自毛植毛は頭頂部より生え際のM字部分を優先して増やすべき「本当」の理由

植毛前にM字部分にマジックで生え際を書いているところ
この記事に書いてある事
  • AGAになると3万本以上抜けるのに植毛できる本数は約1万本
  • 頭頂部(O字)は薬が効きやすいため植毛せず薬でがんばるべき
  • 頭頂部への植毛は既存の生きた毛根を殺してしまう
  • 植毛以外でのM字対策は「貼るウィッグ」がベスト
  • 他人からの印象は「卵一個分」で決まる

AGA(男性型脱毛症)になると、前頭部(M字)と頭頂部の両方が薄くなるケースが多々あります。

そのため、可能なら両方ともガツンと植毛で増やしたいという願望は誰しもが持つでしょう。植毛に使用できる本数はおおよそ決まっているため、

  1. M字O字両方とも幅広く増やす
  2. M字を中心に植毛する
  3. O字(頭頂部)だけ増やす

この3択の中からどれかを選ばなくてはなりません。当ブログでは②の「M字を中心に植毛する」をおすすめしています。

なぜこのようなアドバイスになるのか解説していきますね。

この記事の執筆者

内科総合クリニック人形町 院長 藤田 英理(総合内科専門医)

藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長

東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。

所属:日本内科学会日本動脈硬化学会日本頭痛学会

医師略歴・プロフィールはこちら

目次

AGAになると3万本以上抜けるのに植毛できる本数は約1万本

AGA治療歴25年

藤田先生、AGAになると平均してどれくらいの量の髪の毛が抜けるのでしょうか?

院長 藤田

日本人の健常者の髪の毛の本数は平均約10万本で、そのうち3-4万本がAGAで抜けると言われています。多い人だと半分の5万本以上抜ける人もいます。

院長 藤田

解説いたします

AGA治療で植毛を検討されているあなたによく知っておいて欲しいのは、植毛で全盛期のようなフサフサに戻ることは不可能だという非情な現実です。

AGAの進行度合いによって変わりますが、AGAになると少なくても3万本、多いと5万本以上抜けてしまいます。

それに対し、AGAの影響を受けない元気な毛根が集まっている後頭部から間引ける本数は、最大でも1万本(=約5,000グラフト)程度。

3万本以上抜けているのに増やせる限界数が1万本程度なので、「どこを中心に増やすのか」は大変重要なことです。

頭頂部(O字)は薬が効きやすいため植毛せず薬でがんばるべき

院長 藤田

逆にAGA治療歴25年の毛髪診断士さんに伺います。プロペシアやミノキシジルなどの治療薬は頭頂部とM字どちらにも効くのでしょうか?

AGA治療歴25年

いいえ。M字部分も生えるには生えますが大きな効果は期待できません。逆に頭頂部は薬が効きやすいしフリカケで隠しやすいので植毛するのはもったいないと思いますね。

毛髪診断士

解説いたします

私はフィナステリド(プロペシア)とミノキシジルタブレットを15年以上服用していて、そればかりか、国内外で出回っているほとんどのAGA治療を受けてきました。しかし額(ひたい)の生え際(=M字)だけは思うように生えたことがありません。

これは私固有の話ではなく、M字部分は基本的に何をやっても効果は薄くしか出ないのです。

逆に頭頂部は育毛剤も効きやすいし、飲み薬(プロペシアやミノキシジル)の効果も期待していいと思います。

それと、頭頂部はスーパーミリオンヘアなどのヘアパウダー(ふりかけ)で隠しやすい場所でもあるので、植毛用の貴重な毛根はできれば前頭部に集中させたほうがベターです。

ふりかけ ヘアーパウダー
画像引用元:スーパーミリオンヘア公式サイト

ヘアパウダーはM字はうまく隠せません。正面から見るとうまく隠せているように思えても、横から見ると違和感ありありです。この点からも、植毛はM字に集中するべきだということが言えます。

頭頂部への植毛は既存の生きた毛根を殺してしまう

AGA治療歴25年

植毛専門医とも言えるN先生から「頭頂部に植毛すると既存の生きている毛根を殺してしまうので良くない」と聞いたことがあります。これについてはどう思われますか?

院長 藤田

頭頂部は薬や育毛剤などで復活のチャンスがある毛根がたくさんあるので、そこに植毛してしまうと生きた毛根を死なせてしまうのは確かですね。

院長 藤田

解説いたします

自毛植毛は、1㎠あたり髪の毛60本(=約30グラフト)が上限です。

日本人の場合、「フサフサ」の状態は1㎠あたり髪の毛の本数は約160本(=約80グラフト)なので、薄くなった場所には少なくとも50とか60グラフト植毛したいという患者さんの心理はよく理解できます。

ただし、1平方メートルあたり30グラフト以上植毛してしまうと、グラフト同士が接近しすぎてせっかく植えた毛根が頭皮内でケンカしてしまい毛細血管から入ってくる栄養を奪い合って、多くの場合どちらかの毛根に栄養が行かずドナーロス(生着せずに毛根が死んでしまうこと)が発生してしまいます。

職業倫理観の高い医師はこのことを理解しているので30株以上はまず植えません。

しかし、お金儲けに走る医師は生着率を無視し、1平方センチメートルあたり40グラフト(40株とも言います)や50グラフトを躊躇(ちゅうちょ)なく植えてしまい、その結果10や20グラフト死なせてしまっているにもかかわらず、植えた分の料金を全て患者から取るのです。

お金を手にする悪徳医者

高密度をPRしている植毛クリニックには本当に注意してください。もしどうしても高密度(1平方センチメートルあたり50グラフトとか)の植毛をしたいのであれば、植毛は必ず2回に分けてください。

たとえば、頭頂部に1平方センチメートルあたり30グラフトをまず植えておいて、1-2年後に2度目の植毛で同じ場所に2グラフト追加。

話を戻しますが、頭頂部の毛根はAGAで薄くなった人でも、かなりの数の毛根が実は生きているのです。

プロペシアやミノキシジルなどの薬により、生きている毛根を太く成長させ薄毛を解消させるチャンスは残っているのに、そこにメスやマイクロパンチで穴を開けて新しい毛根を植毛すると、既存の生きている毛根を死なせてしまいます。

頭頂部へCHOI式植毛を行っているシーン
頭頂部へCHOI式植毛を行っているシーン

ですので、頭頂部は、どうしても薬が効かない場合にのみ植毛してください。

後頭部から採取できる本数には限界があるため、まだ生きている毛根が大量に残っている頭頂部に植毛するのはもったいないということです。

M字を優先して植毛しておいて、まだ後頭部で使える髪の毛があるなら、3回目以降の植毛時に頭頂部に入れてください。

植毛以外でのM字対策は「貼るウィッグ」がベスト

AGA治療歴25年

植毛から脱線しますが、M字対策で自毛植毛以外に有効な手段はないのでしょうか?

院長 藤田

ヘアコンタクトなどの粘着剤で貼り付けるタイプのウィッグがベストだと思います。芸能人の多くが貼るウィッグでM字対策していますね。

院長 藤田

解説いたします

M字対策を自毛にこだわりたいなら植毛がベストですが、生着率の限界から植毛でM字を完璧にフサフサにすることは事実上不可能です。

しかし、芸能人の額は皆完璧に生えそろっています。ほぼ100%ウィッグです、芸能人は。

ウィッグには以下の3種類があります。

  1. ただかぶるだけのウィッグ(かつら)
  2. かぶって結び付けるタイプのウィッグ
  3. 頭皮に粘着剤でペタっと貼るタイプのウィッグ

この中で、ひたい(額)の生え際で、通称M字と呼ばれる部分を4Kテレビや8Kテレビで映しても分からないくらい精巧に再現できるのが③の貼るタイプのウィッグです。

プロピアのヘアコンタクト
画像引用元:プロピア公式サイト

間近で目を凝らしてじっくり見てもウィッグだとは絶対に分かりません。日本製の貼るタイプのウィッグはそれくらい精巧にできています。

よほどの悪意を持って強く引っ張らない限りウィッグは剥がれないので、高いところから頭を先に水中に飛び込んでも1ミリもズレません。

どうしてもM字部分を完璧にしたいのであれば、貼るタイプのウィッグも検討に入れると良いでしょう。

他人からの印象はほぼM字の「卵一個分」で決まる

AGA治療歴25年

藤田先生、植毛でM字の仕上がりのデザインを考えるとき、熟練の植毛医ほど生え際全体の密度よりもセンターラインを重視すると聞いたことがあります。これについて知見があったら教えてください。

院長 藤田

良い質問ですね。植毛の世界では「卵1個分」と言って、額のセンターラインの卵1個ほどの面積の密度を濃くすることで他人が見たときの印象がグっと良くなります。

院長 藤田

解説いたします

カウンセリングの段階で患者さんの多くは、幅広い面積の植毛を望みます。ただ植毛の本数に限界がある以上、他人から見た印象が良くなる箇所に集中することを提案するのも植毛医の大切な仕事です。

下記はダメな植毛医がやってしまいがちな前髪のデザイン。これを実現しようとすると20,000本くらい必要で、後頭部がスカスカになります。

ダメなデザイン例
ダメなデザイン例

本当の意味で植毛を理解している腕の良いベテラン植毛医は、下記のように「卵1個分」を濃くし剃り込みの部分は薄く、というように濃淡(のうたん)をつけて植毛するよう患者さんに提案します。

卵1個分の良いデザイン例
卵1個分の良いデザイン例

このように説明しても、「もっと濃くしたい」「ハゲた剃り込み部分を少なくしたい」と思われるでしょう。

しかし後頭部から採取できる限界本数を考えると、絶対に後者の良い例の方を選択すべきです。

悪徳クリニックのホームページを見ると、前者のような非現実的なことがさも実現できるかのような虚偽記載をしています。あなたがもしそれをすでに目に入れていたとしたら、「卵1個分理論」はなかなか受け入れがたいでしょう。

でも「卵1個分理論」を無視して額の生え際に大量の植毛を行うと、生着率が大幅に下がるばかりか、後頭部がスカスカになってしまい大後悔します。

そうなってしまっては遅いので、「卵1個分理論」をしっかりと頭に入れおき、植毛クリニックのカウンセリングを受けてください。

まとめ

植毛は後頭部から採取できる元気な毛根の数に制限があり、日本人の場合で約1万本(=5千グラフト)です。それを超えて採取すると後頭部がスカスカになってしまいます。

一方、AGAになると最低でも3万本は抜けてしまい自毛植毛で1万本までしか補えないことを考慮すると、「どこに集中して植えるのか」が大変重要。飲み薬や育毛剤が効きやすい頭頂部に植毛せず、薬が効きにくいM字部分(ひたいの生え際)に集中して植毛すべき、というのが専門家の意見です。

それでもどうしてもM字部分を完璧にしたいのなら、植毛では本数の限界があるので「貼るタイプのウィッグ」を検討してみてください。

以上

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