一昔前は「痛風は贅沢な食生活をしている人がかかる病気」と考えられていました。
しかし、現在はこのような呼ばれ方は徐々に減ってきています。というのも、庶民の食べ物と言われる、いわし、カツオ、レバーと言った食べ物にもプリン体は多く含まれており、決して贅沢をしている人だけがなる病気ではないからです。
今回は痛風を引き起こす原因となる食べ物や痛風を改善する食事・食習慣をご紹介します。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
食べ物が痛風の原因となる理由
痛風を引き起こすとされているのは「プリン体」が多い食材。しかし、プリン体と言っても「プリンに含まれる成分?」と、それ自体がなんなのか良く分からないですよね。
プリン体のプリンとは尿酸という意味のラテン語「purum uricum」からの言葉。おやつのプリンとは異なります。
このプリン体、実は細胞の核を構成する成分でほぼ全ての食材に含まれており、運動や日々の代謝などでプリン体が分解され尿酸に変化。
そして血液に含まれる割合が7.0mg/dLを超えると痛風を発症する確率が高くなるので、プリン体をとりすぎると痛風になるといわれています。
痛風の原因となる食べ物ランキング
痛風になる原因物質となる高プリン体の食材をランキングで紹介したいと思います。
ただし、加工の仕方によって水分が抜け100gあたりのプリン体が増えたり、大量に摂取するようなものでなかったりしますのでその辺りはあくまで目安としてお考えください。
1位 白子 560mg
2位 豚レバー 422mg
3位 あん肝 399mg
4位 鶏レバー 312mg
5位 マイワシの干物 306mg
6位 エビ 274mg
7位 マアジの干物 246mg
8位 カツオ 211mg
9位 サンマ 208mg
10位 スルメイカ 187mg
11位 マアジ 165mg
12位 マグロ 157mg
13位 サンマ 155mg
14位 ササミ 153mg
15位 ズワイガニ 136mg
白子やあん肝は非常にプリン体が高いのですが、そこまでたくさん食べるものではないので意識すれば気をつけるのは比較的簡単でしょう。一方で、アジの干物、サンマなどは1匹食べてしまうこともあると思います。
痛風の原因物質であるプリン体の摂取量は1日400g以下を目安にして食事に気をつけましょう。
プリン体をカットする調理方法
プリン体は水に溶けやすいという特徴があります。この特性を活かせば肉や魚を食べる場合は煮たり、茹でたりすればプリン体を軽減することが可能。
その際に重要なのが茹で汁は飲まないこと、せっかく水に溶かしてしまったものも飲んでしまえば意味がありません。
そう言った意味で最も注意したいのが鍋です。
白子やあん肝を入れた鍋はその多くがスープに溶け出します「じゃあ、スープを残せばいいのですね!」と思うかもしれませんが、溶け出したプリン体を野菜が吸い込むため、スープを残してもプリン体を大量に摂取してしまいます。
女性はあまり痛風を気にする必要はありません
もし今この記事を読まれている方が女性であれば、プリン体を気にする必要はないかもしれません。
女性が体内に持っているエストロゲンには尿酸の排泄を促進する効果があるため、女性は痛風になる可能性が低いのです。実際に痛風患者の95%は男性で女性の痛風患者は5%しかいないのです。
女性でプリン体の摂取が気になっている場合は、プリン体ではなく食事の量やカロリーに気をつけてるようにしてください。
痛風の原因は本当に食事?
プリン体が尿酸を作るので「高プリン体を食べることが痛風の原因」と考えがちですが、近年の研究の結果、実はそうとも言い切れないことがわかっています。
その理由は以下の2つ。
- 食事からとり込まれるプリン体は、全体の2~3割程度
- 尿酸の排出がうまく機能しないパターンの痛風もある
そもそも食事によって摂取したプリン体はその大半が、尿や便として排泄されます。
ですから、体内のプリン体は、食事で摂取したものが2〜3割、新陳代謝やエネルギー代謝で作られるものが7~8割と以外にも食事が与える影響は少ないのです。
また、痛風には、たくさん尿酸が作られてしまい発症するタイプの痛風もあれば、尿酸の排泄がうまくいかないために痛風になるパターンもあります。
これらの点から、必ずしも食事が痛風の原因とは言い切れません。
だからと言って高プリン体のものを大量に食べていいというわけでもありませんが、食事の見直しだけでは痛風対策、つまり尿酸値対策にはならないのです。
多くの方が「プリン体は食事制限で減らす」というイメージを持たれているのですが、プリン体は7~8割が体内でつくられているため、食事だけではなく生活習慣の見直しが必要です。
プリン体の7~8割が体内でつくられたもので、食事から取り込まれるプリン体はたった2~3割であることに驚いた方も多いのではないでしょうか。
ではこの「体内でつくられる7~8割のプリン体」(のちに尿酸に変わる)に対しては、いったいどう対策すれば良いのでしょうか。
下記に解説していきます。その対策の一つとして知られるのが、尿酸値対策サプリメントです。
痛風対策にサプリメントは有効?
痛風対策において生活習慣の見直しをする際、「尿酸値を下げるサプリメントを毎日の生活に取り入れています」という方がよくいます。
尿酸値を下げるサプリメントの中にはしっかりと「尿酸値を下げる」と書かれたものもあり、これらは果たして信頼できるものなのか?について少し述べたいと思います。
尿酸値対策サプリメントは血清尿酸値が5.5mg/dL超~7.0mg/dL未満の方向け
尿酸値を下げる機能を謳うサプリメントは、その全てが「機能性表示食品」です。あくまで食品であり、医薬品とは全く異なるものであることは理解しておきたい点です。
「機能性表示食品」とは保健機能食品の一種で、国の定めた有効性に関する基準に従って食品の機能を表示することのできる食品のこと。
機能性表示食品以外にもトクホ、栄養機能食品がありますが、それぞれの区分は以下のように決まっています。
<1>トクホ(特定保健用食品) | 表示されている機能の効果や安全性について、国が審査を行い、消費者庁長官が許可した食品 |
<2>栄養機能食品 | すでに科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準含む食品であれば、届け出をしなくても国が定めた表現によって機能性を表示することができる食品 |
<3>機能性表示食品 | 事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品 |
尿酸値対策サプリメントである機能性表示食品の関与成分(サプリに入っている、尿酸値対策となる成分)とその機能性は、大きく下記の2つに分けられます。
- アンセリン:高めの尿酸値を下げる
- ルテオリン:男性の高めの尿酸値を下げる
どちらのサプリメントも、”高めの尿酸値”とは血清尿酸値「5.5mg/dL超~7.0mg/dL未満」のことであると定義されています。
すでに血清尿酸値が7.0mg/dLを超え、高尿酸血症と診断されている方、痛風をすでに発症している方はサプリどうこうではなく、病院へ行きましょう。
「尿酸値が高い」と指摘されたけれど、通院の時間がない、面倒で続かない方に
尿酸を下げるサプリメント「アンセリン」「ルテオリン」の科学的根拠
上記のとおり、尿酸を下げるサプリメントは「アンセリン」「ルテオリン」この2つの成分が入ったサプリメントがそれぞれあります。
アンセリンの臨床試験は焼津水産化学工業が実施し、臨床試験の結果偽薬(プラセボ)を摂取したグループと比較し、4週間後と12週間後に尿酸値の有意な降下が確認。
また、アンセリンを使ったサプリメントに対する論文も多く発表されており、機能性食品の的確基準を満たしています。
「○○○(商品名)」に含まれる機能性関与成分アンセリンの摂取による尿酸値低下作用に関する定性的研究レビュー 商品名:○○○(未定) 機能性関与成分名:アンセリン
PubMed、JDreamⅢ、医中誌 Web の3つのデータベースにおける検索の結果、PubMed からは 4 報、医中誌 Web からは 15 報、JDreamⅢからは 30 報の文献が選定され、1次スクリーニングの対象となった文献は 49 報であった。タイトル及び抄録の内容から適格基準に合致しない文献及び重複文献を除外した結果、47報の文献が除外された。残り 2 報の文献については、該当文献を入手した上で、文献の内容を精査し、適格基準に合致しているか確認を行った。
その結果、さらに 1 報の文献を除外し、最終的に1報の文献を採用した。メタアナリシスは実施せず、1報の文献により定性的な研究レビューを実施した。
引用:農研機構 https://www.naro.affrc.go.jp/org/nfri/yakudachi/sys-review/pdf/NARO_nfri_review_anserine1.pdf
また、ルテオリンについては2014年にオリザ油化株式会社が発表し、菊の花由来のルテオリンに含まれるXO(キサンチンオキシダーゼ)という酵素が体内の尿酸値を降下させる機能があることが報告されています。
摂取前後の血中尿酸値を比較した結果,図10 に示すように,7名被験者の血中尿酸平均値は摂取前の異常値の7.3mg/dL(異常値)から摂取後の7.0mg/dL(正常値の上限値)まで下がりました。7 名被験者中,5 名の尿酸値が下がりました。さらに,その内,4 名の尿酸値は正常範囲以内に収まりました。もともと尿酸値が正常範囲内の1 名(6.8 mg/dL)において摂取前後の変動はみられませんでした。
その他の血中パラメーターについては,赤血球の有意な減少がみられました。しかし,その変動 は正常範囲以内の変化で,有害な影響ではないと判断しました。また,カプセル摂取期間中,有害事象および菊の花エキス摂取に起因すると思われる副作用の発生は認められませんでした。したがって,菊の花エキスの摂取(1ヶ月)により血中尿酸値降下作用が認められ,有害事象の発生は見られないことが明らかになりました。
引用:オリザ油化株式会社 https://www.oryza.co.jp/cms/wp-content/uploads/2017/10/8ea98d60e8f75b2ed6748cf8b2d79540.pdf
以上のデータから、アンセリン・ルテオリンが含まれるサプリには尿酸値を下げる効果が期待できると考えられます。
(具体的には、体内での尿酸値生成を抑える+尿酸の排泄を促進することで、尿酸値を下げる機能をもちます。)
サプリは食事の見直しだけではケアできない尿酸値対策ができる
尿酸値を下げるサプリメントがもつ「体内でプリン体が尿酸になるのを防ぐ」「尿酸の排泄を促進する」機能性は、食生活の見直しや運動だけではケアしにくい部分です。
食事からのプリン体摂取は2~3割程度であり、残りは体内でつくられていることを踏まえても、生活習慣の見直しにおいて尿酸値対策サプリメントを取り入れるのは有効であると言えます。
ただし、この記事を執筆するにあたり尿酸値対策サプリを詳しく調べてみましたが、入っている関与成分や試験結果、つくられ方はさまざまでした。
「科学的データに基づいて開発されている」「信頼できる販売元である」もので、使用している素材や製造工程を確認した上で選定したものを3つ紹介しておきます。
- 菊の花&カテキンの恵み(尿酸値対策+肥満対策もできる)
- 尿酸ケア習慣(機能性関与成分「ルテオリン」が尿酸値を下げる)
- 小林尿酸ヘルプ(ドラッグストアでも購入できる) など
サプリメントだけに過度な期待をするのではなく、食生活の見直しや運動などの生活習慣改善はもちろん大切です。
次に、具体的な食生活の見直し・生活習慣の改善について、その他の痛風の原因と共に解説します。
その他の痛風の原因
痛風の原因になるものとしては食事以外にも、お酒・ストレス・運動などがあります。
アルコールの飲み過ぎ
1日の飲酒量は2杯程度に抑え、休肝日は週2日以上取る。
アルコールというと「糖質0・プリン体70%オフ!」のようなテレビCMを見たことはないでしょうか?
あたかもプリン体が少なくなっており痛風を考慮しているように見えますが、これは少し異なります。
アルコールが痛風によくないのはプリン体が多く含まれるからではなく、アルコールそのものが尿酸の生成を促し、尿酸の排泄を抑える作用があるため。
ですので、プリン体がどれだけオフになっていてもアルコールはアルコールである時点で痛風によくないことを覚えておきましょう。
痛風を気にするのであれば、1日の飲酒量は2杯程度に抑え、休肝日は週2日以上取るよう気をつけてください。
ストレス
強いストレスを感じ「ドキドキ」と心臓の脈を感じることはないでしょうか。
ストレスは交感神経を高めるため、鼓動が速くなり代謝を高めます。
尿酸は代謝によって体のエネルギーが使われる際に生成されますので、ストレスが溜まっている方は尿酸が出やすくなるという理屈です。
ストレスを感じると言っても、ストレスのレベルや感じ方は人それぞれですが、ストレスをためやすい方には以下のような共通点があります。
- 積極性が高い
- 活動的で体を動かすのが好き
- せっかち
- 攻撃性がある
- 競争心が強い
これらの特徴を持つ方のことを「タイプA行動型」と呼び、タイプAの傾向が強い方は痛風になる可能性がそうでない方の2倍あるとされています。
心当たりのある方は、ストレスを解消する方法を探し、心に余裕を持つようにしましょう。
激しい運動
少し息が上がる程度の速さで歩くウォーキングがおすすめ。
適度な運動は、痛風や肥満の予防に効果的です。
しかし、体力を激しく消耗するような運動は、尿酸値をあげてしまうため痛風の原因になってしまいます。
運動で尿酸値を増やす理由は2つ。
- 激しい運動でエネルギーを消費すると筋肉でプリン体が作られ、尿酸値が上昇
- 運動をして汗をかくことによって、体内の水分が失われ血流量が減り、腎臓から排出される尿酸量が減少し、尿酸値が上昇
運動自体は健康によいですが痛風が不安な方は、少し息が上がる程度の速さで歩くウォーキングがおすすめです。
また水分補給は水かお茶にしましょう。
痛風を発症させないための正しい食生活対策のポイント
食材に含まれるプリン体は尿酸になりますが、裏返せば食事によって尿酸をコントロールすることも可能です。
また、体内の尿酸値は食事以外でも作られますので、食品に含まれるプリン体以外にも気をつけるポイントがいくつもあります。
食事の量を減らし、食べすぎを改善する
肥満の方は痛風を発症しやすいことがわかっています。
さらに、痛風で肥満状態であると合併症を起こす可能性が高くなりますので、まずは食事量を減らし体系の改善を行いましょう。
食事量を減らすことは、同時に摂取するプリン体も減らすことができるので痛風にも肥満にも効果的です
高プリン体の食べ物を食べすぎない
プリン体が多い食べ物を食べても大丈夫とは言いましたが、高プリン体の食材をたくさん摂取して良いというわけではありません。高プリン体の食材は量を減らしましょう。
ランキングで紹介したもの以外にも、肉や魚といった動物系タンパク質には多くのプリン体が含まれています。
タンパク質を取りたい場合は、鶏卵や豆腐、牛乳などにしてプリン体を抑えましょう。
野菜を多く食べる
プリン体を摂取しないことと同様に尿酸の排泄量を増やすことも大切です。
尿酸はアルカリ性の尿に溶けやすい性質があるため、体内をアルカリ性にする野菜・きのこ・海藻などの食材は積極的に取りましょう。
水分をたくさん取る
尿酸をたくさん排泄するためには、尿や便の量を増やすのも効果的です。
ただし便を増やすのはなかなか難しく、たくさん食べれば今度は肥満の原因に。
そのため現実的には尿量を増やすのがベストですが、その際に砂糖が入っているような飲みのものは尿を酸性にしてしまい逆効果。水分補給は水やお茶を取るようにしましょう。
まとめ
今回は痛風の原因となる食べ物と、痛風を改善させる食事について説明させていただきました。
今回紹介させていただいた食習慣も大切ではありますが、根本的な原因が食事によるものとは限りません。
自分が痛風かもしれないと感じた方はまず病院で診察を受け、正式な尿酸値を測定することをお勧めします。
参考文献
わかさ製薬 アンセリン
https://himitsu.wakasa.jp/contents/anserine/
FUJIFILMサプリメントアンセリン
https://ls-jp.fujifilm.com/supplement/products/anserine/
DHC アンセリン
https://www.dhc.co.jp/goods/goodsdetail.jsp?gCode=4222
焼津水産化学工業 アンセリンの尿酸値降下作用
https://www.yskf.jp/anserine/uric_acid_2.html
尿酸降下薬とアンセリン併用の有用性
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gnam/35/1/35_51/_pdf
Creatine supplementation augments skeletal muscle carnosine content in senescence-accelerated mice (SAMP8)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18593282
Antidepressant-like effect of Cordyceps sinensis in the mouse tail suspension test
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17827735/
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