対症療法の功罪(その2)慢性頭痛

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こんにちは。内科総合クリニック人形町 院長の藤田(総合内科専門医)です。

前エントリー(対症療法の功罪 その1)では、花粉症と逆流性食道炎について、対症療法の功罪を書きました。

今回は慢性頭痛の対症療法を取り上げます。

目次

慢性頭痛の対症療法の功罪

いわゆる「頭痛持ち」の方は周囲に一人や二人いらっしゃるのではないでしょうか?慢性頭痛の中でも多いのが緊張性頭痛と片頭痛です。特に片頭痛では、ちょっとした日常動作すらも出来なくなる場合が多く、薬に頼るのもやむを得ないと思います。

対症療法として市販の頭痛薬(イブ、ロキソニンS、タイレノールなど)を買ってのむという方が多いでしょう。症状がひどい方は医療機関でロキソニン、ボルタレンといった鎮痛剤を処方されているかもしれません。

こうした鎮痛剤を使うことは、月に数回程度ならそんなに問題ありません。

しかし数か月以上にわたって2日に1回以上、こうした鎮痛剤を使うようになった場合は、薬剤使用過多による頭痛という新たな疾患になっている可能性があります。

薬剤使用過多による頭痛とは矛盾した言葉のように思われるかもしれませんが、鎮痛剤の使い過ぎによって痛みの閾値が下がってしまい、鎮痛剤が手放せなくなってしまった状態です。

こうなってしまうと、治療は原因となっている鎮痛剤の減量・中止・他の薬への変更(一般にはあまり知られていませんが、ミグシス、デパケン、トリプタノールといった薬剤が使われます)しかありません。

緊張型頭痛・片頭痛の症状に影響する要因

ではこうならないように、慢性頭痛には原因療法は無いのでしょうか?

緊張型頭痛も片頭痛も、原因が全て解明されている訳ではありませんが、特定の生活スタイルや生活環境と関連があることが分かっています。

緊張型頭痛の場合は

  • 長時間同じ姿勢を取ること(特にデスクワークや車の運転のようなうつむきの姿勢)
  • 運動不足
  • 高さの合わない枕
  • 精神的ストレス

片頭痛の場合は

  • チラミン含む食物(オリーブオイル、チーズ、赤ワイン、ハム・サラミ)や、アルコール、チョコレート、柑橘類などの摂取。
  • 大きな音・強い光・強い臭いといった刺激
  • 気候・気圧の変化
  • (女性の場合)月経による女性ホルモン血中濃度の変化

これらはいずれも根本原因ではありませんが、頭痛症状を悪化させることが分かっており、これらの要因を回避したり、生理前や台風前などに予め予防薬をのむことで、鎮痛剤の減量や症状の軽減が期待できます。

片頭痛が起こるメカニズムとトリプタン

片頭痛が起こるメカニズムについては様々な学説があっていまだ混沌としていますが、少なくとも三叉神経(という頭の中にある太い神経)の過敏性とセロトニンが関係していることは分かっています。

片頭痛の発作に対してはトリプタンというセロトニンと似た働きを持つ治療薬があります。日本でも2000年から保険適応となり、これによって片頭痛の治療が大きく変わりました。

現在日本で処方できるトリプタンにはイミグラン、ゾーミッグ、レルパックス、マクサルト、アマージの5種類あり、作用の持続時間や脳への分布のしやすさなどが少しずつ違います。トリプタンは必ず医師の処方が必要です。

トリプタンも万能かというとそうでも無く、効果が無い/乏しい患者さんが3割程度いることが分かっていますが、ロキソニンやボルタレンといった鎮痛剤と比べるとより原因療法に近いもので、また重大な副作用も少ないです。

ロキソニン・ボルタレンは非ステロイド性抗炎症薬に分類され、連用すると胃潰瘍や腎障害といった重大な副作用を起こす場合があります。

また、トリプタンが効かなかった方でも、呉茱萸湯(ごしゅゆうとう)や五苓散(ごれいさん)といった片頭痛に効果のある漢方薬を試してみる価値はあります。トリプタンも漢方薬も副作用はゼロではありませんが、非ステロイド性抗炎症薬のような高頻度の重大な副作用は見られません。

医療機関できちんと片頭痛の診断を受け、予防策を講じ、それでも頭痛発作が起こった時はトリプタンや適切な漢方薬を服用する。これが適切に行われていれば良いですが、片頭痛なのにそうと診断されておらず、ロキソニンやボルタレンが手放せなくなってしまった患者さんに遭遇することが時たまあります。

医師がそのような患者さんを作り出してはならないと思っています。慢性的に頭痛がある方は是非、医療機関で「ロキソニン(やボルタレン)を下さい」と言うのではなく、

「私の頭痛は片頭痛なのでしょうか?」

と聞いてみて下さい。詳しい問診を行わずに「わかりません」「違うでしょう」のような返事が返ってくるようなら、他の先生を探した方が良いかもしれません。

片頭痛の治療については日本頭痛学会のサイトによくまとまっているので、興味のある方はご覧になってください。

http://www.jhsnet.org/ippan_zutu_kaisetu_02.html

以上


この記事を書いた人

内科総合クリニック人形町院長 藤田医師
藤田 英理

内科総合クリニック人形町 院長
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
東京大学医学部保健学科および横浜市立大学医学部を卒業
東京大学付属病院や虎の門病院等を経て2019年11月に当院を開業
最寄駅:東京地下鉄 人形町および水天宮前(各徒歩3分)

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