おはようございます。内科総合クリニック人形町 院長の藤田です。
脱毛をご検討の方の中には、「脱毛って実際にどれくらい効果があるの?」「本当に永久脱毛が完了するのか?」といったことを気にされている方も多いと思います。
せっかくお金を出して通っても、効果が得られなかったり、また毛が生えてきたりするとガッカリしてしまいますよね。
この記事でわかること
- 脱毛の効果は本当にあるのか
- 完了までにかかる期間の目安と脱毛効果の持続性
- 脱毛時の痛みによる効果の違い
- エステ脱毛、蓄熱式脱毛、SHR脱毛の効果の有無
※「脱毛」は自宅で行うカミソリやクリーム等を用いた一時脱毛のことも含まれますが、今回の記事に関しましては、「脱毛」=サロンや医療機関で行うレーザーを用いた永久脱毛施術のことを指すことします。
この記事では、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医の藤井あさ美先生にご協力いただきながら、脱毛の効果ってぶっちゃけどうなのか?を、わかりやすくお伝えしていきます。
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脱毛効果はいつから現れる?
脱毛レーザーは全体の毛のうち20%に効果を与えるので、1度では完了せず、複数回通院する必要があります。
私たちの皮膚の表面に見えている毛は、毛全体の20%程度と言われており、残りの80%の毛は皮膚の中に埋まっているか、毛が生えずに休止している状態だと言われています 1)。
レーザーを用いた脱毛施術は20%の毛にしか効果がないため、満足のいく脱毛効果を得るためには、どうしても複数回通う必要があります。
それでは、複数回脱毛に通う中で、どのあたりから効果が現れるようになるのでしょうか。
脱毛は1回で全体の20%のムダ毛に効果を与える
脱毛は複数回通う必要があるとはいえ、1回の施術で対象部位に生えるムダ毛のうち20%に効果を与えられます。
医療脱毛に使われるレーザーは、毛を作り出す関連器官である「毛乳頭」「毛母細胞」「バルジ領域」を破壊するため、一旦脱毛が完了した毛穴からは理論上、毛は生えてきません 2)。
ただし、1度の照射で劇的な毛量の変化を感じるのは難しく、全体的に「毛が減った」「生えるスピードが遅くなった」と感じられるのは3回目の照射を終えた頃になります。
照射後2~3週間ほどで照射部位の毛が抜け落ちる
脱毛レーザーは毛のメラニン色素(黒い色素)に吸収され、化学反応を起こします。
そして、化学反応を起こした際に生み出される「熱」によって、毛乳頭、毛母細胞、バルジ領域を破壊し脱毛を行います 2)。
ただ、毛乳頭・毛母細胞・バルジ領域を破壊したからといってすぐに毛が消滅するわけではなく、照射後2~3週間ほどで生えていた毛がポロポロと抜け落ちていくことで次第に消失していきます。
脱毛後にも毛が生えてくるのは何故?
脱毛後に毛が抜け落ちるのと同時に、新たな毛が生えてくるようになります。これは、今まで皮膚の中に埋まっていた毛が新たに生えてくるためです。
毛には「毛周期」と呼ばれるサイクルがあり、一定期間伸びた後に抜け落ち、毛穴を休ませる期間に入り、また一定期間が過ぎると毛が生えて成長し始め、その後再び抜け落ちる仕組みになっています。
(体毛は毛が生える期間と休ませる期間がそれぞれ1~4ヵ月間隔と言われています 1) 。)
つまり、1~4ヵ月たつと別の20%の毛穴から新たな毛が生え始めて成長することになります。
レーザーはメラニン色素に反応するため、脱毛時に毛が生えていたとしても成長しきっていない(メラニン色素が薄い)場合などには、毛乳頭等を破壊するに至らず、毛が再び生えてくるという場合も考えられます。
ムダ毛が生えてこなくなるのは何回目?照射回数の目安
医療脱毛クリニックではほとんどのクリニックが5~6回(より満足度の高い仕上がりにしたいのであれば7~8回)を推奨回数として設定しています。
また、皮膚科業界では脱毛完了までの目安は5~7回程度の照射が定説となっています。※脇脱毛の場合 3)
これは1回の施術で全体の20%の脱毛ができるため、「20%×5回=100%」という計算が成り立つことが根拠で、毛周期や毛穴の絶対数に個人差があるため、それが6回ないし7回のちがいとなっています。
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脱毛効果が実感しにくい部位
- 上腕部
- 太もも
- 体幹
- うなじ
- フェイスライン
上記のようなうぶ毛が多い部分は他の部位に比べると脱毛効果が実感しづらく、満足のいく仕上がりにするためには照射回数が多くなります。
脱毛レーザーはメラニン色素に反応して熱破壊を起こすため、メラニン色素の薄い毛が生える部位では毛乳頭等に十分な熱が伝わらず、脱毛効果を実感しにくいです。
とはいえ、全く効果がないということはなく、一時的な減耗効果は得られるとともに、繰り返し照射を行うことで細胞が弱体化し、より毛が細く薄くなり目立たなくなっていきます 3)。
逆に、脇/Vライン/ひざ下などはメラニン色素が多いため、少ない照射回数でも効果を実感しやすい部位です 3)。
薄い毛の人・剛毛の人で必要な回数は変わる?
「剛毛の人の方が脱毛回数が多くなりそう」というイメージがありますが、剛毛だからといって照射回数に差が出ることはありません。
濃く太い毛はメラニン色素を多く含むため、少ない出力でより高い効果を発揮することができるものの、こちらも反応の度合いが異なるだけであり、直接回数とは関係がありません。
毛の太さよりも毛の量によって必要な回数が変わることはあり、一般的に毛が濃い人(毛深い人)は毛穴の数が多く、皮膚の下に眠っている毛の量も多いケースが良くみられます。
毛量が多い方は表出している毛も多いため効果を実感しやすいと同時に、全ての毛穴を破壊するまでに多くの照射回数を必要とする可能性が考えられます。
脱毛効果の持続性
医療レーザーで行う脱毛は、毛を作り出す関連器官である毛乳頭、毛母細胞、バルジ領域にある毛包幹細胞を破壊するため、一度脱毛が完了すれば毛が生えてくることはありません。
ただし、注意していただきたいのは、この永久的な脱毛効果が続くのは「脇/ひざ下/Vライン」などの毛が比較的濃い部分のみとされている点です 3)。
その他の部位(上腕部/太もも/体幹/うなじ/フェイスラインなどの産毛)を脱毛した場合ですと、メラニン色素にレーザーが上手く反応しないことも考えられるため、永久的な脱毛効果が必ず得られると言い切ることはできません 3)。
産毛の脱毛は、メラニンを媒体としない電気脱毛や蓄熱式脱毛を繰り返し行って永久的な脱毛効果を目指すことになります 4) 5)。
ただ、産毛はもともと目立たないですし、そこまでの脱毛を求める方はそもそも少ない、という実態もあります。
脱毛のメリット・デメリットを見る
脱毛は痛いほうが効果あるの?
脱毛の都市伝説的な噂のひとつに「施術中、痛いほうがより効いている」というものがありますが、実際のところはどうなのでしょうか。
脱毛の効果と痛みにはあまり関係がない
脱毛時に感じる痛みは、レーザーを照射されたメラニン色素が放出する際の「熱」によるものです。
医療レーザー機器を使用した場合、瞬間的に放出される温度は250℃以上。脱毛サロンで使用する機器の場合は約70℃ほどと言われているため、医療脱毛よりも脱毛サロンの方が痛みが少ないと言われます。
こう聞くと痛みがあるほうが効果があるかのように思えてしまいますが、実際には脱毛時の痛みとその効果にはあまり関係がありません。
確かにメラニン色素が多い方の方がレーザーに反応しやすいため、より痛みを感じやすい傾向にあるとは考えられますが、痛みの強さが脱毛効果に影響を与えることはなく、ましてや、痛ければ痛いほど効果があるというようなこともありません。
痛みの原因はメラニン色素の多さだけに限らないことからも、脱毛時の痛みと効果の因果関係の信ぴょう性は低いと考えられます。
その他の要因で痛みを感じることも
痛みはメラニン色素の多さの他にも、下記のような要因で感じやすくなります。
- 肌の乾燥(乾燥肌は刺激に弱い)
- 日焼けした肌(メラニン色素が増えている状態)
- ホルモンバランスの乱れ(肌が敏感になっている)
- 皮膚の薄い部分(骨に近いため衝撃が伝わりやすい)
痛みをなるべく感じたくないという方は、脱毛前には保湿やスキンケアを心がける、日焼けをしない、体調を整え生理前や生理痛は施術を避けるなどの試みが有効です。
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エステ脱毛は効果がない?
「エステ脱毛は効果がない」「本気で脱毛したいならエステ脱毛より医療脱毛に行くべき」というのもよく耳にする噂です。
同じ「脱毛」という言葉を使い、どちらも専用機器を用いて施術をすることから混同されがちな両者ですが、エステ脱毛と医療脱毛は目的も施術内容も異なるものです。
どちらが向いているかどうかは人によりそれぞれ異なります。
エステ脱毛は「除毛・減毛」が目的
医療脱毛とエステ脱毛は目的・定義が大きく異なります。
医療脱毛の定義と目的
特定の色素に反応するレーザーの性質を利用する。
皮下の黒い毛のメラニン色素にレーザーが吸収されて熱を持ち、毛包全体に熱が伝わり毛乳頭や毛母細胞などを破壊する。
最終脱毛から1ヵ月後の毛の再生率が20%以下であること 3) 6)。
エステ脱毛の定義と目的
除毛・減毛を目的に、皮膚に負担を与えず毛の幹細胞を破壊しない範囲での脱毛をいう 7)。
エステ脱毛では永久脱毛はできず、除毛や減毛が目的。医療脱毛で得られるような脱毛効果は得ることはできず、毛の幹細胞を弱らせることで毛を細く薄くするまでを目指していきます。
エステ脱毛の持続性は約3年(医療脱毛は約10年)と言われており、除毛・減毛効果は一時的なため、継続的にメンテナンスへ通い続けることが前提であると言えるでしょう。
エステ脱毛は痛みが苦手な方や毛量が少ない方、通い続けられる方向き
エステ脱毛は効果がないものではありませんが、医療脱毛とは目的が異なるため、医療脱毛と同じような永久脱毛を求める方にとっては「効果がない」と感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
ただし、日本エステティック振興協議会が定義している「除毛・減毛」に対する効果は十分に期待できると言えます。
エステ脱毛は、もともと毛が薄い方や痛みに弱い方、長期間通い続けることができる方に向いています。
蓄熱式脱毛は効果がないってホント?
クリニックで使用されている機械には「熱破壊式」「蓄熱式」の2種類があり、”蓄熱式は効果がない”という声がたびたび見られ、真偽を少し解説したいと思います。
(エステサロンでは「SHR脱毛」「THR脱毛」が蓄熱式にあたります/そもそもエステサロンで扱われている脱毛機は上記に書いたとおり目的が異なるため、注意が必要)
■熱破壊式 | 従来から使用されているショット式の脱毛方式。 「バチッ」とした照射感で、1本の毛に対してワンショットで照射する。 |
■蓄熱式 | 最近主流となってきている、弱いレーザー光を断続的に照射する痛みを感じにくい脱毛方式。 1本の毛に複数回照射して、徐々に熱を与える。 |
共にメラニンをターゲットとしていますが、熱破壊式と比べて蓄熱式は温度上昇が穏やかなので痛みを感じにくいのが特徴です。
蓄熱式脱毛は施術者の技術力に効果が左右される
1箇所にワンショットずつ照射していく熱破壊式に対して、1箇所に複数回すべらせるようにして照射を重ねて熱を与えていく脱毛方式の蓄熱式は、効果の出方を全体的に統一するのがとても難しくなります。
つまり、適当な施術をする(時間短縮のために正しい回数を照射しないなど)場合は効果が実感しづらくなるということです。
各クリニックでは技術研修を重ねて効果のムラが出ないよう企業努力を重ねているものの、機械の仕様上どうしても「施術者によって効果の出方がちがう」ということが起こってしまいます。
ただし、必要なエネルギーを正しい回数照射すれば、きちんと効果が得られます。
蓄熱式脱毛は「費用が安い」「痛みが少ない」と利用者にとってもメリットの多い方式なので、蓄熱式脱毛を受けるときのクリニック選定ポイントを参考に選ぶと良いでしょう。
また、「蓄熱式脱毛は温度が低いため毛乳頭を破壊することができず、脱毛効果がないのではないか」との声も起こりがちですが、65℃と低い温度でバルジ領域の中の毛包幹細胞を破壊すれば毛は生えてこないという理論自体は提唱されている 9)ため、蓄熱式脱毛であっても、正しい照射間隔と正しい温度で脱毛部位に対して照射できていれば効果は見込めます。
蓄熱式についてもっと詳しく見る
参考文献
- 毛髪のしくみ | 全国理容生活衛生同業組合連合会 http://www.riyo.or.jp/%E6%AF%9B%E9%AB%AA%E3%81%AE%E3%81%97%E3%81%8F%E3%81%BF/
- 皮膚科におけるレーザー応用の最新事情 https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/39/2/39_96/_pdf/-char/ja
- 第118回日本皮膚科総会⑨教育講演資料 http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-200113.pdf
- 日本医学脱毛学会 https://www.igaku-datumou-gakkai.com/5-1
- エステティックサロンに近づきつつある皮膚科美容外科 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcs1979/25/1/25_1_121/_pdf/-char/ja
- 医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて 厚生労働省 http://datumou.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20130405182728-E2C9638847CB12CACC1DF315DBA5C94855380F2ADFDE16AF7279AF3E934BB6C1.pdf
- 美容ライト脱毛 | 一般社団法人日本エステティック振興協議 http://esthe-jepa.jp/depilation/
- 第 74 回日本皮膚科学会東京支部学術大会①会長講演 http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-110825.pdf
- G Cotsarelis, T T Sun, R M Lavker (1990) Label-retaining cells reside in the bulge area of pilosebaceous unit: implications for follicular stem cells, hair cycle, and skin carcinogenesis
PMID: 2364430, DOI: 10.1016/0092-8674(90)90696-c