髪のハリやコシがなくなってきた、薄毛が気になる、ヘアカラーがすぐに落ちてしまうなど、髪の悩みを抱える女性は少なくありません。
その解決策の一つとして注目を集めているのが「ヘマチントリートメント」です。
この記事では、ヘマチンが持つ髪を美しくする力、女性の薄毛に対してなぜ有効なのか、そしてクリニックでの専門的なケアの重要性について、医療的な視点から詳しく解説します。
そもそもヘマチンとは?髪への働きを解説
ヘマチントリートメントという言葉は聞いたことがあっても、主成分である「ヘマチン」が一体何なのか、詳しく知る人は少ないかもしれません。
ヘマチンは、髪に対して非常に有益な働きを持つ成分です。その正体と、髪に与える恩恵について掘り下げていきましょう。
ヘマチンの正体は血液由来の成分
ヘマチンは、血液中のヘモグロビンを分離し、ヘマチンとグロビンに分けたうちの一つです。
ヘモグロビンが酸素を運ぶ重要な役割を担っているのはよく知られています。このヘマチンは、酸素を運び終えた後の「酸素を失った状態」で安定する性質を持ち、様々な優れた効果を発揮します。
化粧品原料として使用されるヘマチンは、主に豚の血液から抽出したものを精製して作られます。
血液由来と聞くと驚くかもしれませんが、安全性は確立されており、多くのヘアケア製品や美容室の施術で長年使用されてきた実績があります。
髪のケラチンと結合する性質
髪の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。ヘマチンは、このケラチンタンパク質に強く結合する特異な性質を持っています。
一度髪に結合すると、シャンプーなどで簡単に洗い流されず、髪の内部に留まってその効果を持続させます。
この結合能力が、ヘマチンが持つ様々な効果の根幹をなしています。
ヘマチンと他の一般的な保湿成分との違い
| 成分 | 主な働き | 持続性 |
|---|---|---|
| ヘマチン | 髪のケラチンと結合し、内部から補修・強化する | 高い(洗い流されにくい) |
| コラーゲン | 髪の表面をコーティングし、水分を保持する | 中程度(シャンプーで流れやすい) |
| ヒアルロン酸 | 高い保水力で髪に潤いを与える | 低い(表面に付着するだけ) |
カラーやパーマのダメージを補修する力
ヘアカラーやパーマは薬剤によって髪のキューティクルを開き、内部の構造を変化させるため、髪へのダメージは避けられません。
この過程で、髪内部のケラチンタンパク質は傷つき、流出してしまいます。
ヘマチンはダメージを受けた部分を的確に見つけ出し、ケラチンと結合して髪の空洞を埋め、内部から補強します。これにより髪の強度を高め、ダメージの進行を防ぎます。
メラニン色素をサポートし白髪を予防
白髪は髪の色を作るメラニン色素が、何らかの原因で生成されなくなるために発生します。
このメラニンを生成する細胞「メラノサイト」の働きには、「チロシナーゼ」という酵素が深く関わっています。
ヘマチンには、このチロシナーゼの働きを活発にする作用があると分かっています。
これによってメラニン色素の生成を助け、これから生えてくる髪を健康な黒髪に導く、白髪予防の効果が期待できます。
ヘマチントリートメントで得られる具体的な髪への効果
ヘマチンが髪の内部で働くと、見た目や手触りにも嬉しい変化が現れます。
ここでは、具体的な効果を4つのポイントに分けて解説します。
髪のハリ・コシをアップさせる
年齢と共に髪が細くなったり、根元の立ち上がりが弱くなったりするのは、髪内部のタンパク質密度が低下するのが一因です。
ヘマチンは髪のケラチンと結合し、髪の一本一本を内側から強化します。
その結果、髪に自然なハリとコシが生まれ、ボリューム感のある若々しい印象のヘアスタイルを作ることが可能になります。
ヘマチンによる髪質の変化
| 悩み | ヘマチン塗布前の状態 | ヘマチン塗布後の期待される変化 |
|---|---|---|
| 軟毛・細毛 | 髪がへたりやすく、ボリュームが出ない | 根元から立ち上がり、弾力のある髪に |
| ダメージ毛 | パサつき、ごわつき、切れ毛が目立つ | 指通りが滑らかになり、まとまりやすくなる |
| エイジング毛 | うねりやクセが強くなってきた | 髪の芯がしっかりし、うねりが緩和される |
ヘアカラーの色持ちを良くする
ヘアカラーの色素は、シャンプーや紫外線などによって徐々に髪から流れ出てしまいます。特にダメージを受けた髪ほど、色素の流出は早いです。
ヘマチンには、カラー剤のアルカリ成分を除去する働きがあります。施術後の髪は弱酸性に戻り、キューティクルが引き締まるため、色素の流出を防ぎます。
さらに、ヘマチン自体がカラー色素と結合し、髪内部に定着させる役割も果たします。
パーマのウェーブを維持しやすくする
パーマは、髪内部のタンパク質の結合を一度切断し、再結合させてウェーブを形成します。この結合が弱いと、パーマはすぐに取れてしまいます。
ヘマチンはパーマの再結合を助け、リッジの効いた美しいウェーブを長期間キープする手助けをします。
また、パーマによるダメージも同時に補修するため、弾力のあるしなやかなカールを実現できます。
- ハリ・コシ向上
- ダメージ補修
- 紫外線防御
紫外線から髪を守る保護作用
肌と同様に、髪も紫外線の影響でダメージを受けます。紫外線は髪のタンパク質を破壊し、乾燥やパサつき、色あせの原因となります。
ヘマチンには紫外線を吸収する性質があり、髪の盾となってダメージから守る効果が期待できます。
日常的に紫外線を浴びる機会が多い方にとって、これは非常に重要な効果と言えるでしょう。
なぜ女性の薄毛にヘマチンが注目されるのか
薄毛は男性特有の悩みと思われがちですが、実際には多くの女性が髪のボリュームダウンや地肌の透けに悩んでいます。
女性の薄毛の原因は男性とは異なり、複数の要因が複雑に絡み合っているケースがほとんどです。
ヘマチンは、こうした女性特有の髪の悩みに多角的に働きかけるため、近年特に注目を集めています。
加齢による髪質の変化とヘマチン
年齢を重ねると、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が減少します。
エストロゲンは髪の成長を促進して髪のハリやツヤを保つ働きがあるため、その減少は髪の細りやうねり、パサつきといった「エイジング毛」特有の悩みに直結します。
ヘマチンはこうした弱った髪を内部から補強し、失われたハリ・コシを取り戻すことで、見た目の印象を若々しく保つ手助けをします。
ホルモンバランスの乱れと頭皮環境
特に更年期や産後は、ホルモンバランスが大きく変動し、頭皮環境に影響を与えます。
頭皮が乾燥したり、逆に皮脂が過剰になったり、健康な髪が育ちにくくなります。
ヘマチンには頭皮の血行を促進したり、過剰な皮脂の分泌を抑えたりする効果も報告されており、健やかな髪を育む土台である頭皮環境を整える上で役立ちます。
産後の抜け毛悩みへのアプローチ
出産後に一時的に抜け毛が急増する「分娩後脱毛症」は、多くのママが経験する悩みです。
これは妊娠中に増加していた女性ホルモンが出産を機に急激に減少するのが原因です。
通常は半年から1年ほどで自然に回復しますが、この時期の精神的なストレスは大きいものです。
ヘマチントリートメントは今ある髪を強く保ち、切れ毛などを防ぐとともに、これから生えてくる新しい髪を健やかに育てるための頭皮環境を整えるサポートをします。
間違ったヘアケアによるダメージ蓄積
洗浄力の強すぎるシャンプーの使用、髪が濡れたままでの就寝、過度なブラッシングなどは日々の少しずつのダメージを髪に蓄積させてしまいます。
この蓄積されたダメージがうねりや切れ毛、そして薄毛の一因となる場合もあります。
ヘマチントリートメントは、こうした日々のダメージをリセットし、髪を健康な状態に近づけるための集中ケアとして非常に有効です。
女性の薄毛を引き起こす要因
| 要因 | 内容 | ヘマチンのアプローチ |
|---|---|---|
| 加齢 | 髪の成長サイクルの乱れ、髪質の低下 | 髪の強度を高め、ハリ・コシを与える |
| ホルモンバランス | 産後や更年期における女性ホルモンの減少 | 頭皮環境を整え、健やかな髪の育成をサポート |
| 生活習慣 | ストレス、食生活の乱れ、睡眠不足 | 直接的ではないが、頭皮環境の改善を助ける |
クリニック・サロンでのヘマチントリートメントと自宅ケアの違い
最近では、ヘマチン配合を謳った市販のシャンプーやトリートメントも増えてきました。
しかし、専門クリニックやサロンで行う施術と自宅でのケアには、明確な違いがあります。その違いを理解し、ご自身の目的に合ったケアを選択することが大切です。
濃度と浸透技術の専門性
最も大きな違いは、ヘマチンの「濃度」です。クリニックやサロンで使用するヘマチンは、市販品とは比較にならないほど高濃度なものがほとんどです。
また、単に塗布するだけでなく、専門的な機器を用いて髪の深層部まで成分を浸透させる技術を採用しているところも多いです。
このため、一度の施術でも効果を実感しやすいのです。
専門家による頭皮・毛髪診断
クリニックやサロンでは、施術の前に一人ひとりの頭皮の状態や毛髪の太さ、密度を詳細に診断します。
薄毛の原因や髪のダメージレベルを正確に把握した上で、その方に合ったヘマチンの濃度や施術方法を判断します。
この個別診断こそが、効果を最大化する鍵となります。
他の治療との相乗効果
薄毛治療専門クリニックでは内服薬や外用薬の処方、頭皮への有効成分導入など、様々な治療法を組み合わせて提供します。
例えば、発毛を促進する治療と並行してヘマチントリートメントを行うと、新しく生えてくる髪をより強く、健康に育てられます。
こうした多角的な取り組みによる相乗効果は、クリニックならではの大きな利点です。
自宅ケア製品の選び方と注意点
自宅でのケアも、美しい髪を維持するためには重要です。
ヘマチン配合の製品を選ぶ際は、成分表示を確認し、ヘマチンが上位に記載されているものを選ぶと良いでしょう。
ただし、市販品だけに頼るのではなく、クリニックやサロンでの定期的な集中ケアと組み合わせると、より高いレベルで髪の状態を維持できます。
ヘマチントリートメントを受ける前に知っておきたいこと
サロンやクリニックでのヘマチントリートメントを検討するにあたり、事前にいくつか知っておくべき点があります。
効果や期間について正しく理解すると、安心して治療を始められます。
期待できる効果と限界
ヘマチントリートメントは、髪のハリ・コシ・ツヤの改善、ダメージ補修や色持ちアップ、白髪予防などに効果を発揮します。
しかし、完全に髪が生えなくなった毛穴から新たに発毛させる、といった「発毛効果」そのものは主目的ではありません。
あくまで、今ある髪と頭皮環境を健やかに整え、薄毛を改善・予防する治療と位置づけてください。
発毛を希望する場合は、他の治療との組み合わせを検討します。
ヘマチントリートメントの効果範囲
| 得意なこと(主な効果) | 不得意なこと(限界) |
|---|---|
| 既存の髪を強化し、ハリ・コシを与える | 完全に消失した毛根の再生 |
| 頭皮環境を整え、健康な髪の育成を助ける | AGA(男性型脱毛症)の進行を単独で止める |
| ダメージを補修し、髪質を改善する | 遺伝的要因を根本から変える |
施術の頻度と期間の目安
効果的な結果を得るためには、継続的な施術が推奨されます。
髪の状態や目指すゴールによって異なりますが、一般的には、治療初期は2週間から1ヶ月に1回のペースで集中的に行い、状態が改善してきたら1ヶ月から2ヶ月に1回のメンテナンスに移行するケースが多いです。
髪のターンオーバーも考慮し、最低でも3ヶ月から6ヶ月は継続すると、安定した効果を実感しやすくなります。
より効果を高めるための生活習慣
クリニックやサロンでの専門的なケア、または自宅でのケアに加えて、日々の生活習慣を見直すと、ヘマチントリートメントの効果をさらに高めて持続させられます。
美しい髪のためには、体の内側からのケアも大切です。
バランスの取れた食事と髪に必要な栄養素
髪はタンパク質(ケラチン)でできているため、良質なタンパク質の摂取が基本です。
それに加え、タンパク質の合成を助ける亜鉛や、頭皮の血行を良くするビタミンEなども積極的に摂りたい栄養素です。
特定の食品に偏るのではなく、バランスの良い食事を心がけることが、健康な髪を育むための基本です。
美しい髪を育む栄養素と主な食材
| 栄養素 | 主な働き | 多く含まれる食材 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の主成分となる | 肉、魚、卵、大豆製品 |
| 亜鉛 | タンパク質の合成を助ける | 牡蠣、レバー、牛肉 |
| ビタミン類 | 頭皮環境を整え、血行を促進する | 緑黄色野菜、ナッツ類、果物 |
質の良い睡眠による頭皮への好影響
髪の成長を促す成長ホルモンは、睡眠中に最も多く分泌されます。特に、入眠後の深い眠りの時間帯が重要です。
睡眠不足はホルモンバランスの乱れや血行不良につながり、髪の成長を妨げる原因となります。
毎日決まった時間に就寝・起床するなど、質の良い睡眠を確保する工夫をしましょう。
ストレス管理とリフレッシュ方法
過度なストレスは自律神経を乱し、血管を収縮させて頭皮の血行を悪化させます。
この状態が続くと髪に十分な栄養が届かなくなり、抜け毛や薄毛の原因となります。
軽い運動や趣味の時間、リラックスできる入浴など自分に合った方法で上手にストレスを解消し、心身ともに健やかな状態を保つことが大切です。
よくある質問
さいごに、ヘマチントリートメントに関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- ヘマチントリートメントに副作用はありますか
-
ヘマチンは医薬品ではなく、化粧品原料としても広く使用されている安全性の高い成分です。そのため、重篤な副作用の報告はほとんどありません。
ただし、血液由来の成分であるため、非常に稀ですがアレルギー反応を示す可能性はゼロではありません。
ご自宅てヘマチントリートメントを使用して、頭皮に赤みや腫れ、かゆみなどが現れたときはすぐに洗い流し、改善しないときは皮膚科や専門クリニックを受診しましょう。
- どのくらいの期間で効果を実感できますか
-
髪のダメージ補修による手触りの改善や、ハリ・コシのアップといった質感の変化は、初回の施術直後から実感できる方が多いです。
薄毛の改善や白髪予防といった、頭皮環境の改善が関わる効果については、髪の成長サイクル(ヘアサイクル)があるため、実感できるまでには3ヶ月から6ヶ月程度の期間を目安としてください。
- 施術をやめると元の状態に戻ってしまいますか
-
ヘマチンの効果は永続的ではありません。施術をやめると、日々のシャンプーやダメージによって、髪は徐々に元の状態に戻っていきます。
そのため、良い状態を維持するためには、定期的なメンテナンスや、ご自宅での適切なヘアケアを継続することが重要です。
- 薄毛治療の他の方法と併用できますか
-
併用できます。むしろ、併用すると相乗効果が期待できます。
例えば、ミノキシジルなどの外用薬や、サプリメント、内服薬などと組み合わせると、発毛を促進しながら、今ある髪を強く美しく育てることが可能です。
クリニックでは、一人ひとりの状態に合わせて、適した治療の組み合わせを提案してもらえます。
参考文献
FERNÁNDEZ, Estibalitz, et al. Efficacy of antioxidants in human hair. Journal of Photochemistry and Photobiology B: Biology, 2012, 117: 146-156.
BOO, Yong Chool. Intrinsic and Extrinsic Factors Associated with Hair Graying (Canities) and Therapeutic Potential of Plant Extracts and Phytochemicals. Applied Sciences, 2024, 14.17: 7450.
CUI, Hongyan, et al. Plant colorants for natural hair coloration: Dyeing optimization and photostability assessment. Sustainable Chemistry and Pharmacy, 2023, 36: 101285.
GOYAL, Anju, et al. Bioactive-based cosmeceuticals: An update on emerging trends. Molecules, 2022, 27.3: 828.
PEREIRA-SILVA, Miguel, et al. Nanomaterials in hair care and treatment. Acta Biomaterialia, 2022, 142: 14-35.
CORBETT, John F.; SHARMA, Raj K.; DRESSLER, William E. Cosmetic toxicology. In: Toxicology. Academic Press, 1999. p. 899-918.
GROSVENOR, A. J., et al. The physical and chemical disruption of human hair after bleaching–studies by transmission electron microscopy and redox proteomics. International Journal of Cosmetic Science, 2018, 40.6: 536-548.

