おはようございます。内科総合クリニック人形町 院長の藤田です。
ムダ毛が生えて来ないようにしたり、制毛・抑毛したりするための「脱毛」。医療レーザーや光(フラッシュ)を肌に照射すると、なぜ毛が抜け落ちるのでしょうか。
脱毛行為が流行する中で、医療クリニックとエステサロンでの脱毛はどう違うのか、通い続ければ永久脱毛は本当に可能なのか、よく分からないまま契約に進んでしまう方が多く、トラブルが増えています1)。
脱毛の仕組みを知ることでクリニックやサロンの失敗しない選び方が分かり、安心して脱毛に通うことができるようになります。
ここでは、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医の藤井あさ美先生に、脱毛の仕組み(熱破壊式脱毛・蓄熱式脱毛・光脱毛)や永久脱毛は可能なのか、毛周期との関係、サロンとクリニックの脱毛の違いについてお聞きしました。
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脱毛の仕組み
クリニックやエステサロンの脱毛は、そもそもどんな仕組みで毛が抜け落ちるんでしょうか?
脱毛機を照射すると熱が伝わり、毛や周辺組織にダメージを与えることができるので、結果として毛が抜け落ちます。
クリニックで受ける脱毛も、エステで受ける脱毛も、基本的には上記の原理で毛が抜けます。
クリニックとエステでは扱う機械がちがうよ
- クリニックの脱毛⇒レーザー脱毛
- エステの脱毛⇒光(フラッシュ)脱毛
ただ、レーザーや光を照射したからといって、その部位にもう二度と毛が生えてこなくなる、ということではありません。
1度の照射で効果があるのは全体の約20%の毛に対してだけで、100%を目指すために何度か照射を繰り返す必要があります。これが一般的に言われる「脱毛に通う」ということです。
なぜ20%の毛にしか効果がないんですか?
レーザーや光は、「成長期」の毛にしか反応しないからです。
毛には「成長期」「退行期」「休止期」と生え変わりのサイクルがあり、一つひとつの毛が違う周期で生える→抜ける→また生える・・を繰り返しているのですが、一般的に、脱毛効果があるのは「成長期」の毛のみです。
成長期はもっともメラニン色素が多くレーザーが反応しやすい時期です。退行期はメラニン色素が少なく毛の根本が浅くなっている状態なので、毛根の細胞まで熱が届きにくく、照射してもあまり意味がありません。
また、休止期は毛の成長が止まっている状態なので、こちらも毛にダメージを与えにくい状態です。
でも、その毛が「成長期」だってどうやって判断するんでしょうか?通うタイミング、難しくないですか?
簡単ですよ。今目に見えてしっかり生えている毛が「成長期」と考えて良いので、毛が生え揃ったタイミングで次の照射をすれば良いだけです。
休止期の毛はこれから生えてくる毛なので、目に見えません。毛の自己処理をしていると、次の日にもう生えてきた!すぐにチクチクする!といったことがあると思いますが、それがまさに「成長期」の毛です。
処理をしないとどんどん生えてきて、毛が生え揃いますね。脱毛照射を繰り返していると、この毛が生え揃うまでの時間がどんどん長くなっていきます。
詰めて何度も施術すれば良いわけではなく、毛が生え揃ってから脱毛する、毛周期に合わせての脱毛が基本、(一定間隔を空けて照射する)ということを覚えておきましょう。
【部位別】毛周期のサイクル
でも、電車の広告で「2週間に1回通える」とか「◯カ月で脱毛完了」って書いてありますよね?結局どのくらいの間隔で通うのが一番良いんですか…?
実は、毛周期って部位によっても人によっても全然違うんです。だから、すべての人に当てはまる「脱毛に通うベストな間隔」を提示するのはなかなか難しいです。
下記は、部位ごとの毛周期の目安2)です。部位によってかなり差があることがわかると思います。
部位 | 休止期 | 退行期 | 毛周期 |
---|---|---|---|
眉毛 | 3カ月 | 1~2週 | 10カ月 |
耳 | 3カ月 | 1~2週 | 10カ月 |
あごヒゲ | 10週 | 2~3週 | 14カ月 |
鼻下 | 6週 | 2~3週 | 5カ月 |
ワキ | 3週 | 2~3週 | 5カ月 |
VIO | 3カ月 | 2~3週 | 8カ月 |
腕 | 16週 | 2~3週 | 10カ月 |
脚 | 24週 | 3~6週 | 11~12カ月 |
繰り返しになりますが、基本は毛が生え揃ってから。
目安をあげるとすれば、全身をまるっと脱毛する場合、レーザー脱毛でははじめの3回程度は約3カ月ごと、4回目以降は約4カ月ごとに通うというのが一般的です。
クリニックの「レーザー脱毛」と、エステの「光脱毛」は効果に違いがあるんですか?
同じ仕組みで脱毛するので混乱しがちですが、レーザー脱毛と光脱毛はそもそもの目的が違って、全く別物と言えます。
クリニックとエステでは目的がちがうよ
- クリニックの脱毛⇒レーザー脱毛⇒発毛組織の破壊
- エステの脱毛⇒光脱毛⇒制毛・抑毛
医療レーザー脱毛の仕組み
医療レーザー脱毛では、医療用のレーザーを肌に照射することで毛のメラニン色素に熱エネルギーを与え、毛根や毛母細胞などの発毛組織を破壊してムダ毛を脱毛します。
発毛組織を破壊するってことは、医療のレーザー脱毛は永久にムダ毛が生えてこなくなるということですか?
現状では、脱毛効果が持続する期間は、医療脱毛で10年以上(エステは3~4年)ということまでしかまだ分かっていません。
医療レーザー脱毛であっても「一生絶対に生えてこない」と言い切ることはできませんが、脱毛施術を受けるとどんどん毛は薄くなっていきますし、生えてきてもうぶ毛程度と考えて良いと思いますよ。
医療レーザーは永久脱毛できる?
永久脱毛の定義
最終脱毛から1カ月後の毛の再生率が20%以下の脱毛法のこと。
この定義は、米国電気脱毛協会(American Electrology Association)が定めたもの。
自宅でカミソリ・シェーバー・毛抜きなどを使って除毛や脱毛を行ってもまた毛がすぐに生えてきますよね。これは毛乳頭や毛母細胞が破壊されていないことが原因です。
医療レーザーでは、これらの細胞を破壊し、永久脱毛を目指すのが目的。クリニックではエステサロンよりも強いパワーのマシンを扱えるため、脱毛効果が実感しやすい方法です。
医療レーザー脱毛のリスク
医療レーザー脱毛はクリニックで医師や看護師のもと行う脱毛方法ですが、高出力のために肌トラブルが起こることが稀にあります。
レーザー脱毛には発がん性があると聞いたことがあり心配な方もいるかもしれませんが、発ガン性のリスクはあくまでも紫外線によるもので、レーザー治療で皮膚ガンなどを誘発することはありません。
医療レーザー脱毛には大きく分けて2種類あり、一つは「ショット式(熱破壊式)」、もう一つは「蓄熱式」と呼ばれ、それぞれ仕組みが異なります。
ショット式脱毛(熱破壊式脱毛)の仕組み
ショット式脱毛(熱破壊式)の特徴
「ワンショット」で強い熱を与える。
- 痛みを感じやすい
- 同じ部位に照射するのは一度の施術で1回だけ
- 濃く太い毛が得意で、うぶ毛は苦手
- 日焼け肌や色黒肌には照射できない
- バチッ!と輪ゴムで弾かれるような照射感
- 効果を実感しやすい
- 毛が1~2周間で抜け落ちる
ショット式の脱毛は、毛根に強いレーザーを当て、毛根組織を破壊します。
ショット式脱毛の流れ
肌表面から毛が出ているとレーザーが反応する範囲が多くなり、やけどや炎症が起こる可能性があるため、脱毛前のシェービングは必須です。
成長期の毛に照射すると効果が出やすくなりますが、現時点で肌表面から出ていなくても肌の中に眠っている毛がたくさんあるので、一定期間を空けて繰り返しレーザーを照射します。
毛の生え替わりサイクルである3〜4ヶ月ごと(部位により変化します)にクリニックに通って照射していきます。
レーザーを照射した成長期の毛は、施術から1~2週間経つと自然に抜け落ちます。このとき、レーザー照射によりダメージを受けた毛乳頭や毛母細胞も、老廃物として排出されます。
ここから、再度成長期の毛が生えてくるのを待ち、再びレーザーを照射します。
脱毛完了までにかかる期間や回数には個人差がありますが、ショット式の場合は全身脱毛で1年半〜2年、回数にして5〜8回必要です。
蓄熱式脱毛の仕組み
蓄熱式脱毛の特徴
1本の毛に弱い熱を「複数回」照射する。
- 痛みを感じにくい
- クルクル滑らせるように、同じ部位に何度も重ねて照射する
- うぶ毛にも反応しやすい
- 日焼け肌や色黒肌でも照射可能
- 温かい、または熱いような照射感
- 毛が抜け落ちるまでに3~4週間かかる
蓄熱式脱毛は、強いレーザーを当て一瞬で毛根組織を破壊するショット式脱毛とは違い、弱い出力のレーザーを重ねて照射します。
メラニンに反応させるのは熱破壊式と同じですが、1本の毛に1度しか照射しない熱破壊式に対して、蓄熱式では複数回弱い熱を照射し徐々に温度を上げていきます。
先生すいません、たくさん種類があって意味が分からなくなってきました。
バシッと打たれて痛みを感じやすいけど、すぐに効果を実感しやすいのがショット式。
じわじわ温められて痛みを感じにくいけど、効果実感までに少し時間がかかるのが蓄熱式、とざっくり考えて大丈夫です。
蓄熱式脱毛の流れ
ムダ毛のシェービングを行うのはショット式と同じです。蓄熱式はメラニンの吸収率は低いものの、まったく反応しないわけではありません。
やけどや炎症などの肌トラブルを避けるためにも、蓄熱式脱毛であっても事前のシェービングが必要です。
蓄熱式の機械で脱毛を提供するクリニックの中には最短1ヶ月ごとに通えるとしているところもあるので、見出しでは1〜3ヶ月と幅を持たせて記載しました。
ただ、バルジ領域に熱を伝えるにはメラニン色素が必要なため、毛周期を完全に無視して脱毛することは難しいです。
基本的には蓄熱式でも毛周期に合わせて脱毛するのが効率が良いと考えておきましょう。
蓄熱式がショット式と大きく違う点が、効果の出方です。蓄熱式脱毛では、ショット式脱毛のように照射後すぐにポロポロと毛が抜け落ちることはありません。
蓄熱式は毛が抜け落ちないと誤解されている方もいるのですが、蓄熱式も毛は抜け落ちます。おおむね、照射してから3~4週間で毛が抜け落ちてきます。
蓄熱式脱毛を扱うクリニックに通った場合、脱毛照射後1~2週間経っても毛が抜けず、「効果がなかった」と思ってしまう方もいるのですが、これは蓄熱式脱毛の特徴です。
ショット式脱毛と蓄熱式脱毛、どちらが良いとか、おすすめはどっち、というのはあるんでしょうか?
適切に照射されていれば、最終的な減毛効果はショット式も蓄熱式も同じです。
どちらにするか?は、痛みの有無や効果の感じ方、料金(蓄熱式を扱うクリニックの方が安い傾向です)で希望に合わせて選択しましょう!
より早く毛が抜け落ちるのを実感したい方はショット式、痛みが苦手な方は蓄熱式がおすすめです。
光(フラッシュ)脱毛の仕組みとは
クリニックで受けられるレーザー脱毛のことは理解できたのですが、エステの光脱毛は全く別物、というのはどういうことなんでしょうか?
エステで扱われている機械は、発毛組織を破壊するほどのパワーが出せません。あくまで目的は「制毛・抑毛」で、脱毛効果の持続期間は3~4年(レーザー脱毛の場合は約10年)程度と考えておきましょう。
光脱毛では、制毛・抑毛できる程度のパワーの光を肌に当てて毛を減らしたり、生えてくるスピードを遅くしたりします。
光脱毛にも種類があり、大きく分けて以下の3つ。それぞれ脱毛の仕組みが異なります。
- IPL脱毛
- SSC脱毛
- SHR脱毛
IPL脱毛はレーザー脱毛でいうと「ショット式」。ワンショットで毛乳頭などの毛根に熱を与えます。レーザー脱毛のように強い出力ではないので毛根組織を破壊するわけではなく、熱を与えて弱らせていくイメージで抑毛を行います。
SSC脱毛は、専用のジェルを塗った上からクリプトンライトという光を当てることでジェルの成分が影響して抑毛を促す方法です。
SHR脱毛はレーザー脱毛でいうと「蓄熱式」。弱い熱を複数回照射して毛包に熱を溜め込んで、バルジ領域内の毛包幹細胞や毛乳頭を弱らせて発毛を抑制する方法です。
光脱毛は医療レーザー脱毛とは違い、永久脱毛とは言えません。これがレーザー脱毛と光脱毛の一番の違いです。
医療レーザー脱毛・光脱毛の向き・不向き
普通に考えるとレーザー脱毛の方が良さそうですが、光脱毛を選ぶ人もいるのはどうしてなんでしょうか。
それぞれ向き・不向きがあると考えています。肌色・肌質・毛質・体質(痛みの感じやすさなど)によって選択すると、あとで後悔がなくなります。
下記に「医療レーザー脱毛が向いている人・向いていない人」「光脱毛が向いている人・向いていない人」をまとめました。
医療レーザー脱毛が向いている人
- 永久脱毛したい
- 毛の量が多い・太い
- 脱毛の効果を重視する
- 脱毛効果を早く実感したい
- 痛みがあまり気にならない
脱毛効果を重視して早く終わらせたい人には医療レーザー脱毛が向いています。永久脱毛を受けたい方はサロン脱毛ではなく医療レーザー脱毛一択です。
医療レーザー脱毛が向いていない人
- 痛みが苦手な
- 日焼けしている
※ただし蓄熱式脱毛なら受けられる可能性があります - 費用の安さを重視する
- 痛みの感じにくさを重視する
- 肌が弱い
※肌トラブルのリスクが高い人 - 金髪や白髪を脱毛したい
金髪や白髪にはメラニン色素が少ないため医療レーザーでの脱毛効果は薄くなるので、ニードル脱毛の方が向いています。
痛みが苦手な人や料金が安い方が良いという人はサロンの光脱毛を検討してください。
光(フラッシュ)脱毛が向いている人
- 痛みがとても苦手
- 費用を抑えたい
- 美容効果を得たい
- 肌への負担が少ない方が良い
- 脱毛完了までを急がない
光脱毛はパワーが少ない分、肌にやさしく、脱毛照射と同時に美肌ケアも受けられるところがほとんど。肌が弱い方や、美容効果も得たい方には光脱毛が向いています。
光(フラッシュ)脱毛が向いていない人
- 永久脱毛したい
- 早く効果を実感したい
- 少ない回数で脱毛を終わらせたい
エステの光脱毛では永久脱毛はできません。また、なるべく早く効果を実感したい人、少ない回数で通い終えたい人は医療レーザー脱毛を検討しましょう。
まとめ
脱毛の仕組みについて、特に大切なことを最後にもう一度まとめておきます。
- レーザー脱毛・光脱毛どちらも脱毛の仕組みは同じだけど、扱う機械と目的が違う
- 1度の照射で効果があるのは全体の約20%の毛に対してだけ
- レーザーや光は「成長期」の毛にしか反応しない
- 毛周期に合わせて脱毛に通う
- 毛周期は部位によっても人によっても全然違う
- 永久脱毛したいならレーザー脱毛一択
- 永久脱毛の定義は「最終脱毛から1カ月後の毛の再生率が20%以下の脱毛法」
- レーザー脱毛の種類は「熱破壊式(ショット式)」「蓄熱式」
- 光脱毛の種類は「IPL」「SSC」「SHR」
脱毛の仕組みは大まかに言えば医療レーザーも光も基本的には同じですが、使う機械・出力の程度・影響する範囲などにより効果や痛みが大きく変わってきます。
今回解説した脱毛の仕組みを理解しておけば、サロンやクリニックのカウンセリングなどの説明を理解する助けになったり、気になることを質問したりできます。
脱毛施術への理解を深めるきっかけになれば幸いです。
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参考文献
- 独立行政法人 国民生活センター くらしの危険 Number338. 脱毛施術による危害. 2017
- Kimble S (2017), Hair Loss, Hair Removal – Temporary and Permanent, Hair Retention 2017.