こんばんは。総合内科専門医の藤田です。
これから青汁を始めようと思っている方、すでに青汁を飲んでいる方の中には、
- 青汁を飲めば野菜不足を解消できる。
- 青汁を野菜の代わりに飲めば十分な栄養は取れる。
- サラダを作るのは手間なので、手軽な青汁で済ませたい。
このように思っている方や、このような意識で青汁を飲んでいる方がいるのではないでしょうか。
青汁のコマーシャルやスーパー、ネット通販サイトで見る青汁の商品紹介では「栄養”豊富”」「”1日分”の野菜」「食物繊維”たっぷり”」といった言葉が並んでいるので、やはり青汁の栄養素は多く、十分な量があるように感じるでしょう。
しかし本当にそうなのでしょうか?私たちに必要な栄養は青汁で摂れるのでしょうか。
そこでこの記事では、生野菜と青汁商品の栄養について詳しく調査・比較してみました。また、青汁を飲むことと生野菜を食べることの違いについても詳しく解説します。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
わたしたちが1日に摂取したい野菜の量と不足分について
厚生労働省が公開している健康政策「健康日本21(第二次)」の中で示されている野菜の摂取目標量は、生野菜にして350g(緑黄色野菜120g/その他の野菜230g)となっています。※1
また、同じく厚生労働省により公開されている「令和元年 国民健康・栄養調査報告」によると、日本人の1日の野菜摂取量の平均は約280gとなっています。※2
つまり約70g分の野菜が毎日不足しているというのが、今の日本人の食生活の現状ということになります。
仮にあと70g分の生野菜から摂れる栄養を、手軽な青汁を飲むだけで摂取できたら、わたしたちとって理想的と言えるのではないでしょうか。
青汁と生野菜(不足分70g)から摂取できる栄養素の比較
そこで、実際に1日の野菜不足分70gに含まれる栄養量と、各青汁商品の1日の”最大”摂取目安量※に含まれている栄養量を比較してみました。
まずは生野菜70gの栄養素と含有量を調査、つづいて各青汁商品の栄養素と含有量を調査、それらを比較してみます。
※青汁には商品ごとに摂取目安量というものがパッケージ裏などに記載されています。粉末タイプの青汁だと大体1~3袋(3g~12g程度)程度が摂取目安になっています。
生野菜70g(1日の不足平均分)の栄養と含有量
生野菜70gというのはおおよそ野菜サラダ1皿分です。ここでは上の写真にあるような一般的な生野菜サラダを例に挙げて、含まれる栄養素とおおよその量をまとめてみました。
栄養素 | キャベツ 12g | ブロッコリー 26g | リーフレタス 17g | きゅうり 10g | ミニトマト 15g | 合計 野菜サラダ1皿70g |
---|---|---|---|---|---|---|
ビタミンA | 0.48㎍ | 17.42㎍ | 34㎍ | 2.8㎍ | 12㎍ | 66.7㎍ |
ビタミンE | 0.012mg | 0.624mg | 0.221mg | 0.03mg | 0.135mg | 1.022mg |
ビタミンK | 9.36㎍ | 41.6㎍ | 27.2㎍ | 3.4㎍ | 1.05㎍ | 92.06㎍ |
ビタミンB1 | 0.005mg | 0.037mg | 0.017mg | 0.003mg | 0.015mg | 0.077mg |
ビタミンB2 | 0.004mg | 0.052mg | 0.017mg | 0.003mg | 0.015mg | 0.091mg |
ビタミンB6 | 0.013mg | 0.071mg | 0.017mg | 0.005mg | 0.015mg | 0.121mg |
葉酸 | 9.36㎍ | 54.6㎍ | 18.7㎍ | 2.5㎍ | 5.25㎍ | 90.41㎍ |
ビタミンC | 4.92mg | 31.2mg | 3.57mg | 1.4mg | 4.8mg | 45.89mg |
ナトリウム | 0.6mg | 5.2mg | 1.02mg | 0.1mg | 0.6mg | 7.52mg |
カリウム | 24mg | 93.6mg | 83.3mg | 20mg | 43.5mg | 264.4mg |
カルシウム | 5.16mg | 9.88mg | 9.86mg | 2.6mg | 1.8mg | 29.3mg |
マグネシウム | 1.68mg | 6.76mg | 2.55mg | 1.5mg | 1.95mg | 14.44mg |
鉄 | 0.036mg | 0.26mg | 0.17mg | 0.03mg | 0.06mg | 0.556mg |
食物繊維(総量) | 0.216g | 1.144g | 0.323g | 0.11g | 0.21g | 2.003g |
※栄養素については主なものを抜粋しています。
ブロッコリーについては厳密に言うと生野菜ではありません。生ですと流石に食べにくいですから”ゆでる”事を考えましたが、ゆでてしまうと栄養の40%を損失してしまうので、電子レンジで蒸して栄養が逃げないようにしました。
粉末タイプの青汁2商品と野菜サラダ1皿分(70g)の比較
今回は写真の「ふるさと青汁」と「トクホの青汁ファイバー・イン」の栄養素と、上で紹介した野菜サラダ1皿分(70g)の栄養量を比較してみます。
栄養素 | トクホの青汁 ファイバー・イン 3袋 12.9g | ふるさと青汁 3袋 9g | 野菜サラダ 1皿 70g |
---|---|---|---|
ビタミンA | 5.805㎍ | 54㎍ | 66.7㎍ |
ビタミンE | 0.245mg | 0.396mg | 1.022mg |
ビタミンK | 108.876㎍ | 99㎍ | 92.06㎍ |
ビタミンB1 | 0.021mg | 0.017mg | 0.077mg |
ビタミンB2 | 0.04mg | 0.05mg | 0.091mg |
ビタミンB6 | – | 0.031mg | 0.121mg |
葉酸 | 14mg | 9㎍ | 90.41㎍ |
ビタミンC | 0.903mg | 1.17mg | 45.89mg |
ナトリウム | 2.567mg | 20.5mg | 7.52mg |
カリウム | 86.172mg | 153mg | 264.4mg |
カルシウム | 10.294mg | 57.6mg | 29.3mg |
マグネシウム | 5.999mg | 9.9mg | 14.44mg |
鉄 | 0.863mg | 0.495mg | 0.556mg |
食物繊維(総量) | 7.572g | 4.248g | 2.003g |
※トクホの青汁ファイバー・インについてはこちらを参考に算出しています。(小数点第三位まで)
粉末タイプの青汁で、ビタミンやミネラルまで栄養成分表示をしている商品は少ないのが現状です。こうして見ると1日3袋摂取目安の青汁であれば、多少の栄養バランスの違いはありますが、野菜の不足分を十分に補えることが分かります。
冷凍タイプの青汁商品と野菜サラダ1皿分(70g)の比較
冷凍タイプの青汁を調査してみたのですが、なぜかほとんどの商品で栄養成分表示をネット上に公開していませんでした。唯一確認できた「ザ・ケール 冷凍タイプ」においても、ビタミン・ミネラルの一部の栄養素についてしか確認できませんでした。
栄養素 | ザ・ケール 冷凍タイプ 2袋 180g | 野菜サラダ 1皿 70g |
---|---|---|
ビタミンA | – | 66.7㎍ |
ビタミンE | – | 1.022mg |
ビタミンK | 148㎍ | 92.06㎍ |
ビタミンB1 | – | 0.077mg |
ビタミンB2 | – | 0.091mg |
ビタミンB6 | – | 0.121mg |
葉酸 | – | 90.41㎍ |
ビタミンC | 386mg | 45.89mg |
ナトリウム | 28mg | 7.52mg |
カリウム | 432mg | 264.4mg |
カルシウム | 262mg | 29.3mg |
マグネシウム | – | 14.44mg |
鉄 | – | 0.556mg |
食物繊維(総量) | 0.4g | 2.003g |
このように一部の栄養素しか表示されていませんでしたが、表示されている栄養素については全て、粉末タイプの青汁、そして野菜サラダ1皿分(70g)を大きく上回っていることが分かります。
青汁は生野菜の代わりになる?
野菜1日分の栄養を摂取することは到底むずかしいですが、1日の野菜摂取目標量の不足分70gの代わりにはなると言えるでしょう。
ただし、栄養を摂取すること以外に目を向けると、青汁を飲むことは生野菜を食べることの代わりには成り得ません。理由は、青汁は咀嚼(そしゃく)しないからです。
咀嚼(そしゃく)の効果について
咀嚼(そしゃく)とはしっかりよく噛んで食べることです。一見シンプルなことなのですが、実は咀嚼は肥満防止になるという事実をご存じでしょうか。
そのカラクリは、まず食べ物を噛み始めると「歯根膜(しこんまく)」という歯をアゴの骨に固定している膜が、食べ物の固さを感知します。そして、その情報が脳に伝わることで後部視床下部という部位が刺激され、神経性ヒスタミンという物質が大量に放出されます。
この神経性ヒスタミンは満腹中枢を活性化する作用があり、それが『お腹一杯になったな。』という感覚を引き起こすのです。つまりその結果、食べ過ぎを防ぎ肥満防止になるということです。
さらに、咀嚼をすると食事誘発性体熱産生(食後に代謝が活発化して生じる熱の発生)が起こりやすくなり、これも満腹中枢を刺激してくれます。
平成21年度の国民健康・栄養調査結果※3では、体型における食べる速さとの関係をまとめた資料があります。
肥満に該当する方で「速い」と回答した人の割合は男性63.9%、女性46/5%になっていて、痩せている方および普通の体型の方よりも多いという結果が公開されています。
まとめ
青汁に含まれている栄養素とその含有量は、1日に摂取したい野菜の量に含まれる栄養量には遠く及ばないものの、1日に不足している野菜に含まれる栄養量を補うという目的に利用する場合、青汁は非常に有効な健康食品であることが分かりました。
ただし、青汁商品の中には栄養成分表示が記載されていないものがあり、栄養について不透明な部分もありますから、できれば栄養成分表示の記載がある青汁を選ぶことが望ましいでしょう。
繰り返しになりますが、青汁はあくまでサポートとして捉え、基本的には普段の食事で野菜をできるだけ食べるという意識が大切です。
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参考文献(References)
※1 健康日本21(第二次)|厚生労働省
※2 令和元年国民健康・栄養調査報告|厚生労働省
※3 平成21年度 国民健康・栄養調査結果|厚生労働省