こんにちは。総合内科専門医の藤田です。
青汁を毎日飲むのが習慣化している方の中には、『明日(今日)健康診断があるけど、青汁はいつものように飲んでいいの?』という疑問を持つ方がいるかと思います。
そこで、このページではその疑問にお答えすると共に、検査に影響を与える可能性のある成分や、検査日時や検査項目によっては青汁を控えなくても良いといったお話をしてみます。
さらに補足として、健康診断前の飲食をしてはいけない時間帯に青汁を飲んでしまった時の対処法についても案内していますので、参考にしてみてください。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
健康診断に影響すると思われる青汁の成分・効果
青汁商品に含まれている各種成分の中には、検査結果が正常に得られない、または変わってしまう可能性のあるものがあります。
以下に挙げた成分は、よく青汁に含まれている成分ですが、”良くも悪くも”健康診断の際の検査結果に影響すると考えられます。
- 糖質
- 食物繊維
- ビタミンC
- ミネラル
- キトサン
- モノグルコシルヘスペリジン
これらの成分について「どのような変化があるのか」「どういった問題があるか」を解説していきます。
糖質
血糖値、中性脂肪(TG)の値が高くなり、再検査や精密検査をすることになる可能性があります。
通常、血糖値の検査をする時は「空腹時血糖値」を測定します。検査前に『食事をしないように。』『糖分の入っているものは飲まないように。』という指示があるのは血糖値に影響するからです。
また、糖分を摂取すると血液検査の中性脂肪にも影響します。血糖値が上がるとインスリン(すい臓から分泌される、ブドウ糖を効率よく利用させる必須ホルモン)が分泌され、代謝によって糖質から脂質が合成されるからです。
血糖値や中性脂肪は糖尿病、脂質異常症、肥満などの疾患や症状を調べる目的で検査をしますから、これらの検査の精度が落ちる可能性があります。
ビタミンC
病気の素因があるにも関わらず、分からないまま(偽陰性)になる恐れがあります。
青汁商品の多くは製造の過程で食品添加物が加えられていますが、ビタミンCを配合している青汁商品は多いです。
ビタミンCは尿検査の結果に影響することがあります。尿定性試験※で検査している尿中の潜血、尿糖、ビリルビンについてはビタミンCによる影響を受けます※1※2。
尿潜血 | 肉眼では見えず化学的検査でわかる、主に消化管内や尿中の微量の出血のこと。血尿の原因としては悪性腫瘍や結石、膀胱炎などの炎症、腎臓癌などがある。 |
尿糖 | 血液中の糖が尿中に排泄された糖のこと。血糖が異常に増加して限界を超えてしまうと、尿糖が検出される。 |
ビリルビン | 赤血球中のヘモグロビンが壊れてできる色素のこと。ビリルビンの数値に異常がある場合、肝臓障害・胆汁うっ滞・胆道の閉塞などが考えられる。 |
どの場合にも偽陰性(検査が陰性になってしまう偽りの陰性のこと)になるため、病気の素因があるのに健康診断で分からないままになる恐れがあります。
食物繊維
食物繊維を摂取すると胃や大腸の様子が正確に検査できず、再検査になる可能性があります。
青汁商品の中には、水溶性食物繊維の”難消化デキストリン”などを添加して食物繊維の含有量を増やしている製品がありますので、胃腸の検査を受ける予定がある場合は摂取を控えて下さい。
食物繊維は消化管を通過する速度が遅く、胃カメラや内視鏡検査、胃のX線検査などをするタイミングで胃や大腸の中身がまだ空になっていない可能性がありますので、正確な検査ができません。
キトサン
胃カメラや内視鏡検査、胃のX線検査の検査結果に影響する可能性があります。
特定保健用食品(トクホ)青汁の中には”コレステロール値が気になる人へ”などと謳い、コレステロール値を下る効果が期待できる商品がありますが、その多くはキトサンという成分を配合しています。
キトサンには総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪(TG)の値を下げる効果が期待できる半面、水溶性食物繊維の一種なので、上述の食物繊維と同じように胃や大腸の検査が正確に出来ない可能性がありますので、検査前は避けるのが賢明です。
モノグルコシルヘスペリジン
血圧測定や中性脂肪(TG)の血液検査の結果に影響します。
こちらはあまり一般的ではありませんが、機能性栄養食品の青汁で「美神青汁(びじんあおじる)」という商品には、機能性関与成分としてモノグルコシルヘスペリジンが含まれています。
ポリフェノール(植物由来の酸化に対抗する物質)の一種であるモノグルコシルヘスペリジンの効果については色々な研究があり、保健機能食品として青汁以外でも使用されている成分です。
商品のパッケージを見るとモノグルコシルヘスペリジンについて「血流と体温を維持※3」「高めの血圧を下げる」と表示されています。
また、青汁商品ではありませんが「ミドルケア 粉末スティック」という商品の安全性・有効性情報を掲載したサイトでは、
関与成分「モノグルコシルヘスペリジン」の働きにより、血中の中性脂肪 (トリグリセリド) を低下させます。モノグルコシルヘスペリジンは、オレンジの皮などに多く含まれるポリフェノールの一種ヘスペリジンに糖を結合させ、水溶性と吸収性を高めた成分です。
引用:https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail2972.html
というように、中性脂肪の値に影響があることを明記しています。
健康診断では血圧測定や中性脂肪(TG)の血液検査をします。モノグルコシルヘスペリジンを含む青汁を摂取すると、これらの検査結果の数値が低い値を示す可能性があります。
ミネラル
ミネラルの摂取で高カリウム血症や高カルシウム血症などを疑われることになる可能性があります。
青汁商品の多くにはミネラルが含まれています。
日本人の食事摂取基準(2020年版)において、ミネラルの一部には耐容上限量(過剰摂取による健康障害を未然に防ぐ量)が設けられています。※4
一般的な青汁の、1日の摂取目安量に含まれている各ミネラル量で耐容上限量に達するものは、調査した限りではありませんでしが、日常の食生活を含めて考えると検査結果に影響する可能性があります。
例えばカルシウムの摂取については、成年では耐用上限量が2,500mgと定められています。これは、腎臓の機能が低下している際には尿路結石などの病気を引き起こすリスクがあるためです。
また、腎臓に病気がある場合にはカリウム制限が必要とされる場合があり、1日の摂取量を1,500mg以下にするのが目標※5ですが、食事(療法)等で耐用上限量をコントロールしていても、青汁を飲む事でオーバーしてしまう可能性は十分に考えられます
ミネラルの摂りすぎという生活習慣が身についていると、血液中のミネラル濃度が高くなり高カリウム血症や高カルシウム血症などの症状を引き起こす可能性があります。
健康診断前の青汁摂取は控えるべきか
検査”直前”は控えるべきですが、健康診断前のルールを理解すれば、青汁を毎日飲むという習慣は崩さなくても大丈夫です。
健康診断には午前と午後の日程がありますが、原則として検査開始の12時間前からは飲食はしてはいけません。
午前中に受ける場合 | 前日の夜9時以降はお水・お茶以外の飲食物は摂らない。 |
午後に受ける場合 | 基本、前日の食事制限はないが、当日は朝から食事をしてはならない。 |
という事は、上記の時間を避ければ青汁を飲むことは出来ますので、健康診断のために青汁を控える必要はありません。
ただし、”毎朝”青汁を飲む習慣がある方は注意が必要です。朝の時間帯に青汁を飲んでしまうと、午前の検査でも午後の検査でも、検査開始12時間前の飲食に該当してしまいます。
解決策としては、例えば青汁を飲む習慣を毎日18:00時の夕食時などにしておけば、午前に受ける場合でも午後に受ける場合でも、健康診断前の飲食を控えなければならない時間帯を避けることが出来るかと思います。
どうしても朝に飲む習慣を変えたくない場合
青汁によって含まれている成分にはなかり違いがあるものの、前述した食物繊維やビタミンCが含まれている青汁の場合、検査そのものの精度が担保できませんので、正しい検査結果を得るためにも青汁を検査直前に摂取するのは控えて下さい。
ただし、病院によっては若干案内の内容が異なる場合もありますので、健康診断を受ける医療機関や、かかりつけの医師がいる場合は相談してみるのも良いでしょう。
検査前に青汁を飲んでしまったら
すみやかに健康診断を受ける病院に連絡をして、青汁を飲んでしまったことを伝え、指示を受けましょう。
その際、青汁の種類、飲んだ量、飲んだ時刻をできるだけ正確に覚えておくと、スムーズなコミュニケーションがとれ、的確な指示を受けられます。
連絡後は担当の方からの、検査項目に応じた指示に従うようにしてください。
必ず問題があるわけではなく、例えば血液検査をする場合にも、検査目的によっては絶食時でなくても良い場合があります。青汁を飲んだときの結果として理解すれば良い、という判断になることもありますので、申告はしておくのがベターです。
また、尿検査にビタミンCが影響するのは直前に大量に飲んだ時だけです。朝6時に飲んで9時~12時にかけて健康診断をする場合は、検査の順番を変えて終わり頃に採尿をするスケジュールに変更してくれる可能性もあります。
ただ、胃カメラや胸部X線検査などの場合には直前に青汁を飲んでしまうと検査が難しくなるケースも。実施せずに別日程で検査とするか、実施してみて再検査をするかという選択肢になる場合も考えられます。
青汁を検査前に飲んだからといって慌てる必要はありません。医療機関や主治医に相談すれば適切な対応を教えてくれます。自分で勝手に判断せずに専門の方に指示を仰ぐのが正解です。
参考文献(References)
※1 ビタミンCをどの位服用すると尿検査に影響がでますか?|CRC
※2 尿定性検査で偽陰性、偽陽性となる要因-主に薬剤による影響を教えてください。|CRC
※3 作用機序に関する説明資料|DHC公式オンラインショップ
※4 日本人の食事摂取基準(2020年版)
※5 カリウム制限とは?|東京女子医科大学病院 腎臓内科