- ミノキシジルタブレットを飲まないとダイナミックな発毛は望めません
- 流通しているミノキシジルタブレットはすべて非正規薬であることを認識しておきましょう
- 副作用は主に循環器系に出るので心臓や肺に問題がある人は服用厳禁
- 濃度の薄い2.5mgのミノタブをさらに半分に割って服用してください
- 飲み続ける必要があり、効果は徐々に弱まってきます
AGA(男性型脱毛症)の治療薬として知る人ぞ知るミノキシジルタブレットは、体質さえ合えば本当にガツンと発毛するすごい飲み薬です。
しかしこの薬は、厚労省の未認可薬であるため「正しい飲み方」の基準がなく、それゆえにいきなり濃い濃度のミノキシジルタブレットを飲んでしまって胸の動悸などの副作用が出てしまったり、不整脈のような状態を引き起こしてしまう方もいます。
こんな怖い話を聞いてしまうと「飲みたくない」「飲むのが怖い」と思いますよね。でも、この薬は飲み方さえあなたが理解しておけば発毛の強い強い味方になってくれます。
そこでこの記事では、副作用を考慮した上でのミノキシジルタブレット(通称:ミノタブ)の標準的で正しい飲み方について解説していきます。
この記事の執筆者

藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
ミノキシジルタブレットを飲まないとダイナミックな発毛は望めません

ミノキシジルタブレット使用歴が15年ほどになるそうですが、やはりこの薬を飲まないとダイナミックな発毛は難しいのでしょうか?

そうですね。プロペシアなどの他の薬をいくら飲んでも、ミノタブを飲まないことにはガツンと発毛はしないですね。

ミノキシジルは正規に流通しているものは育毛剤だけだと思いますが、育毛剤としてのミノキシジルはどうなんでしょうか?

多少は効果はありますけど、頭皮に塗るだけだと、飲むほどの効果は見込めないですね。

解説いたします
大正製薬リアップやロゲイン、スカルプDミノキなどの頭皮に塗るタイプのミノキシジルは役立たずの育毛剤ではなく、そこそこ効く人もいるとは思いますが、大きく効果が出たとしても「お?少し生えたぞ」程度だと思います。

AGA専門クリニックに行くと、最初は塗るタイプのミノキシジルから治療に入る場合が多いですが、期待したほどの効果はなかなか出ないので、患者側が耐えきれずに「早く結果を出したい」と懇願し、早々に飲み薬タイプのミノキシジルが処方されることになります。
流通しているミノキシジルタブレットはすべて非正規薬であることを認識しておきましょう

藤田先生はミノキシジルタブレットは処方したことがないとおっしゃっていましたが、それはなぜでしょうか?

ミノキシジルタブレットは未認可薬だからです。インフォームドコンセントといって、患者さんに副作用含めてしっかり説明した上で患者さんが希望をすれば錠剤タイプのミノキシジルを処方することは認められています。とはいえ未認可薬を取り扱うのはリスキーなので私は冒険しないようにしているのです。

解説いたします
AGA専門クリニックや一部の植毛クリニックで錠剤タイプのミノキシジル(通称ミノタブ)を処方していますが、当該のクリニックの公式ホームページを見てみると、特に大手の場合ミノタブを取り扱っていることを記載しているところはまずありません。
理由は未認可薬だからです。ミノキシジルは、育毛剤としては医薬品として厚労省から認可されていますが、飲み薬は医薬品としての認可を受けていません。
それよりも気にして欲しいことは、錠剤タイプのミノキシジルは世界中どこの国でも医薬品として認可されていないので「正規薬」が存在しない点です。
国内外で流通している全てのミノキシジルタブレットは、大手製薬会社が調剤したものではありません。中小の製薬会社、という表現よりも「もぐりの製薬会社」と言ったほうが伝わりやすい会社が流通させている薬、であるということを理解しておいてください。
つまり品質の安定性に問題がある、ということです。

たしかにこの薬を飲めば、塗るタイプのミノキシジルに比べて大きな発毛効果が期待できることは私も知っています。ですが品質に安定性を望めないことから、「飲めば絶対に生えます」とは私は言いませんし言えません。
「じゃあ飲まないほうがいいのか?」というと、そうとも言いません。ミノキシジルに対するしっかりとした知見をあなた自身が積んでおけば、飲んでみてもいいと思います。
ダメなのは、勉強もせずに個人輸入代行などで購入して飲むことであって、しっかりと事前にミノキシジルについて勉強し、さらに医師の説明をしっかり受けたうえで納得できるのなら飲んでみてもいいのではないでしょうか。すごい薬であることは確かですから。
副作用は主に循環器系に出るので心臓や肺に問題がある人は服用厳禁

ミノキシジルの最大のリスクを説明していきます。
ミノキシジルは循環器系(肺や心臓、血管、リンパ等)に作用がある薬です。
自毛植毛でFUTと呼ばれるメスを使った植毛手術をされた経験がある先生なら何度か症例を見たことがあるはずですが、ミノキシジルを飲んでいる患者さんをメスで切ると、「え?」というくらい血がドバドバと出てびっくりします。それくらい作用が強い薬です。
少し医学的に説明していきましょう。
ミノキシジルは血管平滑筋という血管を動かす筋肉を弛緩させる作用があります。これだけなら特に大きな問題にはならないのですが、ミノキシジルは動脈にだけ作用してしまい静脈には作用しません。
具体的にどうなるかというと、心臓から血液を送り出す動脈側ではミノキシジルが作用して血流が強くなり、その強い血流のまま心臓に戻ってくる側の静脈に血液が入りこみます。

血液が心臓を出る時と戻る時に不均衡が生じるので、心臓が通常時より働かないといけないのですが、この時に心臓への酸素量が足りていないと、軽度の心症発作を起こします。これが胸の痛みです。
酸素を供給する器官である肺も、通常よりも多くの酸素を心臓に供給する必要性が出てくるので、ミノキシジルを服用すると肺に影響が出てしまい、ひどい人になると呼吸器不全や不整脈になってしまいます。
このようなリスクが明らかであるため、ミノキシジルは医薬品として厚労省から認可がおりません。
循環器系の専門知識がないAGAクリニックの先生での診断だけでは大変危険です。もしミノキシジルを服用されるのであればお近くの循環器内科などで定期的に心電図検査受けるようにして欲しいのと、少しでも違和感があったら飲むのをやめる勇気をもってください。

ミノキシジルを服用しないと大きな発毛効果は見込めないのは事実ですが、髪の毛よりも健康が第一です。自己判断で投与を続けるのは本当に危険なので、ミノキシジルを服用するなら循環器内科への定期通院はセットにして考えてください。
なおミノキシジルを服用した場合の発毛期待率は、約2-3割です。7-8割の人には発毛効果はないという言い方もできるし、あなたが「幸運な3割の人」ならば発毛は期待できる、そんな薬です。
濃度の薄い2.5mgのミノタブをさらに半分に割って服用してください

藤田先生、詳細な解説ありがとうございました。さすが専門だけあって循環器系には強いですね。

そもそもミノキシジルタブレットを処方していいのはAGA専門クリニックのような皮膚科系でなく循環器内科だと思いますよ。

そうですよね。私も相当な数の取材を重ねていますが、AGA専門クリニックの先生で循環器系のことを分かっている人に正直お会いしたことがありません。続いて、ミノタブの安全な飲み方についての解説をお願いします。

そうですよね。私も相当な数の取材を重ねていますが、AGA専門クリニックの先生で循環器系のことを分かっている人に正直お会いしたことがありません。続いて、ミノタブの安全な飲み方についての解説をお願いします。

解説いたします
ミノキシジルタブレットは作用が強い薬で、個体差(患者の体にどれだけ副作用が出るか、あるいは出ないのか)も大きいので、薄い濃度から服用していくことが大原則です。
おそらくですが、市場に流通しているミノキシジルタブレットの濃度は2.5mg・5mg・10mgの3種類くらいです。この中で絶対に手を出してはいけないのは5mgと10mgのミノキシジルタブレットです。

どんなに循環器系(肺や心臓、血管など)が健康な人でも5mgは強すぎます。ましてや10mgのミノキシジルタブレットを服用すると、相当な確率で胸痛や呼吸不全などの副作用が出てしまいます。5mgや10mgのものには勧められても手を出さないでください。
最初はまず1mg程度の濃度の薄いもので、あなたの体がミノキシジルを受け入れられるかどうかを試すとこからスタートしてください。
入手できる最小濃度が2.5mgの場合は、2.5mgのミノタブを半分に割って飲んでください。「薬は割ると品質が落ちる」と言われることが多いですが、そもそもミノタブは未認可薬なので品質うんぬんいうような類(たぐい)の薬ではなく、割っても大丈夫です。

上記は、親指の爪を使ってミノタブを半分に割った画像です。このように適当でかまいません。おそらく6:4くらいに割れていると思いますが、これが7:3で割れたとしても大丈夫です。
上記は5mgのミノタブを割っていますが、初心者は2.5mgのミノタブをだいたい半分に割って1粒を2日に分けて飲んでほしいということです。これを1か月程度続けてみてください。
通常、飲み始めてから3~4週間で髪の毛が抜け始めます。薄毛の状態からさらに髪の毛が抜けるのはとても怖いと思いますが、逆にこの初期脱毛が起きないと発毛もしないので、抜けることは良い兆候だと信じてください。
2か月経過して初期脱毛もなく、副作用も特に感じない場合は、3か月目から濃度を2.5mgに上げてみてください。そしてまた1-2か月様子見です。副作用が出るようなら服用をやめ、出ないようであれば服用は続けてかまいません。
ただし3か月目に入る前に、一度心電図検査を受けて本当に異常が出ていないか客観的に確認してみてください。
2.5mgを飲んでも副作用が出ず初期脱毛もしないなら、残念ながらあなたはミノキシジルタブレットに対してノンレスポンダー(その薬に効果が出ない人のこと)なので、ミノキシジルタブレットの服用は中止してください。

間違っても2.5mg以上のミノキシジルタブレットを飲むような真似は絶対にしないでください。自殺行為に等しいです。5mgや10mgのミノタブを飲んでも循環器系に異常が出ない人もいるけれど、それは稀な例なので、ミノタブの限界濃度は2.5mgであることを肝に銘じておいてください。
通常は飲み始めてから1か月以内に初期脱毛があり、4か月目に入ることから発毛が始まるはずです。逆に半年経過して頭皮がウンともスンとも言わない場合は、残念ながらあなたにはミノキシジルタブレットは効果がないということなので、服用を中止して、赤色LEDなど、他の発毛治療に移ってください。
※半年で諦めきれない場合は8か月くらいまで延長しても大丈夫ですが、8か月以上はお金の無駄になります
飲み続ける必要があり、効果は徐々に弱まってきます

ミノタブ服用歴が長い毛髪診断士さんにお伺いしますが、ミノタブによって満足できるレベルまで発毛しても薬は飲み続けるべきなんでしょうか?

そうですね。私も自分の体(頭皮)で色々実験してみましたが、服用をやめるとまた脱毛が始まってしまいますね。

薬への耐性(免疫)についてはいかがですか?普通どんな薬も飲み続けると体が慣れてきて効果は落ちてくると思いますが。

おっしゃるとおり、飲み続けるとミノタブに対する免疫が出来てくるのか、効果も弱くなってきますね。ただし、だからといって服用を中止するとまた一気に抜けてしまうので、薄い濃度でもいいし効果が弱まったとしても飲み続ける必要はあると思います。

解説いたします
私のほうから補足します。
髪の毛は一度生えると通常は4-6年程度は抜けません。これがAGAになると1年以内で抜け落ちます。これをヘアサイクルというのですが、ミノタブはヘアサイクルの中の「成長期」を無理矢理伸ばす薬なので、服用をやめれば成長期が伸びなくなって、その結果として1年以内での脱毛という症状が起きてしまうのです。

また、毛髪診断士さんがおっしゃったように、薬への耐性が徐々に出来るので、ミノキシジルタブレットの効きが悪くなります。ただし、弱くなったからといって服用を中止すると脱毛が加速してしまうので注意してください。
まとめ

最後に、私から記事をまとめておきます。
ミノキシジルタブレットは、未認可薬です。にもかかわらず、上述したような詳細説明をしないまま適当に処方するAGAクリニックが後をたちません。
ミノキシジルという成分は、循環器系という生命にとりとても重要な臓器に悪影響が出やすい薬なので、医師の先生が処方してくれたからといって安心しないでください。
私も自分の足を使って全国のクリニックを取材していって分かったことですが、AGAクリニックの先生たちは、頭皮のことは分かっていても循環器系はほぼ素人同然であることが多いです。某AGA専門クリニックの誰もが知る大手の院長は皮膚科どころか眼科出身だったりします。
ミノキシジルタブレットは、発毛効果が期待できる魔法のような薬であると同時にとてもきつい薬なので、医師の説明だけで納得せず、あなた自身がしっかりと勉強した上で慎重に服用してください。
ちなみに、AGAを専門にしている医師であっても、ミノキシジルタブレットに関してはこの記事より深い説明はできません。ここにすべて書き切りましたので。
よって、後は実践です。知識としてはもう十分だと思いますので、名医を探し回る必要はなく、価格が安いオンライン診療系のAGAクリニックでミノキシジルタブレットに挑戦してみて下さい。
以上