
おはようございます。内科総合クリニック人形町 院長の藤田(総合内科専門医)です。
世間ではいまだに新型コロナウイルスの話題でもちきりです。
当院にも新型コロナのPCR検査や抗体検査の予約がたくさん入っております。
ひるがえって季節型インフルエンザ(いわゆる普通のインフルエンザの事です)は、致死率はかなり新型コロナウイルスよりも低くなっていますが(新型コロナ感染症が致死率3-4%、インフルエンザは 0.1%以下)、それでも怖い感染症であることに変わりありません。
といいますのも、インフルエンザは心臓や呼吸器の持病を持ってる方以外に、お子さんと妊婦さんも重症化しやすいのです(新型コロナウイルスでは、重症化しやすいのは高齢者と持病のある方とされています。お子さん・妊婦さんでは重症化しやすいという報告はありません)。
さらに言うと、インフルエンザと新型コロナは同時感染する場合があります。
もうここ半年で十分に新型コロナウイルスのことは勉強されてきたでしょうから、今この瞬間はいったんコロナのことは忘れて、「無差別殺人鬼」インフルエンザウイルスについて一緒に勉強してまいりましょう。
インフルエンザは実はC型まである
インフルエンザは、A型とB型は聞いたことがあると思いますが、実はC型もありますので整理しておきましょう。
インフルエンザA型
激しい悪寒やのどの痛み、40度前後の高熱が出ることで知られている「THEインフルエンザ」です。高齢者を中心に毎年3,000人、関連死を含めると1万人前後の死者が出る大変恐ろしいウイルスです。
- 39度前後の高熱
- 強いのどの痛み
- 関節痛
- 悪寒戦慄(全身がガクガクブルブルする)
また、動物などを介して毒性が非常に強くなると「新型インフルエンザ」と呼ばれ何十年に一度大流行することがあります。記憶に新しいところでは2009年に日本でも流行しかけ、今の新型コロナウイルス並みに日本中が大騒ぎになりました。
BおよびC型と違い、A型はヒトと動物の間で感染し合うため変異が読みにくくワクチンの開発が困難で、ワクチン効果がゼロ(ワクチンが全く効かない)の年が過去にあったくらいです。
※的中率は4~7割くらいと言われています
小児がA型に感染して重症化すると「インフルエンザ脳症」になることがあり、後遺症を残してしまうことがありますので本当に怖いウイルスです。新型コロナウイルスで小児が重症化することはまずありませんからね。
インフルエンザB型
B型は「ヒトヒト感染」しかしませんので、突然変異することはほぼないので大流行することもまずありません。以前は数年に1回程度日本に上陸していましたが、人の往来が増えたせいなのか近年はほぼ毎年小流行を続けています。
高熱が出ることはまれで、38度前後でおさまることがほとんです。主症状は下痢やおなかの痛みです。
ご家族がインフルエンザっぽくなり、病院に連れて行って検査(抗原検査)をした際「B型です」と言われたら、基本的には胸をなでおろしてよいと思います。
インフルエンザC型
4歳以下の小児が感染することがありますが、鼻水や軽い発熱程度で大事に至ることはまずありません。
また、一度感染してしまえば生涯にわたり抗体を持つであろうとされており、A型のような大流行を起こすこともありません。
季節性インフルエンザはA型とB型の混合
インフルエンザは様々な型や俗称があり、その中に「季節性インフルエンザ」というものがあります。
季節性インフルエンザとは新型インフルエンザ「以外」のインフルエンザのほぼ全てを指し、毎年11月から3月末くらいに猛威をふるっている、いわゆる「インフルエンザ」と皆がイメージしているのが季節性インフルエンザです。
なお、季節性インフルエンザというのはあくまで俗称であり医学的な疾患名ではありません。
中身を具体的に言えば、季節性インフルエンザは流行前半はA型が9割くらいを占めて猛威をふるい、A型で集団免疫が成立して収束に向かう3月以降にB型が小規模な流行を見せることが多いです。
よって、今年のインフルエンザワクチンも例年同様、A型にもB型にも効く「混合ワクチン」になります。
インフルエンザと新型コロナは同時感染する!
ここから本記事のクライマックスに入っていきますが、恐らく今あなたが一番気になっていることは「コロナとインフルって同時に感染するの?」だと思います。答えは、
同時感染します
同時感染します
同時感染します
大事なことなので3回言いました。新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスは同時感染することがあるのです。論文を3本紹介します。
78才日本人女性のインフル&新型コロナ同時感染事例
脂質異常症(高脂血症)と甲状腺機能低下症の持病持ちの78才の日本人女性の症例です。
2020年2月にフランスのパリ旅行から帰国後、全身倦怠感と食欲不振が数日間続き医療機関へ。新型コロナ特有ともいえる肺への「すりガラス影」が確認され、PCR検査は陽性、同時にインフルエンザ抗原検査を実施しインフルエンザA型に陽性。
抗インフルエンザ薬(タミフル)を服用し翌日には熱が下がったものの、全身の倦怠感は続き解熱後5日ほどPCR検査は陽性が続きました。さらに5日ほど経過した時点で倦怠感がなくなりPCR検査で陰性。約3週間後に退院されました。
参考文献:Co-infection with SARS-CoV-2 and influenza A virus
Published online 2020 Apr 21. doi: 10.1016/j.idcr.2020.e00775
57歳日本人男性のインフル&新型コロナ同時感染事例
レストランでウェイターをやっている男性のケースを紹介いたします。喫煙歴、旅行歴、病人との接触歴は「なし」です。
2020年4月に発熱しかかりつけ医を受診。抗原検査でインフルエンザA型が陽性だったためタミフルを服用。
しかし、病状が改善せず長期の発熱が続いたため地域の中核病院でCT撮影をしたところ、新型コロナウイルスの特徴とも言える肺のすりガラス影が確認されたため、PCR検査を行い新型コロナウイルスに感染していることが判明しました。
オルベスコ(ステロイドの吸引薬)およびアビガンを投与し、入院4日経過したことから徐々に快方に向かい、4週間で退院されましたが、両薬が効いたから回復したのかどうかは分かっていません。
参考文献:Coinfection with SARS-CoV-2 and influenza A virus
Published online 2020 Apr 21. doi:10.1136/bcr-2020-236812
海外の同時感染事例
53歳男性、56歳男性、78歳男性、として81歳の女性です。4人全員が高血圧症の持病があり、うち2人は人工透析を受けている重い腎臓病の患者さんです。
インフルエンザA型が2人、インフルエンザBが1人、そしてインフルエンザはAおよびBのダブル感染が1人です。AとBに陽性ということは、新型コロナウイルスを含めて3つのウイルスに同時感染していることになります。
4人のうち3人が人工呼吸器を挿管し重症化しましたが、「トリプル感染」した56歳の男性患者さんは2日間という短期入院ののちに回復して退院しています。治療薬はインフルエンザ治療法に加えて抗マラリア薬と抗HIV薬が処方されています。
参考文献:SARS-CoV-2 and influenza virus co-infection
Published:May 05, 2020DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31052-7
同時感染が疑われる場合は「W検査」が可能な医療機関へ
インフルエンザ特有の急な発熱や喉の強い痛みなどが出た場合は、昨年までであれば「かかりつけ医」に行けば何も問題ありませんでした。内科クリニックであればインフルエンザの検査や治療はだいたいどこでも出来ますので。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で状況はコロっと代わり、多くの医療機関が「発熱患者お断り」になっています。
医師として私の個人的な想いとしては、「発熱患者を診るのが医者の仕事でしょ?」と叫びたくなりますが、コロナ禍では院内感染によってクリニックの一時閉鎖のリスク等がつきまといますので、致し方ない面もあるのかも知れません。
当院は発熱患者OKでダブル検査も可能です
「インフルエンザと新型コロナに同時感染したかも知れない」
と自己判断できる人はまずいないと思いますが、急激な高熱や悪寒などインフルエンザ特有の症状が出ていて、かつ、呼吸が苦しい、あるいは味覚や嗅覚障害が出ている場合はダブルで感染している可能性があります。
その場合は、できれば以下の3つの条件がそろった医療機関を受診ください。
- 発熱患者受け入れOK
- 保険適用によるPCR検査を行っている
- 院内のゾーニング(動線分離)ができている
①および②は必須です。
ただし、驚くほど①がNG(発熱患者受け入れ拒否)の医療機関が多いのと、発熱患者受け入れOKでも保険適用によるPCR検査を行っている医療機関となると、東京都内でさえ希少です。
また、①と②がそろった希少な医療機関の中で、発熱患者と一般患者さんとゾーニング(動線分離)している医療機関なら「なお安心」だと思います。
なぜなら、もし仮にインフルエンザも新型コロナも陰性の検査結果が出たとしても、ゾーニングをぐちゃぐちゃにしている医療機関だと、検査陰性だったのに、その検査の際にどちらかのウイルスに院内感染してしまう可能性が否定できないからです。
当院(内科総合クリニック人形町)は、下記写真のように院内への出入りの時点からゾーニング(発熱者の動線分離)を徹底し、発熱患者を積極的に受け入れて治療を行い、保険適用によるインフルエンザ&新型コロナウイルスのW検査を行っている都内でも希少なクリニックの一つです。

10/7追記:
通常、新型コロナ・インフルエンザ両方の抗原検査を行うにはそれぞれ1回ずつ(計2回)綿棒を鼻に入れてグリグリしなければなりませんが、
当院では1回の鼻綿棒グリグリで新型コロナとインフルエンザ両方の抗原検査が行えるキット(エスプライン®SARS-CoV-2/インフルエンザA&B-N https://www.fujirebio.co.jp/products/espline/pdf/espline_SARS-CoV-2_leaflet.pdf)を導入しました。
この検査キットは鼻の粘液を取って処理後、30分で新型コロナの結果が出ます。
インフルエンザの方は15分で出るので、鼻グリグリから約30分で両方の結果が揃います。
発熱があり、かつ新型コロナ抗原が陽性の場合は新型コロナウイルス感染症の確定診断となります。
また発症から2-9日目に関しては、結果が陰性の場合でも追加のPCR検査は必須としないとの国の方針となりました 。
ただし、発症から10日以上経つと抗原検査で偽陰性となる可能性が高まるため、抗原陰性だった場合PCRを追加で行うことになります(厚労省資料参照→ https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000640452.pdf)
発熱で医療機関を受診して2回鼻綿棒グリグリをやられたくない方は、この検査キットがあるところを選びましょう。
なお、新型コロナの抗原検査をインフルエンザ流行期の発熱患者に対して行うことは厚労省も推奨していますが(https://ningyocho-cl.com/wp-content/uploads/2020/10/5cb584f357e66afb36777096468278a1.pdf)、
新型コロナの抗原検査はPCR同様、保険適用で行うには東京都の厳しい審査による認可が必要であり、当院を含め限られたクリニックでのみ可能となっています。
発熱の方は、新型コロナの抗原検査やPCRが保険で出来ない医療機関をうっかり受診して二度手間になってしまわないようにしたいものですね。
今冬はインフルンザワクチンを確実に接種しておこう
まとめに入ります。
インフルエンザと新型コロナウイルスは同時感染する可能性がありますので、マスクを付け、手洗いとうがいをこまめに行うことで予防を徹底してください。そして、できればゾーニング(動線分離)を徹底しているクリニックでインフルエンザの予防接種(ワクチン)を受けて下さい。
現状、新型コロナウイルスに対するワクチンが開発されていないため、W感染リスクをできるだけ減らす意味でもインフルエンザワクチンは接種しておくべきだと思います。
インフルエンザと新型コロナの同時感染は昨冬は事例としては少なかったですが、今冬はどうなるかわかりませんし、「同時感染していない」と確信を持てる人などほとんどいないと思いますので、W感染が疑わしいと思ったなら、一回の鼻ぬぐい液の採取でインフルとコロナのW検査ができる当院のような医療機関に「なるはや」でお越しください。
以上

この記事を書いた人

内科総合クリニック人形町 院長
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
東京大学医学部保健学科および横浜市立大学医学部を卒業
東京大学付属病院や虎の門病院等を経て2019年11月に当院を開業
最寄駅:東京地下鉄 人形町駅および水天宮前駅(各徒歩3分)