ミノキシジルの効果を倍増させる海外新薬RT175【朗報】AGA治療薬が続々と商品化!その2

RiverTown社RT1640(男性)

日本だけでなく海外でも各社がしのぎを削り、最新の薄毛治療法の開発に取り組んでいます。ただし開発は商品化の見込みがあるかどうかよりも、まずは資金のめどが立たないことには、研究も進みません。

今までは企業主導が多かった薄毛の研究も、最近は技術やアイディアを開発した医師が資金集めに積極的になり、自ら会社を設立する例もあります。

日本ではあまり考えられないことですが、経営学修士(MBA)を持った医師も欧米では珍しくないし、設立した企業を売却し資金を得、新たな会社を設立するビジネスマンのような医師も少なくありません。

経営の知識が少ない医師が会社を設立する場合は、共同経営者として資金集めに長けた人を選ぶことも、海外ではもはや当たり前です。

今回はそういった会社を数社、ご紹介してみましょう。

この記事の執筆者

内科総合クリニック人形町 院長 藤田 英理(総合内科専門医)

藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長

東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。

所属:日本内科学会日本動脈硬化学会日本頭痛学会

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目次

RiverTown社のRT1640

RiverTown Therapeutics, Inc.は、ニューヨーク大学医学部卒で、神経学、特に多発性硬化症、脳腫瘍、脊髄や神経の損傷の権威であり、アメリカ国立衛生研究所(NIH)のアドバイザーでもあるDavid Weinstein 博士と、ノースイースタン大学薬学部卒で、元ウォール街の株式トレーダー、そして後にコンサルタントとしてさまざまな会社の設立に携わった経験のある、Michael Altmanの2人が2015年にニューヨーク州Dobbs Ferryで共同設立した会社です。

RiverTown社が開発しているRT1640は三つの薬剤が含まれており、それぞれの薬剤が異なる作用をする事で毛髪再生を促す、といわれています。その三つの作用とは、「新しい幹細胞の成長を促す」、「その幹細胞が新たな毛髪になる」、そして「AGAの原因と言われる男性ホルモンのDHTの影響を抑える」です。

三つのうち二つの薬剤は、塗り薬として安全性が確かめられ既にFDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を得ています。臓器移植後の拒絶反応抑制や自己免疫疾患の治療に使用されているサイクロスポリンA(Cyclosporine A)と、薄毛の治療に使用されているミノキシジル(Minoxidil)です。

三つ目の薬剤がRiverTown社が独自に開発しているRT175。開発中の薬であり詳細は公表されていませんが、サイクロスポリンAとミノキシジルの効果を何倍にもする薬剤、とされていています。

RT175は、FDAの許可を得て600人に対して行った臨床試験の結果で安全性が確認されたあと、RT1640の薬剤の一つとして加えられました。RT1640は男性だけでなく、女性にも効果があることが確認されているそうです。

RiverTown社RT1640(男性)
男性の例

RiverTown社RT1640(女性)
女性の例

Source:https://www.rivertowntherapeutics.com

設立して間もない会社なのでまだ次の臨床試験の資金調達の途中です。ただ二つの薬剤は既にFDAに承認されていること、三つ目の薬剤もある程度の安全性が臨床試験で確認されていることから、資金調達のめどが立てば、第二段階の臨床試験は比較的早く進むと予想されます。

Weinstein博士は神経学では国際的にも知られている権威です。専門外の毛髪再生への挑戦をインタビューで、「この会社を設立する前に二つの会社を立ち上げ、経営してきました。両方とも神経学分野の会社だったので、ずっと違う分野に挑戦したいと思っていたのが動機の一つ。いろいろなことに興味があり、新しいことにチャレンジするのが好きなのです」、と語っています。

さらに「実は私自身AGAに悩んでいて、独自に研究開発してきたRT175に発毛効果があることが分かった時、この薬の研究をどうしても進めたかったのです。資金調達のために会社を設立する必要がありました」とも答えています。

既に二つの会社の経営で成功を収めているのに新たな会社を設立した原動力となったのは、自身の症状が大きな理由だった、と公表するのはとても勇気のいることです。

医学知識と会社経営の経験を生かして、自らの悩みを解決していこうとする博士の意欲は、脱毛症の患者に希望を与えます。

今後、RiverTown社の資金調達状況、臨床試験結果の報告があり次第、記事にする予定です。

Follicum社のFOL-005

Follicum社はスウェーデンのLundに本社を置くバイオテクノロジー会社で、2011年に設立されました。CEOはJan Alenfall 医学博士で、今までに主に免疫とがんに関する治療法の開発研究に携わってきています。

Follicum社のFOL-005はヒトペプチド(ヒト:人間由来、ペプチド:たんぱく質を分解したもので、さらに細かくするとアミノ酸に)を使った、毛髪再生に刺激を与える物質です。

2004年に毛髪再生の作用がマウスで確認され、それ以降研究開発が続けられてきました。

驚くことに、FOL-005は髪の再生だけでなく発育の抑制にも作用するそうです。使われる量、どのように用いられるか、またどういう毛包の状態に用いられるか、により毛髪の再生と抑制のどちらをもコントロールできると同社は報告。

毛髪の再生は男性の薄毛に、毛髪抑制は女性の多毛症に効果があるといわれています。

FOL-005は前臨床試験段階のマウスでミノキシジルと比較した場合(下記の画像参照)、より短期間でより多くの毛髪再生が認められ、特に顕著な副作用も見られなかったとのことです。

Follicum社FOL-005
Source:http://follicum.se

Follicum社は技術面と資金面で、いくつかの大学や会社と提携を結び、人を対象とした臨床試験が2016年に始まりました。

さらに2017年1月9日には、日本で2032年まで有効なFOL-005に対する特許の許可がおり、日本市場もターゲットにしていることが同社のプレスリリースで報告されています。日本企業に新たな競争相手が登場しました。

Samumed社のSM04554

Samumed, LLC.はカリフォニア州サンディエゴに本社を置く2008年に設立された、バイオテクノロジー会社です。

CEOのOsman Kibar博士はポモナ大学で経済数学を学び、カリフォルニア工科大学で電気工学の修士号を、さらにカリフォルニア州立大学サンディエゴ校で医学博士号を取得しました。

Kibar博士はカリフォルニア工科大学在学中、腫瘍診断をする会社Genoptixsを共同設立。同社は2007年にナスダック上場を果たした後、2011年スイスの大手製薬会社Novartis(スイス、ニューヨーク市場上場)に4億7,000万ドル(約534億円)で買収されました。

また修士号での電気工学の知識を生かし、E-Tennaという会社の設立にも携わり、そのワイアレスアンテナ事業はこれも大手のIT会社Intelに買収され、若いうちに巨額の富を築くことに。

Samumed社のウェブサイトによると、現在、関節リウマチ薬、AGA治療薬、がん治療薬、などの臨床試験を行っており、前臨床試験段階にアルツハイマー病治療薬、腱鞘炎治療薬などがあるようです。

開発中のAGA治療薬(塗り薬)SM04554はWntと呼ばれる遺伝子群に作用する薬だといわれており、2016年10月に第二段階臨床試験で毛髪再生と安全性が確認されたことが公表されました。

今後、最適な使用量や使用方法など細かい面での臨床試験を進めることになります。

Samumed社は既に多くの=の投資会社から資金を調達済みで、同社の現在の価値は120億ドル(1兆3,636億円)と推定され、世界で一番資産価値のあるバイオテクノロジー会社です。

これだけビジネス界で成功を収めているKibar博士ですが、まだ45歳、2016年5月号のフォーブス誌(Forbes)で、「世界の流れを変える30人のリーダー」の一人にも選ばれ、表紙を飾っています。

Samumed社OsmanKibar
Source:https://www.tellwut.com

才能はビジネスだけにとどまらず、2007年に開催された世界ポーカー選手権で第二位に輝くという特異な経歴も持っている人物です。

これまでに設立した会社が世界的な企業に高額で買収され、研究の成果は折り紙付きのKibar氏。既にある豊富な資金だけでも相当な金額になるのに、Samumed社自体が相当な資金調達を成功させています。

まとめ

経営者としての顔もある医師が設立した会社が進めている最新の研究、いかがでしたか?日本でも今後は、こういった形の会社もでてくる可能性があると思います。

その半面、今までの成果だけを元に巨額の資金を集めても、結果が必ず伴うのでしょうか?臨床試験の進み具合の発表があり次第、お知らせします。

以上

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