- デュタステリドとプロペシアの違いは?
- デュタステリドの副作用には何がある?
- デュタステリドの服用の注意点
おはようございます。内科総合クリニック人形町院長の藤田です。
今回は、プロペシア(フィナステリド)と同じようにAGAの治療に用いられる薬剤である「デュタステリド」による発毛効果とその副作用、注意点について解説させてください。
デュタステリドは国内で厚生労働省の認可がおりているAGA治療薬で、「ザガーロ®」の商品名で国内のみならずアジア地域で正式な「医薬品」として医師の処方のみで使用することが出来る内服薬です。
そのため、プロペシアと同様に国内外問わず様々な臨床試験や医学的論文からも男性のAGA(男性型脱毛症)に対する発毛効果が証明されている医薬品です。
しかし、ネットでのAGA治療をこれから始める方の疑問や相談を見ていると
- 「プロペシアとの違いが分からない。」
- 「プロペシアとデュタステリド、いったいどっちが自分に効果があるの?」
- 「AGAの治療薬は始めて使用するけど、長期間使うので副作用が出てしまうのが怖い。」
といった、さまざまな悩みが投稿されているのを見ることがあると思います。
いくら治療効果があるといっても、どんな薬なのか、もし自分に副作用が起きてしまったらと思うと、なかなか治療に踏み出せない気持ちが出てしまうのも仕方ないですよね。
そこで当記事では、業界内のつながりなどを駆使して「プロペシアとの違い」と「副作用」、そして「服用上の注意点」について裏をとりながら、患者さんに丁寧に解説していきます。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
デュタステリドはプロペシアと何が違う?
- AGAの原因には「男性ホルモン」が大きく影響している
- AGAの病態はヘアサイクルの異常な短縮
- デュタステリドはヘアサイクルを正常に戻すための薬
AGAの発症には男性ホルモンである「テストステロン」と、前頭部から頭頂部に多く存在する体内の酵素である「5αリダクターゼ」の2つが大きく影響していることは以前お話しましたね。
テストステロンは5αリダクターゼによって、DHT(ジヒドロテストステロン)というより強力な男性ホルモンに変化します。その効果はテストステロンの約3-10倍とも言われています。
5αリダクターゼとは
男性の中には、遺伝的にこの5αリダクターゼが多く発現していたり、DHTのもとになるテストステロンの分泌量が他人より多い方がいます。
こうした方は若いうちからAGAになりやすく、進行も早い傾向にあると言われています。
プロペシアとデュタステリドは、ヘアサイクルを回復させて、これまで成長する前に抜け落ちていた髪の毛たちが、太く長いコシなる髪の毛に成長することが可能となります。
プロペシアはこの5αリダクターゼII型のみを選択的に阻害する薬剤です。
これまではⅡ型だけがAGAの発症に関係しているといわれていましたが、臨床研究の結果、5αリダクターゼI型もAGAの発症に関係していることがわかりました。
デュタステリドは、5αリダクターゼⅠ型とⅡ型の両方を阻害するように設計された薬剤です。そのため、5αリダクターゼのII型しか阻害することができないプロペシアよりも、デュタステリドの方が高い効果が期待できます。
デュタステリドはプロペシアよりも効果があるのか
実際に、20歳以上50歳以下のAGAに悩む男性917人に、プロペシア1mgとデュタステリド(0.02mg、0.1mg、0.5mg)を1年間継続して服用し続けた場合どうなるか?という比較のための臨床試験が行われました。
その結果、「発毛数」「髪の毛の太さ」「軟毛→硬毛への変化」のいずれの項目においてもデュタステリド0.5mgmgはプロペシア1mgよりも効果があるという素晴らしい結果が得られています。
つまり、プロペシアとデュタステリドには細かい作用機序の違いがあり、その違いによって発毛効果に差が出ているということが分かります。
デュタステリドの副作用には何がある?
- 男性機能低下
- 乳房障害
- 肝機能障害
デュタステリドの副作用には、性欲減退・勃起不全・射精障害に代表される「男性機能低下」、女性化乳房、乳頭痛、乳房痛、乳房不快感の症状がある「乳房障害」、そして肝機能障害などがあると言われています。
それでは、それぞれの副作用について簡単に解説していきます。
男性機能障害
性欲減退や勃起不全、射精障害といった男性機能低下がみられることがあります。
そもそもDHTは強力な男性ホルモンであるため、プロペシア以上にDHTの産生を抑えるデュタステリドには起こり得る副作用であると考えられます。但し、発現率は低いと言われています。
乳房障害
この副作用も同様に、フィナステリドが強力な男性ホルモンであるDHTの産生を抑えることに原因があると考えられます。
男性でも、僅かではありますが体内で女性ホルモンが分泌されています。
DHTの産生が強力に阻害されることで女性ホルモンの働きが優位になり、女性化乳房、乳頭痛、乳房痛、乳房不快感という症状となって現れると考えられています。こちらも発現率はとても低いです。
肝機能障害
フィナステリドは肝臓で代謝され無効化される薬なので、服用中は少し肝臓に負担がかかります。
ただし、これはほとんどの薬で同じことがいえます。体に合わない薬を服用すれば肝機能障害が出ることは薬に限らず、食事、サプリメントも同じです。
ごく稀な副作用ですが、服用中は定期的な血液検査で肝機能の数値を確認することが重要になります。
ただ、こうした副作用もプロペシアと同様、臨床試験でプラセボ患者とほぼ変わらない発現率となっていますので、必要以上に心配することはありません。
副作用意外にも注意!気を付けるべきことは?
- 前立腺がんの検査があるときには必ず申告
- 肝臓が悪い人は、事前に医師に伝える
- 女性や子供が触れないように注意する
前立腺がんの検査があるときには必ず申告
デュタステリドを服用していることで、前立腺がんの検査に影響を及ぼしてしまい前立腺がんの発見が遅れてしまう可能性があります。
内服中に前立腺がんの検査をしなければいけない場合は、必ず申告するようにしましょう。
肝臓が悪い人は、事前に医師に伝える
デュタステリドは、肝臓で代謝されて解毒される薬剤です。そのため、肝臓が悪い人ではデュタステリドの代謝が遅れてしまい必要以上の効果が発現してしまい、副作用が強く表れてしまう恐れがあります。
肝臓に持病を抱えている方は、内服を始める前に医師に相談しておきましょう。
女性や子供が触れないように注意する
デュタステリドはそもそも男性限定の薬剤で、女性への投与は避けるべき薬剤です。
特に、妊娠中やその可能性のある女性は触れることも禁忌とされています。有効成分が肌に触れただけでも経皮的に吸収されて、胎児に影響を及ぼす可能性があると言われています。
また、子供がデュタステリドに触れてしまうと発育が不十分になってしまう恐れもあります。女性や子供はデュタステリドを服用しないのはもちろん、錠剤に触れるのも避けるようにしましょう。
まとめ
最後に、簡単に当記事を箇条書きでまとめておきます。
- フィナステリドはAGA治療では必須の治療成績良好な薬剤
- 副作用はほとんどないが、異常があるときは受診の必要あり
- 女性や健康診断時には注意が必要
この記事を読むことで、少しでもあなたのデュタステリドへの不安や悩みを減らすことが出来ればうれしいです。
- オルガノン株式会社 プロペシア臨床試験データ
https://www.organonconnect.jp/products/propecia/medical_3y.xhtml - プロペシア 添付文書・インタビューフォーム
https://www.info.pmda.go.jp/go/interview/2/672212_249900XF1030_2_1F.pdf
https://www.info.pmda.go.jp/go/pdf/672212_249900XF1030_2_01