全額返金保障制度を利用してAGA治療を進める際の3つの注意点。発毛しない事を証明するのは難儀で高額オプションメニューにも留意要

全額返金保証制度でお金を受け取る
この記事に書いてある事
  • AGAは進行性なので「不変は発毛と同義」と取られてしまうので要注意
  • 「発毛効果がないこと」を証明するのは実はとても難しい
  • 全額返金保障制度で一番怖いワナはメソセラピーなどの「オプションメニュー」
  • いくら全額返金保障制度があっても「年間契約」だけは絶対避けよう

美容クリニック国内最大手の湘南美容クリニックが「発毛しなかったら全額お返しします」という全額返金保障制度を2019年春から開始しました。

湘南美容クリニックの最大のライバルとも言えるAGAスキンクリニックも追随するように同様の制度を始めましたが、以下の3つの点をしっかり押さえておかないとお金は返ってこないことになりかねません。

  • AGAは進行性なので「現状維持」は発毛とみなされてしまうこと
  • ビフォーアフター写真を証拠にして返金してもらうのは困難
  • 返金保障制度は多くの場合オプションメニューとセットになっているので注意が必要

簡単に言うと「甘い言葉の裏にはワナがある」ということなのですが、制度の中身をしっかり勉強して理解すれば対策も立てられますので、「裏側」を含めて解説していきます。

踏むと足を挟む鉄製のワナ

この記事の執筆者

内科総合クリニック人形町 院長 藤田 英理(総合内科専門医)

藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長

東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。

所属:日本内科学会日本動脈硬化学会日本頭痛学会

医師略歴・プロフィールはこちら

目次

AGAは進行性なので「不変は発毛と同義」と取られてしまうので要注意

AGA治療歴25年

藤田先生、「発毛効果」の定義を教えてもらえないでしょうか?何を持ってクリニック側は発毛効果があったとみなすのでしょうか?

院長 藤田

良い質問ですね。AGAクリニック側は、薄毛が進行していない状態も「発毛効果があった」とみなします。なぜならAGAは進行性だからです。

院長 藤田

解説いたします

AGA(男性型脱毛症)は、手を打たずに放置すると薄毛がじわじわと進んでいきます。これを「進行性症候」と言いますが、全額返金保障制度の文脈で考えた場合、この「進行性」ということに隠れたワナがあります。

例えば、全額返金保障制度を適用しているAGA専門クリニックにあなたが半年通って、思ったようには髪の毛が増えなかったとします。

「返金保障制度があったはずだからお金返してもらおう」

と思い立ち、AGAクリニックに「発毛しないのでお金返してもらえませんか?」と申し出た場合、

「発毛していないかも知れませんが薄毛は進行していないですよね。AGAは進行性なので、薄毛が進行していないということは、治療効果が出ているということになりますのでお返しいたしかねます。」

と、にべもなく返金を断られると思います。

「発毛効果がないこと」を証明するのは実はとても難しい

全額返金保障制度で返金を勝ち取るためには、発毛効果がない証拠を出す必要がありますが、これはとても難しいです。

通常、AGA治療専門のクリニックは、治療開始時に写真撮影するところがほとんどです。治療前の写真を抑えておかないと治療効果がどうだったか判断がつかないため撮影をするわけですが、ここで一つ抑えておきたいポイントがあります。

AGA治療では多くの場合、脱毛予防薬(フィナステリドやデュタステリド)と発毛薬(ミノキシジルタブレット)をセットで処方して患者さんに服用してもらいますが、程度の差はあれ多少なりとも発毛するケースが多いです。
※ただし、フサフサになるかというとそうでもなく、7-8割の人は「少~し増えたかなあ」という程度です

フィナステリドとミノキシジルタブレット
フィナステリドとミノキシジルタブレット

一方で、AGAがいくら進行性だと言っても半年や1年で目に見えて劇的に髪の毛が減ることはほとんどありません。

ここで治療開始前にクリニックで撮影した写真が登場します。

額の生え際(M字)を気にする男性

「見比べてもらえばわかるとおり目に見えて減ってないですよね?AGAは進行性ですので減っていないということは治療効果が多少は出ているとも言えますのでお金はお返しできません」

と逆の意味でビフォー(治療開始前)の写真が証拠になってしまうのです。

証拠の作成方法

AGA治療歴25年

返金を勝ち取るために、AGA治療の効果が出ていないことはどうやって証明すればいいのでしょうか?

院長 藤田

治療開始前に「明らかに進行も後退もしていない“不変”の場合は返金対象になりますか?」と質問し、口頭ではなく書類でそのやりとりを残しておくことをおすすめします。

院長 藤田

解説いたします

頭皮にマーカーを打ったり、あるいは毎日の抜け毛の本数を数えて治療開始前後の状況を克明に記録していたとしても、裁判でもしない限りはAGAクリニック側はお金を返したくないので押し問答になると思われます。

ではどうすればいいのかということですが、

「ビフォーアフターで減ってもないけど増えてもいないようなあいまいなケースの場合は返金対象となるのでしょうか?ならないのでしょうか?」

と質問し、返金対象になるという答えなら、それを証拠として確認書の中に記載してクリニックとあなたの双方で証拠を残すようにして下さい。

契約前に確認書にメモ書きをする男性

口頭確認では意味がありませんので、改ざんができないよう複写式の確認書などにメモを残してクリニックとあなたの双方で同じ書類を保管するのが理想です。

AGA治療などの保険適用外治療をメインで行っているAGAクリニックでは、トラブル防止のために必ず確認書にサインさせられます。その確認書に「不変だった場合は返金」という一文を手書きで加えた上でサインして欲しいということです。

これでクリニック側は逃げることができなくなりますので安心して治療を開始することができると思います。

全額返金保障制度で一番怖いワナはメソセラピーなどの「オプションメニュー」

AGA治療歴25年

全額返金保証制度の契約注意事項を見て見ると、薬の服用と併用してメソセラピーが必須になっているクリニックが見受けられますが、これって契約して大丈夫なのでしょうか?

院長 藤田

契約しないほうがいいと思います。メソセラピーは効果がゼロとは言いませんが同時服用することになるフィナステリドやミノキジジルの薬効で発毛するだけですので、はっきり言ってお金の無駄です。

院長 藤田

解説いたします

メソセラピーやHARG療法については、当ブログ内の他記事で何度か言及していますが、高額なわりに効果がほとんど期待できない治療になりますのでおすすめしません。

AGAメソセラピー
AGAメソセラピー

全額返金保証制度を行っているクリニックで「フィナステリド+ミノキジジル+メソセラピー」のセットを適用条件にしているところがありますが、はっきり警告しておきますがこの手のタイプの契約にサインしては絶対にダメです。

メソセラピーやHARGの単体治療での全額返金保証制度なら話は分かりますが、フィナステリドやミノキジジルとのセットで治療した場合、メソセラピーではなくフィナステリドやミノキジジルの効果で発毛してしまいますのでメソセラピーはやる意味がないです。

それと、ここ重要ポイントですが、発毛効果がなかったとクリニック側が認めなかった場合、メソセラピーの料金も返ってこないことになりますので、「全額返金保証制度」という甘い言葉に騙されてメソセラピーなどの無意味なオプション治療を不必要に契約しないよう十分にご注意ください。

いくら全額返金保障制度があっても「年間契約」だけは絶対避けよう

AGA治療歴25年

全額返金保証制度のカラクリが見えて対策法も教えてもらいましたが、いざ契約する時に他に注意すべき点はありますでしょうか?

院長 藤田

年間契約などの長期契約にサインしないことです。ただしメソセラピーがセットでない場合のみ半年契約までならOKです。

院長 藤田

解説いたします

証拠の押さえ方やメソセラピーとのセット治療の回避など、重要なポイントは理解していただいたと思いますが、もう一点だけあります。

それは「年間契約の回避」です。治療によって発毛するのであれば年間契約によるボリュームディスカウントのメリットを得られますが、AGA治療で本当にフサフサになる人の割合はせいぜい2割強くらいです。

残りの7割以上の方は「少し増えたかなあ」という程度にしか発毛しませんので、つまり、この7割強くらいの人は治療方法を変えるか、あるいはセカンドオピニオンという選択肢を考え始めることになります。

AGA治療ではどんなに遅くても治療開始して半年後には生えるか生えないか結果ははっきりと出ます

額の生え際(M字部分)の発毛具合を確認する男性

逆に半年を過ぎて10か月目や12か月目に治療効果が出始める人はほとんどいませんので、半年経過して思ったような結果が出なければ通っているAGAクリニックを変えるか、経済的理由で治療そのものをやめるという選択肢も出てきます。

このようなケースの場合、年間契約が足かせになってしまうのです。

半年経過して大きな成果が出ないのであれば、そのクリニックでの治療方針に誤りがあるか、そのクリニックで処方している薬に対してあなたがレスポンダー(下記参照)でないかのどちらかになります。

レスポンダーとは

薬には相性のようなものがあります。身近な例だと、バファリンで頭痛が治らない人がロキソニンだとスッキリ治ったり、この逆のケースもあります。これをレスポンダー、あるいはノンレスポンダーと呼びます。AGA治療も同じで、同じ成分の薬でも製薬メーカーが違うだけで効いたり効かなかったりすることにあるのです。

ですので、半年治療を続けて結果が出なければそのクリニックに通う意味はなく、セカンドオピニオンを探すほうが賢明なのですが、年間契約を結んでしまっていると、クリニックを変えたくてもすでにお金を支払ってしまっているので、半年以降も意味のない治療を続けざるを得ないのです。

従って、もし中長期の契約がお得だと感じた場合であっても、半年契約以上のものにサインはしないことを私はおすすめしています。

美人のお姉さんにも注意

もう一つ注意点が。

特に大手AGAクリニックの場合、クロージング(契約締結)を担当するのは美人のお姉さんである場合がほとんどです。

その美人のお姉さんが上目遣いで「1年契約だと20%お得になりますよ。生えなかったから返金しますしいかがですか?」と言われると、なかなかその申し出を断るのは難しいと思います。

契約を迫るセールスレディ

AGAクリニックは過当競争になっていて患者を獲得するためなら何だってします。大きな広告費を払っていますので、できるだけ長期の契約を結びたがります。

でも、いくら割引があったとしても半年以上の契約は結ばないようにして下さい。もしどうしても半年以上の契約を結びたいなら、治療の効果がはっきりと出てからでも遅くないと思います。

まず半年以内の治療契約を結んでおいて、半年以内に結果が出たなら、次の契約で年間契約を結ぶようにしてリスク分散をはかって下さい。

まとめ

毛髪診断士

藤田先生解説ありがとうございました。最後、私から少し補足させていただきます。

「全額返金保証制度」は、美容業界の集客法として最もポピュラーなものの一つです。そして、美容業界を知っている方ならご存じだと思いますが、全額返金保証というのは名ばかりで、実際にはお金はほとんどの場合返ってきません。

AGAを含めた美容系クリニックは、患者を札束のように見ています。当然ながらもらったお金を返したいはずがありませんので、あれやこれやと理由をつけ、患者側の心が折れるのも待ち、決め台詞は「では裁判でもされてはいかがでしょうか」と言ってきたりもします。

結審する裁判官

また、記事の中でも解説しましたが、全額返金保証制度は全ての治療に適用されるわけではなく、多くの場合メソセラピーやダーマスタンプなどの高額なオプションメニューとのセット治療であることが適用条件になっているケースがほとんどですので、本当に注意が必要です。

大切なことは、全額返金保証制度がもしなくても治療を受けたいと思えるクリニックなのかどうか。この点に尽きると思いますし、AGA治療には名医は不要です。薄毛を治すのは「薬効」であり医師の腕は関係ありませんので安さで選ぶべきです。

AGAクリニックの正しい選び方については下記の記事が参考になると思いますので、よろしければ続けてお読みいただけるとより知識が深まると思います。

以上

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