日本でもよく知られている電気自動車メーカーのテスラは、2017年に資産価値でビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)を抜くという快挙を成し遂げました。その後の株価の下落で一位の座を受け渡したとはいえ、ビッグスリーと互角に競争していることは間違いありません。
創業者イーロン∙マスクは47才(2018年12月現在)、資産だけでなく髪の毛も豊富ですが、実は以前は違っていたのをご存じですか?
「ドットコム∙バブル」(1990年代末期~2000年代初期)の申し子であるマスクが、さまざまな会社の設立と売却を繰り返し富を築き上げていた頃は、AGA型の薄毛が半分ほど進行した状態でした。
それなのに今ではその気配さえないので、「もしかすると億万長者にしか買えないような高価な育毛剤でもあるのか」といううわさまで飛び出しました。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
12才の時独学でプログラミングを学ぶも、ひどいいじめに
マスクは1971年に南アフリカ共和国でエンジニアの父親と、カナダ人のモデルで栄養士の母親との間に生まれました。
読書が好きで一日に何時間も難しい本を読み、独学でプログラミングを学んだといわれています。12才の時ビデオゲームのコードをコンピューター雑誌に500ドル(約5.5万円)で売るという優れた才能を既に持っており、今の天才的な姿を想像させるような子供だったようです。
ところが学校では繰り返しひどいいじめに遭い、階段から突き落とされ意識がなくなるまで殴られて入院するという経験までしています。
高校を卒業した後は離婚していた父親と住んでいた南アフリカ共和国を離れ、カナダで暮らす母親の元へと引っ越しカナダ国籍を得ました。
カナダでは小麦農場や製材所で働きながら学費を貯め、クイーンズ大学に入学。2年後アメリカのペンシルベニア大学に編入し物理学を学んだ後、同大学の名門ウォートン校(アイビーリーグ校の一つ)で経済学も習得しました。
ちなみにアメリカのトランプ大統領もペンシルベニア大学ウォートン校の出身で、トランプ政権発足当初は経済アドバイザーチームの一員となる予定でしたが、リベラルなカリフォルニア州のシリコンバレー近郊に本社のあるテスラ社のイメージとしてふさわしくないとして圧力がかかったのか、辞退しています。
夢の実現のためスタンフォードを2日で辞める
ウォートン校を卒業後24才の時に、応用物理学の博士号を得るためスタンフォード大学に入りました。ところが西の名門校への入学が決まったのにもかかわらず、インターネット、宇宙、そして再生エネルギーの分野での夢を追うためにたった2日で辞めてしまいました。
マスクは夢を実現するためにはさらなる勉強ではなく、起業して成功しそこから資金を捻出しようという思いから、スタンフォード大学を辞めた後すぐに、弟と1995年にZip2というオンラインコンテンツ出版の会社を始めました。
それまでの大学の費用は全て自分で賄いましたが、起業時には父親から28,000ドル(約300万円)の援助を受けています。
類まれな才能があったのでしょう、すぐにビジネスは軌道に乗り『ニューヨーク∙タイムズ』や『シカゴ∙トリビューン』などの大手の新聞社と次々に契約を結びました。
Zip2は1999年にコンピューター会社のコムパックに買収され、この時マスクはなんと2,200万ドル(約24億円)もの大金を手に入れています。起業してからわずか4年後のことです。
第一の夢「インターネット分野」で成功 PayPalの前身となる会社を設立
Zip2を売却した翌月、売却金の約半分の1,000万ドル(約11億円)を元手に次の会社X.comを共同設立しました。
X.comはオンライン金融サービスと電子メールによる支払いサービスを行う会社で、一年後にPayPal(ペイパル)と呼ばれるオンライン決済サービス部門を持つコンフィニティという会社と合併。
合併会社は2001年に会社名を正式にPayPalとしましたが、2002年には世界最大のオークションサイトを運営するeBay(イーベイ)に売却し、マスクは1億6,500万ドル(約180億円)を受け取りました。
マスクのビジネスに関しての幅広いアイディアとフットワークの軽さには目を見張るものがあります。一つの成功を得たらすぐに次に、というスピードは驚くべきものです。
*この「ドットコム∙バブル」といわれる頃のマスクは、薄毛の進行度を示すノーウッド分類のステージ4ぐらいだと思われます(左:2001年頃 右:2018年)。
第二の夢「宇宙の分野」のためにSpaceXを設立
マスクはPaypalを売却した翌年の2002年に、1億ドル(約110億円)を使い民間初の宇宙船とロケットの開発を目的とするSpaceXを設立しました。
動機は宇宙への夢を実現するためにロシアへロケットの買い付けに行った時にその値段に驚き、自分ならもっと低コストで開発できる、と確信したからです。
開発は順調に進み2006年にはNASA(航空宇宙局)と契約を結び、開発中の宇宙船が将来国際宇宙ステーション(ISS)への物資の輸送機として用いられることになりました。
アメリカ政府のスペースシャトル計画は2011年に終了することになっていたため、今後は民間ベースで開発をすすめるためにマスクのSpaceXに白羽の矢が立ったのです。
SpaceX社は2008年に民間初の人工衛星打ち上げに、2012年に開発した宇宙船でISSへの物資の輸送も成功させました。2016年には独占状態だった米軍事衛星市場の打ち上げ市場にも参入、と瞬く間に宇宙事業においてのシェアを拡大。インターネット分野で活躍していた時と同様、スピード感を失うことはありませんでした。
同社は現在世界最大のロケットモーターの製造会社であり、さらには新興企業でありながら低コストを武器に商業衛星市場でも大きなシェアを獲得しています。
近年中に有人型宇宙船の初飛行を行う予定で、早ければ2020年にも実現するようです。その後は火星探査や移民構想の可能性も掲げ、まだまだ宇宙分野での構想がある、と語っています。
第三の夢「再生エネルギー分野」 電気自動車会社への出資とソーラーパネル会社の設立
二酸化炭素を排出しない電気自動車の将来性を見込んだマスクは、2004年にテスラ社へ出資を開始しましたが、実は当初は車のデザインなどに部分的に関わっただけで、経営自体に携わることはありませんでした。
ところが2008年にテスラが財政難に陥り、会社の再建のためにマスクがCEOに就任し、現在に至ります(証券取引委員会との取り決めで、2018年の年末をもってCEOの地位を降りることに)。
再生エネルギー分野に関わることが夢の一つであったマスクは、SpaceXとテスラを同時進行させながら、2006年にソーラーパネルの会社SolarCityも二人のいとこと共に設立しました。SolarCityはアメリカで業界第二位の大手に育ち、テスラが買収しました。
地球温暖化を懸念するマスクがテスラとSolarCityのコラボレーションを実現させることで社会に貢献できる、と考えているようです。
復活した髪の毛は植毛か?
いじめられっ子から始まったマスクは自分の夢を次々と実現させてきましたが、20代の頃から始まった薄毛をも克服したようです。
マスクの写真を年次ごとに追ってみると、2002年にPayPalを売却してSpaceXを設立した頃から徐々に増毛が見られます。これはマスクがメディアに頻繁に取り上げられ始められた時期と重なります。
それまでは夢の実現のために仕事に邁進していたマスクは、その容姿や服装はカリスマ性を感じさせるものとは言い難いものでした。
髪の毛が増えていくのと同時に公の場での服装にも変化が見られ、自分のイメージとSpaceXやテスラのような最先端の会社のイメージを複合させていく様子が見られます。
マスクの20代の薄毛の進み具合からすると、既存の増毛剤では今の姿になるとは考えられず植毛説が有力ですが、メディアはマスクが裕福なことから「大富豪にしか買えない高価な増毛剤が存在するのでは」というゴシップもあります。
そんな増毛剤が存在するとしたら夢のある話ですが、もし存在するならマスクが既にビジネスにしているはずなので(薄毛市場の規模は日本だけで4,000億円以上)、ちょっと非現実的です。
まとめ
「時代の寵児」と呼ばれるイーロン∙マスクは植毛をしたという説が有力です。ただ、その目的は普通の人のように見た目の改善(イコール自信の回復)ではなく、自分のイメージ向上をビジネスの利益へと結ぶ付けるものだったのかも、と考えることもできます。
スピード感あふれるビジネスセンスの持ち主であるマスクですから、人と違った考え方をしてもおかしくはありません。
いずれにしても、マスクの見た目が依然と比べると格段に改善されたのは皆が認めるところです。今後の活躍がますます注目されます。
以上