毎日使うドライヤーが、実は髪を傷める原因になっているかもしれない、と考える方もいるでしょう。
「しっかり乾かしているはずなのに、髪がパサつく」「枝毛や切れ毛が気になる」といったお悩みは、ドライヤーの熱や使い方に問題があるのかもしれません。
しかし、ドライヤーは正しく使えば、髪をダメージから守り、美しい髪を育むための力強い味方になります。
この記事では、なぜドライヤーで髪が痛むのか、その詳しい原因を解説し、今日から実践できる美髪を守るための具体的な方法を専門的な視点からご紹介します。
なぜドライヤーで髪は痛むのか?熱によるダメージの仕組み
ドライヤーは濡れた髪を乾かす便利な道具ですが、その熱が髪の健康を脅かすことがあります。
髪の毛は主にタンパク質でできており、熱に弱い性質を持っています。ドライヤーの使い方を誤ると、髪の内部構造が破壊され、様々なトラブルを引き起こします。
キューティクルの剥がれとタンパク質変性
髪の表面は、うろこ状のキューティクルという組織で覆われています。キューティクルは外部の刺激から髪の内部を守り、髪のツヤや手触りを左右する重要な部分です。
しかし、ドライヤーから出る100℃以上の熱風を長時間同じ場所に当て続けると、このキューティクルが熱で変形し、剥がれやすくなります。
キューティクルが損傷すると、髪の内部にある水分やタンパク質が流出しやすい状態になり、パサつきやゴワつきの原因となります。
さらに、髪の主成分であるケラチンタンパク質は、熱によって硬く変性する「タンパク質変性」を起こします。これは、生卵が熱でゆで卵になるのと同じ現象で、一度変性したタンパク質は元に戻りません。
この変性により髪が弾力を失い、硬くもろくなってしまいます。
髪のタンパク質変性が始まる温度
髪の状態 | タンパク質変性が始まる温度(目安) | 起こりうる変化 |
---|---|---|
乾いた健康な髪 | 約130℃~ | 弾力性の低下、硬化 |
濡れた髪 | 約60℃~70℃ | キューティクルの損傷、内部成分の流出 |
ダメージのある髪 | より低い温度で変性開始 | 切れ毛、枝毛の増加 |
髪の水分バランスの崩壊
健康な髪は、通常11~13%程度の水分を含んでいます。この水分が、髪のしなやかさや潤いを保つために重要な役割を果たしています。
しかし、ドライヤーの熱を過度に当てると、髪の内部の水分が必要以上に蒸発してしまいます。これを「オーバードライ」と呼びます。
髪がオーバードライの状態になると水分バランスが崩れ、静電気が起きやすくなったり、パサつきや広がりの原因になったりします。
特に、髪の毛先は根元に比べてダメージを受けやすく、水分を保持する力も弱いため、オーバードライになりやすい部分です。
適切な水分量を保つ工夫が、美しい髪を維持するための鍵となります。
ヘアカラーやパーマへの影響
ヘアカラーやパーマを施している髪は、特にドライヤーの熱による影響を受けやすいです。
カラーリングは髪のキューティクルを開いて色素を入れるため、もともとキューティクルが傷つきやすい状態です。
そこに高温の熱が加わるとキューティクルの損傷がさらに進み、せっかく入れた色素が流出しやすくなります。これがカラーの褪色を早める大きな原因です。
また、パーマのカールやウェーブを形成している髪内部の結合も、熱によってダメージを受けます。その結果、パーマが取れやすくなったり、髪がパサついてカールが綺麗に出なくなったりします。
施術後の髪はデリケートな状態であると理解し、より一層丁寧なドライヤーの使用が必要です。
ドライヤーの熱が引き起こす髪と頭皮のトラブル
ドライヤーの不適切な使用は、髪だけでなく頭皮にも悪影響を及ぼす可能性があります。
髪の土台である頭皮の健康が損なわれると、これから生えてくる髪の質にも影響が出かねません。
ここでは、ドライヤーが原因で起こりうる具体的なトラブルについて見ていきましょう。
枝毛・切れ毛の増加
前述の通り、高温の熱は髪のタンパク質を変性させ、キューティクルを傷つけます。
キューティクルが剥がれて内部がむき出しになった髪は、少しの摩擦でも簡単に裂けてしまい、枝毛になります。
また、タンパク質が変性して弾力を失った髪はブラッシングや枕との摩擦など、日常のささいな刺激にも耐えられなくなり、途中でプツリと切れてしまいます。これが切れ毛です。
特に、濡れた髪は非常にデリケートなため、濡れた状態で高温のドライヤーを長時間当てるのは、枝毛や切れ毛を著しく増加させる行為といえます。
髪のパサつきとうねり
髪のパサつきは、主に水分不足とキューティクルの損傷によって引き起こされます。
ドライヤーのオーバードライによって髪内部の水分が失われ、さらにキューティクルがめくれ上がっていると、髪の手触りは悪くなりツヤも失われます。
また、髪内部の水分量が不均一になるのも、うねりの原因の一つです。
髪の内部には水分を吸いやすいタンパク質と吸いにくいタンパク質があり、ドライヤーの熱でダメージを受けると、そのバランスが崩れます。
湿度の高い日などに髪がうねりやすくなるのは、この水分バランスの乱れが関係しています。
髪のトラブルと原因
髪のトラブル | 主な原因 | ドライヤーとの関連 |
---|---|---|
枝毛・切れ毛 | キューティクルの損傷、タンパク質変性 | 高温、長時間の使用 |
パサつき・広がり | 水分不足(オーバードライ) | 乾かしすぎ、高温 |
うねり | 水分バランスの乱れ | 不均一な乾燥、熱ダメージ |
頭皮の乾燥とフケ・かゆみ
ドライヤーの熱風を頭皮に直接当て続けると、頭皮も髪と同様に水分が奪われ、乾燥します。
頭皮が乾燥するとバリア機能が低下し、外部からの刺激に敏感になります。これが、かゆみを引き起こす原因となります。
また、乾燥によって頭皮のターンオーバーが乱れると、古くなった角質が細かく剥がれ落ちる「乾性フケ」が発生しやすいです。
逆に、熱による刺激で皮脂が過剰に分泌され、ベタつきや「脂性フケ」の原因になる場合もあります。
健やかな髪は健康な頭皮から育まれるため、ドライヤーをかける際は頭皮への配慮も重要です。
髪を傷めないドライヤーの選び方
美しい髪を守るためには、ドライヤーの「使い方」だけでなく「選び方」も非常に重要です。
現在市販されているドライヤーには様々な種類があり、価格帯も幅広いため、どれを選べば良いか迷う方も多いでしょう。
ここでは、髪への負担を最小限に抑えるためのドライヤー選びのポイントを解説します。
温度調節機能の重要性
髪への熱ダメージを避けるために最も重要なのが、温度調節機能です。高温の風は速く乾かせますが、髪を傷めるリスクも高まります。
理想的なのは、高温・中温・低温(または冷風)のように、少なくとも3段階以上の温度設定ができるモデルです。
髪の状態や乾かす工程に合わせて温度を切り替えるとオーバードライを防ぎ、髪への負担を軽減できます。
60℃程度の低温風が出せるドライヤーは、髪のタンパク質変性を防ぎながら優しく乾かせるため、ダメージが気になる方には特におすすめです。
風量の違いがもたらす効果
速乾性を求めるなら、風量もチェックしたいポイントです。風量が大きいドライヤーは、髪の表面の水分を素早く吹き飛ばすため、結果的に熱を当てる時間が短縮されます。
熱によるダメージは「温度×時間」で決まるため、短時間で乾かせる大風量のドライヤーは、髪を傷めにくい選択肢の一つといえます。
風量の目安は「m³/分」という単位で示され、1.5m³/分以上あれば大風量といえるでしょう。
ただし、風が強すぎると髪が絡まりやすい場合もあるため、風量も調節できるものがより使いやすいです。
ドライヤー選びのチェックポイント
チェック項目 | 選ぶ際のポイント | 期待できる効果 |
---|---|---|
温度調節機能 | 3段階以上(低温モードがあると良い) | オーバードライやタンパク質変性の防止 |
風量 | 1.5m³/分以上(風量調節機能も確認) | 乾燥時間の短縮による熱ダメージ軽減 |
重量 | 500g前後(軽いものが疲れにくい) | 丁寧なヘアドライのしやすさ |
付加機能(イオン機能など)は必要か
最近のドライヤーには、マイナスイオンやナノサイズの微細な水分を放出する機能などが搭載されているものが多くあります。
これらの機能は、髪の静電気を抑制したり、髪に潤いを与えてまとまりを良くしたりする効果が期待できます。
マイナスイオンは、プラスに帯電しやすい髪の電気を中和し、キューティクルを整える働きがあるとされています。
これらの付加機能は必須ではありませんが、髪のパサつきや広がりが気になる方にとっては、仕上がりを向上させる助けになる可能性があります。
ご自身の髪の悩みに合わせて、これらの機能の有無を検討するのも良いでしょう。
美髪を守る正しいドライヤーのかけ方【基本編】
高機能なドライヤーを選んでも、使い方が間違っていては効果が半減してしまいます。
髪へのダメージを最小限に抑え、ツヤのある美しい髪に仕上げるためには、正しい乾かし方の基本をマスターしましょう。
タオルドライで水分をしっかり取る
ドライヤーをかける時間を短くするための最も効果的な方法は、事前のタオルドライです。
髪がびしょ濡れのままドライヤーをかけ始めると、乾かすのに時間がかかり、熱によるダメージが増大します。
シャンプー後は、まず吸水性の高いタオルで頭皮の水分を優しく揉みこむように拭き取ります。次に、髪の中間から毛先をタオルで挟み、パンパンと軽く叩くようにして水分を吸収させましょう。
このとき、ゴシゴシと強くこするのはキューティクルを傷つける原因になるため絶対に避けてください。
- 頭皮の水分を優しく拭く
- 髪をタオルで挟み、叩くように拭く
- ゴシゴシこすらない
ドライヤーと髪の適切な距離
ドライヤーを髪に近づけすぎると、熱が集中しすぎて髪や頭皮を傷める原因になります。
ドライヤーの吹き出し口と髪は、常に15~20cm程度の距離を保つように心がけましょう。腕を軽く伸ばしたくらいが目安です。
また、同じ場所に熱風を当て続けないのも重要です。ドライヤーを小刻みに振りながら、熱が一点に集中しないように風を分散させると均一に乾かせて、熱ダメージのリスクを大幅に減らせます。
根元から毛先への正しい乾かし順
髪を乾かす際は、乾きにくい根元から始めるのが鉄則です。
髪の根元、特に後頭部や襟足は髪が密集していて乾きにくいため、最初にしっかりと乾かします。根元に指を入れ、髪を持ち上げながら地肌に風を送るようにすると効率的です。
根元が8割程度乾いたら、次に髪の中間部分、そして最後に最もダメージを受けやすく乾きやすい毛先の順で乾かしていきます。
この順番を守ると、毛先のオーバードライを防ぎ、全体の乾きムラをなせます。
正しい乾かし方の手順
手順 | ポイント | 目的 |
---|---|---|
1. タオルドライ | 優しく、しかし念入りに水分を取る | ドライヤー時間の短縮 |
2. 根元を乾かす | 髪を持ち上げ、地肌に風を送る | 乾きにくい部分を先に乾かす |
3. 中間~毛先を乾かす | 上から下へ、キューティクルに沿って | ツヤ出し、まとまり向上 |
4. 冷風で仕上げる | 全体に冷風を当てて熱を冷ます | キューティクルの引き締め、スタイルキープ |
温風と冷風の使い分け
多くのドライヤーに搭載されている冷風機能は、美しい髪を仕上げるための重要な機能です。髪が8~9割ほど乾いたら、温風から冷風に切り替えましょう。
温風で乾かした後の髪は、熱を持ったままだとキューティクルが開いた状態になりがちです。最後に冷風を全体に当てると開いたキューティクルがキュッと引き締まり、髪の表面が整います。
このひと手間により髪のツヤが格段にアップし、セットしたヘアスタイルも長持ちしやすくなります。
【応用編】髪質と悩みに合わせたドライヤーテクニック
基本的なドライヤーのかけ方をマスターしたら、次はご自身の髪質や悩みに合わせた応用テクニックを取り入れてみましょう。
髪質によって乾かし方のコツは異なります。少しの工夫で、仕上がりの満足度は大きく変わります。
細く柔らかい髪(猫っ毛)の場合
髪が細く柔らかい方は、ボリュームが出にくく、ペタッとしやすいのが悩みです。ボリューム感を出すためには、髪の根元をしっかりと立ち上げるのがポイントです。
ドライヤーをかける際、髪の根元とは逆の方向から風を当てるように乾かします。
例えば、右側の髪は左側へ、左側の髪は右側へ流すように乾かしたり、下を向いて髪を逆立てるように根元から乾かしたりすると自然なふんわり感が生まれます。
トップにボリュームが欲しい場合は、髪を持ち上げて根元に集中して風を当てましょう。
太く硬い髪・くせ毛の場合
髪が太く硬い方やくせ毛で広がりやすい方は、髪のボリュームを抑え、まとまりを良くするのが目標です。
ドライヤーの風は、必ず上から下へ、髪の生えている方向(キューティクルの向き)に沿って当てるようにします。これによってキューティクルが整い、広がりを抑制できます。
手で髪を軽く下に引っ張りながら乾かすと、くせが伸びてよりまとまりやすくなります。
乾かしすぎるとパサついて余計に広がるため、全体の8割程度乾いたら、後は冷風で整えるのがおすすめです。
髪質別ドライヤーテクニックのポイント
髪質・悩み | 乾かし方のポイント | 目指す仕上がり |
---|---|---|
細毛・猫っ毛 | 根元を立ち上げるように、下や横から風を当てる | ふんわりとしたボリューム感 |
太毛・硬毛・くせ毛 | 上から下へ、軽く引っ張りながら乾かす | まとまりのある落ち着いたスタイル |
ダメージ毛 | 低温で優しく乾かし、洗い流さないトリートメントを併用 | パサつきを抑えた潤いのある髪 |
ダメージが気になる髪の場合
すでにカラーやパーマで髪が傷んでいる、または枝毛や切れ毛が気になるという方は、これ以上ダメージを進行させないことが最優先です。
ドライヤーをかける前には、必ず洗い流さないトリートメントを毛先中心になじませ、髪を熱から保護しましょう。
乾かす際は、できるだけ低温の風を選び、髪からドライヤーを離して優しく乾かします。
特に傷みがちな毛先は、最後に軽く風を当てる程度にとどめ、オーバードライにならないよう細心の注意を払ってください。
ドライヤーだけではない?40代からの髪の変化と向き合う
「若い頃と同じケアをしているのに、なぜか髪がまとまらない」「ドライヤーの使い方も気をつけているのに、パサつきやうねりが改善しない」そう感じている40代以上の女性は少なくありません。
実はその悩みは、ドライヤーだけが原因ではないかもしれません。年齢を重ねると訪れる体自身の変化が、髪質に大きな影響を与えているのです。
この変化を理解し、受け入れることが、大人の女性の美髪ケアの第一歩となります。
女性ホルモンの変化と髪質の関係
女性の髪の健康と深く関わっているのが、女性ホルモンの一つである「エストロゲン」です。エストロゲンは髪の成長を促進し、ハリやコシ、ツヤを保つ働きを担っています。
しかし、40代頃からエストロゲンの分泌量は徐々に減少し始め、更年期にかけて大きくゆらぎます。
このホルモンバランスの変化により髪の成長サイクルが乱れ、一本一本の髪が細くなったり、ハリやコシが失われたりします。
また、地肌の血行にも影響し、髪に十分な栄養が届きにくくなるのも髪質の変化の一因です。
年齢による髪質の変化
変化のポイント | 主な原因 | 現れやすい髪の悩み |
---|---|---|
髪の菲薄化(細くなる) | エストロゲンの減少 | ボリュームダウン、地肌が透ける |
ハリ・コシの低下 | タンパク質や脂質の変化 | スタイリングがしにくい、へたりやすい |
うねり・くせの出現 | 毛穴の形の変化、水分バランスの乱れ | まとまりのなさ、パサつき |
昔と同じケアでは通用しない理由
10代や20代の頃は、多少乱暴に髪を扱っても、髪自体の回復力でカバーできていたかもしれません。しかし、加齢によって髪の体力は確実に低下しています。
かつては自分に合っていたシャンプーが合わなくなったり、これまでと同じドライヤーのかけ方でもパサつきやすくなったりするのは、髪質の土台が変化したからです。
この変化を無視して昔のままのケアを続けるのは、例えるなら、肌質が変わったのに同じ基礎化粧品を使い続けるようなものです。
今の自分の髪の状態を正しく見つめ、ケアを更新していく必要があります。
今の自分に合ったヘアケアの見つけ方
今の自分に合ったケアを見つけるためには、まず「思い込み」を捨てることから始めましょう。
「私の髪は昔からこうだから」と決めつけず、現在の髪と頭皮の状態を客観的に観察します。
頭皮は乾燥していないか、ベタついていないか。髪の根元は立ち上がっているか、毛先に潤いはあるか、といった日々のチェックを通じて、髪からのサインを読み取るのが大切です。
その上で、エイジングケアに対応したシャンプーやトリートメントを試したり、頭皮マッサージを取り入れたりするなど、新しいケアに挑戦してみると良いでしょう。
心と髪の健やかさを保つために
髪の変化は、時に不安や焦りを感じさせます。しかし、それは多くの女性が経験する自然な過程です。
大切なのは変化をネガティブに捉えるのではなく、今の自分を受け入れ、慈しむことです。ストレスは血行を悪化させ、髪の健康にも良くありません。
バランスの取れた食事や質の良い睡眠、適度な運動など、心と体の両方を健やかに保つ生活習慣が、結果として美しい髪を育む土壌となります。
ドライヤーのテクニックと合わせて、ご自身の生活スタイル全体を見直すと、年齢を重ねたからこそ手に入れられる本当の美しさにつながります。
ドライヤー前後のヘアケアで差がつく!美髪を育む習慣
ドライヤーによる熱ダメージを最小限に抑えるためには、ドライヤーをかける前後のケアが極めて重要です。
髪を乾かすという行為を一つの点として捉えるのではなく、シャンプーからスタイリングまでの一連の流れとして考えると、髪の美しさが格段に向上します。
洗い流さないトリートメントの活用法
洗い流さないトリートメントは、ドライヤーの熱や乾燥、摩擦といった外部刺激から髪を守る「保護膜」のような役割を果たします。タオルドライ後の少し湿った髪に使うのが最も効果的です。
手のひらに適量を取り、両手でよく伸ばしてから、ダメージを受けやすい毛先を中心に髪の内側からなじませていきます。
根元につけすぎるとベタつきの原因になるので注意しましょう。髪全体に均一に行き渡らせると、ドライヤーの熱を分散させ、水分の蒸発を防げます。
洗い流さないトリートメントの種類と特徴
タイプ | 主な特徴 | おすすめの髪質 |
---|---|---|
オイルタイプ | コーティング力が高く、ツヤが出る。熱に強い。 | 太い髪、硬い髪、広がりやすい髪 |
ミルクタイプ | 水分と油分をバランス良く補給。しっとりまとまる。 | 細い髪、柔らかい髪、パサつきが気になる髪 |
ミストタイプ | 軽く、ベタつきにくい。寝ぐせ直しにも使える。 | すべての髪質、特にダメージが軽い髪 |
ブラッシングのタイミングと方法
ブラッシングは髪の絡まりをほどき、ツヤを出すために大切ですが、タイミングを間違えると逆効果になります。最もやってはいけないのが、髪がびしょ濡れの状態でのブラッシングです。
濡れた髪はキューティクルが開いていて非常に傷つきやすいため、無理にブラシを通すとキューティクルを剥がしてしまいます。
ブラッシングは、ドライヤーで髪をある程度乾かしてから、または完全に乾いた状態で行うのが基本です。
毛先の絡まりから優しくときほぐし、徐々に根元の方へとかしていきましょう。
髪と頭皮に良い栄養素
外側からのケアと同時に、内側からの栄養補給も美しい髪を育むためには欠かせません。髪は食事から摂取した栄養素を元に作られます。
なかでも髪の主成分であるタンパク質、そのタンパク質の合成を助ける亜鉛、頭皮の血行を促進するビタミンEなどを意識して摂取すると良いです。
バランスの取れた食事を心がけることが、健やかな髪への近道です。
- タンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)
- 亜鉛(牡蠣、レバー、牛肉)
- ビタミン類(緑黄色野菜、果物)
よくある質問
ドライヤーやヘアケアに関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- 自然乾燥とドライヤー、どちらが髪に良いですか?
-
結論から言うと、正しく使うのであれば「ドライヤー」の方が髪と頭皮の健康にとって良い選択です。
髪が濡れたままの時間が長いと、キューティクルが開きっぱなしになり、わずかな摩擦でもダメージを受けやすくなります。
また、湿った頭皮は雑菌が繁殖しやすく、かゆみやニオイ、フケの原因にもなります。タオルドライをしっかり行った後、適切な距離と時間でドライヤーを使い、素早く乾かすのが理想的です。
- 高いドライヤーは本当に効果がありますか?
-
価格が高いドライヤーには、精密な温度制御機能や大風量、髪の水分量を保つための独自の技術などが搭載されているものが多く、髪への負担を軽減して仕上がりを良くする効果が期待できます。
ただし、最も重要なのはご自身の髪質や生活スタイルに合っているか、そして正しく使いこなせるかです。高価であることが必ずしも全ての人にとって最良とは限りません。
本記事で紹介した「選び方」のポイントを参考に、ご自身に必要な機能を見極めましょう。
- ドライヤーをかける時間はどのくらいが目安ですか?
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髪の長さや量によって大きく異なりますが、一般的な目安としては、ショートヘアで5分以内、ミディアムで5~10分、ロングで10~15分程度です。
時間をかけすぎている場合は、タオルドライが不十分であったり、ドライヤーの風量が足りていなかったりする可能性があります。
だらだらと長く乾かすのではなく、短時間で集中して乾かすように意識しましょう。
- 髪を乾かしすぎた時の対処法はありますか?
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オーバードライで髪がパサパサになってしまった場合は、まず髪を落ち着かせることが重要です。
保湿効果の高いヘアミストや、ごく少量のヘアオイルを手のひらに伸ばし、パサつきが気になる部分に優しくなじませます。
このとき、一度にたくさんつけるとベタつくので、少量ずつ足していくのがポイントです。
根本的な解決にはなりませんが、応急処置として潤いを補給し、まとまりを良くできます。日頃から乾かしすぎないよう、8~9割乾いたら冷風に切り替える習慣をつけましょう。
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