痛風は血中に含まれる尿酸が増加することが原因で起こる病気で、改善・予防には食事療法が重要だと考えられています。
今回の記事では
- プリン体と痛風の関係
- プリン体の多い食べ物
- プリン体の摂取目安
- 予防のための食事方法
について解説させていただきます。
健康診断で尿酸値が高いと言われた方や既に痛風の症状が出ている方はぜひ最後までご覧いただき、症状の改善に役立ててください。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
プリン体とはなんなのか?
まず簡単にプリン体の説明をさせてください。
プリン体とは体を動かすために必要なエネルギーのことで、このプリン体はあらゆる細胞内に存在し、生物以外の植物にも含まれています。
プリン体と尿酸・痛風の関係性
プリン体というキーワードは大抵の場合、尿酸・痛風とセットで耳にすると思います。
この、プリン体・尿酸・痛風の関係性を大まかに説明しますと、
「痛風は尿酸が多いと発症する病気。その尿酸はプリン体から作られる」という関係性に。
痛風にもいくつかの種類があり、尿酸を排出できなくなるタイプの痛風発作もあるのですが、基本的にはプリン体を多く摂取することが尿酸を生み出し、痛風を引き起こすと考えられています。
プリン体を控えれば痛風にはならない?
勘の良い方であれば、
「プリン体が尿酸を生み出すということは、食事からプリン体を取らなければいいということか。だから最近はプリン体0のビールが出ているのだな」と思われるかもしれません。
これは正しくもあり、間違いでもありますので、詳しく説明いたします。
プリン体はありとあらゆる細胞に含まれていると言いましたが、この細胞とは食べ物として摂取する細胞だけはありません。
人の体は日々新しい細胞が作られていますから、食事でプリン体を摂取しなくとも生きているだけで、プリン体を持った細胞が生み出されます。
そのため、食事でプリン体を多く摂取しなくても生活しているだけで痛風になる可能性も。かといって食事のプリン体を気にしなくて良いわけでもなく、大量に摂取すればその分痛風になる可能性は上がっていきます。
高プリン体食品一覧表
プリン体の摂取量を控えるために、プリン体の高い食品をランキングで一覧表にしました。
プリン体の数字は全て100gあたりの量になっていますが、食材によってはたくさん食べるものと、おつまみとして少しだけ食べるものがあると思いますので、あくまで一覧で確認し、食事の目安としてお使いください。
では多い順に紹介いたします
- ニボシ(746mg)
- 鰹節(493mg)
- タラの白子(555mg)
- 鳥レバー(310mg)
- マイワシの干物(306mg)
- 豚レバー(285mg)
- エビ(275mg)
- マアジの干物(245mg)
- カツオ(210mg)
- マイワシ(210mg)
- さんまの干物(205mg)
- スルメイカ(187mg)
- カキ(185mg)
- ニジマス(180mg)
- イカ(174mg)
- マグロ(160mg)
- さんま(155mg)
- 明太子(159mg)
- ささみ(150mg)
- タコ(137mg)
- カニ(136mg)
上位を見ていただくとほとんどが魚・肉・内臓(レバー)となっているのがわかりますね。
プリン体の摂取目安は1日400mgと言われていますので、海鮮の干物を食べてしまうとその許容量は簡単に超えてしまいます。
上記のリストの中に好きな食べ物が入っていた場合は、食べるのを諦める必要はありませんが、食べる頻度や量を減らすようにしてください。
魚卵にプリン体が多いという誤った情報
痛風というと、なぜかいくらやたらこといった「魚卵にはプリン体が多いから気をつけた方が良い」という情報を見かけます。
具体的に見てみましょう。
- たらこ(120mg)
- 数の子(22mg)
- すじこ(15mg)
- いくら(4mg)
確かにたらこは比較的プリン体が多いですが、それ以外の数の子・すじこ・いくらはむしろ低い部類に当てはまります。
さらにこれらの魚卵は主食として食べることは稀で、仮にたらこを一腹(50g)食べたとしてもプリン体は60mgとなります。
ですので、大量に食べすぎない限り魚卵をさほど気にする必要はありません。
野菜に含まれるプリン体について
ランキングに入らなかった食材に、野菜というジャンルがあります。
ただしその中でも納豆などの比較的高プリン体な野菜もあり、これらは「プリンリッチ野菜」と呼ばれているものも。
具体的には、以下の野菜にプリン体が多く含まれています。
- 納豆(115mg)
- ピーマン(70mg)
- かぼちゃ(56mg)
- ほうれん草(53mg)
また少し変わった食材として
- ほうれん草の芽(171mg)
- 干し椎茸(379mg)
- 乾燥大豆(172mg)
などがあります。これらはそこまで日常的に食べる人は少ないと思いますので、ランキングには入れませんでしたが非常に高プリン体の食べ物です。
お米・パンといった主食類のプリン体は?
日本人であればほとんどの人が毎日食べるお米。たまに食べるものではないのでプリン体の量が気になりますよね。
結論を言うとお米のプリン体についてはさほど気にする必要はありません。
詳しく説明しますが、まずは100gあたりのプリン体をご覧ください。
- 白米(26mg)
- 玄米(37mg)
- 蕎麦粉(76mg)
- 小麦粉(26mg)
これら主食は実際に口にするまでにその膨張率が異なります。
例えばお米(白米)であれば炊き上がりは約2倍になりますので炊き上がりの100gのプリン体は半分の13mg。
しかしながら、お米は300gぐらい食べる方も多いですから、その場合は1食で考えると13mg×300g÷100=39mgとなります。
パンも同じように水を入れて膨らませますから、6枚スライスのパンであれば小麦粉換算で1枚40g、2枚食べたとして80gに。その場合は26mg×80g÷100=32.5mgとなります。
そこまで大きな数字ではありませんので、ギャル曽根さんぐらい食べなければそこまでプリン体が気になる食材とは言えないでしょう。
その他でよく聞かれる食品のプリン体含有量
ランクインしていない食品であっても、贅沢品=プリン体が多いという誤った知識が広まっていることもあり「〇〇はプリン体が多いですか?」とよく質問をいただきます。
そのよく質問される食材のプリン体含有量をご紹介。
- うなぎ(92mg)
- ラム肉(96mg)
- ボンレスハム(75mg)
- レバーペースト(80mg)
- 鶏卵(0mg)
- サケ(120mg)
- はまぐり(105mg)
- とんこつラーメン(54mg)
その他に気になる食品がある場合は以下のデータがわかりやすく最も信頼性がありますので、こちらをご覧ください。
公益財団法人 痛風・尿酸財団 食品中のプリン体含有量 一覧表(PDF)
https://www.tufu.or.jp/pdf/purine_food.pdf
肉や魚などのたんぱく質食品に加えて「干物」と「出汁」に注意
先ほど多くのプリン体が多い食べ物を紹介しました。
簡単な考え方として「肉」「魚」「内臓」「干物」「出汁」この5つのキーワードに注意してください。
肉・魚・内蔵は生き物に多くの細胞が含まれていると言うことでイメージがつきやすいと思いますが、注意が必要なのが「干物」と「出汁」です。
例えば、
- 乾燥大豆(172mg)
- 干し椎茸(379mg)
- 鰹節(493mg)
- だしの素(685mg)
- ニボシ(746mg)
と乾燥している食材・出汁をとる食材のプリン体はレベルが違います。
なぜ乾燥しているものはプリン体がここまで多くなってしまうのでしょうか。
その理由は食材が持つ水分量にあります。
食べ物は配合率に差はあっても水分を含んでおり、その割合は肉であれば75%、野菜であれば90%が平均的。
しかし干物の水分はほぼ0%。つまりカラッカラに乾燥させればその食材の成分は6~10倍に濃縮されます。
出汁を取るようなものであれば、大量に摂取することはないでしょうが、煮干しや乾燥大豆はお菓子としてそのままパクパク食べてしまうこともあるので注意しましょう。
さらに、先ほど紹介した「肉」「魚」「内臓」は食べる際に目で見て気がつくことができますが、煮干しで出汁を取った食べ物などはなかなか気がつくことができません。
プリン体は水に溶け出す性質を持ちますので、食材そのものを食べなかったとしても、出汁をとったお汁には大量のプリン体が多く含まれているので注意が必要です。
食事から体内にとり込まれるプリン体は全体の2~3割
高プリン体の食材についてこれまで書いてきたのですが、実は食事から体内に取り込まれるプリン体は、全体のたった2~3割に過ぎない。という事実をご存知でしょうか。
残りの7~8割は体内でつくられ、どちらも肝臓で分解されて尿酸がつくられます。
そのため、「尿酸値を下げたい」つまり痛風になりたくない(まだ発症していない方、すでに過去に発症したことがある方ともに)と考える場合、食事以外にも、生活習慣の見直しが重要です。
痛風・尿酸値対策において気をつけたいポイント
- 肥満の改善を目指す
- 尿酸の原因となるプリン体を増やさない
- 水分をよくとり尿量を増やし、尿酸を多く排出する
- 適度な運動をする(水泳やウォーキングなどの有酸素運動)
適正体重は、身長(m) ✕ 身長(m) ✕ 22 です。例えば身長170cmの方であれば、1.7✕1.7✕22=「63.58kg」が適正体重となります。BMI(肥満指数)は25未満を目指してください。
激しい運動はかえって尿酸値を上げてしまうので、週2~3回程度の軽めの運動を継続することを意識すると良いでしょう。
最近、尿酸値を下げる働きのあるサプリメントを飲まれている方が増えてきているため、有効性についても書いておきます。
結論から言えば、血清尿酸値が7.0mg/dLを超える方は、まずはすぐに病院へ行っていただくのが一番です。
尿酸値を下げるサプリメントは機能性表示食品といって、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示したものではありますが、あくまで食品であり医薬品ではありません。
これらは「体内でプリン体が尿酸になるのを防ぐ」「尿酸の排泄を促進する」ことで尿酸値を下げることが報告されている、”ルテオリン” または “アンセリン” という成分が含まれるものです。
そしてその対象は”尿酸値が高めの方”となっているのですが、これは血清尿酸値5.5mg/dL超~7.0mg/dL未満の方のことを指します。
上記で食事から体内にとり込まれるプリン体は2~3割とお話しました。
残りの多くのプリン体は体内で生成されますので、「体内でプリン体が尿酸になるのを防ぐ」「尿酸の排泄を促進する」サプリメントの機能は、食生活の見直しや運動だけではケアしにくい部分の対策としては間違ってはいません。
健康診断で「尿酸値が高めですね」と指摘され、血清尿酸値5.5mg/dL超~7.0mg/dL未満の方の場合は、ルテオリンまたはアンセリンが含まれる機能性表示食品(サプリメント)は手軽な対策ではあります。
ただしサプリメントは魔法の薬ではありませんので、既に激しい痛みが出ている方は必ず病院で診察を受けてください。
サプリメントを使用する・しないに関わらず、痛風・尿酸値対策のためには食習慣や生活習慣の見直しは必須です。サプリメントのみに頼るなど、過度な期待はしないようにしてくださいね。
すでに血清尿酸値が7.0mg/dLを超え、高尿酸血症と診断されている方、痛風をすでに発症している方は、病院を受診しましょう。
お菓子・果物での果糖(糖分)のとりすぎに注意
プリン体が多くはありませんが、痛風にならないために摂取を控えるべきものもあります。
一つ目が果糖(糖分)です。
果糖には、体内で使われる際にプリン体の分解を促すため尿酸値を上げてしまうほか、肥満の原因にも。
痛風を発症した人の6割以上が肥満だというデータがあり、肥満と痛風(尿酸値)は相関関係であることは判明しています。
そのため果糖を控えていただきたいのですが、果糖を過剰摂取してしまうことに繋がりやすいのがお菓子・果物・ジュース。
お菓子は言わずもがな砂糖がたっぷり入っていますが、果物やジュースには罪の意識が少なく食べてしまっているのではないでしょうか。
果物がヘルシーだから体に良さそうというのはある種の幻想で、果物も適量でなければその糖分は体に悪影響を与えることを理解しましょう。
人工甘味料は尿酸値を上げる?
糖分を控えてください、と伝えると「では人工甘味料はどうですか?」と聞かれることがあります。
人工甘味料は尿酸についての研究は進んでいませんので痛風に対する相関関係は不明ですが「体のためを思えば人工甘味料を摂取すべきではない」と言うのが私の結論です。
気になる方のために、もう少し詳しく説明いたします。
人工甘味料とは、自然な砂糖と比べ1000倍以上の甘さを持つ物質です。
ごく僅かな量で砂糖と同等の甘みを出すことが可能であるため、多くの人工甘味料は0カロリーとして販売。
では体に与える影響はどうなるかと言うと、米パデュー大学の論文では以下のような研究結果が発表されています。
<以下引用>
ダイエットソーダに使われている人工甘味料には、体内や脳内の仕組みを混乱させる作用があることが分かった。ダイエットソーダばかり飲んでいる人が本物の糖分を摂取すると、血糖値や血圧を調整するホルモンが分泌されなくなるという。
人工甘味料はさらに、空腹感を感じさせ、甘いものが食べたくなる衝動も起こさせるといい、普通のソーダよりもダイエットソーダを飲んだ方が太りやすい傾向があることも判明した。
人工甘味料入り飲料で健康リスク増大も 米調査 https://www.cnn.co.jp/fringe/35034553.html
さらに糖尿病や心疾患といったリスクも高まりますので、糖分を減らすために人工甘味料を使うことはお勧めできません。
アルコールは尿酸値を上げる原因となる
プリン体が多くないが、痛風にならないために摂取を控えるべき物の二つ目はアルコールです。
お酒が好きな方の中には
「プリン体0のビールを飲んでいるから平気!」
「ウイスキーはプリン体も糖質もほとんどない!」という方も多いのではないでしょうか?
これらは間違った解釈で、痛風を予防したいのであればアルコールは控える必要が。
まず間違っている解釈として、そもそもアルコールに含まれるプリン体は、ワインであろうが日本酒あろうがビールであろうが、たいして高くありません。
主なアルコール飲料に含まれる100mgあたりのプリン体は以下の通りです。
- ワイン(0.4mg)
- ウイスキー(0.1mg)
- 焼酎(0.1mg)
- 日本酒(1.5mg)
- ビール(5.7mg)
100mgでこの程度しかないのであれば、5杯飲んでもさほどたいした問題ではありません。しかし、アルコールが痛風によくない理由は以下の2点です。
- アルコールの分解によって代謝が上がるため、その代謝によって尿酸が作られる
- 利尿作用によって体内の水分が減り、血中の尿酸濃度が上がる
痛風の方は、アルコールは極力飲まない。飲んでも1日1~2杯で週の半分以上は休肝日を作ることによって、尿酸値を抑えることができます。
決して「プリン体0」という表記に騙されないようにしてください。
食塩摂取量に気をつける
プリン体が多くないが、痛風にならないために摂取を控えるべき物の三つ目が塩分です。
先ほど痛風と肥満は相関関係にあると説明しましたが、高血圧とも相関関係にあります。
また、痛風と高血圧を同時にかかると合併症にかかる可能性が跳ね上がりますので、塩分摂取量にもご注意ください。
外食・コンビニ食がメインになっている方の簡単な食べ物の選び方
時間のない方は、自炊をするのが難しく、外食やコンビニ食がメインとなっていることも多いのではないでしょうか。
外食だと栄養成分・プリン体の量を把握するのも難しくなりますが、痛風が気になる方のご飯の選び方は簡単です。
- 肉・魚が少ないローカロリーなものを食べる。
- 飲み物かデザートは無糖の乳製品。
これが基本です。
付き合いで、自分でご飯を選べない時は魚と内蔵系だけは少し控えていただければと思います。
またお酒の席では、お酒の種類よりもお酒の量と利尿作用に注意が必要です。お酒は2杯程度までにして、その後はソフトドリンクを頼み、利尿作用による血中尿酸値の上昇を防ぐためにこまめな水分補給をしましょう。
最も簡単な痛風予防とは。肥満は最大のリスク
ここまで説明させていただきましたが、色々と細かいことが多く考えるのが面倒くさくなってしまっている人もいらっしゃるかもしれません。
そんなあなたに最も単純な痛風の対策をお伝えします。
それは「食事の量を減らすこと」です。
なぜ食事の量を減らすことが痛風対策になるのかと言うと、プリン体の摂取量をいちいち考えながらご飯を食べなくても、そもそもの全体量を減らすことによって、プリン体の摂取量を減らすことができ、同時に肥満解消にもなるからです。
「プリン体の摂取量に気をつけ、運動をするのでもいいのでは?」と思う方もいらっしゃると思いますが、実は激しい運動は尿酸値を上げてしまうので尿酸値を下げるためにはあまり良い行動ではありません。
もちろん運動自体は体に良いものですし、痛風であっても息の上がらない程度のウォーキングぐらいであればむしろ推奨されていますが、食事制限をせずウォーキングだけで痩せるのは非常に困難ですので、やはり食事制限が優先されます。
まとめ
今回はプリン体の多い食べ物をランキング形式で紹介しました。
これらを食べたから痛風になる。食べなかったら痛風が治るという簡単なものではありませんが、プリン体の過剰摂取が痛風を発症させる可能性を上げるのは間違いありません。
絶対に食べてはいけないものがあると言うわけではないので、好きなものがあれば食べる回数を減らす・量を減らすというところから気軽に痛風対策を始めてみてください。
参考文献
日本痛風・核酸代謝学会 高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインhttps://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001086/4/Clinical_Practice_Guidelines_of_Hyperuricemia_and_Gout.pdf
日本内科学会雑誌 痛風・高尿酸血症の病態と治療
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/3/107_458/_pdf
e-ヘルスネット|高尿酸血症の食事
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-003.html
公益財団法人 痛風・尿酸財団 アルコール飲料中のプリン体含有量 一覧表
https://www.tufu.or.jp/gout/gout4/73
公益財団法人 痛風・尿酸財団 食品中のプリン体含有量 一覧表(PDF)
https://www.tufu.or.jp/pdf/purine_food.pdf