【経過】自毛植毛後するとどれくらいの期間で生えてきますか?⇒平均で1年強、遅いと2年、最悪の場合生えないケースも。

自毛植毛で髪の毛がいつまでに生えてくるか
この記事に書いてある事
  • 植毛出術後1か月程度で「一時的脱落」により1回ほぼ全部抜ける
  • 「ショックロス」による抜け毛は移植元・先の両方で起きる
  • 半年で数cm伸びた髪の毛を確認できたらかなり早いほう
  • 植毛成功がはっきりと分かるのは平均約1年強で遅いと2年以上かかるケースも
  • 植毛失敗率は約10%。不生着が分かるのは植毛後2年半経過時

自毛植毛手術を受けるにあたり、気になるのは「いったいどれくらいの日数でフサフサになるのか」だと思います。

結論を先に申し上げると

「平均で約1年強、遅いと2年を超える。稀(まれ)に生えないこともある。」

です。

植毛クリニックの公式サイトを見ると、8か月くらいでかなり生えてくるかのような記述が目立ちます。これは奇跡的に早い方であって、現実的な期間とは言えません。

何より一番不安になるのは、8か月と言われていたのに1年近くたっても生えてこない状態です。現実的な数字として「早くて1年強」と頭に入れておけば、植毛を受けるかどうかの判断基準になるので、正しい数字を出しました。

この記事の執筆者

内科総合クリニック人形町 院長 藤田 英理(総合内科専門医)

藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長

東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。

所属:日本内科学会日本動脈硬化学会日本頭痛学会

医師略歴・プロフィールはこちら

目次

植毛出術後1か月程度で「一時的脱落」により1回ほぼ全部抜ける

AGA治療歴25年

藤田先生、植毛すると術後1か月程度でほぼ全部抜けてしまうって本当ですか?

院長 藤田

全部ではないですが多くが抜けてしまうのは本当で、「一時的脱落」と言います。ミノキシジルを服用した時に起きる初期脱毛に似てますね。

院長 藤田

解説いたします

通常は頭皮に育毛剤として塗るミノキシジルに、「ミノタブ」と呼ばれる飲み薬もあります。

育毛剤タイプのミノキシジルに比べるとかなりの確率で発毛を体験できますが、服用後1か月弱くらいの時期に脱毛現象が起きます。

【ミノキシジルタブレット】

ミノキシジルタブレット

これは「初期脱毛」と呼ばれ、この初期脱毛が起こらないと髪の毛が生えてきません。自毛植毛でも同じような脱毛現象があり、「一時的脱落」や「一時的脱毛」などと呼ばれています。

一時的に脱落する毛根は、後頭部から採取して薄くなったM字部分などに移植した毛根です。「生着しなかったのか?」と不安になると思いますが、これ(一時的脱落すること)で正常です。

髪の毛は「休止期⇒成長期⇒退行期」を4-6年周期で繰りかえし、これをヘアサイクルと呼びます。一時的脱落は移植した髪の毛が休止期に入ることを意味しているだけで、数か月から1年程度で成長期に入るので考えすぎないようにしてください。

AGAのヘアサイクル

「ショックロス」による抜け毛は移植元・先の両方で起きる

AGA治療歴25年

植毛をすると、周囲の元気な髪の毛が抜けてしまうことがあると聞いていますが、これはどんな現象なのでしょうか?抜けた髪は元に戻りますか?

院長 藤田

ショックロスと言い、採取した毛根の周辺の髪の毛や、新たに植え付けた場所の周辺の髪の毛が抜けることがあります。元通りに生えてくるので心配はいらないですね。

院長 藤田

解説いたします

後頭部から採取し、移植先に植え付けた毛根が1か月程度で抜け落ちてしまう「一時的脱落」の他に、「ショックロス」という、元々生えていた髪の毛まで抜け落ちてしまう脱毛現象があります。

移植先は、元々髪の毛が薄くなっており、必然的に髪の毛も細く、肉眼では見えないような産毛(うぶげ)が中心で、ショックロスしたことに気づきにくいですが、後頭部のショックロスは結構びっくりするでしょう。

円形脱毛症のような抜け方と言いますか、軽く引っ張っただけでスっと5本以上束になって元気な髪の毛が抜けてしまいます。

【円形脱毛症】
円形脱毛症

原因は分かっていません。パンチでくり抜くFUE植毛の場合は抜いた髪の毛の周辺がショックロスで脱落し、メスを使うFUT植毛の場合は、縫い合わせた周辺でショックロスが起きます。

通常の抜け毛とはまったく違う感覚で、本当にスっと束になって5本や10本抜けてしまうので正直心臓に悪いです。

前述した「一時的脱落」と違い休止期に入ってから抜けるのではなく、どれくらいの期間で元通り生えてくるのか予想が付きません。ただ、ショックロスで脱落した髪の毛が元に戻らなかったという例は聞いたことがないので、時間はかかれど元通りになることだけは確かだと思います。

抜け落ち方が円形脱毛症に似ているので、もしかすると白血球が関係しているのかも知れません。いずれにせよ元通りになるので安心してください。

植毛成功がはっきりと分かるのは平均約1年強で遅いと2年以上かかるケースも

AGA治療歴25年

移植した髪の毛は半年でどれくらい伸びるのでしょうか?肉眼で確認できるのはいつくらいになりますか?

院長 藤田

藤田先生”]半年だと肉眼ではっきり「生えた」と実感できる人は多くないと思います。2年経過してからようやく肉眼で「増えた」と実感する人もいるくらいです。

大手植毛クリニックの公式ホームページを見ると、長くても1年で生えそろいます、と書いてあることが多いですが、業界の中にいる私に入ってくる情報では、1年で生えそろうのはせいぜい半数くらいで、遅い人だと2年を超えることもあります。

自毛植毛を2度経験している当院の毛髪診断士に聞いてみましょう。

院長 藤田

植毛を2回受けていますね。それぞれどれくらいで生え揃いましたか?

AGA治療歴25年

私は2回とも2年かかりましたね。逆に1年で生え揃う人がいるっていうのが驚きです。

院長 藤田

解説いたします

植毛クリニックは誇大広告を平気で打つところが多いので多くの誤解を生んでいます。大原さんの例のように植毛してから生えそろうまで、2年を超えることも決して珍しくありません。

これ以外にも、髪の毛の本数は日本人の場合1グラフトにつき平均2本なのに、「2.5本」と言い、2,000グラフト植毛して4,000本しか増えていないはずなのに2.5倍して5,000本と「大盛りで宣伝する」のが植毛クリニックの常です。

1グラフト(株)あたり2.5本
画像引用元:某有名植毛クリニック公式サイト

生え揃うまでの期間も、私の知る限りでは平均して1年2-3か月です。1年で生えそろったらかなり早いほうで、10か月というのは例外的なケースと言えるでしょう。

「半年でどれくらいハゲは隠せますか?」

という質問を受けることも多いですが、半年だと肉眼ではっきり確認できるほど生え揃っている人はまずいません。

ただし、生えてくることはほぼ間違いないので、「1年半はかかる」と思っていれば1年で生え揃わなくても焦ってドキドキすることはありません。

何事も期待値を上げすぎるのは良くないので、「自分は人より結果が出るのが遅いかも」という心構えでいたほうが健全でいられます。1年で生えるとは思わず、1年半や2年かかるものなんだとゆったり構えて待つことをおすすめしますね。

植毛失敗率は約10%。不生着が分かるのは植毛後2年半経過時

AGA治療歴25年

植毛で生えそろうまでの期間は、植毛クリニック側が出す情報と実態が違っていて植毛を経験した私自身本当に焦りましたが、植毛で失敗する人はいるのでしょうか?

院長 藤田

植毛クリニック側は生着率95%、つまり失敗して生えてこない人は5%程度、1割くらいの人が移植した毛が生えてこないことがあります。

院長 藤田

解説いたします

こちら↓の画像をご覧ください。

植毛生着率95%

この画像は某大手植毛クリニックの公式サイトからの抜粋です。ほとんどの植毛クリニックでは、植毛成功率(=生着率)を95%以上と宣伝しています。

このとおりであれば嬉しいのですが、実際のところはもう少し低くて「9割が成功し1割が失敗に終わる」というのが正しい数値です。

9割とか95%の数字には2つの事が含まれています。

  1. 1,000本植えて900本生えそろう=9割成功
  2. 1,000人が植毛して900人が植毛に成功する

①のほうであれば全く気にする必要はありません。植えた髪の毛が100%全て生えてくるということは聞いたことがないし、どのような外科手術でも元通り100%になることはありえないので、9割以上成功していれば大成功だと思ってください。

問題は②のほうです。実際に植毛に失敗する人が1割程度います。

バックヤード、つまり看護師側の不手際が原因なのか植毛医の指示が悪いのかは、その場で動画でも撮影して記録しておかないと確認がとれませんが、クリニック側に問題があることはほぼ間違いありません。

後頭部から採取した髪の毛は、ドナー(細胞≒肉片)がむき出しになっていて、移植先に植えるまでの間は専用の保存液に素早く付けておかないと虚血時間(血が通わず栄養分が届かない)が長くなりドナーが死んでしまいます。手際が悪いクリニックだと植える前にドアーを死なせてしまうのです。

ドナー
画像引用元:How Many Grafts Do I Need for Hair Transplant?

このような不手際が起きた場合、移植した時点でドナーが死んでいるので生着せず、1,000本植えても100本くらいしか生えてこない事があります。

にもかかわらず「体質的に」と患者側のせいにしてしまうのが病院(クリニック)という所なので、カウンセリング時にいろいろ質問し、どのような管理体制で手術を行っているのか聞いてみるといいでしょう。

あいまいにしか答えられないようなクリニックでは、植毛は受けるべきではありません。大手であろうが安心せず、しっかりと自分の身は自分で守ってください。

まとめ

植毛は外科手術に該当しますが、成功率が9割の確率の外科手術は他にはほぼありません。

手術に失敗はつきもの、というと無責任な言い方かも知れません。ただ現実問題として外科手術で失敗することはあります。癌治療なども含めて全外科手術の成功確率がどれくらいという統計データは公表されていませんが、9割成功する外科手術は他にはないことだけは確かです。

外科手術の様子

それくらい自毛植毛は成功確率が高い外科手術なので、1割の人が失敗するから自毛植毛を薄毛対策の選択肢から外すのは、賢明ではありません。

「かなりの確率で生える」などと言われているミノキシジルタブレットでさえ、成功率(≒発毛率)は3割ちょっとです。9割成功するというのは驚異的とさえ言えることは間違いありません。

成功するメリットよりも失敗するリスクのほうを気にしすぎてしまう人は多いものですが、9割成功する外科手術は他にはまずないので、植毛をするかしないかは数字に惑わされず「成功する確率が相当高い外科手術だ」と信じ、冷静に判断されることを願っています。

以上

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