「最近、お風呂の排水溝にたまる髪の量が増えた」「ブラッシングするたびに、ごそっと髪が抜ける気がする」と相談にいらっしゃる女性が増加傾向にあります。
女性にとって髪は見た目の印象を大きく左右する大切な部分ですので、抜け毛が増えると不安や焦りを感じるのは当然です。
しかし、なぜ髪が抜けるのか、その原因を正しく理解している方は多くありません。
この記事では、女性の抜け毛のさまざまな原因を医学的な視点から掘り下げ、ご自身でできる対処法から専門的な治療まで、分かりやすく解説します。
もしかして異常?女性の抜け毛の基礎知識
髪の毛は一定のサイクルで生え変わっています。そのため、毎日ある程度の髪が抜けるのは自然な現象です。
しかし、その量が急に増えたり、髪の質が変わったりした場合は注意が必要です。
正常な抜け毛と危険な抜け毛の見分け方
健康な人でも、1日に50本から100本程度の髪は自然に抜けています。
これは「ヘアサイクル(毛周期)」によるもので、成長期、退行期、休止期を経て髪が抜け落ち、また新しい髪が生えてくるという循環を繰り返しています。
しかし、1日に抜ける本数が200本を超えたり、以前と比べて明らかに量が増えたりした場合は、何らかの異常が起きている可能性があります。
抜け毛の状態セルフチェック
| チェック項目 | 正常な抜け毛 | 注意が必要な抜け毛 |
|---|---|---|
| 1日の本数 | 50~100本程度 | 200本以上、または急激な増加 |
| 抜けた毛の毛根 | 丸く膨らんでいる | 細い、形がいびつ、皮脂が付着 |
| 抜けた毛の太さ | 太くしっかりしている | 細く短い毛が多い |
女性の薄毛に多いパターン
男性の薄毛が額の生え際や頭頂部から進行するケースが多いのに対し、女性の薄毛は少し異なるパターンを示します。
最も多いのは、頭頂部を中心に髪の分け目が広がり、全体のボリュームが失われる「びまん性脱毛症」です。髪一本一本が細くなるため、地肌が透けて見えるようになります。
他にも、円形脱毛症のように部分的に抜けるケースもあります。
年代によって変化する髪の悩み
女性の髪の悩みは、年齢とともに変化します。20代や30代では過度なダイエットやストレスが原因となる場合が多く、40代以降はホルモンバランスの変化が大きく影響してきます。
ご自身の年代で起こりやすい原因を知ることも、対策を考える上で重要です。
女性ホルモンのゆらぎが抜け毛を招く
女性の身体は、一生を通じて女性ホルモンの影響を受け続けます。特に「エストロゲン」は、髪の成長を促進し、ハリやコシを保つ働きを持っています。
このエストロゲンの分泌量が減少すると、ヘアサイクルが乱れ、抜け毛が増える原因となります。
ライフステージとホルモンバランス
思春期や性成熟期、更年期や老年期といったライフステージの変化に伴い、女性ホルモンの分泌量は大きく変動します。
妊娠・出産や更年期はホルモンバランスが急激に変化するため、髪にも影響が出やすい時期と言えます。
女性ホルモンの年代別変化と髪への影響
| 年代 | ホルモンの状態 | 髪への主な影響 |
|---|---|---|
| 20代~30代 | 分泌のピーク。ただし生活習慣で乱れやすい。 | ストレスやダイエットによる一時的な抜け毛。 |
| 40代(更年期前期) | エストロゲンが減少し始める。 | 髪のうねり、パサつき、分け目の広がり。 |
| 50代以降(更年期以降) | エストロゲンが急激に減少する。 | 全体のボリュームダウン、地肌の透け。 |
妊娠・出産後の抜け毛
妊娠中はエストロゲンの分泌量が増え、髪の成長期が長く維持されるため、抜け毛が減る傾向にあります。
しかし、出産後はホルモンバランスが妊娠前の状態に急激に戻るため、成長期を終えた髪が一斉に休止期に入り、ごそっと抜けてしまう場合があります。
これは「分娩後脱毛症」と呼ばれ、通常は産後半年から1年ほどで自然に回復します。
更年期に髪が抜ける理由
40代後半から50代にかけて迎える更年期では、卵巣の機能が低下し、エストロゲンの分泌量が大幅に減少します。
エストロゲンの減少によって髪の成長期が短くなり、髪が十分に育たないまま抜け落ちてしまいます。
また、髪のハリやコシも失われ、全体的に薄くなったと感じやすくなります。
毎日の生活習慣が髪の健康を左右する
髪は、私たちが毎日摂る食事や睡眠、運動といった生活習慣の積み重ねによって作られています。
不規則な生活や栄養バランスの偏りは、知らず知らずのうちに髪の健康を損ない、抜け毛の原因となっている場合があります。
健やかな髪を育むためには、日々の生活の見直しが基本です。
髪が喜ぶ食事と栄養素
髪の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。そのため、良質なタンパク質の十分な摂取が、健康な髪を作るための第一歩です。
また、タンパク質の合成を助ける亜鉛や、頭皮に栄養を運ぶために重要な鉄分、血行を促進するビタミンEなども積極的に摂りたい栄養素です。
髪の成長に必要な栄養素と多く含む食品
| 栄養素 | 主な働き | 多く含む食品 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の主成分となる。 | 肉、魚、卵、大豆製品 |
| 亜鉛 | タンパク質の合成を助ける。 | 牡蠣、レバー、牛肉 |
| 鉄分 | 血液を通じて頭皮に栄養を運ぶ。 | レバー、赤身肉、ほうれん草 |
睡眠不足による髪へのダメージ
髪の成長を促す「成長ホルモン」は、主に睡眠中に分泌されます。
入眠後の深い眠りの時間帯に最も多く分泌されるため、睡眠時間が不足したり眠りが浅かったりすると成長ホルモンの分泌が減少し、髪の成長が妨げられてしまいます。
質の良い睡眠を確保する工夫は、髪にとって非常に重要です。
運動習慣と頭皮の血行
適度な運動は、全身の血行を促進します。頭皮の毛細血管は非常に細く、血行不良の影響を受けやすい部分です。
デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けていると、血行が悪くなり、髪の成長に必要な栄養が頭皮まで届きにくくなります。
ウォーキングなどの軽い運動を習慣にすると、頭皮の血流改善が期待できます。
抜け毛につながるNG生活習慣
- 過度なダイエット
- インスタント食品や外食中心の食生活
- 慢性的な睡眠不足
- 喫煙や過度な飲酒
ストレスは髪の大敵 その深刻な影響
現代社会で避けて通れないストレスは、抜け毛の大きな引き金になるときがあります。
精神的な負担が身体に与える影響は想像以上に大きく、自律神経やホルモンバランスを乱し、頭皮環境を悪化させてしまうのです。
自律神経の乱れと血行不良
強いストレスを感じると身体は緊張状態になり、交感神経が優位になります。交感神経には血管を収縮させる働きがあるため、頭皮の血行が悪化します。
血行不良が続くと髪の毛根にある毛母細胞に十分な酸素や栄養が届かなくなり、健康な髪が育たず、抜け毛が増えてしまいます。
ストレスが髪に与える影響
| 影響 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 血行不良 | 血管が収縮し、毛根への栄養供給が滞る。 |
| ホルモンバランスの乱れ | ストレスホルモンが女性ホルモンの働きを阻害する。 |
| 頭皮環境の悪化 | 皮脂の過剰分泌や炎症を引き起こす。 |
ストレスが引き起こす頭皮の炎症
ストレスは、皮脂の分泌をコントロールしているホルモンのバランスを崩す場合があります。
皮脂が過剰に分泌されると毛穴が詰まりやすくなり、雑菌が繁殖して炎症を起こす原因となります。
頭皮の赤みやかゆみ、フケといった症状は、頭皮環境が悪化しているサインです。
無意識の癖が抜け毛を増やすことも
ストレスを感じると、無意識に髪を抜いたり、頭を掻きむしったりする癖(抜毛症)が現れるケースがあります。
これは物理的に髪や頭皮を傷つける行為であり、抜け毛を直接的に引き起こします。
もし心当たりがある場合は、ストレスのサインと捉え、専門家への相談も検討しましょう。
見直したいヘアケアと頭皮環境
洗浄力の強すぎるシャンプーや間違った洗い方など、頭皮に合わないヘアケアは抜け毛の直接的な原因になります。
健康な髪は健康な頭皮から生まれるため、良かれと思って続けているケアが負担になっていないか、一度見直してみましょう。
シャンプーの選び方と正しい洗い方
シャンプーは、ご自身の頭皮タイプに合ったものを選ぶことが大切です。
乾燥しがちな方はアミノ酸系などのマイルドな洗浄成分のもの、べたつきが気になる方は適度な洗浄力のあるものを選びましょう。
また、洗い方も重要です。爪を立ててゴシゴシ洗うのは禁物です。指の腹を使って、頭皮をマッサージするように優しく洗いましょう。
正しいシャンプーの手順
- 洗う前にブラッシングで髪のもつれをほどく。
- ぬるま湯で髪と頭皮を十分に予洗いする。
- シャンプーを手のひらで泡立ててから髪につける。
- 指の腹で頭皮をマッサージするように洗う。
- すすぎ残しがないよう、時間をかけて丁寧に洗い流す。
頭皮の乾燥・べたつきと抜け毛
頭皮が乾燥すると、フケやかゆみの原因になるだけでなく、外部からの刺激を守るバリア機能が低下します。
逆に、皮脂が過剰に分泌されると毛穴が詰まり、炎症や抜け毛につながります。
頭皮の状態は季節や体調によっても変化するため、日頃から自分の頭皮を観察し、状態に合ったケアを心がけましょう。
頭皮タイプ別シャンプーの選び方の目安
| 頭皮タイプ | 特徴 | おすすめの洗浄成分 |
|---|---|---|
| 乾燥肌 | フケやかゆみが出やすい。 | アミノ酸系、ベタイン系 |
| 脂性肌 | べたつきやニオイが気になる。 | 高級アルコール系(適度な洗浄力) |
| 敏感肌 | 刺激を感じやすい。 | 低刺激性のもの、無添加のもの |
カラーやパーマとの上手な付き合い方
おしゃれを楽しむために欠かせないカラーやパーマですが、薬剤は髪や頭皮にとって大きな負担となります。
頻繁に繰り返すと、髪がダメージを受けるだけでなく、頭皮が炎症を起こして抜け毛の原因になる場合もあります。
施術の頻度を調整したり、頭皮に優しい薬剤を選んだり、施術後はトリートメントでしっかりケアするなど、上手な付き合い方を考えましょう。
抜け毛は身体からのSOSかもしれません
生活習慣やヘアケアを見直しても抜け毛が改善しない場合、背景に何らかの病気が隠れている可能性も考えられます。
特に、急激に抜け毛が増えた場合や、倦怠感や体重の増減など、髪以外の症状も伴う場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
抜け毛を伴う甲状腺の病気
喉仏の下あたりにある甲状腺は、全身の代謝をコントロールするホルモンを分泌しています。
このホルモンの分泌が多すぎる「バセドウ病」や、逆に少なすぎる「橋本病」では、症状の一つとして脱毛がみられるケースがあります。
髪が全体的に薄くなるのが特徴で、他の全身症状(動悸、体重減少、倦怠感、むくみなど)を伴う方が多いです。
貧血と髪の細りの関係
特に女性に多い貧血は、体内の鉄分が不足するために起こります。鉄分は、血液中のヘモグロビンの材料となり、全身に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。
鉄分が不足すると頭皮の毛母細胞まで十分な酸素が届かず、髪が細くなったり、抜けやすくなったりします。
立ちくらみや倦怠感、顔色が悪いといった症状があれば、貧血を疑ってみましょう。
抜け毛を伴う可能性のある主な病気
| 病名 | 主な症状(髪以外) | 受診科の目安 |
|---|---|---|
| 甲状腺機能亢進症(バセドウ病) | 動悸、多汗、体重減少、眼球突出 | 内分泌内科 |
| 甲状腺機能低下症(橋本病) | 倦怠感、むくみ、体重増加、便秘 | 内分泌内科 |
| 鉄欠乏性貧血 | めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ | 内科、婦人科 |
婦人科系疾患の可能性
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や子宮筋腫など、一部の婦人科系疾患はホルモンバランスの乱れを引き起こし、その結果として抜け毛や多毛といった症状が現れる方もいます。
月経不順や不正出血など、気になる症状がある場合は、婦人科での検査も視野に入れましょう。
今日からできる抜け毛を減らすためのセルフケア
専門的な治療と並行して、ご自身でできるセルフケアを日々の生活に取り入れるのも、抜け毛の改善には重要です。無理なく続けられることから始めてみましょう。
食生活で意識したいこと
まずは、バランスの取れた食事を1日3食きちんと摂るのが基本です。特に、髪の材料となるタンパク質や亜鉛、鉄分やビタミン類を意識して摂取しましょう。
大豆製品に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンと似た働きをすると言われており、積極的に摂りたい食品の一つです。
セルフケアとクリニックの「できること」
| 項目 | セルフケア | クリニック |
|---|---|---|
| 食事 | 栄養バランスの改善、サプリメントの活用 | 栄養指導、血液検査に基づく処方 |
| ヘアケア | 頭皮に合ったシャンプー選び、正しい洗髪 | 頭皮診断、薬用シャンプーの処方 |
| 治療 | 市販の育毛剤の使用 | 内服薬・外用薬の処方、注入治療など |
リラックスできる時間の作り方
ストレス対策として、意識的にリラックスする時間を作ることが大切です。
ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる、好きな香りのアロマを焚く、軽いストレッチをするなど、ご自身が心から安らげる方法を見つけましょう。スマートフォンから離れて、静かに過ごす時間も有効です。
自宅でできる頭皮マッサージ
頭皮マッサージは、硬くなった頭皮をほぐして血行を促進するのに役立ちます。シャンプーの際や、お風呂上がりのリラックスタイムに行うのがおすすめです。
指の腹を使い、気持ち良いと感じる強さで、頭皮全体を優しく動かすようにマッサージしましょう。
頭皮マッサージのポイント
- 爪を立てず、指の腹を使う。
- 頭皮を擦るのではなく、頭蓋骨から動かすイメージで。
- 1回5分程度を目安に、毎日続ける。
髪がよく抜ける悩みに関するよくある質問
さいごに、患者さんからよく寄せられるご質問とその回答をまとめました。
- クリニックではどのような治療をしますか
-
クリニックでは、まずカウンセリングと診察で抜け毛の原因を特定します。
その上で、患者さん一人ひとりの症状やご希望に合わせて、内服薬や外用薬の処方、頭皮に直接有効成分を届ける注入治療、サプリメントの処方などを組み合わせたオーダーメイドの治療計画を提案します。
- 治療にはどれくらいの期間や費用がかかりますか
-
治療効果を実感するまでには、ヘアサイクルに合わせて通常3ヶ月から6ヶ月程度の期間が必要です。
費用は治療内容によって異なりますが、クリニックでは初診料や月々の治療費について事前に明確に提示します。
月々1~3万円程度が一つの目安ですが、詳細については、カウンセリングの際に質問してみましょう。
- 市販の育毛剤ではだめなのでしょうか
-
市販の育毛剤は、主に頭皮環境を整えることを目的としたものが多く、医薬品に比べて有効成分の濃度が低い傾向にあります。
そのため、予防や初期段階のケアとしては有効な場合もありますが、すでに進行している抜け毛に対しては、医学的根拠のある治療のほうが効果を期待できます。
自己判断でケアを続ける前に、一度専門医の診断を受けてみると良いでしょう。
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