- 育毛剤の濃度を上げる場合「かぶれ」だけ注意すればほぼ大丈夫
- 外用薬の場合は濃度よりも頻度と量が大事
- 内服する場合の上限は2.5mg。これ以上は重篤な副作用が出ます
- ミノタブは半分に割って濃度調整すれば節約にもなり一挙両得
今回は、発毛成分ミノキシジルの「濃度」に関する記事になります。
「成分が濃いほうが発毛する」と思っている方が多いと思いますが、結論を先に書くと、大事なのは濃度よりも「接触頻度」です。
医学的にはわりと初歩的とも言える「濃度より頻度」を知らない医師も多く、患者に発毛傾向がみられないと処方するミノキシジルの濃度をどんどん上げていき、その結果患者に重篤な副作用が出てしまったケースも報告されています。
10mgという、あやうく致死量にも達しかねない濃すぎるミノタブを、副作用の説明を十分にしないまま処方する医師もいるのです。警告の意味も込めてミノキシジルの正しい濃度について、当院院長の藤田先生に解説してもらいます。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
育毛剤の濃度を上げる場合「かぶれ」だけ注意すればほぼ大丈夫
藤田先生、まず育毛剤タイプのミノキシジルの適正濃度を教えてください。
6%から8%くらいだと思います。頭皮のかぶれが出ないギリギリの濃度が適正値になるので、こればかりは試してみるしかないですね。
解説いたします
ミノキシジル含有の育毛剤は、
- リアップ(大正製薬)
- メディカルミノキ5(スカルプD)
- リグロEX5(ロート製薬)
などが市販されていて、いずれもミノキシジルの濃度は液体量に対して5%となっています。
スカルプDから発売されているメディカルミノキ5を例にすると、60ml(缶コーヒーの1/3くらいの量)の液体量に対して5%のミノキシジルが含まれています。
厚労省の上限規制
市販されているミノキシジル含有の発毛剤が、なぜ揃いもそろって5%なのかというと、厚生労働省の規制のためです。
育毛剤タイプのミノキシジルは、副作用として頭皮のかぶれが起きることがありますが、メーカー側の臨床試験で「5%までならかぶれはほとんど起きない」ということもデータで示されています。
薬の許認可時にその臨床データをメーカーが厚労省に提出しますが、データに客観性と論理性があったことから厚労省も「5%までなら認めてあげよう」と許認可を出しているのです。
ただし、実際には5%だと少し濃度が薄いかなと思います。いくらミノキシジル外用薬が「濃度より頻度が大事」とは言え、5%だと少し心細いです。
実際にリアップなどで「フサフサになった」という話を聞いたことがあるでしょうか?恐らくないはずです。個人差はもちろんあって、適正濃度は6%から8%くらいだと思います。
ミノキシジルは循環器(心臓・肺・血管など)に副作用が出ることがあっても、育毛剤として頭皮に塗るだけならこれらの副作用が出るケースは稀(まれ)で、外用薬として使用する際に気をつけるのは実質「かぶれ」だけです。
6パーセント以上のミノキシジル
AGA専門クリニックや個人輸入代行では、6%以上のミノキシジル発毛剤が手に入ります。
原理的にいえば、濃度が高ければ発毛期待値も比例して上がっていくことは確かです。
それゆえにAGA専門クリニックなどでは、発毛の結果が出ないとどんどんと濃度をあげていき、私が知る限りでは10%どころか15%のものまで処方するクリニックもあります。
「副作用はどうなの?危なくない?」と思いますよね?頭皮から塗るのであれば「頭皮のかぶれ」以外の健康被害が出ることは、ゼロとは言いませんがほとんど考えられません。周囲で聞いたこともないので、15%のミノキシジル外用薬でも大きな問題は起きないと思います。
ただし、ミノキシジルは「飲んで効果があるもの」です。頭皮からどんなに濃いミノキシジルをふりかけても(例えば5%の3倍の15%のミノキシジル)、髪の毛が3倍生えてくるわけではなく、「5%の時より少し生えたかなあ?」という程度の差しか出ません。
なぜかというと、そもそも使い方と考え方が間違っているからです。
外用薬の場合は濃度よりも頻度と量が大事
ミノキシジル外用薬(育毛剤、あるいは発毛剤とも言う)は、1日に3-4回頭皮にふりかけるのが「結果が出る使い方」です。
このことをほとんどの医師が知らなくて逆にびっくりします。15%の濃度のミノキシジルを夜の風呂上りに1回頭皮にふりかけるのと、5%のミノキシジルを1日3回ふりかけるのとでは、後者のほうが結果が出るのです。
大事なのは濃度ではなく頻度。理想は朝昼夕、そして寝る前の1日4回ですが、現実的ではないので、「最低でも2回、できれば朝昼晩の3回」と覚えておいてください。
そして、1回あたりできるだけ多くの量をふりかけてください。こうすることでミノキシジルが頭皮内の毛細血管への接触頻度があがり毛根が活性化します。
なお、市販薬であるリアップやメディカルミノキ5よりも、AGA専門クリニックで入手できるミノキシジル外用薬のほうが診察料込みでも価格が安いケースが多いです。
リアップなどの市販育毛剤と同等以上の品質のミノキシジル育毛剤が安く入手できるクリニックを探してみたところイースト駅前クリニックという医院を見つけました。
- 全国の主要駅の駅前に店舗がある
- 6%以上のミノキシジル外用薬を置いている
- ミノキシジル外用薬を単品購入できる
この3つが揃っていて、かつ、他のクリニックより安かったので紹介しました。念のため価格コムなどでリアップの最安値を頭に入れたうえでイースト駅前クリニックを訪ねてみてください。
初診以外は郵送で育毛剤を送ってくれ、最近流行りの遠隔診療系クリニックよりも価格が安いです。
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内服する場合の上限は2.5mg。これ以上は重篤な副作用が出ます
藤田先生、ミノキシジルを飲み薬として服用する場合の濃度についてアドバイスをお願いいたします。
タブレット剤(飲み薬)として服用する場合の限界濃度は2.5mgです。これ以上は健康と引き換えに発毛させるようなものなので十分にご注意ください。
解説いたします
薄毛の悩みは深く、大きいなストレスを抱えて生活していらっしゃることは想像に難(かた)くありません。一日も早く発毛させたいという気持ちは私にも痛いほど伝わってきます。
しかし、男性的言葉を使わせていただくなら「健康でナンボ」「生きててナンボ」。
AGA専門クリニックの先生達に大変失礼な言い方になってしまいますが、AGA専門クリニックで勤務するような医師は、いわゆる「おちこぼれ」や門外漢(元が眼科医だったり麻酔科医だったり)が多いです。
AGAの治療は、結局のところ腕はほとんど関係なく、薬を飲む患者がレスポンダー(飲む薬に対して期待した効果が出る人のこと)なのかどうかで決まります。
ミノキシジルタブレット(ミノタブ)の場合、顕著に薄毛が改善するレスポンダーの割合は25%程度で「やや改善する」が20%くらいです。
引き算をすると55%の人がミノキシジルを飲んでも発毛しないということになり、たまたま受け持った患者がミノキシジルに対してレスポンダーであれば2.5mgの濃度でも十分に生えてくるし、逆にノンレスポンダーなら10mgのものを服用しても生えてきません。
ビタミンやニコギリヤシ、亜鉛やL-リジンなど、髪の毛の良い成分はミノキシジル以外にもあり、ミノキシジルに混ぜて「オリジナル治療薬」と称して処方するクリニックも存在しますが、ただのまやかしです。
5mgや10mgという超高濃度のミノキシジルタブレットを処方する先生が多く、循環器系を専門にしてきた私に言わせると「患者を殺す気ですか!」と言いたくなります。
ミノキシジルは、「半劇薬」と言っても過言ではない非常に強い薬で、元々は血管拡張剤として使用されてきました。
動脈に「のみ」作用するのがこの薬の特徴で、それゆえ(静脈には作用しない)に心臓動作に不均衡が起こり心臓に大きな負担がかかります。
心臓に負担がかかれば心臓に酸素が大量に必要になるので、心臓に酸素を送り込む循環器系臓器である肺にも負担がかかり、最悪の場合呼吸不全や不整脈を引き起すことも。
ミノキシジルにレスポンダーなのであれば通常は1.25gmで十分に発毛するし、どんなに濃くても2.5mgまでが健康でいられる限界濃度です。
循環器を勉強していれば当たり前に知っているこの事実を、AGAクリニックの先生たちはほとんど知りません。ミノキシジルという強い薬を処方しているのに心電図をとることすら怠るので、本当に怖いです。
決して飲むなとはいいません。実際ミノキシジルは育毛剤としていくら頭皮に正しく塗っても効果は知れているし、逆に飲めば発毛期待値は大きくあがるので、AGA治療薬としては有効な手段です。
ただしくどくて恐縮ですが、どうか用量は2.5mgまでに抑えてください。それ以上は循環器系に副作用が出る可能性が一気に高まるので、自分の身を守るためだと思ってしっかり知識として頭に叩き込んでおいてください。
ミノタブは半分に割って濃度調整すれば節約にもなり一挙両得
藤田先生、ミノタブの推奨濃度が1.25mgでMAXでも2.5mgということは分かりました。ただし1.25mgのミノタブを見たことがありません。どこで手に入るのでしょうか?
良い質問です。たしかに1.25mgのミノタブはまず手に入りません。その場合は2.5mgのものを入手して爪で割って半分にして飲んでください。
解説いたします
ミノキシジルタブレット(通称ミノタブ)で市場に出回っている最小濃度は恐らく2.5mgだと思います。
※クリニックによっては2mgのミノタブを置いてあることも
もちろんこのままだと適正濃度である1.25mgで服用できません。このような場合は爪で割ります。
下記は5mgのミノタブを親指の爪で半分に割った後の画像です。
ミノタブには多くの場合錠剤の表面に線の凹凸(おうとつ)が入っていて、その線に爪を合わせて折ればだいたい半分に割れます。2.5mgのミノタブを割れば1.25mgになり、5mgしか入手できないのであればさらに割って四等分してください。
ミノタブには正規薬が存在しないので割っても問題なし
ミノキシジルタブレットに限った話ではなく、正規品として処方される飲み薬は「割らないでください」と注意書きをしているものが多いです。
割ると品質が落ちる飲み薬が存在していることは私も知っていますが、あくまでそれは「正規品」に限ります。
ミノキシジルタブレットはそもそもが未認可薬なので、「正規品」は存在しません。クリニックによっては海外製の安いミノタブを入手して、それを割って再結合させてオリジナル治療薬として処方しているところもあるくらいです。
ミノキシジルタブレットは爪で割ってしまって全く構いません。そもそもが未認可薬で品質保証などないので、割っても問題ないのです。
割って飲んだ方がはるかに経済的
見落としがちな大事なことを説明します。2.5mgのミノタブと5mgのミノタブだと、実は値段に大きな差はありません。
5mgが8,000円としたら半分の濃度の2.5mgだと値段も半分なのかなと思ったら、価格は半分にならず6,500円、ということも。
5mgのミノキシジルタブレットを入手して割って半分にして飲んだほうが、経済的に断然お得です。
※製薬会社さんの商売の邪魔をするようでごめんなさいm(_ _)m
AGA(男性型脱毛症)の治療費はただでさえ高いので、適正濃度である1日1.25mgを飲みたい場合は、2.5mgのミノタブを入手して半分に割って飲むか、5mgのものを入手してそれを四等分にして1日1粒づつ飲めば、相当な節約ができておすすめです。
几帳面で「あいまい」が大嫌いな性格の人は、Amazonなどで「ピルカッター」と検索してみてください。錠剤を綺麗に割れる安価なカッターが市販されているので、それでミノタブを割って飲んでください。ちなみにピルカッターはダイソーなどの100円ショップでも入手できます。
まとめ
ミノキシジルの濃度に関しては誤情報が多く、また、不勉強な医師が半致死量とも言える10mgのミノタブを平気で処方したりしています。当記事に書いてあることを頭に入れて、最寄りの皮膚科やAGA専門クリニックに行かれると良いと思います。
最後、この記事を重要なポイントだけ簡単にまとめておきますね。ご参考までに。
- ミノキシジル外用薬(育毛剤)は濃度よりも使用頻度の多さが大事
- ミノキシジル外用薬は市販薬よりもAGA専門クリニックのほうが安い場合が多い
- ミノキシジルタブレット(飲み薬)の推奨濃度は1.25mgでMAXでも2.5mgまで
2.5mgのミノキジジルタブレットを処方している、良い意味で珍しいクリニックの紹介含めて、下記の記事が参考になると思いますのであわせて読んでみて下さい。
以上
参考文献
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