こんばんは。総合内科専門医の藤田です。
インターネットやテレビ番組、雑誌などで『これを食べたら痩せる!』『太らない食事』など、減量効果を謳ったダイエット法がたくさん紹介されています。
青汁ダイエットもその中のひとつですね。青汁は健康によいというイメージから、ダイエット中に取り入れる人も多いかと思います。しかし、そもそも青汁を飲んだら本当に痩せるのでしょうか?
そこで今回は、
- 青汁のダイエット効果について
- ダイエット中に青汁を飲むタイミング
- ダイエットサポートのための青汁商品の選び方
- 健康を損なわないおすすめの飲み方
- 青汁ダイエットの注意点
について、管理栄養士の観点から解説していただいた内容をまとめています。ぜひ参考にしてみて下さい。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
この記事の監修者
岩美 真由美さん 管理栄養士・健康運動指導士
管理栄養士・健康運動指導士としてフリーランスで活動。特定保健指導では生活習慣病予防を、介護予防事業では高齢者のフレイル予防と、食事と運動の両面から健康づくりのお手伝いをしています。
青汁は痩せる?青汁のダイエット効果とは
そもそも青汁を飲むと痩せるのか
単刀直入に聞きますが、青汁を飲んだら痩せるのでしょうか?
残念ながら、青汁を飲んで痩せるということは考えにくいです。
ちまたでは『●●を食べたら痩せる!』などの情報がたくさんあります。しかし、食べたものにはすべてエネルギー(cal)があり、現在の食生活や身体活動が変わらないまま痩身効果を謳っている食品を食べても、太る一方です。
痩せるために必要なのは、消費エネルギーと摂取エネルギーのバランス。摂取エネルギー(食事)よりも消費エネルギー(身体活動)を増やす生活をすると減量することができます。※2
青汁でダイエット効果を得たい場合は、甘い飲み物や間食(お菓子)、アルコール、脂っこいものなど、普段摂りすぎているものを青汁に置き換え、体を動かす時間を増やせば瘦せることができます。
なぜ太ったのか?原因を理解したうえで、青汁を上手に味方につけると良いですね。
飲むタイミングはいつが良い?
では、ダイエット中に青汁を飲むときのタイミングはいつが良いでしょうか?
青汁をダイエットに取り入れる方法としておすすめのタイミングは「食前」と「おやつを食べるとき」の2つあります。
食前に飲む
食事前の空腹時に青汁を飲むことで、お腹が膨れて食べすぎを防げます。
青汁以外では、炭酸水やミネラルウォーターを食前に飲む方法もありますが、青汁だと不足しがちな食物繊維やカルシウム、カリウム、ビタミン類なども同時に摂ることができますね。
おやつとして摂る方法
お菓子は「心の栄養」であり、誰かと一緒に食べることでコミュニケーションツールにもなります。
ただ、心の栄養であるお菓子も食べ方や量によっては、過度の体重増加など健康に悪影響を及ぼしてしまうケースもあります。
1人が1回に食べるおおよそのお菓子の量は200kcal以内を目安にすると良いですね。
一般にお菓子には脂肪や炭水化物が多く含まれており、ミネラルやビタミンなどの栄養素はほとんど含まれていない場合が多いです。※4
青汁をダイエットに取り入れるのであれば、おやつとして置き換えるのも良いですね。
ダイエットサポートのための青汁商品の選び方
ダイエットの基本は、食事内容の見直しと身体活動を上げることです。青汁をダイエットに取り入れるなら、補助的に飲むとよいでしょう。
特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品の表示がある青汁だと、「日本人の食事摂取基準」に基づいた一日の摂取目安量(上限・下限量)や摂取上の注意事項※5も表示してありますので、青汁を選ぶときに迷ったときは参考にするとよいでしょう。
また青汁に含まれる栄養素では以下のものがおすすめです。
糖分の入っていない青汁を選ぶ
青汁の中には、飲みやすくするために砂糖やはちみつなど「糖分」を加えているものがあります。表示をチェックして糖分の入っていないものを選ぶようにしましょう。
糖分の中でも、砂糖の主成分であるしょ糖は、効率がよいエネルギー源というメリットがある一方、摂りすぎると中性脂肪に変わりやすいという欠点があります。※6
ダイエット中は摂りすぎないようにしたいですね。
食物繊維を多く含むものを選ぶ
ダイエットをサポートするための青汁を選ぶなら、食物繊維を多く含むものにしましょう。食物繊維は血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。また、コレステロールの腸での吸収を抑え、体外に排泄する働きも。※7
食物繊維を多く含む野菜、きのこ類、海藻類、豆類を積極的に摂るのに合わせて、青汁で補うとよいですね。適量の食物繊維は腹もちをよくするので、ダイエット中こそ積極的に摂ってほしいものです。
不足しがちなカルシウム・鉄を含むものを選ぶ
ダイエットをサポートするための青汁を選ぶなら、不足しがちなカルシウム・鉄を多く含むものもおすすめです。
一般的にカルシウムといえば、骨の健康に欠かすことのできない栄養素といわれていますが、最近の研究では抗肥満効果があることがわかってきました。カルシウムは吸収率が低い栄養素でもあるので、積極的に摂りたいですね。※8
鉄は女性が不足しがちな栄養素のひとつです。鉄が不足すると、鉄欠乏性貧血を起こし、全身の酸素が運ばれにくくなります。疲労感や息切れ、頭痛を起こすことも。※7
ダイエットと直接関係ありませんが、成長期や月経のある女性は不足しがちです。健康的に過ごすためにも積極的に摂りたいですね。
健康を損なわないおすすめの飲み方・割り方
青汁は『健康によい。』『低カロリーで体によい栄養素が入っているから安心。』と思う方も多いと思いますが、ダイエット中に青汁に頼りきると健康を損なうこともあります。
ダイエット中に青汁を取り入れるときは、以下の点を注意しましょう。
適量を守る
青汁のパッケージに記載のある分量を守るようにしましょう。一度にたくさん摂取すると、お腹がゆるくなる場合があります。また、適量内でもお腹がゆるくなったら、量を加減するようにしましょう。
体質により体に合わない場合は、すぐに使用を中止してください。
ヨーグルトや牛乳、豆乳で割る
青汁にはさまざまな栄養素が含まれていますが、必要な栄養素をすべて摂ることはできません。そこでおすすめしたい飲み方のひとつとして、良質のたんぱく質を多く含む、ヨーグルトや牛乳、豆乳で割る方法です。
健康的にダイエットをすすめるには、筋肉量が落ちないようにしたいものです。見た目がスリムでも、筋肉量が少ないと基礎代謝が落ちてしまい、太りやすくなってしまいます。ダイエット中も良質のたんぱく質を摂るように心がけたいですね。
ヨーグルトや牛乳にはたんぱく質以外に、日本人に不足しがちなカルシウムが豊富に含まれていますよ。豆乳には大豆イソフラボンが豊富に含まれています。
ダイエット中もバランスのよい食事を心がける
ダイエット中はただ摂取エネルギーを少なくするだけでなく、バランスを考えて食べるようにしましょう。
健康的にダイエットするためには、特定の食品を抜いたり、極端に食事量を減らすのではよくありません。主食・主菜・副菜のそろった食事を基本にバランスを整え、調理法やお菓子・アルコールなどのとり方を見直してみましょう。※9
お菓子やアルコールの一部を青汁に置き換えるとよいですね。
青汁ダイエットの注意点
青汁を飲めば痩せるというわけではありません。ダイエットを行うときは無理な減量は行わず、上手に青汁を取り入れるようにしましょう。
青汁ダイエットの注意点をご紹介します。
青汁だけで食事をすますことは避ける
残念ながら、青汁だけで一食分の栄養素を全て補うことができません。ダイエット中も1日3食バランスのよい食事を摂るようにしましょう。
栄養バランスのよい食事とは、摂取エネルギーが適正なばかりでなく、必要な栄養素が過不足なく摂れている食事をいいます。※6
極端に食事量を減らすダイエット法は健康を害してしまいます。
例えば、極端に炭水化物を制限したダイエットを続けると、除脂肪組織(骨格筋や内臓、たんぱく質でできている組織)を分解して、不足している糖質に変換する状態になってしまいます。すなわち筋肉が減ってしまい、逆に太りやすくなってしまう体になってしまいます。※3
ダイエット中といえども炭水化物は不足しないようにしたいですね。
適切な体重管理をする※10
食べすぎや運動不足による肥満がある一方で、不健康なダイエットなどによる「やせ」も社会問題となっています。※9
「平成29年国民健康・栄養調査」では、肥満度(BMI)が18.5未満の人は、20歳代では約2割と、多いことが示されています。※11 若い女性のやせすぎは、卵巣機能の低下や低出生体重児を出産するリスクが高まることも。
また、高齢期における運動器の障害(ロコモティブシンドローム:通称「ロコモ」)や虚弱(フレイル)のリスクを高めます。まだまだ先の話だと思わず、若いうちからの対策が重要です。※9
適正な体重かどうかを知る目安が、BMI(ボディ・マス・インデックス)です。日本肥満学会による肥満判定基準は以下の通りです。※12
18.5未満 | やせ |
18.5以上~25.0未満 | 普通 |
25.0以上~30.0未満 | 肥満(1度) |
30.0以上~35.0未満 | 肥満(2度) |
35.0以上~40.0未満 | 肥満(3度) |
40.0以上 | 肥満(4度) |
見た目重視のスリムなボディを気にするあまり、BMIが18.5未満になるのは健康面ではよくありません。18.5~25.0未満になるよう、体重管理を行いましょう。
ダイエットには運動も大切
ダイエットを行う場合は、食事制限だけでなく、運動で身体活動を上げることも大切です。
無理な食事制限を行うと、筋肉が落ちてしまい、逆に太りやすい体になることも。運動やこまめに動くなど身体活動を上げる生活をするようにしましょう。
激しい運動を行う必要はありません。できそうなものを続けることがポイントです。ウォーキングやジョギング、ヨガ、ラジオ体操、趣味のスポーツなどなんでも構いません。
運動の目安は1回10~30分をできれば1日2~3回、週3~5回以上行うことがおすすめです。長時間でなく細切れでもOK。※3
- テレワークのスキマ時間にストレッチや筋トレを行う
- リラックスタイムにヨガを行う
- 決まった時間にラジオ体操を行う
- 気分転換にウォーキングを行う
などです。
繰り返しになりますが、青汁は痩せるための薬ではなく、あくまで健康の維持・増進を目的とした健康食品です。1日3食バランスのよい食事と適度な運動を行い、上手に青汁を味方につけて健康的にダイエットを行いましょう。
参考文献(References)
- 1 厚生労働省e-ヘルスネット「ダイエット」
- 2 厚生労働省e-ヘルスネット「肥満と健康」
- 3 「もうダイエットはやめよう!ボディウェイトコントロール健康のための体重調節」西端泉著 ラウンドフラット 62・74~80ページ
- 4 厚生労働省e-ヘルスネット「お菓子にはどのくらいのエネルギーが含まれているのでしょう?」
- 5 厚生労働省e-ヘルスネット「特保(特定保健用食品)とは?」
- 6 「図解でわかる!からだにいい食事と栄養の教科書」本多京子監修 永岡書店 96~99・36・3ページ
- 7 「一生役立つきちんとわかる栄養学」飯田薫子・寺本あい監修 西東社 138・127ページ
- 8 「栄養素の通になる第4版」上西一弘著 女子栄養大学出版部 178・181ページ
- 9 厚生労働省e-ヘルスネット「健康的なダイエット:適切な体重管理で、健康づくりをしよう!」
- 10 厚生労働省e-ヘルスネット「BMI(BMI)」
- 11 厚生労働省|国民健康・栄養調査
- 12 厚生労働省e-ヘルスネット「肥満と健康」