- アデノシンは発毛に必要な栄養素となることで、発毛を助け、脱毛を防ぐ
- アデノシンは比較的身近な成分である
- アデノシンは塗り薬で効果が示されている
- アデノシンは比較的安全性は高く、副作用はあまり心配しなくて大丈夫
インターネットで様々な育毛剤が販売されていますが、アデノシンという成分を気になっている人はいるのではないでしょうか。
せっかくお金払ったのに、効果がないのではと心配になりますよね。買った商品が本当に効果を認められるのかについて不安な方は多くいらっしゃると思います。
そこで今回は、アデノシンへの期待や働き方について解説いたします。

藤田 英理(ふじたえり)内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
アデノシンの働き方


- AGAは脱毛と発毛のバランスが崩れて起こる
- 毛髪の発育不要は栄養不足が原因
- アデノシンは毛髪の発育に大切な栄養になる
ヘアサイクルは成長期、休止期からなる
毛髪の一生は、成長期と休止期からなり、これをヘアサイクルと言います。
さらに細かく分類すると成長→休止→脱毛→発生を繰り返しており、正常な人では、成長期の髪の毛が全体の85-90%とされています。脱毛した後にも新しい毛が生えてきますので、常に一定の髪の毛が維持されます。
また、脱毛には年齢に伴って発生するものと、特定の男性に発生するものの2つがあります。特に特定の男性に発生するものがいわゆるAGAとなります。
AGAの要因
AGAの要因は、髪の毛が十分に発育する前に成長が止まってしまい、次第に髪の毛が細くなったり、脱毛が進んでしまったりすることにより発生すると言われています。
その、理由としては、男性ホルモン説、遺伝説、栄養障害説、ストレス説、などがあります。
特に栄養障害説は、毛髪が成長するときに十分な栄養が髪の毛に届かなく、脱毛が進むというものです。
栄養障害説についてより詳しく理解しておきましょう。
AGAに髪の毛の栄養不足が関係している
科学的な実験で、毛髪の根でのエネルギー代謝が十分にできないと脱毛が進むことがわかっています。
グルコース6リン酸脱水素酵素の活性と脱毛の進行には関係性があると言われており、エネルギー代謝が低下していることがわかっています。
モルモットの毛を用いた実験では、成長期にある髪の毛では、アデノシンの活性体やDNA、グルコース6リン酸脱水素酵素が増えていることがわかりました。
アデノシンは発毛に必要な成分の素
今まで書いたように、栄養不足になると十分な発毛ができなく、脱毛した分髪の毛が減ってしまうということがわかりました。
アデノシンは、体の中で活性化され、発毛に必要な栄養素となることで、脱毛を防いでくれます。
以上、アデノシンの働き方をまとめますと、発毛に必要な栄養素となり、脱毛に良いとされています。
アデノシンの正体は?


- アデノシンは極めて身近な物質
- アデノシンは心臓や筋肉への作用もある物質
アデノシンは多くの生物が持っている物質
アデノシンはアデニンというDNAを構成する成分と、リボースという糖が結合している物質です。地球上の生物に普遍的に存在する物質です。
新しい化合物ではないため、安心できますね。
アデノシンの脱毛以外の作用
アデノシンには様々な働きがあると言われています。
特に、心臓への作用、筋肉への作用が有名です。
心臓への作用
心臓の筋肉にアデノシンが作用する場所があり、その場所にアデノシンが結合すると、心臓の活動量が低下すると言われています。
心臓が必要以上にドキドキしてしまった場合に、アデノシン類似物質を点滴で投与し、心臓の活動を一時的に抑えたりすることがあります。
筋肉への作用
アデノシンは運動を行うと筋肉から放出されると言われています。筋肉から放出されたアデノシンは、血管にあるアデノシンが結合する部位に結合します。
結合したことで、血管が広がり、筋肉に酸素が届けられるという働きをします。
以上、このようにアデノシンは様々な働きがあると言われています。発毛に良いとされているのも、この様々な作用の一つだと言われています。
アデノシンの効果


- アデノシンは臨床試験で髪の太さを太くしたとされている
- アデノシンは毛髪の密度を濃くしたとされている
- アデノシンはガイドラインで使用が推奨されている
アデノシンの効果は臨床試験で確認されている
アデノシンの男性型脱毛症への有用性に関して、3つの臨床試験が行われています。
臨床試験その1
101名の脱毛症に困っている男性を対象に行われた臨床試験です。
アデノシンの効果をナイアシンと比較している試験で、0.75%のアデノシンが配合されているローションを6ヶ月使用することで、髪の毛の太さやが改善していたとされています。
中等度以上改善されていた人は、アデノシンで80%、ナイアシンで32%と、アデノシンの方で効果があったとされています。
有害事象は、アデノシンで特に特徴的なものはなく、安全であったとされています。
この結果から、少なくともナイアシンよりも効果が期待できることがわかります。
臨床試験その2
38名の脱毛症に困っている男性を対象に行われた臨床試験です。
アデノシンの効果を偽薬と比較している試験で、0.75%のアデノシンが配合されているローションを6ヶ月使用することで、細い毛がへり、太い毛が増えたと報告されています。
さらにその結果、頭髪の密度が上昇していたということも言われています。
有害事象は、皮膚変化等もなく、安全に使用できたとされています。
患者さんの数はやや少ない気がしますが、アデノシンは脱毛に良いとされています。
臨床試験その3
94名の脱毛症に困っている男性を対象に行われた臨床試験です。
アデノシンの効果を5%ミノキシジルローションと比較している試験で、0.75%のアデノシンが配合されているローションを6ヶ月使用することで、ミノキシジルと同等の効果があったと報告されています。
具体的には、脱毛が起きている部分の太い毛の割合は、アデノシンでもミノキシジルでも同程度であったということです。
この報告では、アデノシンの方がより早く脱毛を防ぐ効果があり、満足度が高かったとされています。
男性型脱毛症にはアデノシンの概要がガイドラインで推奨されている
今までご紹介した臨床試験の結果から、男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版では、「男性型脱毛症には、アデノシンの外用を行うように進める」とされています。
以上、アデノシンのローションは様々な試験で効果が確認されています。期待ができる成分の1つだと言えます。
アデノシンの飲み薬は効かない


- アデノシンは塗るタイプ飲みがガイドラインで推奨されている
- アデノシンを飲んでも効果はあまり期待できない
男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版ではアデノシン外用液については書かれていますが、飲み薬については記載されていません。
飲み薬の場合は、薬を飲んでから一度体に吸収されて、身体中を巡ります。
そして、頭の部分に作用するという流れがイメージされます。
アデノシンは毛髪に必要な栄養となるものでしたので、飲み薬を飲んでも確かに毛包に届くかもしれませんが、外用液で直接塗った方が飲み薬を飲むよりも効果的に作用すると思います。
痛み止めを飲むよりも、痛み止めの貼り薬を貼った方が効果を実感できることがありますが、そのイメージです。
また、アデノシンは医薬部外品として認められているものがあります。詳しくは次に記載します。
医薬部外品とは?


- アデノシンは医薬部外品で、有効成分を一定程度含んでいるとされている
- しっかりと区分を見極め、発毛や抜け毛に良いものかを考えることが大切
薬というものは医薬品とされています。これは病気を治療するために使用されるものです。
アデノシンは医薬部外品というものに該当します。
この医薬部外品は、厚生労働省が許可した効果・効能に有効な成分が、一定の濃度で配合されているということを意味しています。
すなわち、化粧品に近いイメージですが、効果を示す有効成分が入っているということになり、その効果を厚生労働省が認めていることとなります。
一方、育毛剤や発毛剤の中には、医薬部外品でもないものもたくさんあります。
この区分の違いは、しっかりと理解しておきたいですね。
アデノシンの副作用


- アデノシンの安全性は高い
- アデノシンで注意すべきことはアレルギー
効果の部分で紹介した臨床試験で、安全性についても調べられています。
アデノシン外用液が原因と考えられる副作用は特になかったとされています。
もちろん塗り薬を塗るので、体に合わなくて発疹が出たりすることは0ではないです。
しかし、これは保湿剤を新しく塗るときも注意が必要です。つまり、アデノシン外用液の副作用はアレルギーだけで、それも心配がいらない程度だと言えます。
まとめ
今回は、アデノシンの効果や副作用についてご紹介しました。
アデノシンは臨床試験で発毛や育毛が期待され、発毛や育毛の専門家がみるガイドラインでも推奨できるとされています。
臨床試験で報告された副作用はアレルギー程度であり、安全に使うことができるのではないかと思います。