この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
AGA治療の効果を感じない原因① AGA以外の原因による脱毛
いくら優れたAGA治療を行ったとしてもAGA以外の脱毛に対して使用すると薄毛の改善効果が期待できません。
そもそもAGAというのは男性ホルモンであるテストステロンが、5αレダクターゼという酵素の作用で髪の毛の成長を阻害するジヒドロテストステロンという物質に変化することで引き起こされます。
AGAの治療はこのジヒドロテストステロンの産生を抑制するというものがメインになります。
ということは、それ以外の原因の脱毛症に使用しても効果がないのです。
では、一体どのようなことが原因なのでしょうか。AGA以外の脱毛の原因について少し見てみましょう。
円形脱毛症
円形脱毛症は自己免疫疾患とよばれる疾患の一種といわれています。
本来は外から侵入してきた自分以外のものを攻撃するのが免疫細胞の役割なのですが、間違えて自分の細胞を攻撃してしまうことがあり、これを自己免疫と言います。
この自己免疫が毛包という髪の毛を作る細胞に対して起こると、髪の毛が抜けてしまい、円形脱毛症になります。
栄養障害による脱毛症
髪の毛を作る毛母細胞は頭皮の血流から栄養や酸素を受け取ってかつどうしています。
過度のダイエットや、疲労などが積み重なると毛母細胞への栄養・酸素の供給が途絶えてしまいます。それにより毛母細胞の活動性が低下して脱毛に至ります。
皮膚炎によるもの
皮膚の感染症や皮膚病が頭皮に発生すると皮膚炎などを起こして頭皮の皮膚環境が悪化してしまいます。それによって脱毛が起こったり、髪の毛が生えなくなるということがあります。
薬剤・化学物質による脱毛
ブリーチや整髪料など頭皮に付着する薬品に対して皮膚のアレルギーが生じることがあります。それによる皮膚環境の悪化が脱毛につながることがあります。
このようにAGA以外にも多くの脱毛症が存在するためそれがAGAかどうかを見極める必要があるのです。
自分の判断でAGA治療を安易に始めるのではなく、AGA治療を行うことのできる医師や皮膚科医と相談し、脱毛の原因について診断を受けてから治療を開始しましょう。
状態と合わない治療を受け続けると効果がなく、無駄な費用を使うということになりかねません。
さらに薬剤の副作用も存在し、それによる健康被害が生じる可能性もあるのです。
AGAの効果を感じない原因② 適切な薬剤を選べていない
AGA治療の効果を実感するためにはAGAとしっかり診断をつけないといけないことは前述した通りですが、AGAの診断がついたら、AGAの薬を適当に使っておけば効果が出るというものではありません。
AGA治療に使用する薬剤は複数あり、進行のレベルに合わせて適切に薬剤を選ぶ必要があります。医師と相談しながら治療を開始して、治療途中で効果が出なくなった時には薬剤の変更を検討する必要があります。
そのためAGA治療は経験のある医師のもとで行う方が効果が出る可能性が高くなります。
また医師の診察を受けずに個人で薬剤を購入することも可能ではあるのですが、薬剤の選択が正しくできないという点でお勧めできません。
さらにいうと安い値段に釣られて輸入薬剤を購入した結果有効成分が少ない、もしくは含まれていない偽薬を購入してしまうという事例も発生しています。
偽薬を飲んで効果がないだけでなく健康被害などを引き起こすこともあります。
きちんと効果を実感したい人は医師の診察を受けて医師と相談しながらAGA治療を開始しましょう。治療開始後も治療の効果の出方に合わせて最適な治療計画を組んでいく必要があります。
値段が安いからといって個人の判断で薬を購入してしようするのは危険です。
AGA治療の効果を感じにくい理由③治療効果が出るまで時間がかかる
AGA治療薬を使用すると男性ホルモンであるテストステロンを髪の毛の成長を抑えるジヒドロテストステロンに変換する酵素である5αレダクターゼを阻害します。
それにより髪の毛の成長期が長くなって、髪の毛が伸びるようになります。その後新規に髪の毛の根っこである毛球が出てきて新しい髪の毛が生えてくるのです。
この治療効果が出るまで個人差はありますが数ヶ月から半年かかるといわれています。
初めのうちは効果が出ていないと感じることもありますが効果が出てくるまで治療を継続していくことが大切です。
AGA治療の効果を感じにくい理由④自己中断や用法容量の不遵守
AGA治療の効果が出るまで時間がかかるために、治療の途中で効果に疑問を持ち治療を中断してしまうという方もいらっしゃいます。
当然治療を自己中断して効果が出る前に辞めてしまうと効果を実感することはできません。医師と相談しながら今の薬剤を続けるのか、他の薬を試すべきなのか相談して、適切な治療を受けることが効果を実感するのに最も重要であるといえます。
また医師に指示された用法容量をきっちりと守って飲むことも重要です。
頻回に薬を飲み忘れたり、決められた用法を守らずに適当に薬を飲んでいると効果を実感できる可能性は明らかに下がってしまうのです。そればかりか薬の飲み過ぎによる副作用を引き起こす可能性もあります。
AGA治療に限らず薬剤は決められた用法用量を守って初めて適切な効果が得られるのです。医師に指示された用法容量をきっちりと守って治療を続けることで効果を実感しましょう。
AGA治療の効果を感じるために
AGA治療の効果をより実感するためにはどのような行動を取るべきなのでしょうか。
まず、AG A治療の開始タイミングが重要です。
どんな疾患でも基本的に進行する前に早期に治療したほうが治りが良いのです。AGAも例外ではなく脱毛に気づいて早期に医師の元を訪れて治療を開始した人の方が効果を実感できることが多くなっています。
AGAの早期であれば進行を防ぐだけである程度効果を実感できますが、脱毛が進んだ後に治療を開始すると、その部分の発毛から始めて生えてきた髪を太く育てて、と長い過程を経ないと効果を実感できないということになります。
薄毛が気になり始めたら気軽に医師に相談してください。AGAかどうかだけでも早めに見ておくことが今後の薄毛の進行予防に効果的です。
AGA治療を適切に組み合わせて使用している人も効果が実感しやすい傾向があります。AGAの治療には内服薬(飲み薬)や外用薬(頭皮に塗る薬)といった薬物治療があります。
そのほかに頭皮に薬剤を直接注入する方法や植毛術などもあります。単剤での治療だけでなく、複数の治療を効果的に組み合わせることでAGA治療は最も効果を発揮します。
まとめ
今回はAGA治療の効果を実感するために、AGAの効果を実感できなくなる原因と、AGA治療の効果を実感するためにどのようなことをすればいいのかについて見ていきました。
AGA治療は早期に適切な治療を組み合わせて行うことや、効果が出るまで一定の期間きっちりと続けることが重要です。
自分の判断で薬剤を購入したり市販の発毛剤を使ったりしていると治療の機会を逃してしまう場合があります。
AGA治療がそもそも自分に効果があるのか、またAGAであればどのように治療を組み合わせると良いのかを医師に診断してもらい、必要な治療を適切に受けることが発毛効果を実感するのには欠かせないことなのです。
薄毛に気づいたら早めに医師の診察をうけて脱AGAの第一歩を踏み出しましょう。