おはようございます。内科総合クリニック人形町 院長の藤田です。
医療脱毛は、強力な熱エネルギーにより毛根を破壊し、永久脱毛が目指せる数少ない脱毛方法です。
その強力な熱エネルギー故に懸念されるのが、「やけど」による肌トラブルです。
近年、医療脱毛や美容整形といった美容医療市場は急激な広がりを見せています。その背景もあってか、国民生活センターでは、医療レーザーをはじめとする美容医療における相談件数が増加傾向にあるといいます1)2)。
具体的な数字を見てみると、同機関には2012年~2017年5年間で医療脱毛に関する相談が1968件寄せられており、そのうち284件が施術時の危害(約90%が皮膚障害・やけどに関するもの)でした3)。
国民生活センターに寄せられる医療脱毛に関する相談のうち、約14%が皮膚障害ややけどによるものということになり、脱毛時のやけどは決して他人事ではありません。
この記事では、医療脱毛とやけどの関係を分かりやすく解説しました。やけどが起こりやすいケースや、やけどの特徴・対処法や治り方について、やけどを起こさないためにできることをまとめています。
やけどのリスクを少しでも遠ざけるため、これから医療脱毛を検討されている方はぜひご一読ください!
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医療レーザー脱毛のやけどのリスクと原因
まずは医療脱毛で起こり得るやけどのリスクと、その原因を見ていきましょう。
医療脱毛には、やけどのリスクがある
医療脱毛は、毛に含まれるメラニン色素に反応する光を照射し、熱エネルギーを発生させて毛を作り出す組織である毛乳頭を破壊、脱毛します。
毛乳頭は一度破壊されると再生せず、毛は元通りに生えてきません。
毛乳頭を破壊するためには200℃近い熱エネルギーを発生させる必要があるため、毛根付近の皮膚にやけどを起こしてしまうリスクがあります4)。
医療脱毛におけるやけどは施術時の「副作用」として扱われており、医療脱毛契約を行う際、熱エネルギーによるやけどの副作用がある点をクリニック側から説明する必要があります。
そして、脱毛を受ける側も、医療脱毛にはやけどのリスクがある点を十分に理解した上で契約し、施術に臨む必要があります。
医療脱毛でのやけどは「肌状態」と「機器の出力」が主な原因
医療脱毛でのやけどの原因は、主に下記の2点です。
- 脱毛を受けるには不適切な肌状態
- 機器の出力のミスマッチ
具体的に見ていきます。
やけど原因①脱毛施術に不適切な肌状態だった
メラニン色素は毛だけでなく肌にも含まれており、肌に含まれるメラニン色素がやけどの原因となる場合があります。
メラニン色素を多く含んだ肌(色の濃い肌)にレーザーを照射すると、毛根だけでなく肌自体にダメージを与えてしまい、やけどを起こしてしまうのです。
また、肌の健康状態が良くないときも脱毛の熱負担に耐えられず、やけどの原因になる場合があります。
やけど原因②機器の出力のミスマッチ
医療レーザーは、脱毛を受ける方の毛や肌の状態を見極め、適切な出力を選定して照射します。
小さい出力であれば肌への負担は少なくなるものの、あまりに小さすぎると正しい脱毛効果が得られません。
脱毛効果を最大限に得られ、かつ、お肌への負担を最小限に抑える出力でレーザーを照射しなければならないため、医療脱毛は高い技術を要するものです。
このレーザーの出力がミスマッチしてしまうと、やけどを起こしてしまうことがあります。
医療脱毛でやけどが起こりやすい人
次に、「やけどが起こりやすい肌状態」を見ていきましょう。
- 日焼けした色の肌の方
- 肌が乾燥している方
- 敏感肌の方や肌荒れを繰り返している方
日焼けした色の肌の方
日焼けした色の肌の方は肌にメラニン色素を多く含んでおり、肌にレーザーが反応しやすくなるため、やけどを起こす可能性が高くなります5)。
もともとお肌の色が濃い方はカウンセリング時に照射を断られてしまう場合がありますが、これは照射時のやけどリスクを考慮しての判断です。
カウンセリング時には照射OKをもらったとしても、脱毛の日に日焼けをして肌の色が濃くなった状態ですと、やけどが起こりやすくなります。
肌が乾燥している方
肌は乾燥すると角質層が剝がれやすくなり、肌を刺激や細菌から守るバリア機能が衰えます。そのような状態でレーザーを照射してしまうと、熱負担に肌が耐えらません。
やけどを起こすリスクが高い6)ため、お肌の乾燥がひどい場合は脱毛照射を断られる場合もあります。
本来であれば軽い炎症程度で済むはずが、バリア機能が低下しお肌が弱っていると、あっという間に炎症が広がりひどい赤みにつながってしまうケースもあるからです。
敏感肌の方や肌荒れを繰り返している方
敏感肌の方や肌荒れを繰り返している方は、過去の肌トラブルで起こった色素沈着がお肌に残っている場合があります。
色素沈着もメラニン色素のかたまりですので、レーザーが過度に反応してしまった場合はやけどが起きます。
また、敏感肌や肌荒れを繰り返している方は皮膚が乾燥していたり、数々のトラブルにより角質層が薄くなっていたりと、やけどの原因になってしまう要素を持ち合わせているケースが多いです。
特に顔の皮膚にこのような傾向が強いため、敏感肌の方や肌荒れを繰り返している方の顔脱毛は慎重に検討しましょう。
ほくろに照射すると、やけどが起こりやすい
脱毛レーザーが反応する「メラニン色素」と聞くと、「ほくろ」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
レーザーが毛や肌のメラニンに反応するということは、当然ほくろにも反応してしまいます。
ほくろにレーザーを照射してしまうと、ほくろ部分が一時的に膨らんだり、やけどしたり、コゲてしまったりすることがあります。
そのため、医療脱毛では次のような対策を行います。
- ほくろ部分を避けてレーザーを照射する
- ほくろ部分にシールを貼る
- ほくろ部分を白く塗りつぶす
ただ、全てのほくろに対してそのような対策をとるわけではなく、メラニン色素をさほど含まない薄いほくろの場合はそのまま照射することもあります。
これってやけど?医療脱毛で起こるやけどの特徴
医学的にやけどはⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度に分類され、数字が大きくなるごとに重症度が高くなります7)8)。
医療脱毛で起こりうるやけどはこのうちのⅠ度とⅡ度(軽度)であり、適切な処置を行えば数日~数週間で治まる場合がほとんどです。
具体的な症状としては、次のような特徴が挙げられます。
赤みが出る、少しヒリヒリする、熱い(Ⅰ度熱傷)
レーザー照射直後や少し時間が経ってから皮膚表面にヒリヒリとした痛みを感じる、触ると熱い、赤みが出る場合はⅠ度熱傷の可能性があります。
強い日焼けをした時に近い症状で、皮膚の表皮部分でやけどを起こしています。
水ぶくれができている、痛みがある(軽度のⅡ度熱傷)
痛みがあり、水ぶくれができている場合は、軽度のⅡ度熱傷の可能性があります。
強い痛みをともなうケースもあり、表皮よりももう少し深い真皮のあたりでやけどを起こしています。
医療脱毛でやけどが起こったときの対処法
脱毛施術直後に上記のような症状が現れた際には、直ちに医師やスタッフに伝え適切な処置を行ってもらうようにします。
帰宅後や、数日経ってから症状が見受けられた場合の対処法を下記にまとめました。7)9)
患部を冷やす
やけどの処置として最も大切なポイントは「患部を冷やす」です。
水道水などの流水で患部を直接流す、保冷パックを当てるなどして冷却しましょう。患部を冷やすことでやけどの広がりを防ぐとともに、痛みを和らげる効果があります。
ただし、勢いよく流水を当てすぎて患部に負担がかからないように注意しましょう。
また、保冷パックなど極端に冷たいものを直接当ててしまうと、かえって負担になる場合がありますので、清潔なガーゼやタオルを巻いて温度を調節するなどしてください。
直ぐにクリニックに連絡し、指示を受ける
症状に気付いたら、なるべく早くクリニックに連絡し症状内容を伝え、必要な指示を受けます。
場合によってはクリニックの受診をすすめられる場合があります。
小さい範囲のやけどであっても、顔、手、VIO、関節付近は跡が残る可能性がありますので、必ず医師に相談するようにしましょう。
水ぶくれは故意につぶさないようにする
水ぶくれは外部からの菌の侵入を防いでくれており、水ぶくれの中にも傷を治す成分が含まれていますので、なるべく水ぶくれはつぶさないようにしましょう10)11)。
もし潰れてしまった場合は、患部を洗浄した後に清潔に保ち、ばんそうこうなどを貼り、菌の侵入を防ぎます。軟膏を塗るのも良いでしょう。
どれくらいで治るか
やけどの治癒期間はやけどの度合により大きく異なります7)。
Ⅰ度熱傷(赤みが出る、少しヒリヒリする、熱い) | ⇒数日後に治ります。跡が残ることもありません。 |
軽度のⅡ度熱傷(水ぶくれができている、痛みがある) | ⇒1~4週間で治ります。色素沈着が起こることがありますが、数か月から半年かけて消えていきます。 |
やけどした時、薬処方などの対応はどうなっているか
ここでは、万が一医療脱毛でやけどが起こってしまった際のクリニック側の対応(薬の処方など)について解説します。
医療脱毛は薬処方を含むやけど治療を行える
医療脱毛による脱毛施術は医師免許を有した医師のみが行うため、万が一脱毛時にやけどが起こってしまった場合でも、医師による適切な処置を受けられます。
また、薬の処方についても対応してもらえますので、これは医療脱毛ならではの強みでもあります。
サロンでの脱毛は医師が常駐しているわけではないため、万が一施術の際にやけどをはじめとする肌トラブルが起こってしまったとしても、クリニックほど迅速に対応してもらうのは難しいでしょう。
ただし、診察やお薬代の有無はクリニックにより異なる
医療脱毛を行うクリニックでは、やけどが起こった際に、診察、治療、薬の処方をしてもらえますが、その費用の有無はクリニックによって異なります。
ほとんどの大手クリニックでは、照射が原因で起こった肌トラブルに対しての治療費や薬代は契約金に含まれており、別途料金が発生しないようになっています。
ただ、中には料金が別途発生するクリニックも。万が一の対応について、契約前に確認しておきましょう。
医療脱毛でやけどしたら跡が残る?
医療脱毛で起こりうるやけどは、Ⅰ度熱傷または軽度Ⅱ度熱傷がほとんどです。
Ⅰ度熱傷は表皮に炎症が起こっている程度のため、跡が残ることはほとんどありません7)。
水ぶくれが生じる軽度Ⅱ度熱傷は真皮組織にまで熱傷が及んでいるため、治癒後は色素沈着となり少し跡が残る場合もあります。
ただし、ほとんどの場合では数か月から半年ほど経てば次第に消えていくでしょう。
跡を残さないためには、やけどの疑いがあればすぐに医師に相談し、適切な治療やケアを怠らないことが重要です。
医療脱毛でやけどが起こった場合の返金対応
やけどが起こった場合に返金してもらえるかどうかは、契約内容によります。
施術中にやけどを負ってしまい、施術を続ける意思が無くなってしまった場合は「解約」という形になり、契約期間内であれば残っている施術料金を返金してもらえます12)。
ただし、ほとんどの場合で、今まで行った施術料金まで返金してもらうのは困難です。
というのも、医療脱毛におけるやけどは副作用として扱われており、利用する側は脱毛によるやけどのリスクを理解した上でクリニックと契約を交わします。
もちろん、契約書にもその旨が記載されています。
やけどは誰にでも起こる可能性がありますので、契約の際には「やけど等の肌トラブルが起こってしまった際の返金や補償について」をしっかりと確認しておきましょう。
医療脱毛でやけどしないための注意点・対策
医療脱毛でやけどが起こる可能性は稀ではありますが、ゼロではありません。ただ、自分自身の心がけや対策によってそのリスクを大きく下げられます。
ここでは、医療脱毛でやけどしないためにできる対策、注意点をご紹介します。
- 医療脱毛のリスクを事前に理解しておく
- 脱毛前には日焼けをしない
- 脱毛前後は保湿を入念に行う
- 蓄熱式脱毛機器を扱うクリニックを選ぶ
- テスト照射を受けておくのも有効
医療脱毛のリスクを事前に理解しておく
医療脱毛を行う上でのやけどや肌トラブルに関するリスクを知っておきましょう。特に下記の点を理解しておきます。
- 医療脱毛では、稀にやけどが起きる可能性がある
- 2012年~2017年の5年間で国民生活センターに寄せられた医療脱毛に関する相談のうち、皮膚障害・やけどに関するものは284件
- 日焼け肌や乾燥肌、ほくろの部分はやけどが起きやすい
- 敏感肌・肌荒れを繰り返している方も注意
- 医療脱毛で起こりうるやけどはⅠ度・Ⅱ度(軽度)
- 医療脱毛クリニックではやけどの診察・治療が可能
- 帰宅後に症状が出た場合、すぐにクリニックに連絡をして指示を受ける
脱毛前には日焼けをしない
肌の色が濃くなるとやけどのリスクが高くなるため、脱毛1ヵ月前からは特に日焼けに気を付けましょう。
※1ヵ月としているのは、健康的な肌は約28日で肌のターンオーバーを行っているためです。
脱毛前後は保湿を入念に行う
乾燥肌は、脱毛レーザーを照射するとやけどしやすい状態です。脱毛の数日前からは保湿には十分に気を付け、乾燥した状態にならないようにしましょう。
照射後の肌も熱や摩擦で敏感な状態が続いているため、念入りに保湿を行いましょう。
蓄熱式脱毛機器を扱うクリニックを選ぶ
蓄熱式脱毛機器はバルジ領域をターゲットにし、低出力のレーザーを照射するため、従来の熱破壊式脱毛器よりもやけどのリスクが低いとされています。
やけどが心配な方は蓄熱式脱毛機器を使用しているクリニックを選ぶという選択もあります。
※ただし、蓄熱式脱毛機器だからといって必ずしもやけどが起こらないというわけではありません。
テスト照射を受けておくのも有効
もともと肌の色が濃い方、乾燥肌や敏感肌の方は、初回のカウンセリング時にテスト照射をしてみて、肌に問題が起こらないか確かめることもできます。
肌は日々変化するものですので、テスト照射でOKだったからといって絶対にやけどが起こらないというわけではありませんが、自分の肌質と機器の相性をある程度判断できます。
参考文献
- 美容医療市場に関する調査を実施(2021年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所 https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2738
- 美容医療サービス(各種相談の件数や傾向)_国民生活センター https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/biyo.html
- なくならない脱毛施術による危害ー国民生活センター https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20170511_1.pdf
- 第118回日本皮膚科総会⑨教育講演資料 http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-200113.pdf
- 色素沈着 – 14. 皮膚疾患 – MSDマニュアル プロフェッショナル版 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB/14-%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%89%B2%E7%B4%A0%E7%95%B0%E5%B8%B8%E7%97%87/%E8%89%B2%E7%B4%A0%E6%B2%88%E7%9D%80
- 肌のバリア機能の低下が肌荒れを招く | ハイチオール【エスエス製薬】 https://www.ssp.co.jp/hythiol/troublenavi/roughskin/declineskinbarrier.html
- やけどとは、その分類|日本形成外科学会 https://jsprs.or.jp/general/disease/kega_kizuato/yakedo/yakedo.html
- やけど(熱傷)|一般社団法人 日本創傷外科学会 https://www.jsswc.or.jp/general/yakedo.html
- やけどの応急処置と治療|日本形成外科学会 https://jsprs.or.jp/general/disease/kega_kizuato/yakedo/yakedochiryo.html
- 水ぶくれの原因は~ | 国立長寿医療研究センター https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/05.html
- やけどの対処法|ばんそうこう・キズパワーパッドのバンドエイド® BAND-AID® https://www.band-aid.jp/kizu/yakedo
- 特定継続的役務提供|特定商取引法ガイド https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/