に潤いと弾力を与えます。
これらの成分が配合されたローションや美容液は、乾燥によるかゆみやフケに悩む方におすすめです。
血行促進をサポートする成分
育毛剤の多くには、頭皮の血行を促進する成分が配合されています。
代表的なものに「センブリエキス」や「ビタミンE誘導体(トコフェロール酢酸エステル)」があります。
これらの成分は、頭皮の毛細血管を拡張させ、血流を改善する働きがあります。これにより毛母細胞に酸素や栄養が届きやすくなり、抜け毛の予防や、ハリ・コシのある髪の育成をサポートします。
頭皮マッサージと併用すると、より効果を実感しやすいです。
抗炎症・抗酸化成分
頭皮に赤みやかゆみがある場合、軽い炎症が起きている可能性があります。
漢方にも用いられる甘草由来の「グリチルリチン酸ジカリウム」は優れた抗炎症作用を持ち、多くの薬用シャンプーや育毛剤に配合されています。頭皮環境を健やかに整え、トラブルを防ぎます。
また、紫外線やストレスによって発生する活性酸素から頭皮を守る「抗酸化成分」も重要です。
ビタミンC誘導体や、植物由来のポリフェノール(オウゴンエキスなど)は頭皮の細胞の酸化を防ぎ、老化の進行を緩やかにする働きが期待できます。
頭皮ケア製品の代表的な有効成分
| 成分の働き | 代表的な成分例 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 保湿 | セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲン、グリセリン | 頭皮の乾燥を防ぎ、バリア機能をサポートする |
| 血行促進 | センブリエキス、ビタミンE誘導体、ニコチン酸アミド | 毛根への栄養供給を促し、抜け毛を予防する |
| 抗炎症 | グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン | 頭皮のかゆみやフケ、炎症を抑える |
専門クリニックに相談するタイミングとは
日々のセルフケアは頭皮のエイジング対策の基本ですが、それでも改善しない、あるいは症状が進行するといった場合には、一人で悩まず専門家の力を借りることも大切です。
セルフケアで改善が見られない場合
シャンプーの見直しや頭皮マッサージ、食生活の改善などを3ヶ月〜半年ほど続けても抜け毛の量が変わらない、髪のボリュームダウンが進行するといった場合は、専門医への相談を検討しましょう。
セルフケアだけでは対処が難しい、より深い原因が隠れている可能性があります。
医師による診察で、自分の髪の状態を客観的に把握できます。
急激な抜け毛や頭皮トラブル
ある日突然ごっそりと髪が抜けるようになった、特定の場所だけが円形に抜けてしまった、頭皮に強いかゆみや痛み、湿疹がある、といった急性の症状が現れたときは速やかに医療機関を受診してください。
これらは円形脱毛症や脂漏性皮膚炎など、治療が必要な皮膚疾患の可能性があります。自己判断で放置すると症状が悪化するケースもあるため、早期の診断と治療が重要です。
これらの症状は、一般的な加齢による薄毛とは異なる対応が必要です。
より積極的な対策を望むとき
「現状維持ではなく、もっと髪を元気にしたい」「今後の薄毛の進行を、より積極的に予防したい」と考える場合もクリニックへの相談が有効です。
クリニックでは市販の製品よりも高濃度の有効成分を含む処方薬や、頭皮に直接有効成分を届ける治療、LED照射による発毛促進治療など、医学的根拠に基づいた多様な選択肢があります。
カウンセリングを通じて、自分の希望や生活スタイルに合った治療法を見つけられるでしょう。
女性の頭皮エイジングケアに関するよくある質問
さいごに、患者さんから寄せられることの多い、頭皮のエイジングケアに関する質問とその回答をまとめました。
- 頭皮マッサージはどのくらいの頻度で行うべきですか?
-
頭皮マッサージは、毎日継続するのが理想です。シャンプーの際に1〜2分、あるいはタオルドライ後、育毛剤などを塗布する際に1〜2分行うなど、日々の習慣に組み込むことをおすすめします。
やり過ぎや、強い力でのマッサージはかえって頭皮に負担をかける可能性があるため、1回の時間は短くても構いません。
優しく、気持ち良いと感じる程度の力で、毎日コツコツ続ける努力が血行促進には最も効果的です。
- 育毛剤と発毛剤の違いは何ですか?
-
この二つは目的と成分が異なります。
「育毛剤」は、今ある髪を健康に育て、抜け毛を予防することを主な目的とした医薬部外品です。血行促進成分や抗炎症成分などが主体で、頭皮環境を整える役割を担います。
一方、「発毛剤」は、毛母細胞に直接働きかけて、新しい髪を生み出すのを目的とした医療用医薬品(または第一類医薬品)です。ミノキシジルなどの発毛効果が認められた有効成分を含みます。
どちらが必要かは、ご自身の頭皮の状態や目的によって異なります。
- カラーリングやパーマは続けても大丈夫ですか?
-
カラーリング剤やパーマ液は、程度の差こそあれ、髪と頭皮に化学的な負担をかけます。エイジングが気になる頭皮は、バリア機能が低下し刺激を受けやすくなっているため、注意が必要です。
しかし、おしゃれを楽しみたいという気持ちも大切です。続ける場合は、美容師に頭皮の状態を相談し、根元に薬剤をつけないように塗ってもらう、頭皮保護のオイルを塗布してもらうなどの工夫をしましょう。
また、施術の頻度を少し空ける、施術後は特に念入りに保湿ケアを行うなどの配慮が重要です。
- サプリメントは効果がありますか?
-
髪の成長に必要な栄養素は、基本的には日々の食事からバランス良く摂取する工夫が最も重要です。
しかし、食生活が不規則になりがちな方や、特定の栄養素が不足している場合には、サプリメントで補うのも一つの方法です。
特に、髪の主成分となるタンパク質(アミノ酸)や、その合成を助ける亜鉛、ビタミンB群などは、ヘアケアを目的としたサプリメントによく含まれています。
ただし、サプリメントはあくまで食事の補助です。過剰摂取はかえって健康を害する場合もあるため、摂取する際は目安量を守りましょう。
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