- カルプロニウムは医薬品として開発された成分
- カルプロニウムの働きは血管拡張作用、発毛促進作用、持続作用とされている
- カルプロニウムは臨床試験でも効果があると報告されており、使用を考慮しても良いと考えられている
- カルプロニウムは安全性が高いと考えられている
最近髪が薄くなってきて、まだ若いのに心配です。髪の毛薄いのは本当に困るし、友達にも相談がしづらいです。
最近、先生が出す薬と同じ成分であるカルプロニウムが入っている市販薬があるということを聞きました。
カルプロニウムの市販薬ってどうなのですか?
この男性のように、インターネット上には様々な情報が溢れ、困惑している方も多いと思います。
そこで今回は、院長の藤田先生に、カルプロニウムへの期待や働き方について解説してもらいます。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
カルプロニウムの効果と働き方
- カルプロニウムは血管拡張作用をもつ
- カルプロニウムは発毛促進作用をもつ
- カルプロニウムには持続作用がある
カルプロニウムは医療用医薬品として開発が行われた
カルプロニウムは製薬メーカーである第一三共が開発した成分です。
カルプロニウムは医療用と市販薬が同時に開発されました。医療用はフロジン液という名称で、市販用はカロヤンという名称で発売がなされております。
医療用のフロジン液は1969年に発売がされ、半世紀以上も使用されている医薬品となっています。医療用に遅れること4年、カロヤンが発売されています。
脱毛の原因は様々で、主に4つの説がある
脱毛の原因は様々な説が言われています。血液循環不良説、頭皮緊張説、脂漏説、男性ホルモン説がその4つです。
血液循環不良説は、髪の毛は血管からの栄養で作られるという説です。血流が悪くなると、髪の毛は成長が鈍り、抜けやすくなってしまいます。
頭皮緊張説は、骨の発達や成長により、頭皮がつっぱることで頭皮の血管が圧迫され、血流が悪くなるという説です。血流が悪くなることで、髪の毛が作られにくくなってしまいます。
脂漏説は、皮脂が異常に多く分泌されると毛穴を詰まらせたり、皮膚が炎症を起こしたりして、髪の毛の成長を阻害するという説です。
男性ホルモン説は、男性ホルモンが毛母細胞のタンパク質を合成する酵素の働きを抑えてしまうという説です。特に男性ホルモンの影響を受けやすい人に多く見られます。
カルプロニウムは血管拡張作用がある
ウサギを用いた動物実験で、局所血管拡張作用が検討されています。
血管拡張作用がされているアセチルコリンと比較して、10倍の血管拡張作用が認められています。
また、人間での作用も検討されています。
指尖脈波検査という指先の血管における拡張で検討が行われています。カルプロニウムは、ヒトの指尖脈波の振幅を増大することが認められ、アセチルコリン塗布よりも強い皮膚血管拡張作用を示したとされています。
これらの結果、カルプロニウムは血管拡張作用があると考えられています。
カルプロニウムは発毛促進作用をもつ
毛髪は、成長→休止→脱毛→発生を繰り返しており、正常な人では、成長期の髪が全体の85-90%とされています。脱毛した後にも新しい毛が生えてきますので、常に一定の髪の毛が維持されます。
AGAが進んでしまう理由の一つとして、休止となってしまう状態の毛嚢が多くなってしまうということがあります。その結果、髪の成長が押さえられてしまいます。
カルプロニウムは機能低下状態にある毛嚢に作用して、発毛を促進するとされています。
カルプロニウムには持続作用がある
カルプロニウムは皮膚によく浸透すると言われています。また血管拡張作用があると言われているアセチルコリンはコリンエステラーゼというものにより分解されますが、カルプロニウムはこのコリンエステラーゼにより分解されません。
つまり、カルプロニウムは効果が持続するとされています。
以上、カルプロニウムの働き方をまとめますと、血管拡張作用、発毛促進作用、持続作用 とされています。
カルプロニウムの正体は?
- カルプロニウムは第一三共が開発した成分
- カルプロニウムは臨床試験において大きく問題となる副作用は発見されなかった
- 安全性が確認されているため、医療用医薬品になっている
カルプロニウムは第一三共が開発した成分
カルプロニウムは、日本の製薬メーカーである第一三共が開発しました。
正式名称は、4-メトキシ-N,N,N-トリメチル-4-オキソブタン-1-アミニクム塩化物・1水和物です。水に溶けやすい物質であるとされています。
カルプロニウムは医薬品としての開発がされており、安全性についても十分な検査を受けて承認されています。そのため、安全に使用可能と考えられています。
カルプロニウムの効果
- 5%カルプロニウム外用液は脱毛が減ったか発毛が見られた
- 10%カルプロニウム外用液は脱毛の抑制と軽度の発毛が見られた
- 1%カルプロニウム外用液では20%以上が有効であり、60%以上で何かしらの効果が見られた
カルプロニウムの効果は臨床試験で確認されている
カルプロニウムの男性型脱毛症への有用性に関して、様々な臨床試験が行われています。
5%カルプロニウム外用液
5%カルプロニウム外用液を用いた、6名の男性被験者を対象とした試験です。
この試験は1ヶ月の効果が観察され、6人中4人で脱毛減少または発毛が見られ、有効と判断されました。この試験ではカルプロニウムが含まれない偽薬も試験されましたが、偽薬では有効となった症例はいませんでした。
また、別の試験において5名の男性でカルプロニウム外用液を使用したところ、5人中3人が3-5ヶ月間でやや有効であったということが報告されています。
以上の試験から、5%カルプロニウムは脱毛が減ったか発毛が見られたという結果でした。
樋口謙太郎,幸田 弘: 脱毛症に対するフロジン液の効果―7施設における臨床効果検討会の報告―,診療と保険,1970; 12; 1395―1407.
10%カルプロニウム外用液
10%カルプロニウム外用液を用いた、4名の男性被験者を対象とした試験です。
この試験は77日間から129日間の効果が観察され、4人中2人で脱毛の抑制または軽度の発毛が見られ、有効と判断されました。
以上の試験からは、10%カルプロニウム外用液は脱毛の抑制と軽度の発毛が見られたという報告でした。
1%カルプロニウム外用液
1%カルプロニウム外用液に生薬を加えた外用液を用いて試験があります。30名の男性型脱毛症を対象とし、観察の期間は3ヶ月間とされていました。
この研究では、20%以上が有効であり、60%以上で何かしらの効果が見られたという結果でありました。なお、一部女性が含まれていたようでありますが、その詳細な割合は不明です。
以上の結果から、1%カルプロニウム外用液では20%以上が有効であり、60%以上で何かしらの効果が見られたという結果でありました。
以上のように1%、5%、10%のどの濃度においても有効である可能性が示されています。
男性型脱毛症にはカルプロニウム外用液がガイドラインで記載されている
今までご紹介した臨床試験の結果から、男性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版では、「男性型脱毛症には、カルプロニウム外用液は行っても良い」とされています。
以上、カルプロニウム外用液は様々な試験で効果が確認されています。効果の期待ができる成分の1つだと言えます。
第3類医薬品とは?
- カルプロニウム外用液は第3類医薬品で、日常生活に支障を来す程度ではないが身体の変調・不調が起こる恐れがある成分を含むもの
- しっかりと区分を見極め、発毛や抜け毛に良いものかを考えることが大切
薬というものは医薬品とされています。これは病気を治療するために使用されるものです。
カルプロニウム外用液は第3類医薬品というものに該当します。
この第3類医薬品は、日常生活に支障を来す程度ではないが身体の変調・不調が起こる恐れがある成分を含むものであるということを意味しています。
すなわち、安全性は比較的高いですが、効果を示す有効成分が入っている医薬品であるということになり、その効果を厚生労働省が認めていることとなります。
一方、育毛剤や発毛剤の中には、医薬品ではないものもたくさんあります。この区分の違いは、しっかりと理解しておきたいですね。
カルプロニウム外用液の副作用
- カルプロニウム外用液の安全性は高い
- カルプロニウム外用液で注意すべきことは主にアレルギー
塗り薬を塗るので、体に合わなくて発疹が出たりすることは0ではないです。
しかし、これは保湿剤を新しく塗るときも注意が必要です。
つまり、カルプロニウム外用液の副作用はアレルギーが中心で、それも心配がいらない程度だと考えられます。
説明文書には、震えや発汗、吐き気なども記載されております。頻度は低いですが、一応チェックしておきたい部分ですね。
カルプロニウム外用液にかかる費用
- カルプロニウム外用液は市販薬ではカロヤンという商品名で発売
- カロヤンは価格も高くない
カルプロニウム外用液は1日あたりの価格が数百円程度で、コストパフォーマンスが高いと考えられています。
特に若い方ですと、高価な発毛・育毛剤は使用しづらいと思います。カルプロニウム外用液は若い方のお財布には優しいと考えられます。
まとめ
今回は、カルプロニウム外用液の効果や副作用についてご紹介しました。
カルプロニウム外用液は臨床試験で発毛や育毛が期待され、発毛や育毛の専門家がみるガイドラインでも記載がされています。
副作用は主にアレルギー程度であり、安全に使うことができるのではないかと思います。