突然、足をつくこともできないほどの急激な痛みに襲われる痛風発作。できる限り早く痛みを治めるためには、早急な治療開始と合わせ、「冷やす」「刺激を与えない」「患部を心臓より高くする」などの対策が有効です。
市販の鎮痛薬は緊急用として使用してもかまいませんが、サリチル酸(アスピリン)が含まれるものは痛風発作の痛みを強くする可能性があり、痛み止めであれば何でも飲んで良いというわけではありません。
この記事では、
- 痛風発作に対する自宅での応急処置・緊急対策
- 痛風発作時、痛み止めとして使える市販の鎮痛薬
- 痛みを悪化させないための水分摂取量や食事の内容
- 早く治すためにやってはいけないこと
を解説しています。
痛み止めとして使用できる市販の鎮痛剤の種類や、湿布を使って良いか、痛風発作時の食事や水分量など、痛風発作の対処で困りがちな点についても書いています。
急に痛風発作が起きてしまった方、できるだけ早く治したい方はぜひ参考にしてくださいね。
総合内科専門医が執筆しています
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
痛風発作は、早急に医療機関を受診することで痛みを早く治められます。
痛風発作を早く治す方法~自宅での応急処置
痛風は、関節に尿酸の結晶が蓄積し、腫れや赤み・強い痛みを伴う炎症性関節炎です。
突然起こり、激しい痛みを感じる痛風発作。早く治すためには、どのように対処すれば良いか解説いたします。
痛風発作の前兆を感じた場合は本格的な発作が起きる前に受診を
痛風発作が起きる前に、前兆として関節の不快感や違和感(ピリピリ・ムズムズ)、こわばり、軽い痛みなどの症状が現れることがあります。
前兆は、一度目の発作よりも二度目の発作のほうが感じやすいです。
尿酸値が高い方で「これは痛風の前兆かな」と感じる違和感があるときは、コルヒチンという痛風発作の予防/緩解薬を服用するなど早期に治療を開始することで発作を予防したり、発作の持続期間や重症度を軽減したりする効果が期待できます。
一方、痛風発作の前兆は全く感じない人もいます。もし痛風の発作が起きてしまったときは、以下のような対策が有効です。
痛風発作時の自宅でできる緊急対策
- 安静にする:なるべく歩かずに安静にします。クッションなどを使い、患部の関節を心臓より高くして固定すると痛みを軽減できます。
- 氷を当てる:腫れや痛みを抑えるために、アイスノンやタオルに包んだ氷を患部の関節に当てます。
- 市販薬の痛み止め(鎮痛剤)を使用する:ロキソプロフェン、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、痛風発作時の炎症と痛みを抑えるのに役立ちます。
- 水分の摂取を増やす:水をたくさん飲むことで発作が治まるわけではありませんが、痛風の合併症である尿路結石や尿管結石を防ぐのに役立ちます。
痛み止めのための鎮痛剤は市販のものでかまいませんが、バファリンA錠などのサリチル酸(アスピリン)鎮痛剤は避けてください。
サリチル酸(アスピリン)には尿酸排泄作用があり、血液中の尿酸値が低下します。痛風発作中に尿酸値を変動させると症状を悪化させてしまうため、使用しない方が良いでしょう。
ロキソプロフェンとイブプロフェンを比較すると、ロキソプロフェンの方が抗炎症作用効果が現れるまでの時間が早いとされています。
※Tmax(飲んでから血中濃度が最大に達するまでにかかる時間):ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン)活性体 0.79時間、イブブロフェン(ブルフェン)Tmax 2.1時間
市販の痛み止めについてはこちらもご参照ください。痛風の痛みを和らげる市販の痛み止め薬(NSAIDs)
市販の鎮痛剤で痛みが一時的に緩和されることもありますが、医師の診察をできる限り早めに受け、治療を開始することが大切です。
市販の湿布は使用して良いか
市販の湿布薬は、痛みや炎症を一時的に緩和する効果が期待できます(もちろん温湿布ではなく、冷湿布です)。
ただし、激しい発作や症状が続く場合は、コルヒチン、ステロイド、より強力なNSAIDsなどの処方薬が必要になります。
湿布はあくまで短期的な使用にとどめ、たとえ痛みが収まったとしても、医師の管理のもと高尿酸血症の治療が必要です。
冷やす?温める?どっちが良いのか
痛風発作が起きたときは、「冷やす」が正しい方法です。アイスノンなどで冷やすと患部の痛みを軽減できます。
このとき、痛む患部を心臓より高く置くと痛みをやわらげることができます。
氷のうを使用する場合は、重さが患部への刺激とならないように注意してください。痛む部分を刺激すると痛みが強まる可能性があります。
逆に温めてしまうと、炎症部位を流れる血液が温まり、尿酸の結晶を攻撃する白血球の働きが活発になり痛みがひどくなります。
痛風発作を早く治すための食事・水分量
痛風の発作が起きたときは、血液中の尿酸値を上昇させる「プリン体」を多く含む食品をなるべく避けましょう。
高プリン体食品は、赤身肉、内臓肉、魚介類、ほうれん草、かぼちゃ、アスパラガスなどが挙げられます。1)
食べてはいけないわけではなく、高プリン体食材を大量につづけて食べるのを避けてください。
その代わりに、尿酸値を下げるのに役立つ低プリン体食品をとるようにしましょう。4)
低プリン体食品
- 果物・野菜(ほうれん草、かぼちゃなど高プリン体野菜を除く)
- 全粒穀物(大麦、そば粉、とうもろこし、白米以外の米や小麦など)
- ナッツやアーモンド
- 牛乳
- 低脂肪乳製品
- 卵
そのほか、アルコール、特にビールは飲まないようにしてください。アルコールは体内の尿酸を排出する機能を低下させ、痛風の症状を悪化させます。3)
また、もう一つ重要なのが「十分な水分補給をする」です。理由は尿酸をたくさん排出するために、尿量を増やしたいからです。
発作が水を飲むことで治るわけではないのですが、十分な水分補給は、痛風の合併症予防にも有効です。
具体的には、1日に2~2.5リットルの水分をとるように意識してみてください。水だけではなく、麦茶やウーロン茶でもかまいませんが、ジュースや炭酸飲料水などは避けましょう。
その他、以下の痛風に良い食品や栄養素を取り入れるのも良いでしょう。
ビタミンC | ビタミンCは尿酸値を下げる働きがあることが研究でわかっています。4) オレンジ、イチゴ、パプリカなど、ビタミンCを多く含む食品を食事に取り入れましょう。 |
チェリー | さくらんぼや、チェリーエキスはその抗炎症作用により、痛風発作を軽減することがわかっています。5) |
オメガ3脂肪酸 | マグロ、イワシ、ブリなど青魚やカニなどの甲殻類、クルミ、亜麻仁(アマニ)に含まれるオメガ3脂肪酸は、抗炎症作用があり、痛風の症状を緩和するのに役立つと考えられています。6) |
コーヒー | 適度なコーヒーの摂取は、痛風のリスク軽減につながるとされています。7) ただしカフェインの摂取量に注意し、過剰摂取は避けてください。 |
早く治すためにやってはいけないこと
痛風の症状を悪化させたり、回復を遅らせたりする可能性のある行為は以下のとおりです。
高プリン体食品を、大量につづけて食べる | プリン体は尿酸に分解されるため、プリン体を多く含む食品を多く摂取すると、体内の尿酸値が上昇し、痛風の症状を悪化させる可能性があります。 |
アルコールの摂取 | アルコール、特にビールは尿酸値を上昇させ、痛風発作を誘発させます。 |
脱水 | 十分な水分補給は、体内の余分な尿酸を排出する働きのためには欠かせません。とる水分が少ないと尿酸値が高くなり、痛風発作のリスクが高くなります。 |
患部に負担をかける | 痛風発作が起きている間は、炎症や痛みを悪化させる可能性があるため、安静にして患部の関節に過度の負担をかけないようにしてください。 |
尿酸値を変動させる薬を服用する | 発作中は尿酸値を変動させないようにします。利尿剤やバファリンA錠などのサリチル酸(アスピリン)鎮痛剤などは尿酸値を変動させ、痛風発作の痛みがひどくなることがあります。 |
処方された薬を自己判断でやめる | 処方されている薬がある場合は、自己判断で処方薬を飲むのをやめたり、他の薬を飲んだりすることは避けましょう。薬を飲むのを突然中止すると、反動で痛風症状が悪化する場合もあります。 |
痛風発作を早く治めるにはできる限り早く受診する
痛風発作が起きたとき、痛み・炎症を最小限に抑え、合併症を予防するためには早急な病院受診が大切です。
早期に医療機関を受診することで、適切な治療が受けられ、痛風発作の期間・重症度が軽減できます。また、結節や腎障害、尿路結石など痛風の合併症を防げます。
痛風発作時のコルヒチン治療の早期開始(症状発現から12時間以内)は、治療開始が遅れた場合と比較して、痛風発作が早く治まることと関係していることがわかっています(536名の患者のうち80%が48時間以内に軽快)。8)
日本では、コルヒチンは痛風発作の前兆があるとき、本格的な発作を予防する目的で使用されます。
医療機関での治療
激しい痛風発作の痛みが起きてしまっているときは、尿酸値を下げるよりもまずその痛みを取り除くことを優先します。
痛風発作の極期(痛みのピーク時)には非ステロイド抗炎症薬(NSAID)の使用が一般的です。
ごく短期間に多量(通常の1.5~3倍)の非ステロイド抗炎症薬(NSAID)を服用する「NSAIDパルス療法」を行うことで、ほとんどの場合は炎症が沈静化し、激しい痛みは消失します。
非ステロイド抗炎症薬(NSAID)には胃腸障害(胃潰瘍)の副作用があるため、腎臓の機能が低下していたり、胃・十二指腸潰瘍の既往歴がある方は使えません。その場合は副腎皮質ステロイドが使用されます。
どの薬もできるだけ早くに服用を開始し、発作が治まったら服用を中止します。
痛風発作がおさまったあとは、尿酸値を下げるための治療や、食生活の見直し・適度な運動などの生活習慣改善を個々の状況に応じて行っていくのが一般的です。
症状が現れたら、痛みを早く治すためだけではなく、合併症を防ぐためにもすぐに医療機関を受診してください。
一度痛風発作が起きると、痛みがおさまったとしても次の発作がまた起きます。医師の管理のもと、持続的に尿酸値のコントロールが必要になりますので、放置せずに必ず医療機関を受診しましょう。
痛風発作の原因・起こるしくみ
痛風は、関節や周辺組織に尿酸結晶(尿酸ナトリウム)がたまり、沈着した結晶がはがれ落ちるときに起きると考えられています。
血液中に尿酸が増えすぎているのが一番の理由
痛風の一番の原因は、体の中に尿酸がたくさんあることです。血液中の尿酸が7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」という名前がつきます。
尿酸は、普段は尿や便と一緒に体の中から出ていくはずです。ところが、尿酸がたくさん作られすぎたり、うまく体の中から出ていかなかったりすると、白い結晶となり関節にたまってしまいます。
関節にたまった尿酸の結晶が何かのきっかけではがれ落ちると、異物として認識され、免疫細胞が攻撃をはじめます。
このときの炎症反応が、「風が吹くだけで痛い」と言われる痛風発作です。
高尿酸血症の原因
血液中の尿酸が7.0mg/dLを超える「高尿酸血症」。尿酸が過剰につくられてしまう、または尿酸を体の外に排出する機能が低下した場合に、尿酸値は高くなります。
尿酸が体にたくさんある「高尿酸血症」の原因は以下のようなものがあります。
- 遺伝:家族に痛風の人がいると、自分も痛風になりやすくなります。
- 食べ物:赤身肉、魚介類、内臓肉などの高プリン体食品は尿酸がたくさんつくられる原因となります。
- お酒:アルコールは尿酸を排泄する機能が低下します。
- お薬:利尿剤、低用量アスピリン、免疫抑制剤などの特定の薬剤は、尿酸値を上昇させることがあります。
- 腎機能の低下:腎臓の働きが悪いと、尿酸がうまく体の中から出ていかず、たまってしまうことがあります。
痛風発作が起きてしまうきっかけとなるもの
体の中に尿酸がたくさんありすぎるだけでは、痛風発作は起こりません。本格的な発作が起こってしまうきっかけとなるものには、下記のようなものが考えられます。
- 肥満
- 食べ過ぎ
- 運動不足
- 激しい運動、長時間の歩行
- 暴飲暴食(アルコールの大量摂取を含む)
- 汗をたくさんかく
- 脱水(水分不足)
- 患部付近の怪我(ぶつけたり、ねんざなど)
- 患部への物理的刺激(履いている靴がきついなど)
- 体温の低下:体温が低くなると、尿酸結晶がはがれ落ちやすくなる
- ストレス、過労
急激に尿酸値が上がったり下がったり、結晶がたまっている関節に何らかの刺激が加わり、結晶がはがれ落ちてしまうことが痛風発作の原因として考えられます。
また、精神的な強いストレスや体温低下も痛風発作を起こすきっかけとなります。
痛みが起きやすい場所
尿酸結晶は体のどこにでもたまりますが、血液が滞りやすい部分に特にたまりやすいです。
最初に痛風発作が起きる場所は足の親指の付け根が多く、その他、ひざ、足首など、足の関節が一般的で、下半身に起こります。
ただし、足の甲やくるぶし、上肢の指や手首、ひじなどの関節が痛くなることもあります。
多くの場合は1箇所のみに痛みが起き、2箇所以上の場所が痛むことはほとんどありません。
痛風発作が起きやすいのは、「夜中」「明け方」「激しい運動をしたあと」。汗をかきやすく脱水が起こりやすい「夏」です。
痛みは自然におさまる?痛風発作が続く期間
痛風発作は通常、発作が起きてから24時間以内で痛みのピークを迎えます。痛みがおさまるまでの期間は1週間(7日間)~2週間(14日間)程度が一般的です。
ただし、中には発作が重症化してしまい、1カ月以上続く長い発作を経験する方もいます。
痛風発作の持続期間に影響する要因
早く治療を開始すればするほど、激しく痛む痛風発作の持続期間は短縮できます。さすがに一日で治すのは難しいですが、適切な治療開始から48時間以内にほとんどの方が痛みは軽快していきます。
痛風の発作がつづく期間や、なかなかおさまらない・腫れがひかない場合には、以下のような要因が影響します。
発作の程度 | 痛風発作の重症度:痛風発作は重症であるほど長く続く傾向があります。9) |
治療開始の時期 | 発作が起きてから、迅速に適切な治療を行った場合、痛風発作の期間を大幅に短縮することができます。10) |
他の疾患 | 糖尿病や腎臓病などの他の健康状態があると、痛風発作の期間が長くなることがあります。11) |
生活習慣 | 食事、飲酒、身体活動などの因子は、痛風発作の持続期間に影響を与える可能性があります。 |
痛風が一日で治る方法はあるのか
痛風の痛みをできる限り早く治したい、なにか方法は無いのかと考える方は多いのですが、そもそも痛風は尿酸塩結晶が関節に蓄積し炎症を起こしている状態であり、体の中に尿酸がたくさんありすぎるのが原因です。
尿酸値が高い「高尿酸血症」そのものが時間をかけて発症する慢性疾患ですから、痛風を一日で治すという考え方は根本的に間違っています。
ただし、痛風発作をできる限り早く緩和させることはできます。
ここまでお伝えしてきたように、痛風を早く治めるためには①早急な病院受診、②医療機関で痛風発作の痛みを緩和する適切な薬を処方してもらう、この2点が大切です。
一日で痛風がなくなるような魔法の薬は存在しません。尿酸値をコントロールし、痛風発作の頻度と重症度を最小限に抑えるため、痛風発作が起きたらすぐに病院を受診してください。
市販薬で乗り切ったとしても、放置すると再発する
痛風発作が起こってしまったのに、医療機関で治療を受けずに放置すると、発作は数ヶ月~1年後にまた起こります。
痛風発作を繰り返しているうちに、発作が起きる間隔はどんどん短くなっていき、炎症が起こる部位も広がっていきます。
また、痛風を放っておくと、関節の機能が失われたり、腎臓に結石ができたり、痛風結節といって体中にコブのような肉芽腫ができたりすることもあります。
痛風発作の痛みを早く治すためには、早期治療が大切です。まずは痛みをやわらげ、発作がおさまった後に、尿酸値を下げる薬の服用や食事制限・運動などの生活習慣改善を開始します。
参考文献
1) Zhang Y, et al. Purine-rich foods intake and recurrent gout attacks. Ann Rheum Dis. 2012 Sep;71(9):1448-53.
2) Gibson T, et al. Diet and gout. Curr Opin Rheumatol. 2002 Nov;14(6):625-30.
3) Smith E, et al. Effect of alcohol consumption on serum uric acid concentrations. Ann Rheum Dis. 2004 Dec;63(12):1678-82.
4) Gao X, et al. Vitamin C intake and serum uric acid concentration in men. J Rheumatol. 2008 Sep;35(9):1853-8.
5) Zhang Y, et al. Cherry consumption and decreased risk of recurrent gout attacks. Arthritis Rheum. 2012 Dec;64(12):4004-11.
6) Stamp LK, et al. Diet and gout: an update. J Clin Rheumatol. 2006 Oct;12(5):260-6.
7) Choi HK, et al. Coffee consumption and risk of incident gout in men: a prospective study. Arthritis Rheum. 2007 Jun;56(6):2049-55.
8) Gutman AB : Treatment of primary gout ; The present status. Arthritis Rheum 8 :911-920,1965
9) Gaffo AL, Schumacher HR Jr. Acute gouty arthritis: management with rapid resolution of pain and inflammation. Curr Rheumatol Rep. 2005 Jun;7(3):186-92.
10) Khanna D, Khanna PP, Fitzgerald JD, et al. 2012 American College of Rheumatology guidelines for management of gout. Part 2: therapy and anti-inflammatory prophylaxis of acute gouty arthritis. Arthritis Care Res (Hoboken). 2012 Oct;64(10):1447-61.
11) Roddy E, Zhang W, Doherty M. The changing epidemiology of gout. Nat Clin Pract Rheumatol. 2007 Nov;3(11):632-9.