男性型脱毛症の予防や改善に注目されているノコギリヤシは、アメリカノコギリヤシの果実から抽出される天然成分です。
特に5α還元酵素の働きを抑制する作用が確認されており、男性ホルモンの過剰な活性化を防ぎ、髪の毛の成長サイクルを健全に保つ効果があります。
本記事では、ノコギリヤシの毛髪への作用メカニズムから、長期使用による変化、さらには注意すべき副作用まで、詳しく解説していきます。
この記事を書いた医師

内科総合クリニック人形町 院長
- 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
- 東京大学医学部保健学科および横浜市立大学医学部を卒業
- 東京大学付属病院や虎の門病院等を経て2019年11月に当院を開業
最寄駅:東京地下鉄 人形町駅および水天宮前駅(各徒歩3分)
ノコギリヤシとは?成分と髪への影響
男性型脱毛症の改善に向けて注目を集めているノコギリヤシは、天然由来の成分です。
ノコギリヤシに含まれる有効成分の特性から、5α還元酵素への作用、そしてジヒドロテストステロンの産生抑制に至るまでの一連のメカニズムを詳しく見ていきます。
ノコギリヤシに含まれる有効成分の特徴

ノコギリヤシ(学名:Serenoa repens)は、北米原産のヤシ科植物で、果実から脂肪酸類やステロール類が抽出されます。
| 主要成分 | 含有比率 |
|---|---|
| 脂肪酸 | 80-95% |
| フィトステロール | 0.2-0.5% |
| 多糖類 | 約10% |
| フラボノイド | 微量 |
脂肪酸の中でもラウリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸といった遊離脂肪酸が豊富に含まれ、毛根細胞に直接的な影響を及ぼします。
フィトステロール類は植物性ステロイドの一種で、βシトステロールを中心とした複数の化合物が含まれています。
- 主要な脂肪酸成分
- ラウリン酸(約30%)
- オレイン酸(約35%)
- ミリスチン酸(約12%)
- パルミチン酸(約10%)
- リノール酸(約5%)
5α還元酵素の阻害作用と発毛メカニズム
5α還元酵素は、テストステロンをジヒドロテストステロン(DHT)に変換する酵素です。
| 酵素タイプ | 主な発現部位 |
|---|---|
| 1型 | 皮脂腺、肝臓 |
| 2型 | 前立腺、毛包 |
| 3型 | 全身の組織 |

ノコギリヤシに含まれる脂肪酸、特にラウリン酸とオレイン酸は、5α還元酵素の活性部位に結合することで、働きを抑制し、テストステロンからDHTへの変換が抑えられ、毛根へのDHTの悪影響を軽減することにつながるのです。
| 作用段階 | 効果 |
|---|---|
| 初期 | 酵素活性の低下 |
| 中期 | DHT産生量の減少 |
| 後期 | 毛根環境の改善 |
ジヒドロテストステロンの過剰産生を抑える仕組み
ジヒドロテストステロン(DHT)は、男性型脱毛症の主要な原因物質とされており、その過剰な産生を抑制することは毛髪の健康維持に不可欠です。
ノコギリヤシの有効成分は、複数の経路でDHTの産生を抑制することが研究により明らかになっています。
第一に、5α還元酵素の活性を直接的に抑制することで、テストステロンからDHTへの変換を減少。
さらに、アンドロゲン受容体との結合を競合的に阻害することで、DHTの作用そのものを弱める効果も確認されています。
- DHT抑制のメカニズム
- 5α還元酵素活性の抑制
- アンドロゲン受容体への結合阻害
- 抗炎症作用による毛根環境の改善
- アポトーシス(細胞死)の抑制
- 毛包細胞の増殖促進
ノコギリヤシの長期使用による効果と変化
ノコギリヤシは、5α還元酵素の働きを抑制し、DHT(ジヒドロテストステロン)の産生を抑える作用により、AGAの進行を緩やかにする植物由来の成分です。
発毛・育毛効果が表れる期間の目安
ノコギリヤシによる発毛・育毛効果は、個人差はありますが、通常3~6ヶ月程度の継続使用で実感し始めることが多いです。
初期段階では、まず抜け毛の減少を自覚することが多く、その後徐々に毛髪の質や量に変化が現れ始めます。
最初の変化として、シャンプー時やブラッシング時の抜け毛の本数が20~30%程度減少することが一般的です。
| 使用期間 | 期待される変化 | 実感度合い |
|---|---|---|
| 1-2ヶ月 | 抜け毛減少 | 軽度 |
| 3-4ヶ月 | 毛髪の質改善 | 中程度 |
| 5-6ヶ月 | 密度向上 | 顕著 |

継続使用による毛髪密度と太さの変化
6ヶ月以上の継続使用により、毛包の活性化が進み、従来の細い毛髪が徐々に太く健康的な毛髪へと変化していきます。
毛髪密度については、1平方センチメートルあたり10~15%程度の増加が見られ、特に前頭部や頭頂部での改善が顕著です。
12ヶ月以上の長期使用者では、毛髪の太さが平均15~20%増加したとのデータも報告されています。
| 観察項目 | 6ヶ月後 | 12ヶ月後 |
|---|---|---|
| 密度増加率 | 5-10% | 10-15% |
| 毛髪太さ | 10-15% | 15-20% |
| 抜け毛減少 | 30-40% | 40-50% |
継続使用による副次的な効果
- 頭皮の乾燥改善
- かゆみの軽減
- フケの減少
- 皮脂バランスの正常化
長期使用者の満足度と実感時期の傾向
長期使用者を対象とした満足度調査では、6ヶ月以上の継続使用者の約70%が何らかの効果を実感しているとの結果が得られています。
特に注目すべき点は、使用開始から2年以上経過した使用者の85%以上が、発毛効果や育毛効果に満足感を示していることです。
| 使用期間 | 満足度 | 効果実感率 |
|---|---|---|
| 3-6ヶ月 | 50% | 40% |
| 6-12ヶ月 | 70% | 65% |
| 12-24ヶ月 | 85% | 80% |
効果を実感するまでの期間は個人差が大きく、以下のような要因が影響します。
- 年齢と脱毛の進行度
- 生活習慣と食事内容
- ストレス度合い
- 遺伝的要因と体質
ノコギリヤシの効果は、継続使用により徐々に蓄積されていき、2年以上の長期使用でより安定した結果が得られ、期間中、定期的な経過観察と記録により、個々の反応や効果を評価することが大切です。
使用前に確認したい!ノコギリヤシの注意点と副作用

ノコギリヤシは自然由来のサプリメントとして知られていますが、効果を最大限に引き出し、安全に使用するためには、服用方法の理解と潜在的なリスクの把握が重要です。
服用量と服用時間帯の注意事項
ノコギリヤシの推奨服用量は、製品の濃度や形状によって異なりますが、一般的な目安として1日あたり320mg~360mgです。
空腹時の服用は吸収率が低下する傾向にあるため、食後30分以内の服用が推奨され、脂質を含む食事と一緒に摂取することで、有効成分の吸収率が向上します。
| 服用タイミング | 吸収率 | 推奨度 |
|---|---|---|
| 食直後 | 高 | 最適 |
| 空腹時 | 低 | 非推奨 |
| 就寝前 | 中 | 可能 |
1日の総摂取量を2~3回に分けて服用することで、体内での有効成分の濃度を安定させることができ、より効果的な結果が期待できます。
服用量の調整においては、体重や年齢などの個人差を考慮に入れる必要があります。
- 体重による基準量の調整
- 年齢に応じた摂取量の考慮
- 既往歴による制限
- 現在の脱毛状態
- 併用薬の有無
他の薬剤との相互作用リスク
ノコギリヤシは、特定の医薬品との併用において相互作用を引き起こす可能性があり、血液凝固に影響を与える薬剤との組み合わせには注意が必要です。
| 薬剤分類 | 相互作用 | 注意レベル |
|---|---|---|
| 抗凝固薬 | 出血リスク増加 | 要注意 |
| ホルモン薬 | 効果減弱 | 中程度 |
| 降圧薬 | 血圧変動 | 軽度 |
注意を要する薬剤との相互作用
- ワーファリンなどの抗凝固薬
- 血小板凝集抑制薬
- 非ステロイド性抗炎症薬
- ホルモン治療薬
- 前立腺肥大症治療薬
ホルモンバランスへの影響と男性機能
ノコギリヤシは、5α還元酵素の働きを抑制することでDHT(ジヒドロテストステロン)の産生を抑制しますが、この作用によってホルモンバランスに一定の影響を与えます。
| ホルモン | 影響度 | 持続期間 |
|---|---|---|
| DHT | 強 | 継続的 |
| テストステロン | 中 | 一時的 |
| エストロゲン | 弱 | 短期的 |
ホルモンバランスの変化に伴う影響は個人差が大きく、以下のような変化が生じる可能性があります。
- リビドー(性欲)への影響: 通常は軽微ですが、一部の方では一時的な変化を感じることもあります。
- 前立腺への作用: 前立腺の肥大を抑制する効果がありますが、過度の抑制は避ける必要があります。
- 精子産生への影響: 長期使用による精子の質や量への影響については、現在も研究が進められています。

参考文献
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