- ミノキシジルは頭皮にふりかけると毛細血管までしか浸透しない
- ミノタブは細動脈に作用するので外用薬を兼ねた働きをする
- 外用で初期脱毛が起きない場合4か月目途に内服に切替えよう
- 併用で大いに意味があるのは「ミノタブ+市販育毛剤」
- プロペシア(あるいはザガーロ)との併用は超必須
AGA専門クリニックに診察に行くと、育毛剤タイプのミノキシジルと、飲み薬タイプのミノキシジルタブレット剤を処方されることが多いでしょう。
実はこれ、全く無意味です。クリニック側を儲けさせているだけ、という事実を医学的に検証してきます。
結論を先に伝えると、外用薬と経口薬を併用したいなら、外用薬はミノキシジル以外を主成分とした市販の育毛剤にしてください。

AGAクリニック側が手を変え品を変え営業をかけてくると思います。お金の無駄だけならまだしも、発毛の機会を逃してしまいかねないので十分ご留意ください。
この記事の執筆者

藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
ミノキシジルは頭皮からふりかけると毛細血管までしか浸透しない

藤田先生、ミノキシジルの外用薬は「効かない」という声を良く聞きます。なぜなのでしょうか?

頭皮からふりかけると毛細血管にしか作用しないので血流がほとんど上がらないからです

解説いたします
ミノキシジルを育毛剤として使用した場合、頭皮からふりかけることになり、毛根周辺の毛細血管にしか薬の作用が及びません。
下記の図をご覧ください。

頭皮の毛根周辺にあるのは毛細血管です。ミノキシジルを育毛剤としてふりかけると頭皮から浸透して毛細血管に作用しますが、これだとほとんど血流は良くならず栄養分が毛根まで届いてくれません。
※ミノキシジルは血管拡張剤です
ミノキシジルは髪の成長因子の誘発などの作用が多少はあっても、主作用はあくまで血管拡張。
ところが、毛細血管は非常に細い血管ゆえ、ミノキシジルが浸透しても少ししか拡張しません。毛細血管にミノキシジルを作用させたとしても発毛効果は限定的になってしまうのです。
大正製薬リアップが発売されてからもう20年以上が経過しているのに、日本国内の薄毛患者の数が減ったという話を聞いたことはありません。残念ながらミノキシジル外用薬でフサフサになることはありえません。

「藤田先生、リアップをたまにディスっていますよね?」と知人に突っ込まれることがありますが、違います。むしろリアップファンで(フォローになってない)、事実を述べているだけ。
リアップだけではなく、アンファー(スカルプD)のメディカルミノキ5やロート製薬のリグロEX5などの最新のミノキシジル発毛剤も同じ感想です。
ミノキシジルを外用薬として使用しても発毛は限定的で効いたとしても頭頂部だけ、M字部分(ひたいの生え際)には効果がほとんど出ません。

ミノタブは細動脈に作用するので外用薬を兼ねた働きをする

経口薬としてミノキシジルを服用した場合の作用秩序は育毛剤の場合と違うのでしょうか?

作用秩序は同じですが作用する場所が違います。タブレット剤として服用した場合、ミノキシジルは細動脈に作用すると考えられ、M字を含めて発毛促進効果が期待できます。

解説いたします
血管図で具体的に説明するので下記をご覧ください。

ミノキシジルタブレット(通称ミノタブ)は飲み薬なので、胃から小腸を経て体内に吸収され、細動脈を動かしている細動脈平滑筋に作用します。
細動脈は別名「抵抗血管」と呼ばれ、動脈から流れてくる血液の勢いを弱める役割をはたし、恒常的に収縮気味になっている、つまり血管を細く保っているのです。
※血管なので弛緩はしても基本的には収縮気味
ミノタブは、収縮している細動脈を広げる作用を持っていて、細動脈が広がると血液は毛細血管に流れやすくなり、栄養分も毛根に届くように。そしてこのことにより、AGAで弱った髪の毛に対して成長を促していくのです。

大(細動脈)は小(毛細血管)を兼ねる
先ほどの血管図を見れば分かるとおり、細動脈は毛細血管の手前の血管なので、細動脈にミノキシジルが効きさえすれば血流は良くなります。毛細血管にミノキシジルを浸透させる必要はありません。
つまり「大は小を兼ねる」ということなので、ミノキシジル育毛剤とミノキシジルタブレットを併用する必要性は「無い」ということです。
外用で初期脱毛が起きない場合4か月目途に内服に切替えよう

併用が意味がないということは、順番は育毛剤が先で内服が後ということでいいのでしょうか?切り替えのタイミングを含めて教えてください。

その順番でOKです。まず外用でミノキシジルを使用してみて、4か月経過しても初期脱毛が起きないならミノタブに切り替えてください。

解説いたします
ミノタブは副作用が強い薬なので、ミノキシジルを使用するならまずは育毛剤が先です。これは鉄則。
ミノキシジルを育毛剤として使用した場合の発毛効果が限定的であるとはいえ、6-7人に1人くらいミノキシジル育毛剤が完璧にハマる人がいます。
確率15%以下なので「低いっ!」と思われるかもしれません。それでも宝くじと比べたらありえないくらいの高確率で、副作用は頭皮のかぶれ程度でリスクはゼロに等しく試さない手はないと思います。

「初期脱毛」が見極めポイント
ミノキシジルは、簡単に言ってしまうとヘアサイクル(毛周期)を強制的にリセットする薬だと思ってください。

ミノキシジルが効いてくると、まず最初にヘアサイクルでいうところの退行期に入り髪の毛が抜けていきます。これが初期脱毛。
ただでさえ薄いのに、さらに抜けてしまうのは恐怖でしかないと思いますが、初期脱毛なき発毛はありえないので、ミノキシジルを使用して4週間前後経過した時に、朝起きて枕元にびっしり抜け毛が付いていたなら、それはOKサインです。

通常なら使用開始してから4週間前後で初期脱毛が始まり、その後2か月くらい「抜け期」が続きます。その長いトンネル(抜け期)を抜けミノキシジルを使用開始してから4か月目くらいには、はっきりと目に見える形で発毛が実感できるはずです。
逆に4か月経過しても初期脱毛が起きていないなら、処方されたミノキシジル育毛剤はあなたには効いていない証拠になります。その時点で使用をストップしミノタブ(飲み薬)に切り替えてください。
リアップなどの説明書を読んでみると「最低半年は使用してください」とだいたい書いてありますが、半年は長すぎます。

4か月が正しい見極め時なので、バッサリと使用を停止してミノキシジルタブレット(飲み薬)に切り替えましょう。
ミノタブの止め時も同じく使用開始後4か月経過時
飲み薬タイプのミノキシジル(ミノタブ)も効いてくると、服用開始してから4週間前後で初期脱毛が始まります。
育毛剤として使用していたときよりも激しく抜けるので「こんなに抜けて本当に大丈夫でしょうか?不安で仕方ないです。」と相談を受けることが多いですが、大丈夫です。

大丈夫、というよりも、初期脱毛でガッツリ抜けないとガッツリ生えてこないので、たくさん抜けたほうがよいサインといえます。なんとかストレスに耐えてください。
ミノタブの場合でも、服用開始してから4か月経過しても初期脱毛すら起きないなら服用を中止してください。ミノタブは循環器(心臓・肺・血管)に副作用が出る半劇薬なので、効かないなら出来るだけ早いタイミングでやめるべきです。
AGAクリニック側は、効果が出ないとミノタブの濃度をどんどん上げていくよう提案してきます。
中には致死量と言っても過言ではない10mgという超高濃度のミノキシジルタブレットを平気で処方しようというヤブ医者(口が悪くてすいません)がいて、恐ろしいことです。

限界濃度は2.5mgまで。それ以上は副作用がきつく危険ですが、心電図を定期的に測り循環器に一切の問題が出ていないことを確認できていた場合のみ、例外中の例外で5mgまでならギリギリOKです。
併用で大いに意味があるのは「ミノタブ+市販育毛剤」

外用薬と内服薬のセットで治療したい場合にはどうすればいいのでしょうか?

「ミノタブ(飲み薬)」+「ミノキシジル以外を主成分とした育毛剤」の組み合わせが良いと思います。

解説いたします
前の項で説明したとおり、ミノタブ(飲み薬)を服用していればミノキシジル育毛剤の効果効能を兼務してくれるので、リアップやメディカルミノキ5、リグロEX5を使用する必要性は一切ありません。
そもそも、ミノタブが効かない人(ノンレスポンダー)はミノキシジル育毛剤も効かないので、やるだけ無駄です。
でも「おまじないでもいいから何かやっておきたい」「発毛のためならある程度の出費は覚悟している」という方は、主成分がミノキシジル以外の育毛剤を使ってみてください。

発毛剤と育毛剤の違い
薬機法(旧薬事法)という、医薬品に関する法律があります。
薬機法は、医薬品や健康食品などの効果効能を、商品パッケージや説明書、あるいは広告宣伝時などで「効果効能を表現する際に使用しても良い言葉」を規定している法律だと思ってください。
大正製薬リアップやアンファー(スカルプD)のメディカルミノキ5、ロート製薬のリグロEX5は、パッケージに「発毛剤」と書いてあります。

これは薬機法で「ミノキシジル入りの育毛剤は発毛剤とうたってもOK」、という許認可がおりているから「発毛剤」という言葉を使っているのです。つまり国がミノキシジルを発毛成分として公的に認めているということになります。
それ以外の育毛剤はどうなのでしょうか?例えば資生堂が出しているアデノゲンという育毛剤があります。
国の準公的団体である日本皮膚科学会が制定している「男性型脱毛症診療ガイドライン」において、AGA治療への推奨度B(上から2番目)に指定されているアデノシンという成分を主成分にしている育毛剤です。

推奨度が上から2番目なのでレスポンダーの人であればちゃんと発毛しますが、ガイドラインで発毛が認められていても、薬機法でアデノシンが発毛成分と認められていないので資生堂アデノゲンは「発毛剤」とは名乗れません。
この例のように、ある公的機関では発毛すると認められ臨床データが揃い公開もされているのに、薬機法で発毛成分と認められていない「発毛剤予備軍」のような育毛剤が国内にはたくさんあります。
そもそもリアップなどのミノキシジル外用薬でしっかりと発毛する確率はせいぜい6-7人に1人程度で、ほとんどの人は満足に発毛しません。

ではミノキシジル外用薬で発毛しなかった人は発毛を諦めないといけないかというと、そんなことはありません。
当ブログで再三言及してきた通り、育毛剤は相性が全てです。
ミノキシジルで発毛しなかった人が市販育毛剤に変えたら結果が出るということも当然起こり得ます。4-6か月単位で色々な育毛剤を試し、あなたにとっての「当たり」を見つけることにチャレンジしてみてください。

ミノタブは発毛治療には実質必須
ミノキシジルタブレットは副作用が強い薬なので服用するか否かは慎重に判断して欲しいですが、現実問題としてミノタブ無しで薄毛が解消するとは考えにくいです。
つまり、実質的にミノタブは薄毛治療には必須ですが、ミノタブと、リアップや海外製のカークランドのようなミノキシジル発毛剤を併用すると効果効能がダブってしまうので意味がありません。
これらを踏まえると、こう↓いう結論が出てきます。
【意味の無い治療の組み合わせ】
※右はカークランド・ミノキシジル発毛剤
【意味が大いにある治療の組み合わせ】
補足:プロペシア(あるいはザガーロ)との併用は超必須

今回の記事は「ミノキシジル外用薬と経口薬(ミノタブ)の併用は意味がないですよ」ということをお伝えするためでしたが、ミノタブと必ず併用しないといけない薬が別にあります。
プロペシア(あるいはザガーロ)です。

ミノキシジルはあくまで発毛成分であって脱毛予防効果はありません。
ミノキシジルでどんなに発毛させも、AGA(男性型脱毛症)の進行を止めないことには治療の意味がなくなってしまいます。脱毛予防薬であるプロペシア、あるいはザガーロを必ず併用して治療にあたってください。


以上