どうして髪は抜けてしまうのか?脱毛症の様々な原因について紹介します。
- 脱毛の原因にはどのようなものがある?
- アンドロゲン性脱毛症(男性型または女性型脱毛症)
- 円形脱毛症
- 薬剤性脱毛症
- 感染性脱毛症
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
代表的な薄毛の原因とは?
命に関わらないと言ってもどうしても気になってしまう抜け毛や薄毛。
当院では男性型脱毛症(AGA)をよく取り上げていますが、当然他の原因による脱毛もあります。比較的多く見られる脱毛症にはどのようなものがあるのでしょうか?
頻度の高い脱毛症の原因としては、以下のようなものがあります。
- アンドロゲン性脱毛症(男性型または女性型脱毛症)
- 円形脱毛症
- 薬剤性脱毛症
- 感染性脱毛症
- 抜毛症
このように一言に脱毛症と言っても様々な原因が存在するので、自分だけの判断で脱毛の対策や治療を行うのは難しいのです。
抜け毛や薄毛に関してのお悩みがある方は一人で悩むのではなく、経験のある医師の診断を受けて、その疾患に有用な治療を受けることが重要です。今回は主要な脱毛の原因について解説していきます。
アンドロゲン性脱毛症とは
アンドロゲン性脱毛症は、AGAとして有名です。これには、男性型と女性型があります。
実はこれ、ジヒドロテストステロンというホルモンが原因となる脱毛症です。男性ホルモンであるテストステロンに5αレダクターぜという酵素が作用して、ジヒドロテストステロンというホルモンができることによっておこります。
テストステロン自体は筋肉や骨格ががっしりとした男性らしい肉体を作るのに必要な大切なホルモンですが、ジヒドロテストステロンは脱毛につながってしまいます。
女性型脱毛症にはジヒドロテステステロンの作用のほかに加齢や蓚酸による女性ホルモン「エストロゲン」の分泌の減少や栄養不足、ストレスといった様々な要因が絡んでいるとも言われています。
治療には男性型脱毛症の場合5αレダクターゼノ働きを抑える薬剤であるフィナステリドやデュタステリドが強く推奨されています。
女性型の場合は男性ホルモン以外に様々な要素が絡んでいるためこれらの薬剤は推奨されていません。
男性型にも女性型にも使用できる薬剤としては毛包に作用して発毛作用を発揮するミノキシジルが推奨されています。
円形脱毛症の原因は?
次は円形脱毛症について解説していきます。
よく「ストレスが酷すぎて10円ハゲができた」と、円形脱毛症がストレスで発生するというような話を聞いたことはないでしょうか。
確かに強いストレスにさらされることは脱毛症を発生させる一つの要因にはなるのですが、円形脱毛症はストレスだけで起こっているというものではないと現在は考えられています。
円形脱毛症の詳細な原因についてはいまだにわかっていない部分も多いのです。円形脱毛症の原因として現在有力視されているものとして自己免疫があります。
私たちの体には細菌やウイルスなど、自分の細胞ではない細胞や異物を認識して攻撃・無力化する役割を持つ免疫細胞と呼ばれる細胞が存在しています。
この免疫細胞は自分の細胞には攻撃を加えず、自分の細胞でない細胞のみを攻撃の対象にしています。
このとき誤って自分の細胞を攻撃するようになってしまうことを自己免疫とよびます。
この自己免疫で毛根周囲の細胞が攻撃されると、髪の毛を生やしたり育てたりすることができなくなってしまい、円形に脱毛が起こると言われています。
円形脱毛症では免疫に関する治療を行います。炎症や免疫機能を抑制する作用のあるステロイドを患部に注射するステロイド局所療法が一般的に行われています。
また人工的にかぶれを起こす薬品を幹部に塗る局所免疫療法を使用することもあります。
かぶれとはつまり炎症のことで、このかぶれをあえて起こすことで、免疫細胞に攻撃対象を与え、誤った攻撃対象である毛根の細胞への攻撃をやめさせるという具合です。
円形脱毛症は単純にストレスを改善するだけで治ることもなくはありませんが、早く治したいときは医師の診察を受けて有効な治療を受けることをお勧めします。
様々な薬剤で起こる薬剤製脱毛症
様々な病気に対して薬剤が処方されており、その中には脱毛症を引き起こす薬剤もあります。
薬で毛が抜けると言うと多くの人は抗癌剤を思い浮かべるかと思います。抗がん剤は成長期脱毛という脱毛を引き起こし、それ以外の薬剤では休止期脱毛という脱毛を引き起こします。
まずは抗癌剤によって引き起こされる脱毛である成長期脱毛について見ていきましょう。
抗癌剤は癌の増殖を抑えるための薬剤です。癌の増殖は癌細胞が分裂することによっておこります。
この細胞の分裂を抑えることが抗癌剤の作用となります。癌細胞の分裂だけを止めることができればいいのですが、抗癌剤は正常な体の細胞の分裂をも阻害してしまい、その結果様々な臓器に副作用が起こります。
髪の毛が成長期になるとそこでは盛んに細胞分裂が起こっているのですが抗癌剤が作用することでこの成長期が進まなくなってしまいます。成長期が破綻してしまうタイプの脱毛なので成長期脱毛と呼ばれています。
抗癌剤の投与が終わると髪の毛が生えるようになることが多いですが、薬剤を使用している間は髪の毛を生やすことは困難です。
次に抗癌剤以外の薬剤によって引き起こされる、休止期脱毛について見ていきましょう。休止期脱毛はヘアサイクルの成長期と休止期のうち、休止期が長くなってしまい起こる脱毛症のことです。この脱毛は様々な薬で起こることが知られています。
この休止期脱毛の原因となる薬剤は非常に多いのですが人によって副作用としての脱毛が出る人と出ない人がいるので該当する薬剤を飲むと必ず脱毛が起こるということではありません。
まだ治療に必要なために出ている薬剤なので、脱毛を気にして勝手に服用をやめるということは絶対にしないでください。
感染症による脱毛
皮膚に感染するような病原体によって皮膚の状態が悪化するとその部分の髪の毛が弱くなったり抜けたりすることがあります。
様々な病原菌がありますが、感染性の脱毛症の原因として多いのが頭部白癬です。白癬は水虫の原因となる真菌(カビ)の一種です。白癬菌は非常に感染力が強いので、足だけでなく全身どこの皮膚にでも感染できます。
足の水虫でも皮膚の状態が悪化してじゅくじゅくするイメージがあると思いますが頭に白癬が感染すると皮膚環境が非常に悪くなってしまい脱毛が起こってしまいます。
感染した部位の毛が抜けたり生えなくなったりすることから円形脱毛症と混合されがちですが、治療が異なるので注意が必要です。治療には抗真菌薬(真菌というグループに属する菌をやっつける薬)を使います。
水虫はどこの部位でも自己診断で薬局で塗り薬を購入する人がいるのですが、その診断が間違っていると効果がでません。そればかりか悪化してしまう人もいます。
皮膚がおかしいと感じたら皮膚科や脱毛に詳しい医師の診察をなるべく早く受けて患部の状態が悪化したり幹部が広がったりする前にしっかりとした治療を受けることが何より大切です。
まとめ
一言に薄毛と言ってもその原因は様々で、その原因ごとに治療は異なります。
薄毛に対して有効な治療を実施するためには、自分の薄毛がどうして起こっているのかをしっかりと見極めることが最も重要な第一歩なのです。たかが薄毛・・と考えるのではなく是非その悩みを医師にご相談ください。