こんにちは。総合内科専門医の藤田です。
年齢性別を問わず、今やすっかり身近なアイテムになった青汁と、たんぱく質を手軽にしっかり摂取できることで魅力のプロテイン。どちらも健康維持やダイエット目的で摂る健康食品として人気ですが、
『青汁とプロテインってどっちが良いの?違いはなに?』
『栄養をたくさん摂るためには、どっちが向いている?』
『青汁とプロテインを併用しても大丈夫?』
こんな疑問を持っている方も少なくないと思います。
青汁とプロテインではそれぞれ特徴が異なりますから、自身の目的によって最適な方を選択したいところです。
そこでこのページでは、青汁とプロテインの違いや目的別におすすめできる方を紹介し、両者の併用についても詳しく解説します。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
青汁とプロテインの違い
含まれる栄養素の傾向
一般的な青汁に含まれる栄養素と、同じく一般的なプロテイン(ナチュラル・プレーン味)に含まれる栄養素には大きな違いがあります。そこで、それぞれ人気のある商品からランダムに3商品づつ取り上げ、栄養素表示成分における1杯(食)分の栄養の含有量をまとめてみました。
青汁とプロテイン(プレーン味)に含まれる栄養成分表示の一覧(例
栄養素など | 青汁① 2包 6g | 青汁② 3袋 9g | 青汁③ 1本 200ml | プロテイン① 1食 29g | プロテイン② 1食 30g | プロテイン③ 1食 28g |
---|---|---|---|---|---|---|
エネルギー | 22.26 kcal | 28.98 kcal | 37 kcal | 113.7 kcal | 117.9 kcal | 111.7 kcal |
たんぱく質 | 0.547 g | 1.84 g | 1 g | 21.8 g | 24.3 g | 21.5 g |
脂質 | 0.15 g | 0.26 g | 0 g | 1.6 g | 1.5 g | 1.7 g |
炭水化物 | 4.739 g | – | 8.5 g | 3.1 g | 1.8 g | 2.7 g |
– 糖質 | 1.907 g | 3.34 g | 7.3 g | – | – | – |
– 食物繊維 | 2.832 g | 2.98 g | 0.4~1.7 g | – | – | – |
食塩相当量 | – | – | 0.01~0.12 g | 0.1 g | 0.04 g | 0.2g |
ナトリウム | 34.667 mg | 3.08 mg | – | – | – | – |
カリウム | 102 mg | 100.81 mg | 20~165 mg | – | – | – |
カルシウム | 38.4 mg | 14.13 mg | 4~24 mg | – | – | – |
マグネシウム | 6.6 mg | 6.43 mg | – | – | – | – |
リン | – | 13.95 mg | – | – | – | – |
鉄 | 0.33 mg | 1.22 mg | 0.1~1.0 mg | – | – | – |
亜鉛 | 0.084 mg | 0.11 mg | 5.8 mg | – | – | – |
銅 | – | 0.03 mg | – | – | – | – |
マンガン | 0.24 mg | – | – | – | – | – |
ビタミンA | 474 ㎍ | 237.62 ㎍ | – | – | – | – |
ビタミンE | 0.264 mg | 0.37 mg | 9.1 mg | – | – | – |
ビタミンK | 66 ㎍ | 117.91 ㎍ | 8~120 ㎍ | – | – | – |
ビタミンC | 0.78 mg | 1.17 mg | – | 41.2 mg | – | – |
ビタミンB1 | 0.011 mg | 0.02 mg | – | – | – | – |
ビタミンB2 | 0.033 mg | 0.04 mg | – | – | – | – |
ナイアシン | 0.228 mg | 0.13 mg | – | – | – | – |
ビタミンB6 | 0.021 mg | – | – | 1.0 mg | – | – |
ビタミンB12 | 0.012 ㎍ | – | – | – | – | – |
葉酸 | 6 ㎍ | 0.02 ㎍ | 2~28 ㎍ | – | – | – |
パントテン酸 | 0.06 mg | – | – | – | – | – |
カフェイン | – | – | 2.5 mg | – | – | – |
一般的な青汁には、食物繊維やビタミン、ミネラルなど多くの種類の栄養素が含まれています。対してプロテイン(プレーン味)は”たんぱく質そのもの”なだけあって、基本的にたんぱく質を摂取する食品だということが見て取れます。
ただし最近では、プロテインのニーズやユーザー層が拡大したこともあり、下の画像の商品のように、ビタミン・ミネラルなどの栄養素を人工添加した栄養素豊富なプロテインも沢山あります。
青汁もプロテインも、最近は飲みやすさを重視した様々な商品バリエーションがあり、後から栄養素を人工添加したりしていますので、チェックするべきはパッケージ等に記載のある栄養成分表示になります。
カロリーの比較
カロリーについては、青汁における1日の摂取目安量とプロテインにおける1食(回)分のカロリーを比較してみました。
エネルギー | たんぱく質 | |
---|---|---|
青汁1 2包/6g | 22.26 kcal | 0.547 g |
青汁2 3袋/9g | 28.98 kcal | 1.84 g |
青汁3 1本/200ml | 37 kcal | 1 g |
プロテイン1 1食/29g | 113.7 kcal | 21.8 g |
プロテイン2 1食/30g | 117.9 kcal | 24.3 g |
プロテイン3 1食/28g | 111.7 kcal | 21.5 g |
青汁と比較するとプロテインのカロリーの量は4倍~5倍程度多いことが分かります。この差が生じる原因として関係しているのが”たんぱく質”で、たんぱく質1gを燃焼するのに約4kcalのエネルギー(kcal)が必要だからです。
青汁はプロテインに比べて多くの栄養素を含んではいますが、ビタミン・ミネラルのエネルギーというのは0kcalですから、例えばビタミンB群、ビタミンC、ビタミンEなど、どれだけ多くの種類のビタミン類が含まれていたとしても、カロリーは高くならないということです。
飲みやすさの違い
味(美味しさ)
青汁については、粉末タイプと冷凍タイプで味にかなりの違いがあります。粉末タイプはほとんど青臭さがなく、お茶や抹茶に近い味なのに対して、冷凍タイプは独特の苦みやかなりの青臭さを感じますので、飲みにくいと感じる方が多いでしょう。
コンビニなどで売っている紙パックの豆乳ミックスタイプ、フルーツ味やハチミツ入りの青汁については、また違った味です。これらは甘味を加えているものが多いためジュース感覚に近く、粉末タイプに比べてさらに飲みやすいかと思います。
プロテインはナチュラルタイプ(プレーン味)の場合、基本たんぱく質そのものですから味はありませんし、その無味自体が『美味しくない。』という声が多いです。そういったことからプロテイン商品は味のバリエーションがとても豊富です。
ココア・バニラ・ヨーグルト・フルーツ・チョコ・ココア・バナナ・ストロベリー、さらにはコーラ・抹茶・メロンなど、自分好みの味がきっと見つかるでしょう。
味覚は人それぞれで好みも違いますが、ひと昔前のプロテインならともかく、今は青汁よりもプロテインの方が美味しくて飲みやすい商品が多いかと思います。
のど越し
のど越しについては、粉末タイプの青汁の方が冷凍タイプに比べてサラサラして飲みやすいですし、青汁全体で言ってもプロテインよりもサラサラとしています。
プロテインも最近は溶けやすいタイプのものが登場してきていますが、基本、トロトロとしています。粉末タイプの青汁と比らべると溶けにくいですし、ダマが残ったりするのでのど越しを強く感じる場合もあるでしょう。
どの越しで言ったら青汁の方が飲みやすい商品が多いかと思います。
どっちがおすすめ?目的別で評価
筋力アップ・トレーニング・ボディメイク
筋力アップやトレーニング目的で使用する場合は“プロテイン”が向いています。プロテインに豊富に含まれるたんぱく質は、筋肉を作る(修復させる)上で欠かせない栄養素です。
摂取するタイミングは主に3つで、
- 運動後45分以内(筋肉へ送られるアミノ酸が3倍にまでアップする)
- 就寝する30分~1時間前(成長ホルモンの働きを促し筋肉を修復)
- 朝食時(身体が求めているたんぱく質を補給)
がベストです。
前提として、肉・魚・卵・大豆・乳製品からの摂取が望ましいですが、足りないたんぱく質を補う形でのプロテインの使用は有効と言えます。
栄養分のサポート
日頃の食生活で足りない栄養素を摂取したい場合は“青汁”がおすすめです。青汁は、食物繊維やミネラル、ビタミンなど多くの栄養素を含んでますので、日ごろの食事での足りない栄養素を補うことに適した食品といえます。
ただし、青汁商品のほとんどは野菜を一度搾汁してから商品化しており、その過程で生野菜が本来持っている豊富な栄養素を失っているものが多いのが現状ですから、実際に補える量というのは非常に少ないです。
基本的には野菜を食べて摂取することが理想です、サポートの役割以上の期待は難しいと捉えておくことが大切です。
厚生労働省のデータでは、1日の野菜の摂取目安量は350g以上(成人の場合)※1といわれていますので、意識して普段より多くの野菜を食べるように心がけましょう。
便秘予防・整腸
便秘予防を目的とする方には“青汁”が向いています。便秘予防のためには、腸内環境を整えることが有効ですが、青汁には腸内環境を整える成分が含まれている商品があります。
乳酸菌を添加した整腸効果が期待できる青汁
青汁商品の中には、原材料以外にも後から添加物を加えてオリジナル性を打ち出しているものが多く、乳酸菌を加えた便秘予防のための青汁というのは各社から発売されています。
乳酸菌というのは、発酵によって糖から乳酸をつくる嫌気性(けんきせい…酸素を嫌い、酸素がなくとも増殖できる細菌)の微生物の総称です。腸内で悪玉菌の繁殖を抑えて腸内環境を整える効果が期待できます。
また、便秘の改善だけではなくコレステロールの低下や免疫機能を高めがんを予防するなど、さまざまな働きが期待できると言われており、最近ではピロリ菌を排除するなどの機能を持つ乳酸菌もあるということが研究※2されています。
食物繊維は便秘に有効だけど…。
一般的に青汁には食物繊維が豊富な原材料が使われているので『食物繊維が豊富!』というイメージがありますし、食物繊維は良いお通じを促し便秘に有効ですから、青汁=便秘に効くと思っている方が多いかと思います。
しかし、実際には製造過程で多くの食物繊維が失われており、青汁商品に含まれている食物繊維は、トクホの一部の商品を除き1日の摂取目安量※3に遠く及ばないのが現実です。
1日の食物繊維の摂取基準量(18~64才男女)と青汁商品の含有量
18~64歳の食物摂取量基準 (男/女) | 18g 以上 20g 以上 |
青汁1(2包/6g) | 2.172 g |
青汁2(2包/6g) | 2.832 g |
青汁3(3袋/9g) | 2.98 g |
青汁4(3袋/12.9g) | 7.61 g |
因みに、プロテイン(たんぱく質)の摂り過ぎは、逆に便秘を引き起こす要因となり得ます。たんぱく質を消化する過程で発生した窒素をエサに、腸内の悪玉菌が増殖するのが理由です。
美容・美肌効果
美容サポートを目的とする場合は“青汁”の方が向いていると言えます。健康的な肌や髪にはビタミンの摂取が欠かせません。青汁商品にはビタミンが含まれているものが多いので美容効果が期待できます。
プロテインも商品によってはビタミンを添加しているものがあるので、パッケージ等に記載がある”栄養成分表示”を確認してみて下さい。
ビタミンの摂取で期待できる美容効果
- ビタミンA … 肌の潤いを保つ
- ビタミンB群 … 肌荒れを予防する
- ビタミンC … 肌や粘膜の健康を維持する
- ビタミンE … しわやたるみの原因である酸化を防ぐ
青汁には、ビタミンのほかにも、コラーゲンやヒアルロン酸、プラセンタなどの美容成分を添加している商品があります。
ダイエット
ダイエット目的で使用したい方には”青汁とプロテインどちらも”向いていると言えます。ただし、ダイエットの仕方や自分の体質などを考慮して選ぶ必要があります。
青汁は栄養がバランスよく含まれているため、摂取カロリーばかりを気にして健康的なダイエットが出来ていない、いわゆる”栄養不足ダイエッター”に向いているといえます。
また、プロテインに比べて1袋あたりのカロリーが低いこともダイエットに適している理由の一つです。
青汁1(2包/6g) | 22.26 kcal |
青汁2(3袋/9g) | 28.98 kcal |
青汁3(1本/200ml) | 37 kcal |
プロテイン1(1食/29g) | 113.7 kcal |
プロテイン2(1食/30g) | 117.9 kcal |
プロテイン3(1食/28g) | 111.7 kcal |
ただし、ダイエットを行う上では、単に体重を減らすだけではなく太りにくい身体を作るという事も重要で、それを目標で行う方もいます。その場合、筋肉を付けることは重要になりますから、たんぱく質が多く含まれたプロテインの方がおすすめです。
短期的にでも体重は減らしたい理由がある方は青汁で、長期的なボディメイクや太りにくい身体を作り上げたいという方はプロテンといった使い分けが出来るかと思います。
どちらも「飲むだけで痩せる」ということはありません。ダイエットの成功には、あくまでも食生活の見直しと定期的な運動が不可欠となります。
青汁とプロテインを併用しても大丈夫?
青汁とプロテインそれぞれの栄養素の特徴から、目的別にどちらが適しているかを評価しましたが、両方を摂取するという選択肢はもちろん”アリ”です。
『筋力アップしたいからプロテインを飲みたいし、便秘がちだから青汁も飲んでみたい。』
こういった目的で青汁とプロテインを併用しても特に問題ありません。
前述した内容にまとめてあるように、一般的な傾向として、青汁とプロテイン(プレーン味)で含有している栄養素は異なる傾向にありますが、商品によっては重複することもあります。
そうなると気になるのが”栄養素の過剰摂取”です。
そこで、数ある青汁とプロテイン商品の中から、あえて栄養素が多く重複している商品を選び、併用した場合の栄養素の合計と1日の摂取目安量・推奨量・耐容上限量を表にまとめました。
栄養素 | 青汁① | プロテイン① | ①②併用の合計 | 目安量 | 推奨量 | 耐容上限量 |
---|---|---|---|---|---|---|
たんぱく質 | 0.8 g | 21.7 g | 22.5 g | 記載なし | 50 g | 記載なし |
ビタミンA | 385 ㎍ | 285 ㎍ | 670 ㎍ | 記載なし | 700 ㎍ | 2700 ㎍ |
ビタミンB1 | 1.15 mg | 0.701 mg | 1.851 mg | 記載なし | 1.1 mg | 設定なし |
ビタミンB12 | 1.2 ㎍ | 0.889 ㎍ | 2.089 ㎍ | 記載なし | 2.4 ㎍ | 設定なし |
ビタミンC | 50 mg | 33.91 mg | 83.91 mg | 記載なし | 100 mg | 設定なし |
ビタミンD | 2.75 ㎍ | 1.869 ㎍ | 4.619 ㎍ | 8.5 ㎍ | 記載なし | 100 ㎍ |
赤太字は、両方を合計した時に1日の目安量または推奨量を超えているもの、黒太字は目安量・推奨量には届きませんが、かなり近い数値になっているものです。
目安量・推奨量・耐容上限量について
耐容上限量といのは、この値を超えて摂取した場合、過剰摂取による健康障害が発生するリスクがゼロでは無くなることを示す値となりますので、数値に近づかないよう注意する必要があります。
「記載なし」については、多くの場合、科学的根拠が十分ではないことから数値が示されていないだけで耐容上限量そのものが無いという事ではありません。
つまり、多く摂取した場合の安全性は保障されていませんから、目安量または推奨量を大幅に超える適度な摂取は禁物です。
このように、自分が購入する(した)商品の栄養成分表示と1日の摂取目安量を比べることで、青汁とプロテインの併用における過剰摂取の危険性を回避できますので、是非参考にしてみて下さい。
もちろん、健康のためには食生活や運動などの生活習慣の改善が前提条件です。その上で、必要な栄養素をサポートする目的で青汁やプロテインを使用、併用しましょう。
参考文献(References)
※1 健康日本21 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b1.html#A15
※2 乳酸菌 | e-ヘルスネット(厚生労働省)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-026.html
※3 日本人の食事摂取基準(2020年版)https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf