ブリーチを行うと髪色を大きく変えられますが、頭皮や毛髪へのダメージが気になりませんか。髪が抜け始めたり、生え際が後退してきたように感じて不安を抱える方は多いようです。
このような悩みは「ブリーチで髪がはげるのではないか」「ブリーチによる抜け毛が増えてしまったのではないか」という疑問にもつながります。
ここでは、ブリーチによって生じる頭皮トラブルの実態や原因を解説し、抜け毛やはげが気になる方に向けた予防策と、もしトラブルが起きた場合の対処法を詳しく紹介します。
ブリーチで起こる髪と頭皮へのダメージの仕組み
ブリーチは髪の内部にある色素を分解し、大幅な色の変化をもたらす技術です。髪の色素を分解する過程で髪が持つ構造に負担がかかり、キューティクルや髪内部のたんぱく質が損なわれる可能性があります。
さらに、頭皮にも刺激が及ぶことがあり、炎症やかゆみ、抜け毛のリスクを高める要因になることがあります。
ブリーチの基本的な作用
ブリーチには過酸化水素などの薬剤が含まれており、これが髪内部のメラニン色素を酸化・分解します。色素を分解する作用は強力であり、髪色を明るくする一方で髪内部のたんぱく質組織にもダメージを与えます。
薬剤を浸透させる際にキューティクルが開きやすくなり、たんぱく質や水分が流出しやすい状態になることも特徴です。
頭皮への刺激の原因
ブリーチ剤はアルカリ性が強いため、頭皮に直接触れると皮膚を刺激するリスクがあります。ブリーチ中や直後の頭皮のヒリヒリ感や、使用後にかゆみ・炎症を起こすケースは少なくありません。
頭皮環境が悪化すると毛根にも悪影響を及ぼすため、抜け毛につながるおそれがあります。
頭皮のバリア機能低下
頭皮には皮脂膜や角質層があり、外部刺激から頭皮や毛根を守る役割を果たします。ブリーチによる強いアルカリ剤が接触することで、頭皮のバリア機能が低下しやすくなります。
バリア機能が弱まると雑菌が繁殖しやすくなるだけでなく、頭皮内部が乾燥状態になり、炎症などの肌トラブルを引き起こす可能性が高まります。
ブリーチを過度に繰り返した場合のリスク
ブリーチを繰り返し行うと、髪と頭皮のダメージが蓄積するケースがみられます。過度にブリーチをすると髪内部のたんぱく質が不足し、切れ毛や枝毛が増えるだけでなく、頭皮環境が大きく乱れるおそれもあります。
特に頭皮が弱い方や敏感肌の方は負担が大きくなりやすく、抜け毛や髪がはげるように見える状況を招く場合があります。
ブリーチによる抜け毛と頭皮への影響
ブリーチ剤を使用すると髪の構造だけでなく、頭皮にもダメージが及ぶ可能性があります。頭皮環境が乱れると、抜け毛が増えたり、はげが進行したように感じたりする原因になるかもしれません。
髪と頭皮の両方の視点から、どのような影響が起こるのか見ていきましょう。
頭皮が受けるダメージが抜け毛を促進する理由
頭皮は毛根を保護する皮膚です。アルカリ性のブリーチ剤が浸透すると角質層が傷つき、炎症を起こしやすくなる可能性があります。炎症が続くと血行が悪くなり、毛根への栄養供給も滞りがちです。
結果的に抜け毛が増えたり、髪が細くなっていったりすることにつながります。
毛根のダメージと成長サイクルの乱れ
毛髪は成長期・退行期・休止期のサイクルを繰り返しながら伸びていきます。ブリーチ剤で頭皮や毛母細胞が刺激を受けると、通常の成長周期が乱れてしまうおそれがあります。
成長期が短くなると十分に太く長く成長する前に抜け落ちることになり、抜け毛が増えたように感じるかもしれません。
ブリーチ後の頭皮トラブルがもたらす悪循環
頭皮のトラブルはかゆみや乾燥、フケの発生などを引き起こす場合があります。かゆみを感じると強くかいてしまい、余計に頭皮にダメージを与えてしまう負の連鎖に陥ることがあります。
頭皮の環境が悪化すると抜け毛が増えやすくなるだけでなく、髪のツヤやハリも失われがちです。
ブリーチとAGA(男性型脱毛症)の関連
ブリーチによる抜け毛や頭皮ダメージが表面化すると、AGA(男性型脱毛症)での抜け毛の進行と混同しやすくなる可能性があります。本来、AGAは男性ホルモンや遺伝的要因、年齢などが関わる脱毛の状態です。
しかし、ブリーチによる頭皮ダメージが加わることで、既にAGAが進行している方の症状が目立ちやすくなる場合があります。
はげると感じる原因
ブリーチ後に「髪がはげるように感じる」と不安を持つ方は少なくありません。実際にはブリーチによる一時的な抜け毛増加や、髪のボリュームダウンが原因でそう感じることも多いです。
ここでは、そのような感覚を抱きやすい原因について解説します。
髪の切れ毛・断毛によるボリュームダウン
ブリーチは髪内部のたんぱく質を破壊するため、切れ毛や枝毛などの物理的ダメージが目立ちます。髪が途中で切れてしまうと全体のボリュームが減ったように見え、「はげたように感じる」状態を招きやすくなります。
抜け毛と違い、髪が完全に根本から抜けているわけではない場合でも、見た目の変化に大きく影響します。
頭皮が見えやすくなることでの錯覚
髪が細くなったりボリュームが低下すると、頭皮が透けて見えやすくなります。特にブリーチにより髪色が明るくなると、黒髪のときよりも頭皮の透け具合が強調されることがあります。
そのため、実際には髪が抜けているわけではなくても、頭皮が目立つことで「はげた」と錯覚しやすいです。
物理的な刺激による抜け毛の増加
ブリーチ後は髪が傷つき、頭皮も過敏になっています。その状態でブラッシングやドライヤーの熱を強く当ててしまうと、物理的な刺激で髪が抜けやすくなる場合があります。
髪を洗う際にも力任せに洗うと抜け毛が増えたと感じる原因になりやすいため、ケアの方法に注意が必要です。
AGAとの混合
前述のとおり、ブリーチによるダメージがきっかけで、元々AGAが潜在的に進んでいた方の症状が急に目立つ状況になることがあります。
ブリーチを機に抜け毛が増えたと思っていても、実際はホルモンや遺伝的要因による男性型脱毛症が進行している可能性も考えられます。
予防するためのケア方法
ブリーチがもたらす髪と頭皮へのダメージを最小限に抑えるためには、正しい知識とケア方法を実践することが重要です。
特に抜け毛や頭皮トラブルを防ぎたい方は、日常のケアやサロンでの施術に注意を払う必要があります。
施術時の注意点
ブリーチを行う際は、頭皮に薬剤が過度に付着しないように施術者が配慮することが大切です。薬剤を塗布する前に頭皮を保護するオイルやクリームを使用すると、頭皮への直接的な刺激を減らせます。
また、施術中に強い痛みやヒリヒリ感を感じたら、早めに担当者に伝えて薬剤を洗い流してもらいましょう。
アフターケアの重要性
ブリーチ後の髪は水分やたんぱく質が不足し、非常にデリケートな状態です。ヘアマスクや集中トリートメントなどで保湿と栄養補給を行い、傷んだ髪内部をケアすることが大切です。
頭皮が刺激を受けている場合は、頭皮用のローションやエッセンスを使って保護するのも良い方法です。
洗髪時のポイント
強く洗いすぎると頭皮に摩擦が加わり、炎症を悪化させたり抜け毛を助長したりすることがあります。指の腹を使って優しくマッサージするように洗い、十分に洗い流すことが望ましいです。
熱すぎるお湯も頭皮の皮脂を過度に取り除き、乾燥やかゆみにつながるため、ぬるま湯を使いましょう。
日常生活での髪と頭皮の保護
紫外線や乾燥といった外部要因も髪と頭皮を傷めます。帽子や日傘を使用するなど、日常生活の中で頭皮を保護する工夫をするのも抜け毛対策につながります。
バランスの良い食事や十分な睡眠も髪や頭皮の健康には欠かせません。
ブリーチ後の頭皮トラブルへの対処法
ブリーチによる頭皮トラブルが発生した場合、早めにケアを行うことが大切です。症状を放置すると抜け毛や炎症が長引き、はげが進行したように感じる場合があるかもしれません。
少しのトラブルと思っても、長引くようであれば専門家へ相談するのが望ましいです。
頭皮がかゆい・赤い場合
ブリーチ直後に頭皮のかゆみや赤みを感じる場合、まずは刺激の少ないシャンプーや頭皮用化粧水などを使って洗浄・保湿を行いましょう。
なるべくこすらず、頭皮を優しくケアすることで症状の悪化を防ぎやすくなります。かゆみが強い場合は医療機関や皮膚科で相談し、適切な外用薬を処方してもらうと安心です。
フケが大量に出る場合
頭皮の乾燥や炎症が進んでフケが増加することがあります。フケが大量に出る際は頭皮環境が乱れているサインです。保湿効果のあるシャンプーやローションを活用し、刺激を最小限にとどめることが重要です。
フケには脂性タイプと乾燥タイプがあるため、自分の状態を把握してケアを行うと改善に近づきます。
頭皮湿疹やかぶれが出た場合
頭皮湿疹やかぶれの症状が強い場合は、市販薬だけでは改善が難しいことがあります。薬剤に対するアレルギー反応の可能性も考えられるため、皮膚科を受診して専門的な治療を受けたほうが安心です。
ブリーチが原因であれば施術を中断または期間をあけるなどの対策を検討する必要があります。
抜け毛が急増した場合
ブリーチ直後に抜け毛が急増したと感じる場合は、頭皮環境の悪化に加えて髪そのものがダメージを受けて切れ毛が増えている可能性もあります。
毛根が弱っていると感じたら、育毛剤や頭皮ケア製品で毛根に栄養を補給しつつ、ヘアサイクルを整える習慣づくりを行うと良いです。
症状が改善しない場合はAGA専門クリニックの医師に相談し、必要に応じた検査や治療を進める選択肢があります。
AGAとの関連と治療の可能性
ブリーチによる頭皮や毛髪のダメージが抜け毛を目立たせる一方で、AGA(男性型脱毛症)が背後に潜んでいる可能性を見落とせません。
ブリーチが直接AGAを引き起こすわけではありませんが、既に進行し始めているAGAが外部からの刺激によって進行しやすくなる例も考えられます。
適切な治療を行えば進行を抑える余地がありますので、自分の抜け毛の原因を見極めることが大切です。
AGAのメカニズム
AGAは男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)が毛根に作用することで、毛髪の成長期が短くなり徐々に髪が細くなっていく状態です。
遺伝的要素の強さや生活習慣なども関わるため、ブリーチの有無にかかわらず進行することがあります。
ブリーチでAGAが進む可能性
ブリーチがAGAを直接発症させることはありません。ただし、ブリーチによる頭皮のダメージで血行が悪化したり、頭皮に炎症が起きたりすると、髪全体の成長環境が悪くなります。
その結果、既にAGAの傾向がある方は症状が進んだように感じる可能性があります。場合によっては抜け毛の量が一時的に増えて、急激に症状が表面化したと認識する方もいます。
早めの治療が望ましい理由
AGAは進行性の脱毛症です。ブリーチが原因で気づいた抜け毛が、実はAGAによるものだったというケースもあります。
抜け毛が気になり始めたら、自己判断で済ませずに専門医による診察を受けることを検討すると安心です。AGAは治療薬やメソセラピーなどで進行を抑えたり、発毛を促したりできる可能性があります。
AGA専門クリニックでの相談メリット
美容院や一般病院よりも、髪と頭皮に特化した知識を持つAGA専門クリニックであれば、ブリーチでダメージを受けた髪へのアドバイスや、AGAの進行度合いに応じた治療を提案できます。
血液検査やマイクロスコープで毛根の状態をチェックし、脱毛の原因を正確に把握できる点も利点です。
クリニックで受けられるアドバイス
ブリーチ後の抜け毛や頭皮トラブルがなかなか改善しないときは、早めにクリニックを訪れると解決の糸口が見つかるかもしれません。
頭皮の状態を専門的に診断できる医療機関では、個々の状況に応じて適切な治療や予防策を提案します。
AGA専門医や皮膚科医の診察
ブリーチによる単なる刺激なのか、AGAの進行なのか、またはその他の原因なのかを正確に見極めるには専門医の診察が有効です。
視診や問診、マイクロスコープを用いた頭皮チェックなどを通じて、抜け毛の状態や頭皮の炎症度合いを評価することができます。
適切なヘアケア製品の紹介
専門クリニックでは、ブリーチで傷んだ髪や頭皮にも配慮したシャンプーやトリートメント、育毛剤などを提案する場合があります。
医療機関で扱う製品には一般市販品では得られない有用成分が含まれているケースもあるため、より集中的なケアができる可能性があります。
日常習慣の見直しサポート
頭皮や髪の健康には生活習慣が深く関わります。睡眠や食事、喫煙やストレスなどを見直すことで髪の成長を促す土台が整いやすくなります。
クリニックでは、こうした習慣改善のサポートやアドバイスを受けられることがあり、総合的なケアが可能です。
AGA以外の脱毛症への対応
脱毛症には円形脱毛症や粃糠(ひこう)性脱毛症、脂漏性脱毛症など複数の種類があります。ブリーチによる頭皮トラブルがきっかけで、他のタイプの脱毛症が判明する場合もあります。
専門機関であれば、必要に応じて皮膚科的な治療も組み合わせるなど、多角的なアプローチが可能です。
よくある質問
抜け毛や頭皮に関する悩みは個々によって異なります。ブリーチとの関係や専門的な治療について、多く寄せられる疑問をまとめました。
- ブリーチによるダメージはどのくらいで回復しますか?
-
ブリーチによるダメージ具合や個人の頭皮状態、ヘアケアのやり方によって回復期間は変わります。一般的には3カ月~半年ほどかけて髪や頭皮の状態が少しずつ改善すると考えられます。
ダメージが深刻な場合は、より長い時間と集中ケアが必要です。
- ブリーチは一度だけならはげる心配はありませんか?
-
1回のブリーチでも頭皮や髪に与える刺激はあります。ただし、毎回適切な処置をして保湿や補修を行えば、抜け毛やはげが顕著になるリスクを最小限に抑えることができます。
頭皮に赤みや違和感を覚える場合は、次回は慎重に施術したほうが安全です。
- ブリーチで抜け毛が急激に増えたときはどうすればいいですか?
-
急激な抜け毛増加を感じた場合、まずは刺激が少ないヘアケア製品に切り替え、頭皮をいたわる方法を徹底しましょう。
炎症が治まらなかったり、抜け毛が減らない場合は、皮膚科やAGA専門クリニックで相談すると原因が特定しやすくなります。
- AGA専門クリニックで相談するときにブリーチ歴を伝える必要がありますか?
-
頭皮や毛髪の状態を正確に把握するために、ブリーチ歴やヘアダイ歴などは必ず伝えることをおすすめします。
施術期間や使用薬剤の種類などを医師が把握すると、より適切な診断や治療方針の提案が可能です。
以上
参考文献
TRÜEB, R. M. The impact of oxidative stress on hair. International journal of cosmetic science, 2015, 37: 25-30.
YADAV, Mahipat S.; KUSHWAHA, Neeti; MAURYA, Neelesh K. The Influence of Diet, Lifestyle, and Environmental Factors on Premature Hair Greying: An Evidence-Based Approach. Archives of Clinical and Experimental Pathology, 2025, 4.1.
RAMKAR, Shweta, et al. Oxidative stress: Insights into the Pathogenesis and Treatment of Alopecia. Journal of Ravishankar University, 2022, 35.2: 44-61.
DASHI, Diana. Development of new products for hair coloring and hair bleaching. 2021.
CEDIRIAN, Stephano, et al. The exposome impact on hair health: etiology, pathogenesis and clinical features‒Part I. Anais Brasileiros de Dermatologia, 2024.
PEREIRA-SILVA, Miguel, et al. Nanomaterials in hair care and treatment. Acta Biomaterialia, 2022, 142: 14-35.
TRÜEB, Ralph; HOFFMANN, Rolf. Aging of hair. In: Textbook of Men’s Health and Aging. CRC Press, 2007. p. 715-728.