- 亜鉛は髪の成長に欠かせない栄養素
- 亜鉛不足は身近に起こりやすい?
- 亜鉛はどの程度育毛に効果あり?
- 【ここ大事】亜鉛はAGA単なる予防に過ぎない
今回のテーマは「亜鉛による髪へのメリットと育毛効果について」です。
髪に良い栄養素として、広く知られている亜鉛。薄毛対策に摂るべきということは分かりますが、どの程度髪に良いのか気になりますよね。
亜鉛から得られる効果には個人差があります。
そのため「これだけ摂ると、これだけ良くなります」と言い切ることは難しいです。また、薬ではありませんので「毛が生えた!」と、目に見える変化を感じるわけでもありません。
当記事では、
- 亜鉛が髪に良いとされている理由
- 取り入れることによって得られるメリット
- AGAを予防できるかどうか
について説明します。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
亜鉛は髪の成長に欠かせない栄養素
- 亜鉛は体に不可欠なミネラル
- 髪の毛を構成しているケラチンを作ることが、亜鉛の役割
亜鉛は、ミネラルの一種。もう少し細かくいうと、体の働きを正常に保つために欠かせない必須ミネラルの1つです。
亜鉛が髪に良いとされるのは、髪の主な成分であるケラチンの生成に関わっているためです。
ケラチンはたんぱく質でできていますが、たんぱく質がそのまま髪の毛になるわけではありません。
たんぱく質からケラチンになるまでの流れを簡単にまとめると、以下のようになります。
- たんぱく質が体内に取り込まれる
- 取り込まれた①は、シスチンなどのアミノ酸に変換される
- 血液によって②が頭皮に送られる
- 頭皮に送られたアミノ酸が毛母細胞に取り込まれる
- 亜鉛が④のアミノ酸同士を結合させ、その結果ケラチンが誕生する
赤色と青色の絵の具をただ用意しても、それを混ぜる人がいなければ、紫色にはなりません。
髪もそれと同じ。ケラチンの主な成分は確かにたんぱく質なのですが、亜鉛抜きでは作られないということです。
亜鉛不足が起こる原因と吸収を妨げる食べ物とは
ただし、髪のためにせっせと取り入れているつもりでも、不足することがあるので注意が必要です。
解説いたします
- 普通に食事をしている限りでは、亜鉛の欠乏は起こりにくい
- しかし、食べ合わせによっては吸収が悪くなる
- 亜鉛が欠乏すると髪の成長が妨げられる
亜鉛は、さまざまな食物に含まれています。
そのため、普通に食事をしていれば「十分に摂れていない」と心配する必要はありません。
と、理屈では「心配なし」なのですが、食事内容によっては亜鉛を十分に摂取できていないこともありますので注意が必要です。
亜鉛は食べ合わせによって吸収率が変わります。しかも、吸収を妨げる食べ物は身近にあるため、知らないうちに口にしている可能性があるのです。
例えばコーヒーや緑茶などに含まれているタンニンには、亜鉛の吸収を妨げる働きがあるといわれています。
「フィチン酸」と「リン酸」も、亜鉛の吸収を邪魔する成分です。
フィチン酸とリン酸は、タンニンほど耳にする機会はないかもしれませんが、これらの成分を多く含む食品は身近にあるんですよ。
- 玄米、ライ麦パン、魚卵(いくらなど)、甲殻類(カニなど)、加工食品(がんもどきなど)、干物、フィチン酸を多く含む食品:穀類(小麦・米ぬかなど)・豆類
- 穀類(小麦・米ぬかなど)・豆類
亜鉛が十分に摂れないと、髪の主な成分であるケラチンが十分に作られなくなります。そして、欠乏した状態が続くと、弱々しい髪の毛が増えていきます。
弱々しい髪の毛は健康な髪の毛よりも抜けやすく、これが薄毛のリスクにつながるというわけです。
亜鉛の吸収を妨げるおそれのある食品をよく口にする場合は、食べ過ぎないように気をつけた方がよいでしょう。
亜鉛はどの程度育毛に効果あり?
解説いたします
亜鉛を摂るメリットについて、髪に関する限りでいいますと以下の2つが挙げられます。
- アミノ酸を合成してケラチンを作る
- 5αリダクターゼの活動を抑える
①については、先に説明したとおりです。
②についてですが、「5αリダクターゼ」は薄毛の原因といわれている成分で、特にAGA(男性型脱毛症)の発症と関係しています。
薄毛が気になる人なら分かると思いますが、AGAは生え際やつむじなど部分的に薄くなる点に特徴のある脱毛症です。
AGAを発症する要因の1つといわれているジヒドロテストステロンは、もともとテストステロンという男性ホルモン。この男性ホルモンは、5αリダクターゼと結合することによって生まれます。
亜鉛がなぜ5αリダクターゼの活動を抑えることができるのかは、科学的な話になるので詳細は割愛します。
超がつくほど簡単に説明しますと、金属イオンを必要としない5αリダクターゼに、亜鉛が結合することによって酵素の働きが邪魔されるのが理由です。
つまり、亜鉛を取り入れることは健康な髪作りだけでなくAGAの予防にもつながるというメリットがあるのです。
- 髪の素となるケラチンを作るだけでなくDNAの合成にも関わる
- 新しい細胞を作る
- 「体の成長」「免疫力の維持」「生殖機能の維持」など
【ここ大事】亜鉛はAGA単なる予防に過ぎない
解説いたします
亜鉛の働きを見ると、確かにAGA予防が期待できます。しかし、「亜鉛だけ意識していれば大丈夫」というわけではありません。
その理由として以下の3つが挙げられます。
- 髪の成長に必要な栄養素は亜鉛以外にもあるから
- 亜鉛の役割はあくまでも「髪を健康に保つ」ことだから
- 亜鉛の過剰摂取は、かえって逆効果だから
それぞれ詳しく見てみましょう。
①髪の成長に必要な栄養素は亜鉛以外にもある
亜鉛は、髪の成長に必要な栄養素の1つです。それは他にも必要な栄養素があるという意味で、亜鉛だけでは不十分ということです。
髪を作るには、たんぱく質と亜鉛が必要であると説明しました。しかし、ケラチンの生成にはこれら2つの栄養素だけあればOKというわけではありません。
ビタミンやアミノ酸などもケラチンに関係しています。
特に「ビオチン」は亜鉛と似た働きをするビタミンで、健康な髪を作るのに欠かせません。
このように、髪はさまざまな栄養素を必要としています。
「健康な髪を育てるには。バランスの取れた食事がベスト」とよくいわれていますが、まったくそのとおりであることがお分かりでしょう。
②亜鉛の役割はあくまでも「髪を健康に保つ」こと
亜鉛には、5αリダクターゼの活動を抑える働きがあります。そのためAGAの予防に役立つとされていますが、すでに発症してしまったAGAを改善することは期待できません。
抜け落ちてしまった髪の毛を増やすには、医学的な治療が必要です。
- 生え際が後退し始めた
- つむじが薄くなってきた
など、AGAと見られる症状が出ている場合は、できるだけ早くAGA専門クリニックなどで診察を受けましょう。
AGA専門クリニックでは、髪や頭皮の状態をチェックしAGAかどうか調べます。もしAGAと診断された場合は、飲み薬や塗り薬による投薬治療など、進行状況に応じた治療を受けることになるでしょう。
幸いにも、AGAは比較的薬が効きやすい脱毛症です。早期発見・早期治療に取り組むことで、抜け毛の状態を改善できる可能性がより高まります。
5αリダクターゼの活動が弱まることでAGAの進行も遅れる可能性があることを考えると、投薬治療と並行して亜鉛を摂ることを心がけた方がよいでしょう。
AGA治療を続けながら髪に良い食事を心がけることで、より高い育毛効果が期待できます。
③亜鉛の過剰摂取は、返って逆効果
体内に亜鉛を取り込みすぎると、銅の吸収が低下します。なぜなら、鉄を適切な場所に運ぶ役割を担う銅が欠乏すると鉄不足を引き起こし、貧血になる可能性が高まるからです。
貧血は頭皮の酸素不足を招き、抜け毛を増やします。薄毛が気になる場合は、貧血はぜひとも避けたいことです。
亜鉛は髪に良いからと、摂りすぎないように気をつけましょう。特に食べ物に加えてサプリメントを使用する人は、亜鉛の過剰摂取に注意が必要です。
亜鉛はさまざまな食品に入っているため、食べ合わせやバランスの良い食事を心がけていれば、サプリメントは必要ありません。
まとめ
亜鉛が髪の毛に与える育毛効果と摂取することのメリットについて説明しました。
当記事のポイントをまとめます。
- 亜鉛はケラチンを作る際に必要となる栄養素
- 亜鉛が足りないと髪が十分に成長できないおそれがある
- AGA予防には、亜鉛を含めたトータル的な栄養摂取が必要
亜鉛は髪にとって必要な栄養素ですが、摂りすぎたりAGAに良いからと期待しすぎたりしないよう気をつけましょう。
髪の毛を増やすというよりも、髪の健康をサポートしたり抜け毛を防いだりする役割と理解した方がよさそうです。
髪の健康に大切なのはバランスです。
具体的には
- 栄養のバランスに優れた食事を毎日とる
- 亜鉛によって得られるメリットとデメリットを理解し、摂りすぎない・少なすぎないよう気をつける
- 亜鉛だけでなくAGA治療も視野に入れた薄毛対策を検討する
ということです。
亜鉛を毎日の生活に賢く取り入れて、薄毛予防につなげましょう。