円形脱毛症の初期症状とは?特徴や改善方法について

AGAでお悩みの方
先生、薄毛にも色々と種類があるって聞いたんですけど、円形脱毛症っていうのも薄毛に入るんでしょうか?
院長 藤田
円形脱毛症は、脱毛を伴うという意味では薄毛と言っても差し障りないのかもしれないですね。ただ症状の出方やメカニズムが一般的な薄毛とは少し異なるので、同じものとも言いにくいかもしれません。

この記事の執筆者

内科総合クリニック人形町 院長 藤田 英理(総合内科専門医)

藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長

東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。

所属:日本内科学会日本動脈硬化学会日本頭痛学会

医師略歴・プロフィールはこちら

目次

円形脱毛症とは

AGAでお悩みの方
薄毛にも色々種類があるんですね。
院長 藤田
では、今回は円形脱毛症について解説します。

円形脱毛症は、後天的に円形の脱毛を生じる疾患です。重症例では増悪と軽快を繰り返しながら脱毛部分が拡大することも多くあります。医療機関の皮膚科を受診する原因となる脱毛疾患として最も頻度が高い疾患でもあります。

20〜30代の若年者に多く見られることが特徴で、男女で発症率には大きな差はありません。

外見上の印象を大きく左右することから、患者さんの悩みは深く、生活の質(QOL)にも大きく影響します。

一般的に脱毛前の前兆や自覚症状はないことが多いのですが、脱毛前や脱毛が起こる時期に軽い掻痒感や違和感を感じることがあります。

また、皮膚に淡い紅斑が出現したり、爪に小さな凸凹ができたりする症状が出現することもあります。

円形脱毛症では脱毛班の数や範囲から単発型や多発型、前頭型、蛇行型といった型に分類されます。

診断は脱毛までの病歴や脱毛の状況を確認します。また、ダーモスコピーと呼ばれる拡大鏡で脱毛部の皮膚を観察することで診断を行います。

円形脱毛症の原因は?

AGAでお悩みの方
よくある脱毛、例えばAGAのようなものとは違う概念の疾患なのでしょうか?
院長 藤田
そうですね。円形脱毛症にはいくつか考えられる原因がありますのでそれについて見ていきましょう。

円形脱毛症については古くから様々な研究が行われているのですが、明確な理由についてはまだ明らかになっていません。

ただし最近は技術が発展したことにより、遺伝子研究なども進んでおり、円形脱毛症に関連する遺伝子が発見されるなど、研究が進んでいる部分もあります。

現状で考えられている原因としては遺伝、自己免疫、ストレスなどが挙げられています。一つ一つ見ていきましょう。

遺伝

円形脱毛症の方のおよそ8%に、血縁者に円形脱毛症の方がいるというデータがあります。また円形脱毛症の方が1親等にいる場合には円形脱毛症のリスクは10倍になるといわれています。

ただし円形脱毛症の発症は遺伝で全て決まると言うわけではないため、家族に円形脱毛症の方がいるからと言って必ず発症するというものではありません。家族に円形脱毛症の方がいたとしても、それだけで心配する必要はないでしょう。

また最新の研究で、円形脱毛症の遺伝子の解析が進んでいます。2020年に順天堂大学と東海大学が共同で研究を行い、円形脱毛症の原因遺伝子の一つであるCCHCR1を世界で初めて同定しました。

この遺伝子を導入することで、マウスで円形脱毛症の類似症状の再現に成功しています。

この実験からCCHCR1が円形脱毛症に関連することが証明されています。

これまで一つも同定されていなかった円形脱毛症のリスクとなる遺伝子を見つけ出したことは非常に画期的なことといえます。更なる研究が行われることで、円形脱毛症の発症のメカニズムが解明され、診断法や治療法の開発が進んでいくことが期待されています。

自己免疫疾患

円形脱毛症の原因として有力視されている原因として自己免疫があります。

本来は自分の体を守り、外から入ってきた異物を攻撃する免疫細胞が、誤って自分の体を攻撃してしまうことを自己免疫といいます。この自己免疫が髪の毛に対して起こり、免疫細胞が髪の毛を攻撃して脱毛が生じるのです。

自己免疫疾患に属する疾患(膠原病や甲状腺疾患、重症筋無力症)を併発する場合もあります。

円形脱毛症は自己免疫疾患の症状の一つである可能性もあり、円形脱毛症に発熱や関節炎などを伴い改善しない場合には早期に医療機関を受診する必要があります。

ストレス

多くの方が円形脱毛症の原因として考えるストレスですが、直接的な原因というよりも他の原因による円形脱毛症をより進めるような要因の一つといった立ち位置になります。

円形脱毛症に限らずストレスは様々な疾患の原因となります。ストレスが強くかかった状況に長く晒されると自律神経のバランスが崩れます。

ストレス下では自律神経のうち交感神経が活発に活動します。

交感神経は血管を収縮させ血圧を上げる働きがあるため、交感神経の活動により血管が収縮している状態が続くと頭皮の血流が悪くなります。それにより髪の毛の成長が遅れたり抜けてしまったりということが起こります。

さらにストレスが溜まることでホルモンバランスの崩れなどにより全身状態が悪化すると、それも髪の毛に対しては悪影響を及ぼします。

ストレスは円形脱毛症以外の脱毛も助長しますので、ストレスを溜めないように生活習慣を改めることが重要です。

円形脱毛症の治療とは?

AGAでお悩みの方
円形脱毛症ってストレスだけで起こるものではないんですね。てっきりストレスがたまると起こるものかと思っていました。
院長 藤田
そうなんです。ストレスももちろん関係はしているのですが、それだけではないので、円形脱毛症に気付いたときには自分だけで治そうとするのではなく、ちゃんと治療ができる医師の診断や治療を受けることをおすすめします。
AGAでお悩みの方
円形脱毛症って病院で治療することもあるんですよね?どんな治療を行うんでしょうか?
院長 藤田
では、円形脱毛症にはどのような治療があるのかを解説していきますね。

円形脱毛症の治療には補助的なものとしてストレスの解消や頭皮の環境の改善があります。

日本皮膚科学会円形脱毛症ガイドラインに記載のある治療のうち、推奨度が「行うように勧める」と定られれている治療には局所免疫療法、ステロイドによる治療があります。

さらに発毛治療としてミノキシジルを用いた治療が行われることがあります。一つずつ見ていきましょう。

ストレスに対する対応

ストレスは円形脱毛症だけでなく様々な疾患の促進因子となります。

前述の通りストレスが溜まっている状態であると交感神経が活発に働き血流が低下していきます。自分の生活を見直して睡眠時間をしっかり取ったり、ストレスにななりそうなものをなくすことが重要です。

頭皮の環境の改善

頭皮は汗や皮脂が多く分泌されているのでこれらが毛穴に詰まってしまう可能性も高くなっています。

そのため頭皮の環境が悪化すると毛髪に悪影響を及ぼすことが考えられます。

円形脱毛症以外の薄毛にも頭皮の環境は深く結びついており、AGA患者の頭皮を調べると、頭皮に粘度の高い皮脂成分であるトリグリセリドが多いということもわかっています。

AGA自体は男性ホルモンが関係しているので直接皮脂が脱毛を起こしているわけではなさそうですが、それでもAGAの発症率を上げる因子となっています。円形脱毛症でも頭皮の環境は密接に関わっている可能性が高いと思われます。

皮疹がたまらないように正しい頭皮ケアを実施しましょう。また脂質を多く含む食事をしていると頭皮からの皮脂の分泌が増加するので頭皮の環境が悪化します。食生活の見直しも重要です。

局所免疫療法

円形脱毛症を起こしている部分の頭皮にあえて皮膚をかぶれさせる薬剤を塗ります。

かぶれとはつまり炎症のことです。炎症は正常な免疫反応によって起こる反応です。間違って自分の毛髪を攻撃している免疫の細胞に正しい攻撃対象をあたえて、正常な免疫反応を起こさせるのがこの治療の目的です。

注意するべきなのは、かぶれをあえて起こす治療なので、アトピー性皮膚炎や皮膚の湿疹をおこす病気をお持ちの方に行うと、もともとの皮膚疾患が悪化してしまうことがあるということです。

医師に相談して病歴などを確認しながら慎重に行いましょう。保険適応外の治療ですのでその辺りも十分に医師と相談して治療を行いましょう。

ステロイド治療

ステロイドには免疫反応を抑制し炎症を抑える作用があります。この作用で自己免疫である円形脱毛症を改善させる目的で行われる治療です。

ステロイドの投与方法には塗り薬などの外用薬、飲み薬である内服薬、頭皮に直接注射する局所注射といったものがあります。局所注射療法は効果が期待できる反面、広い範囲の円形脱毛症には向かなかったり、痛みをともなったりといった特徴もあります。外用薬は狭い範囲で発症から発症から期間があまり経っていない場合に使われます。

脱毛症を治療できる医師や皮膚科医に相談しながら治療を行なっていく必要があります。

ミノキシジル外用

髪の毛を作り出す細胞、毛母細胞を活性化させる成分である、ミノキシジルを用いた治療です。

一般的な薄毛やAGAなどでも用いられる成分で。発毛効果が認められている唯一の成分でもあります。薬局でもミノキシジルを含む薬剤は購入できますが、副作用がないわけではないため知識を持つ医師と相談して有効な治療を組み合わせましょう。

これらの治療以外にもガイドラインに記載されている治療法はあります。自分にどんな治療が適応できて、どんな治療が合っているのかをしっかりと見定めることのできる医師と相談して治療を進めていきましょう。

まとめ

今回は円形脱毛症について解説をしていきました。ストレスで起こると思われがちな円形脱毛症ですが、自己免疫が関係している疾患の一つです。

できてしまうと人知れずに悩む人もおおいのですが、治療に精通した医師に相談することで悩みが解決されることがあるので、是非受診を検討してくださいい。

特に発症早期であればあるほどその効果は出やすいということがわかっています。症状がひどくならないように早めの対応を行うことが円形脱毛症の悩みから解放されるために最も重要なことの一つだと言えるのです。

参考文献
  • 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
  • 【EBioMedicine】Alopecia areata susceptibility variant in MHC region impacts expressions of genes contributing to hair keratinization and is involved in hair loss
  • Scalp Microbiome and Sebum Composition in Japanese Male Individuals with and without Androgenetic Alopecia
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