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なぜ鉄分は不足しがちなのでしょうか?食事?体質?それとも病気?

院長 藤田

こんばんは。内科総合クリニック人形町 院長の藤田(総合内科専門医)です。

患者さんへの採決結果説明で「貧血があります」とお伝えすると、かなりな割合で「じゃあ鉄分を摂ればいいんですか?」あるいは「ほうれん草を食べたらいいんですか?」と聞かれます。

男性医師と男性患者の対話シーン

貧血の9割以上は鉄欠乏性貧血なので、だいたいの場合はそれで間違ってはないのですが、まずは本当に鉄欠乏性貧血なのか、採血項目を追加して確認する必要があります。

そしてもっと大事なことは、

そもそもなぜ鉄が欠乏してしまったのか?

を究明することです。単に食事からの鉄分が足りない場合もあれば、背景に慢性的な出血が隠れている場合もあるからです。

目次

鉄が欠乏する原因

 人間の体内には男性で約3g、女性で約2gの鉄分があります。そのうち3分の2が赤血球の主成分であるヘモグロビン(血色素)の原料に使われ、残りの約3分の1は脾臓や肝臓に貯蔵されています。

一方、人間の身体から出ていく鉄分は成人男性で1日あたり約1mgとごくわずかです(便・尿・汗などの成分として体外に出ていきます)。

一方、生理中の女性は生理出血のため、1日あたり2mg程度の鉄を失います。出て行くのと同じくらいの量を食事から補わなければ体内の鉄分は減っていってしまいます。

じゃあ鉄分を1~2mg/日摂ればいいかというとそうではなく、食物からの鉄分の吸収率は1割程度と低い(!)ため、推奨される摂取量は下表のようになります。

成人男性7~7.5 mg/日
成人女性(月経あり)8.5~9 mg/日
成人女性(月経なし)6~6.5 mg/日

ところが厚労省のデータによると、日本人は推奨量の7割程度しか鉄分を摂取出来ていません。日本人の一般的な食事をしていると、体内の鉄分は少しずつ減っていくのです。

 男女別、鉄分が足りなくなる原因

特に月経のある女性がかたよった(鉄分が足りない)食事をしていると、元々体内に貯蔵されている鉄分が男性よりも少ない上に、出ていく鉄分が多いため、たやすく鉄欠乏性貧血になってしまいます。

また、子宮筋腫子宮内膜症子宮体がんといった、生理の出血量が増加する婦人科疾患が隠れているケースも珍しくありません。

一方、男性の場合は元々体内に貯蔵されている鉄分が多く、生理が無いため女性ほど鉄分が失われない、多少偏った食事をしているという程度では鉄欠乏性貧血にはなりにくいです。

厳格なヴィーガンや菜食主義者の場合は例外で、男女問わず鉄欠乏になりますし、ビタミンB12欠乏による貧血もきたします。

男性の場合、鉄欠乏性貧血の原因の多くは消化管出血です。消化管から大量に出血すると血便が出るので「出血している!」と分かりますが、胃・十二指腸の潰瘍/がん、大腸ポリープ、大腸がんなどによるじわじわとした出血では便の色の変化に気づかれにくく、便潜血検査をして初めて消化管出血が判明する場合が多いのです。これは女性でも同様です。

スポーツ貧血とは?

男女問わず、長距離走や激しい運動を日常的に行っている方は鉄欠乏性貧血をきたしやすいことが知られています。いわゆる「スポーツ貧血」です。かつては「行軍貧血 (marching anemia)」とも言いました。

スポーツ貧血の原因として、

  • 足の裏の毛細血管内で自分の赤血球を踏み潰して赤血球が壊れる
  • 大量の発汗によって汗の中に鉄を失う

ことが挙げられます。

では、どの程度の運動でスポーツ貧血になるのでしょうか?

これは食事内容にもよるため、一概には難しいです。一例として、以前私の外来に通っておられたスポーツ貧血の男性の場合は、毎日の10㎞走に加え、毎月のように数十kmのトレイルランに参加されていました。

そこまで行かなくとも、運動量の多さを自覚されている方は、定期的に貧血のチェックをした方が良いと思います。

 じわじわ出血に気づかないのは消化管出血だけ?

ところで、消化管以外からのじわじわ出血はどうなのでしょうか?

考え込む男性

生理の時以外に子宮から出血すると「不正出血」として認識されるので、受診に繋がる場合が多いです。

尿路(腎臓・膀胱)や呼吸器(鼻・肺・気管支)から出血すれば体外に血液が出て行きますが、これらの場合は血尿や鼻血や血痰が出るのですぐに気が付きます。

血尿・鼻血・血痰が続く場合は、そもそも貧血以前にもっと心配すべき病気があります。

また、外界との交通が無い体内でじわじわと出血すると、血の塊が大きくなって周囲を圧迫し、早晩何らかの症状が出ます。

結論:便はじわじわ出血の格好の隠れ蓑なのです。

 便は体からのお便り?

お通じを毎回観察すると、黒っぽかったり赤っぽかったりと色の変化に気づくかもしれません。

しかし肉や魚の摂取や、鉄剤の内服でも便は黒くなりますし、消化しきれなかったトマトやパプリカが混じると血液のように見えたりもします。

「便が黒いのは鉄剤をのんでるせい」と思っていたら実は胃潰瘍からじわじわ出血していた、というオオカミ少年的な例もあります(こういうのを「鉄剤内服で消化管出血がマスクされる」と言います)

便に微量の血が混じっているのかいないのか、正確なことは検査しなければわかりません。便の色や貧血が気になるようでしたら、医療機関で相談しましょう。

まとめますと、鉄が欠乏する原因は以下のようになります。

  • 食事からの鉄の摂取量が足りない(または吸収効率が悪い)
  • 消化管からじわじわと出血している
  • 日常的に激しい運動をしている
  • (女性で)月経出血量が増加する婦人科疾患がある
笑顔で人差し指を立てる女医

「貧血かな?」と思ったら、内科を受診してきちんと検査を受けましょう。

以上


この記事を書いた人

内科総合クリニック人形町院長 藤田医師
藤田 英理

内科総合クリニック人形町 院長
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
東京大学医学部保健学科および横浜市立大学医学部を卒業
東京大学付属病院や虎の門病院等を経て2019年11月に当院を開業
最寄駅:東京地下鉄 人形町および水天宮前(各徒歩3分)

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