
こんばんは。内科総合クリニック人形町 院長の藤田(総合内科専門医)です。
このコラムでは、日ごろから私が「患者さんは医療に対しこんな疑問を持っているのではないだろうか」と思っていることや、患者さんに是非知って頂きたいお役立ち情報などを、ざっくばらんに書いていきたいと思いますので気軽にお読みください。
どうかよろしくお願いします。
自分の性格上、つい蛇足を付け加えてしまうのでそこは字を小さくしています。大まかな内容を知りたい方は小さい文字は飛ばして下さい(^O^)/
さて皆さんは、こんな経験をされたことは無いでしょうか?
- 具合が悪くて病院へ行き、症状を伝えたところ、先生から「じゃあ検査しましょう」と言われて検査を受けたけれども、「検査結果は異常ありませんので、様子を見ましょう」と言われた。異常が無いならなぜ具合が悪いのだろう?と疑問に思ったが、質問していいのかもわからず、もやもやしたまま帰ってきた。
また逆に、
- 「この検査をして貰おう」と思って病院に行ったのに問診や身体検査ばかりされ、希望の検査をして貰えなかった(先ほどのケースより少ないかもしれません)。
実は、病気は検査だけで診断するものではありませんし、検査をすれば必ず診断がつくわけでもありません。検査は万能ではなく、診断までのプロセスの一つに過ぎないのです。

では、診断までのプロセスには検査のほかに何があるのでしょうか?
まずは、患者さんの年齢・性別・主訴(主な症状)・バイタルサイン(体温・血圧・脈拍数・酸素飽和度)という基本情報です。
場合によってはこの情報だけで特定の疾患が想起されることもありますが、決めつけは良くないので、この段階ではあくまでも想起するに留めて次のプロセスへ進みます。
最初に浮かんだ診断名にこだわってしまうことを「アンカリングバイアス」といいます。診断に影響するバイアスには様々なものがあり、今後別のエントリーで取り上げようと思います。
次に病歴です。病歴には以下のようなものがあります。
- 現病歴(患者さんの今の症状の詳細)
- 既往歴(患者さんが過去にかかられた病気の詳細)
- アレルギー歴
- 家族歴
- 薬剤歴
- 嗜好(喫煙・飲酒)歴
ここまでは原則として、全ての患者さんにお聞きします(医療機関の問診票にあるような項目ですね。)
その他、オプションとして
- 職業歴
- 動物飼育歴
- 運動歴
- 体重歴
なども、ケースバイケースでお聞きします(他、産婦人科では妊娠出産歴など科によっても異なります)。また感染症を疑う場合は接触歴・旅行歴・ワクチン歴も問診しますし、居住歴の情報が必要となる場合もあります。
ところで居住歴ってあんまり今の症状なんかに関係なさそうですよね?どんな場合に必要なのでしょうか?例えば、今は国内ではほとんど見られなくなった日本脳炎という病気があります。
なぜほとんど見られないのかというと、1954年から国が3-4歳児へのワクチン接種を義務付けたからです。
ところが、日本脳炎の発症は西日本が中心なので、北海道では平成28年まで日本脳炎ワクチン定期接種が行われていませんでした。3-4歳の頃北海道に住んでいた方は、日本脳炎ワクチン未接種の可能性が高いのです。



(上の地図は国立感染症研究所HP https://www.niid.go.jp/niid/ja/je-m/2075-idsc/yosoku/sokuhou/7501-je-yosoku-rapid2017-6.html より。
日本脳炎ウイルスはブタの体内で増殖し、蚊が媒介します。ヒト→ヒトの感染はしません)
日本脳炎ウイルスを持つ蚊は今でも国内で確認されており、感染の可能性はゼロではありません(感染しても日本脳炎を発病するのは 100〜1,000人に1人程度なので、非常に稀ではあります)。
ワクチンで予防できる病気は他にもいろいろあり(麻疹や風疹は最近よくニュースになりますね)、今後別エントリーでまとめて書こうと思います。
少し話がそれましたが、このエントリーでは診断までのプロセスのうち問診についてお話しました。
長くなりましたので、続きは次エントリー「その検査は必要ですか?その2~身体所見を忘れずに~」にて。
以上
この記事を書いた人

内科総合クリニック人形町 院長
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
東京大学医学部保健学科および横浜市立大学医学部を卒業
東京大学付属病院や虎の門病院等を経て2019年11月に当院を開業
最寄駅:東京地下鉄 人形町駅および水天宮前駅(各徒歩3分)