おはようございます。総合内科専門医の藤田です。
インターネットを見ると『青汁を飲めば下痢が治る。』という情報もあれば、『青汁を飲んだら下痢になった。』という人もいるので、みなさんの中には「青汁とおなかの調子の関係」が結局よくわからず、困っている方がいるのではないでしょうか?
そこでこのページでは「青汁と下痢の関係」について、正しい情報をわかりやすく解説します。
青汁を飲むと下痢になるのか?治るのか?については、結論からいいますと下痢になる原因も、治る原因も両方あるというのが答えになります。
ここでは、青汁摂取で下痢になる原因や、下痢にならないための青汁の摂取方法・選び方を解説しました。
何が原因でおなかの調子が変わるのかを正しく理解して「青汁を飲むべきか?」「どんな青汁を購入するか?」を判断できるようになれれば幸いです。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
青汁の摂取で下痢になる原因
こういった事例の公開、企業の対応からわかるように、青汁を飲んだら下痢になったという人がいるのは事実です。
青汁商品の成分をチェックしてみると、下痢の原因となる可能性がある栄養成分が含まれていることが分かります。
体質や食生活のあり方などとも関係しますが、基本的に以下の3つの栄養成分を摂取する、またはアレルギー物質を摂取すると下痢を引き起こす恐れがあります。順番に解説していきます。
オリゴ糖の過剰摂取
青汁にはオリゴ糖を配合している製品があります。オリゴ糖は、腸内環境を改善するためのプレバイオティクス※として注目されています。しかし、オリゴ糖は摂りすぎると下痢を起こすリスクがあるのです。
また、腸内細菌がオリゴ糖を栄養として使用すると、ガスが発生するケースがあります。一度に大量のオリゴ糖を摂取するとガスの発生量が多くなり、腸壁 (ちょうへき) が刺激されて下痢になる可能性があります。
ガスによっておなかが張ってしまうこともありますから、下痢以外にも気を付けたいところです。オリゴ糖が有効とされる摂取量は1日あたり2~10gです。
※プレバイオティクスとは
消化管上部で分解・吸収されない、大腸に共生する有益な細菌の選択的な栄養源となりそれらの増殖を促進する、大腸の腸内フローラ構成を健康的なバランスに改善し維持する、人の健康の増進維持に役立つ、の4つの条件を満たす食品成分のこと。
食物繊維の過剰摂取
青汁ではお馴染みの成分が食物繊維です。大麦若葉やケール、明日葉や桑の葉などに由来する食物繊維が多く含まれています。
また、水溶性食物繊維の難消化性デキストリンを配合している青汁もあり、1日に7gくらい食物繊維を摂取できる商品もあります。食物繊維はおなかの調子を整えるのに良いと言われていますが、過剰摂取すると逆に下痢の原因になることもあるので注意が必要です。
食物繊維の一部はオリゴ糖と同様に、腸内細菌によって分解されてガスが発生することがあり、腸壁への過剰な刺激によって下痢を引き起こすこともあります。
また、水溶性食物繊維(水に溶ける)の割合が多くなると便がやわらかく緩くなりがちです。水様便(いきまなくてもシャーっと出る液状の便のこと)が出ることもあるので、不溶性食物繊維 (水に溶けない)とのバランスを整えるのが大切です。
一般的には水溶性食物繊維:不溶性食物繊維の比率が1:2が良いとされています。
マグネシウムの耐用上限量に注意
ダイエットや便秘などに効果がある「にがり」(主成分は塩化マグネシウム)やサプリメントなど、通常の食事以外でマグネシウムを過剰に摂取すると、下痢を起こすことがあります。
日本人の食事摂取基準(2020年版)※3 ではマグネシウムの耐用上限量(過剰摂取による健康障害を未然に防ぐ量。)は設定されていませんが、マグネシウムは大量に摂取することで下痢や軟便を起こすリスクがあります。
そのため、厚生労働省では通常の食品以外からのマグネシウム摂取について、成人については1日350mg、小児については1日5 mg/kg(体重)と定めています。10kg体重がある子供ですと1日に10mgということになります。
一般的な青汁をみてみると、1日量で数mg~30mg程度のマグネシウムが含まれています。(製品によっては一部例外があり、例えば「緑黄色野菜のすごーい青汁(クオール)」には1日3包分に108mgのマグネシウムが含有されています。)
体重が30kgの小児なら120mg/日が通常の食事以外からの耐容上限量です。飲みすぎたり、他にもサプリメントなどで摂取したりすると、下痢を起こす恐れがあるので気をつけましょう。
食物アレルギー
青汁に含まれている原材料・栄養素にアレルギーがある場合には下痢を引き起こす可能性があります。
アレルギー症状はかゆみや発疹、目の充血やくしゃみなどがよく知られていますが、下痢や吐き気などの消化器症状も起こることがあります。※2
他にも呼吸が苦しくなる、むくみが生じるなどの症状もあるので、体調に良くない変化があったときには摂取をやめ、ただちに医師に相談するようにしましょう。
青汁に含まれている栄養素とアレルギーついてはこちらのページで詳しくまとめています。
【補足】好転反応について
『下痢は青汁を飲んだときに起こる好転反応だから気にする必要はない。』という情報を目にしたことがある方もいらっしゃるでしょう。
好転反応とは、健康食品の摂取などによって体内環境が大きく変化した際に、その変化に身体が追い付いていけないために起こる体調の悪化のことを言います。
この変化については「毒素が抜けている時期」や「好転反応が出るのは効果がある証拠」ということなので、継続して摂取すべきだということを発信している方もいます。しかし、好転反応には科学的根拠はありません。※4
好転反応を信じて摂取を続けて体を壊さないようにしましょう。体調が悪くなったときには使用を中止し、直ちに医療機関に相談してください。
青汁で下痢が治ることもある?
逆に青汁の摂取によって下痢が治る場合についても解説します。いつも下痢をしやすくて悩んでいた人が青汁を飲む習慣を作ることで、あまり下痢をしなくなる可能性はあります。
下痢の主な原因は感染症
下痢は細菌やウイルス、寄生虫などによる感染が主な原因で起こります。過敏性腸症候群や薬剤性の下痢も知られていますが、食中毒で下痢になるケースは重症化しやすいので注意が必要です。※5
近年では過敏性腸症候群による下痢も多くなっています。ストレスや暴飲暴食、不規則な生活などが原因で起こるのが特徴です。日常的に下痢になりやすくて悩んでいる場合には過敏性腸症候群を疑って下さい。※6
腸内環境の改善によって感染症を予防できる
腸内環境を整えて善玉菌を増やすことが有効な下痢の予防法として挙げられます。※7
乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は、腸内で乳酸や酢酸を作る性質があります。酸を産生することで腸内を酸性にし、食中毒菌や病原菌の生育を抑えることが可能です。
また、腸の機能を低下させる有害物質を作る悪玉菌の増殖も抑えられます。腸はヒトの免疫にも大きな寄与をしているので、感染予防に良いと考えられるのです。
加えて、前述した食物繊維やオリゴ糖は善玉菌の栄養源になるプレバイオティクスです。これらを含む青汁を意識的に選ぶのも手です。
青汁で逆に便秘になるケースも
青汁は下痢との関係があるだけではなく、おなかの調子全般に影響があります。青汁を飲んだら便秘になる場合もあるので注意しましょう。
青汁に含まれている食物繊維は便の「かさ」や「やわらかさ」を増やすことができます。しかし、大量に摂取すると便が肥大化して腸管を通りづらくなるでしょう。
水分が不足していると食物繊維を摂っても便が硬くなってしまい、腸の中に便が残ってしまいがちです。
青汁を飲むときには目安量を守り、食物繊維の摂取量を適切な範囲に保ちましょう。18~64歳の方では男性なら21g以上、女性なら18g以上が目標値です。
上限値が定められているわけではありませんが、この数値を目安にして食物繊維を摂りすぎないことも意識しましょう。
緑色の便が出るのは普通?
青汁を飲んだときに不安になる便の変化は下痢だけではありません。青汁を飲んだら便が緑色になったという人もいます。青汁の摂取によって緑色が出るのは問題ないことなのでしょうか。
青汁で緑色の便になる理由
上記で紹介した山本漢方のHPでの回答もそうですが、青汁を飲むと便が緑色になる理由としては、クロロフィル※を多く含む野菜がたくさん使用されているからです。
※クロロフィルとは
光合成の明反応で光エネルギーを吸収する役割をもつ化学物質。葉緑素ともいう。
また、公益社団法人新潟県薬剤師会では緑色の便が出る理由について以下の3つを挙げています。※8
- 緑黄色野菜を食べ過ぎ
- ビタミン剤を飲み過ぎ
- 緑色の胃腸薬を飲み過ぎ
これらに共通しているのはクロロフィルを大量に摂取していることです。
医薬品の成分としてもクロロフィルを含有する銅クロロフィンナトリウムが用いられていて、以下のように成分に関連する注意があります。
本剤の服用により便が緑色になることがありますが、配合されている銅クロロフィリンナトリウム(緑色)によるものであり、心配ありません。
引用:ミロンM|くすりの丹霞堂第一支店
クロロフィルは緑色をしているので、吸収できずに便と一緒に排泄される分が多いと緑色に着色します。
安全性に問題があるわけではないので健康上の点では心配する必要はありません。
青汁で下痢にならないための青汁の摂取方法・選び方【ケース別】
以上の点を踏まえて、ここでは青汁を飲んで下痢にならないための飲み方や選び方のポイントを解説します。安全に飲めるように、ぜひ該当する方は一読してから青汁を検討してください。
もともと下痢になりやすい人
普段から下痢に悩まされている人は青汁を飲むと腸の刺激によって下痢を起こす可能性があります。そういった方は一度に全て飲まないで、1杯の青汁を数回に分けて飲んでみて経過を観察しましょう。
また、下痢が習慣化している場合には過敏性腸症候群※の可能性があります。青汁を飲むだけでは改善しないこともあるので、医師にも相談して食生活の改善の一環として青汁を取り入れるのが適切です。
※過敏性腸症候群とは
精神的ストレスや自律神経失調などが原因で腸が刺激に対して過敏な状態になり便通の異常を起こす病気のことです。通常の検査などでは腸に異常が認められないにも関わらず、慢性的におなかの膨張感や腹痛を感じるるという特徴があります。
子ども
子どもが青汁を飲む場合には少しずつ慣らしていくのが大切です。幼いうちは腸の機能が未熟なので、食物繊維やマグネシウムが過剰摂取になって下痢や便秘を引き起こす恐れがあります。
一般的な青汁は成人向きの目安量なので、小さな体格の子どもにとっては多すぎることもあるでしょう。一口か二口くらいから始めるとよいでしょう。
また、1歳未満の乳児に青汁を飲ませたい場合にははちみつを使用していないものを選びましょう。1歳未満の場合にははちみつの摂取による乳児ボツリヌス症になるリスクがあるからです。※7
一般的な青汁でなければ子供向けの青汁もあります。
子供向けに1杯の分量を少なくしたり味や成分調整をしていて、子供の身体に負担がかからないように開発されています。
妊婦さん
妊婦さんが青汁を飲んで下痢になってしまうことは避けたいです。下痢を起こしてしまうと、胎児を育て母体を維持するためにも欠かせないビタミンやミネラル、アミノ酸などが流出してしまうからです。
どうしても飲みたい場合は、母子ともに元気でいるためにも、栄養不足にならないように少しずつ飲んでおなかの調子が悪くならないかどうかを見極めながら摂取してください。
そしてもし下痢や便秘になってしまったら、すぐにかかりつけの産婦人科に相談しましょう。
妊娠中に必要なカルシウム、鉄分、葉酸を多く含むものにすると、妊娠中の栄養補給の補助として役に立ちます。
詳しくは以下のページを参考にしてみて下さい。